─登場人物─
【
仮面ライダームジカの変身者であり、結ヶ丘高等学校に通う一年生。
歌うことが大好きだが、ヌッラの能力により歌声を奪われてしまった。
【
結ヶ丘高等学校に通う一年生。
人前では緊張して歌えないという悩みを抱えていたが、可可の想いに触発され、スクールアイドルを始めることを決意した。
【
結ヶ丘高等学校に通う一年生。
スクールアイドルに憧れて上海からやって来た。好きなものへの情熱は人一倍強い。
【
結ヶ丘高等学校に通う一年生。
かのんの幼馴染であり、丸いものが大好き。ダンスが得意で、結ヶ丘では音楽科に所属している。
【
プロテクションの長官補佐。
長官の補佐以外にも、奏叶の戦いのサポートも主な仕事である。
【
警視庁 公安部に所属する刑事であり、階級は警部。
ヌッラ捜査のため、特別捜査官としてプロテクションにも所属している。
「我々に自由を!」
結ヶ丘高等学校の正門を通った俺の耳に届いたのは、クラスメイトの唐可可さんの凛々しい声だった。
「は…?」
いったい何事かと思い声のした方向に視線を向けたが、その光景に空いた口が塞がらない。
そこには、『Let's スクールアイドル』とカラフルに描かれた巨大手押し車の上に乗り演説をする唐さんと、泣きながらそれを引っ張る澁谷さんの姿があった。
「あ、奏叶くん…おはよぉぉ…」
項垂れた様子の澁谷さんと目が合った。
「お、おはよ…えっと…なにやってるの?」
「一応、署名運動…自由に好きな部活を設立できた方がいいよねぇ…?」
「あっ、あぁ…まぁ…?」
ふむ、なんとなく状況は察した。
恐らくだが、スクールアイドル部設立の許可が降りなかったので、それを覆すための署名運動だろう。この様子からこれを提案したのは唐さんで、何故か彼女はこの策に自信満々なようだ。
「じゃあ署名してぇ…」
そう言って用紙を渡してくる澁谷さんだが、それよりも問題は他にある。そもそも学校にこんなバカでかい手押し車を持ってきているのも問題な上に、音楽科と普通科の待遇の差が激しいこの学校だ。こんな堂々と署名運動なんてしていたら、どうなるかわかったものじゃない。
「かのんちゃーん!!!」
しかし、そんな俺の心配は遅かったようで…
「理事長が!理事長がぁぁぁぁぁ!!!」
大慌てで走ってきた千砂都が、理事長からの呼び出しを知らせるのであった。
まぁ、そうなるよね…
「「1位!?」」
理事長室から戻ってきた二人に事の詳細を聞き、驚いた俺と千砂都の声が揃う。
近々行われる’’代々木スクールアイドルフェス’’という大会で1位になれば、スクールアイドル活動を許可すると言われたらしい。
「いきなりのステージで1位、か…」
なかなかに厳しい条件だな。
「どんまい…!」
「「まだ終わってない!!」」
ムッとして怒る二人に、俺と千砂都は慌てて謝る。
「で、どうするの?」
「それでね…」
千砂都の質問に答える澁谷さんの話によると、曲は澁谷さんと唐さんで作って練習するらしいが、振り付けとかダンスに関しては二人とも未経験。その上、最近のスクールアイドルのレベルはかなり高い。そこで…
「もし良かったら…」
「もし良かったら…」
「「ちぃちゃん(チサトさん)に、ダンスを教われたらと!」」
澁谷さんと唐さんが声を揃えて頼み込む。
「しょーがないなぁ。ちぃちゃんの授業料は高いよ〜?」
「いいの!?」
千砂都の返答に、パァっと表情が明るくなる二人。
「うん!私で良かったら、喜んで」
「「やったぁ!」」
澁谷さんと唐さんは喜びのあまり顔を見合せてハイタッチしている。
「これでダンスは百人力だね!ちぃちゃんのダンスは、小学生の時から評判だったんだ」
「よかったら、チサトさんもスクールアイドル一緒にヤリマセンカ?」
「私?」
「ハイ。是非!」
キラキラとした瞳で千砂都を見つめる唐さんだったが、それに対して千砂都本人が答える前に、幼馴染の澁谷さんが答える。
「クゥクゥちゃん、それは無理。ちぃちゃんは音楽科、これ以上無茶は言えないよ」
「ソウデスカ…」
澁谷さんの言葉に、唐さんは残念そうにしつつも納得する。
そんな澁谷さんを、千砂都は少し寂しそうに見つめていた。
もしかして、千砂都もスクールアイドルをやりたいのだろうか…?
いや、違うな。もしただ単純にスクールアイドルをやりたいだけならば、千砂都の性格ならやると即答していただろう。そうしなかったということは、恐らく何か別の事情がある。
それは恐らく澁谷さんが関係していることなのだろうが、今俺がそれを考えても千砂都に迷惑がかかるだけだろう。
俺は考え事を頭の隅に避けて、澁谷さんと唐さんに声をかける。
「俺にも力になれることがあったら、いつでも言ってね」
この間の澁谷さんの歌に勇気をもらい、俺は仮面ライダーとして戦うことができた。だから、今度は俺が、少しでも彼女の力になりたい。
「いいのデスカ!?」
「もちろん。応援してるから、スクールアイドル」
俺の言葉を聞いた澁谷さんは、パァっと表情が明るくなる。
「奏叶くん…!ありがとう!」
─放課後─
結ヶ丘高等学校を出た俺は、現在竹下通りにいる。
その理由は、昼休みに鼓野さんから来たとある連絡にある。
───
──
─
『突然連絡してしまい、すみません』
「ちょうど昼休みですし大丈夫ですよ。それで、どうしたんですか?」
俺が聞くと、鼓野さんはこの連絡の本題に入る。
彼女の話によると、ここ一週間ほど、同じヌッラの犯行だと思われる事件が数件起きている。
その事件に共通する点は二つ。
一つ目は、被害者が全員アイドルだということ。
そして、二つ目は…
「笑えなくなる?」
『はい。被害にあった人たちには目立った外傷はありません。しかし、全員笑えなくなるのです』
「それって、怪物に襲われたショックからとかではなく?」
『我々も、最初はその可能性を考えていたのですが…』
事件について調べていくうちに、被害者たちが笑えなくなってしまったのはヌッラの能力によってということが判明した。
つまり、ヌッラの能力は…
「笑顔を、奪う…」
『はい。今回のヌッラの能力は、笑顔を奪う力だと思われます』
どんな人にとっても笑顔を奪われるというのは大きな被害であるが、ましてや相手がアイドル。笑顔というのは、パフォーマンスの上で特に重要なものだ。そんな笑顔を奪われたアイドルたちは、活動を休止せざるを得なくなってしまったそうだ。
「なるほど。ヌッラの目的は、アイドルから笑顔を奪いステージに立てなくする、ということでしょうね」
『恐らく』
そんな中、最近人気急上昇中のアイドルのイベントが、このあと竹下通りで行われる。そのイベントにヌッラが現れる可能性は十分にあるということで、秘密裏にプロテクションが警備をすることになった。
「それなら、俺も警備に参加します」
万が一ヌッラが現れた場合、止められるのは仮面ライダームジカの力を持つ俺しかいない。
『ありがとうございます。現場では、警察官である九重さんが中心となって警備にあたっていますので…』
─
──
───
ということで、俺は竹下通りまでやって来た。
プロテクションの仮面ライダームジカとしては、実質的にこれが初仕事とということになる。
気合い入れていかないとな…!
「わぁ!美味しそー!!」
すると、どこかで聞き覚えのある声が耳に届いた。
「ん?」
声がした方向にいたのは、金髪のストレートロングヘアーに美しい翠眼を持った美少女。
あれって、確か同じクラスの…
クラスメイトの平安名すみれさんが、クレープ片手に立っていた。そんな彼女の鼻には、生クリームがちょこんと付いている。
学校帰りにクレープを食べに来たのか?
それにしても、クラスでの様子だとクールな人なのかと思っていたが、こんな人目に付く場所であんなに大きな独り言を言うなんて、案外お茶目な人なんだなぁ…しかも、鼻にクリームが付いていることにも気づかず。
平安名さんとは、まだ一度も話したことがない。そんなクラスメイトの可愛らしい一面を見て、内心ほっこりとしてしまった。
「……場所が悪いみたいね…」
すると、平安名さんは突然クレープを迎え入れようとしていた口を閉じた。
え、クレープを食べる場所にまでこだわりを持つタイプ!?
確かに人通りが多くて集中できるような場所ではないけど、そこまで気にするとは…余程クレープが好きなのか。
「サニパ…?」
俺がつい平安名さん考察に没頭していると、彼女は近くにいる二人組の女性が持つスマホや画面を見て、また何かを呟いていた。
サニパ?
今度はなんだ…!?彼女があんなにも愛してやまないクレープよりも、更に彼女の興味を引いたサニパとは何なんだ!?
平安名すみれ…気になる点が多すぎる。普段はクールなように見えて、クレープが大好きで、鼻にクリームが付いたことにも気づかないほど好きな物に夢中になってしまうお茶目な一面もある。
「きゃっ!?」
すると、ぼーっとしていたのか通行人の存在に気づかなかった平安名さんは、ぶつかってしまいバランスを崩す。
「おっと…!」
俺は慌てて彼女に駆け寄り、手を掴んで転びそうなところを何とか防いだ。
「大丈夫?」
「えっ、えぇ…」
少し驚いた表情で俺を見つめる平安名さんに、俺の中で何かが引っかかる。
あれ…初めてちゃんと顔を見たけど、平安名さんどこかで見たことあるような…?
"平安名すみれ"って名前にも、なんか聞き覚えがあるような気がしてきた…
平安名さんに対して既視感を覚えた俺だったが、それ以上のことは何も思いつかない。
んー…まぁ、気のせいかな。
「あなた、同じクラスの…」
「うん、音居奏叶」
「平安名すみれよ、ありがとう」
改めてお互いの自己紹介を済ませると、彼女は美しい笑みを浮かべて礼を言った。
「好きな物を前に夢中になるのもわかるけど、人通りも多いし周りには気をつけてね?」
「好きな物?」
「うん、クレープ」
平安名さんは何故かきょとんとしているので、俺は彼女が持っているクレープを指さして言った。
「え?あ、違うわよ。私は別にクレープが特別好きってわけじゃ…」
「ん?じゃあ、なんでこんな人目がある場所で声に出してまで…」
俺がついそんな疑問を口にすると、彼女は顔を赤くして俺の言葉をかき消すように大声で言う。
「とにかくっ、違うったら違うわよ!」
「ご、ごめん…」
顔をずいっと近づける彼女の気迫に、俺は反射的に謝ってしまう。
きっと彼女は、普段クールを装っているのに甘いクレープが好きだなんてイメージに反すると、恥ずかしがって隠そうとしているのだろう。
「べっ、別にクレープ好きなことぐらい隠さなくてもいいと思うけど…?」
「え?あぁ…まあそれでいいわ。別にクレープ好きは好きだし…」
平安名さんは諦めたようにため息を吐きそう言った。
まるで妥協して認めたかのような発言…この照れ屋さんめ。
あ、てかもうすぐイベント始まるじゃん。
「ごめん、平安名さん。俺そろそろ行かないと。また明日学校で!」
そろそろ行かないといけない時間だと気づいた俺は、平安名さんに別れを告げてイベント会場へと向かうのであった。
「九重さん、お待たせしました」
イベント会場─と言っても、竹下通りの一角に仮設ステージを作っている場所だが─に着いた俺は、既に到着していた九重さんに声をかけた。
「いや、 まだイベント開始まで時間がある。問題ない」
そして、俺たちはイベントが始まってからの動きについて話し合う。
「ここの周りは、俺たち警察官が固める。音居くんには、あそこの路地から様子を見ていてほしい」
そう言われ、俺は九重さんが指差す路地の方を見る。そこは人通りもなく、目立たない路地だった。
「あそこからですか?」
俺が聞くと、九重さんは周りに聞こえないよう声を潜めて説明する。
「あぁ。万が一の場合を除き、君が仮面ライダーだということは隠さなければいけない。それに、世間から見れば君はただの高校生。そんな君が警備をするのは怪しまれるからな」
ということで、言われた通り人目のない路地で待機しておくことになった。
「そろそろイベントが始まるな」
路地に身を潜めてから数分、もう間もなくイベントが始まるという時間になり、俺は警戒を更に強める。
ここなら人も来ないだろうし、いつヌッラが現れてもいいように変身しておくか…
《ステレオドライバー》
俺は腰にステレオドライバーを装着する。そして、変身ボタンを押してディスクトレイを展開し、ブルースカイエネルジアディスクを装填する。
「変身!」
掛け声と共に再び変身ボタンを押したことによりディスクトレイが格納され、ブルースカイエネルジアディスクの情報がステレオドライバーに読み込まれる。
『翼を広げ歌うんだ
大好きを胸に ほら あの雲の向こうまで
俺だけの"
未来はきっとブルースカイ』
俺は仮面ライダームジカ ブルースカイに変身した。
そして、いよいよイベントが始まる。
今回のイベントは、人気急上昇中のアイドルグループ─"キュリティー"のメンバーの一人、
そして、既に二曲目の終盤に差し掛かっているが、今のところ特に変わった様子はない。もしかすると、このまま何事もなく終わってくれるのかもしれない。
いや、というか…イベント中ずっと、路地の中から変身状態で様子を見てる俺の方が不審者っぽいような気が…
ステージに立つ高梨さんが二曲目を歌い終え、イベントの終わりを告げる挨拶をしている所を眺めながら、今の自分の状況に内心苦笑していた時だった。
「っ!?」
明らかに人間ではない異形な影が、ステージ上にいる高梨さんに飛びかかり、右手から何かを放とうとエネルギーを溜めている姿が目に入った。
「させるかっ!」
俺は間一髪でその異形な影─ヌッラよりも先に高梨さんの前に滑り込み、取り出したエフェクティングソードでヌッラの攻撃を防いだ。
「っ!?いいところだったのに…邪魔しないで!!」
俺に攻撃が防がれたことに気づいたヌッラは、そう怒鳴り俺から少し距離を取った。
今の声、口調…ヌッラになってる人は女性か。
声に関しては少しくぐもっていてハッキリとは聞こえないが、それでも女性の声だということはわかった。
そして、俺は改めてヌッラに視線を向け、その姿を確認する。
この前戦ったジェッターレ・ヌッラと同じく、全身の色は禍々しい赤茶色をしているが、その他の点はまた違う特徴が見られる。
全身にギザギザとした装甲を継ぎ接ぎにした姿で、痩せ細ったように感じる体型。右腕だけが肥大化しており、その先の手のひらにはまるで口のような穴が空いている。
胸の中心には、以前のヌッラと同じくレタルジアディスクが埋め込まれている。
何よりも特徴的なのが頭部で、白い不気味な仮面で覆われている。
その仮面の口角は不自然に釣り上げられ、その口の隅をボルトのような物で固定し無理やり笑顔を作ったような表情。さらに仮面の右目部分は砕けており、中から赤茶色の本来の顔が露出している。
「っ…」
ジェッターレ・ヌッラとはまた別系統の不気味なその姿に、周囲にいた人たちは恐怖を抱き逃げ惑っている。そして、襲われかけた高梨さんは、その場にへたり込んだまま動けていない。
「すまない。彼女と観客の避難誘導は任せてくれ」
「お願いします!」
九重さんに高梨さんや観客の人たちの避難は任せて、俺はヌッラと対峙する。すると、ヌッラは悔しげに震えていた。
「良いところだったのに…!」
「アンタ、どうしてアイドルの人たちから笑顔を奪うんだ?」
「決まってるじゃない。笑顔を奪って、二度とステージに立てないようにしてやるのよ!」
ヌッラの目的は粗方予想通りってとこか…このヌッラは、アイドルに何らかの恨みでもあるのか。いや、今はそれよりも被害者たちを元に戻すのが先決だ。
「その力は危険だ。どんどん力に飲み込まれていく。だから、被害者たちを元に戻してその力を手放すんだ!」
「なんなのよあなた!何も知らないくせに、邪魔しないで!!」
「確かに、アンタがどんな人でどうしてこんなことをしてるのかは知らない。でも、アンタが人を襲うってんなら俺は見過ごせない!!」
「っ…はぁあああっ!!」
すると、ヌッラは叫び声をあげながら、剣を取り出して俺の方に向かってくる。
説得は無理か…
俺はエフェクティングソードでヌッラの斬撃を防ぐ。お互いの刃が交わりしばらく拮抗し合うが、俺はヌッラの力に押し負けてしまう。
「やぁっ!」
体制を崩した俺に、ヌッラは追撃してくる。その拳を左頬に受けてしまった俺は、そのまま後ろに吹き飛ばされてしまった。
「くっ…だったら、これで!」
俺はエフェクティングソードの端子をステレオドライバーに差し込み、"身体強化ボタン"を押す。すると、接続されたステレオドライバーからメロディが流れ出し、その影響で俺の中にエネルギーが溜まる。
そして今度は"斬撃強化ボタン"を二回押す。
『スラッシュ・フォルテッシモ』
「はぁっ!!」
強化されたエフェクティングソードでヌッラに斬撃を放ち、それを受けたヌッラは後ろによろける。
「よし、次で決めっ…ぐはっ!?」
追撃しようとした俺だったが、背後から受けた攻撃に妨害されてしまう。
「またコイツらか…!」
俺が攻撃を受けた方向に振り返ると、そこにいたのは数体の"ニエンテ・ヌッラ"。奴らは人間が変貌した怪物ではなく、ピリオドの命令に従うだけの空っぽの鎧、所謂エネルギー体である。
「私はあなたに構ってる暇なんてないの。私の目的は…」
そして、ヌッラはこの場から立ち去ろうと動き出す。
「待て!っ、邪魔だ!はぁっ!」
それを追いかけようとする俺だが、ニエンテ・ヌッラの一団に邪魔されてしまい先に進めず、あのヌッラの逃走を許してしまった。
「くそ…とりあえず今はコイツらを!」
俺はエフェクティングソードの"効果付与必殺技ボタン"を押し、スキャナー部分をステレオドライバーに翳す。
『ブルースカイ』
すると、ブルースカイエネルジアディスクの能力が読み込まれ、再びメロディが流れ出す。そして辺りは一面青空に包まれ、ニエンテたちの行動が鈍くなる。
その隙に、俺は周囲の大気を一時的に超圧縮し、それにより生まれた強力なエネルギーを纏わせたエフェクティングソードを構える。
『ブルースカイ クリティカルスラッシュ』
そして、ブルースカイの浄化効果で動きが鈍くなったニエンテ・ヌッラたちに、エネルギーを放出した超強力な斬撃を放った。
「はぁぁぁぁっ!!」
─ブルースカイ クリティカルスラッシュ《
その斬撃により、全てのニエンテ・ヌッラを一気に倒すことができた。
「ふぅ…」
ひとまず敵がいなくなったことを確認した俺は、一つ息を吐いて変身を解除した。
「結局、ヌッラには逃げられてしまったな…」
恐らく、あのヌッラはまたアイドルを狙うだろう。
「次こそは、絶対に止めないと…!!」
─翌日─
「おはよ」
教室にて朝の支度をしていると、俺に挨拶をくれた声がしたので顔を上げる。そこにいたのは、昨日意外な一面を偶然知ったクラスメイト、平安名すみれさん。
「あ、平安名さん。おはよう、昨日ぶりだね」
すると、俺の顔を見た平安名さんは何故か顔を顰める。
え、やべっ…俺なんかしちゃったっけ。
「ど、どうしたの?」
「あなた、その左頬…」
「え?あぁ、これ?」
彼女の視線が向いた俺の左頬には、昨日のヌッラに殴られた時にできた傷の保護のためガーゼが貼ってある。
「やっぱり、あの後怪物騒動に巻き込まれたんじゃないの!?」
平安名さんは俺の両肩をガシッと掴み、慌てた様子で聞いてくる。
「怪物騒動…?」
「SNSで見たのよ。昨日あなたと別れたあと、竹下通りで怪物が暴れてたって」
「っ…」
SNSにそんな投稿があったのか…やっぱり、あれだけ人目に付くところでヌッラが現れたら、プロテクションと警察の情報統制にも限界があるよな。
「へっ、へぇ…そんな、怪物が暴れてただなんて信じられないな…」
「私もよ。だから昨日竹下通りにいたあなたに聞きに来たら、怪我してるから…」
「ちっ、違うよ。えーっと…これはその…昨日あの後、階段で転んじゃって…」
その怪物と戦ってできた傷、だなんて言えるわけもなく、咄嗟に誤魔化す。
「階段で?」
「うん、階段で。だから大したことないよ。心配ありがとう」
「そう。左頬だけ怪我するなんて、よっぽど変な転び方したのね…」
平安名さんは驚きと呆れ混じりにため息を吐く。
うっ…言われてみると確かに、階段で転んで左頬だけ怪我するなんて変すぎるな…
「全く、ちゃんと周りには気をつけて歩きなさいよ」
平安名さんはそう言って、自分の席に戻っていった。
「うん、ありがと」
そんな彼女と入れ替わるように、教室に入ってきた澁谷さんと唐さんが俺の方にやってくる。
「あ、奏叶くん。おはよう!」
「ゼェ…ハァ…ガッ、カナトさん…おはよぅ、ゴザイマス…」
「おはよ、二人とも。それにしても、唐さんどうしたの?」
「実は…」
澁谷さんの話によると、昨日の放課後、早速千砂都とともにダンスの練習をすることになったのだが、唐さんは絶望的に体力がなかった。ということで、まずはストレッチと体力作りから重点的にしていこうと、朝と放課後に練習することになったようだ。
今日も朝からストレッチやランニングなどのトレーニングをして、唐さんは息も絶え絶えになってしまったらしい。
「そ、ゼェゼェ…そ、そういえばカナトさん…ハァハァ…」
「どうしたの?」
「ま、前から…ハァ…ゼェ…」
唐さんが俺に何か言おうとするのだが、息切れのためなかなか言葉が続かない。
「お、落ち着いて。ゆっくりで大丈夫だから」
そう言って、俺はまだ未開封状態のペットボトルを鞄から取り出して、唐さんに差し出す。
「お水、まだ開けてないから良かったら飲んで?」
「ア、アリガトウゴザイマス…」
ペットボトルを受け取った唐さんは、勢い良くごくごくと水を飲んでいく。
「ふゅぅ…生き返りマシタ!!」
「それはよかった」
「カナトさん、アリガトウございました!」
パァっと笑った唐さんは、半分ほど減ったペットボトルを返そうと俺に差し出してくる。
「へっ?」
わかっている。
彼女はただただ無邪気に、残りの水を持ち主に返そうとしているだけだ。ただそれだけのことだって、わかっている。けどッ!!!
「あー、いや…えっと、その…あはは…」
頭では、彼女が純粋な気持ちで返してきているのはわかっている。だが、一度想像してしまうと、急激に緊張と恥ずかしさが止まらなくなり、恐らく俺の顔は真っ赤になってしまっていることだろう。
「全部あげるよ。きっとほら、また喉渇くだろうし」
なんとか冷静さを取り戻した俺は、上擦った声でそう言った。そんな俺を唐さんは不思議そうにしつつも、再び礼を言って素直に水を受け取った。
「ぷぷっ…」
その様子を見ていた澁谷さんが堪えきれず、思わずといったように笑う声が聞こえた。
「ちょっ、澁谷さん?何笑ってるの…?」
「ううん…ただ顔真っ赤にしちゃってる奏叶くん、可愛いなぁって思っちゃっただけだよ」
「ちょっ、そんなんじゃないし…」
俺が力なく言い返すと、澁谷さんは再びクスクスと笑う。
あー、もう…やらかした。恥ずかし…
そんな俺たちのやり取りを、事の発端である唐さんは首を傾げながら不思議そうに見ている。
「どうかしたのデスカ?」
「ううん、なんでもないなんでもない」
「澁谷さーん!先生がちょっと来てほしいって」
すると、教室に入ってきたクラスメイトの一人が澁谷さんに声をかけた。
「え?あ、ごめん。ちょっと行ってくるね」
ということで、澁谷さんは教室から出ていった。
あ、そういえば…
「唐さん、さっきの前から言おうとしてたことって?」
「ハッ!ソウデシタ!」
何か話したいことがあったことを思い出し、唐さんは俺をじっと見つめる。
「カナトさん、ククのことは"クゥクゥ"と呼んでクダサイ!」
「え?」
「カナトさんはスクールアイドルを応援してクレマス。いっぱいお話聞いてくれる友達デス!なのに唐さんって呼ばれるのは、少し寂しいデス…」
最後の言葉は、俯き気味にしょぼんとした様子で締めくくった。
そうか、彼女はそんなことを考えてくれていたんだな…
彼女のそんな純粋無垢な優しさを感じて、なんだか気持ちが温かくなった。
そして、俺は満面の笑みで答えるのであった。
「うん。ありがとう、"クゥクゥ"」
──次回、『〜奏でるムジカは青空のソナタへ〜』
「ヌッラである可能性が高い人物が判明した」
アイドルから笑顔を奪うヌッラ。その正体が明かされる時、奏叶の中に芽生えた葛藤と怒りは、更なる決意の種になる。
「っ!?幹部…」
そんな奏叶の前に、ピリオドの"幹部"が立ちはだかる。
「大丈夫。きっと、かのんちゃんなら大丈夫だよ!」
『#7 エールの道しるべ』
─────
【オリジナル仮面ライダー設定】
《仮面ライダームジカ ブルースカイ》
仮面ライダームジカの基本形態。
"ステレオドライバー"に、青空の力を秘めた"ブルースカイエネルジアディスク"を装填して変身する。
バランス性能に特化した姿であり、肉弾戦から武器を用いた戦闘まで、あらゆる戦闘に対応できる高い機動力を持っている。
また、変身時や必殺技発動時には周囲一帯を澄み渡る青空に変化させる。この青空には、負の感情に飲み込まれたヌッラの心を浄化し、一時的に和らげる効果がある。
─スペック─
身長:198cm
体重:95kg
パンチ力:5.1t
キック力:6.9t
ジャンプ力:20m(ひと跳び)
走力:5.6秒(100m)
─モチーフ─
楽器:マイク
自然:青空
生物:カモメ
─デザイン─
雲を思わせるパールホワイトのスーツに、天色の光沢を放つアーマーを纏い、青空を舞うカモメを思わせる軽快かつ流線型のシルエットを持つ。
頭部にはマイクメッシュの複眼やカモメの嘴を模したクラッシャー、翼をイメージしたウイングパーツを備え、額には雲をあしらったト音記号のエンブレムが輝いている。
胸部には青く発光する「ムジカ・コア」を搭載し、前腕のスピーカーや音楽の波形を描いた脚部など、音楽を思わせる意匠を全身に配置している。
─必殺技─
【ムジカ・ブルースカイ フィーネ《
ムジカを中心に澄み渡る青空が広がる空間を作り出し、負の感情や力に飲み込まれたヌッラを浄化することができる。必殺技待機状態で右足の周囲の空気を圧縮させ、上空に飛び上がり、圧縮させたエネルギー解き放ちながら強力なキックを放つ。
【ブルースカイ クリティカルスラッシュ《
エフェクティングソードの効果付与必殺技ボタンを押すことにより発動する。周囲の大気を一時的に超圧縮し、生まれたエネルギーを一気に放出することで放たれる強力な斬撃。
発動時、ブルースカイの効果で周りを青空で包み込み、敵を浄化し行動を鈍らせる。
─────
『#6 笑顔を求めて』
最後まで読んでくださり、誠にありがとうございます!!
今回も準備でき次第、活動報告の方で#6について少し話そうと思っています。そちらもよかったら遊びに来てください!
お気に入り登録や感想をくださった皆様、本当にありがとうございます!
これからも皆様に楽しんでいただける作品づくりを目指して頑張りますので、もしよろしければ、引き続きお気に入り登録や感想、評価等よろしくお願いします!
『#7 エールの道しるべ』は、7月4日20時に投稿予定です。
次回もお楽しみに!!