最終巻No.431の続きを、命削って全力で書いたらこうなった(全年齢版)   作:練乳グラブジャムン

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No.446 星空のひとつ

※SIDE 麗日

 

 

綺麗な草原だった。

抜けるような青空に、鳥が飛んでいる。

 

ヒミコちゃんはいない。

代わりに、離れたところで、可愛らしい子犬が、元気に走り回っている。

見ているだけで優しい気持ちになる。

 

 

すぐ傍に、お茶をするような机と椅子があった。

 

近付いてみると、美味しそうお菓子とティーセット、そして一冊の本が置かれていた。

 

本をめくる。

写真だ、私の顔が写っていた。

楽しそうに笑っている。

 

 

パラパラとページをめくる。

全部同じ顔だが、ページが進むほどに、腐食するように黒ずんでいく。

写真の中で、私は黒く染まって、笑いながら泣いている。

 

……気持ち悪い。

 

本を閉じる。

あたりはすっかり日が落ちて、星も無い漆黒の夜空に置き換わっていた。

そして、鳥も子犬もいなかった。

 

 

子犬。子犬はどこだろう。とても大切な子犬。

いた。動きを止めて蹲っている。

子犬は大きな犬になっていた。でも同じ犬だと分かる。

慌てて駆け寄る。

 

大丈夫かな。

 

手を伸ばした瞬間、犬は形を変えて、真っ黒い巨大な怖いものに変質した。

ずっと逃げている、あいつだ。

全身に鳥肌が立ち、悲鳴を上げて後ずさる。

 

 

なんでこんなところにいるの!?

 

逃げる間もなく捕まり、私の身体が乱暴に持ち上げられる。

どす黒い腕に、胸を貫かれた。

氷のナイフを突き立てられたような冷たい感覚に、眼を見開いて苦悶の声が漏れた。

 

胸に突き立てられた黒い腕が引き抜かれ、私の身体が、無用な包装紙のように乱暴に放り投げられる。

 

体を起こして視線を向けると、怖いものが、何かを持っている。

私の胸から引き抜かれたもの。

キラキラした光の粒。

一つだけじゃない、いくつもある。

 

 

やだ、やめて!

 

怖いものが持っている、夜空の星のような、小さな光。

私のだ。

私の、大切なもの。

 

おねがい、やめて!

 

怖いものが、星のように輝くそれを、ニタニタ嘲笑って眺めている。

上に下に乱暴に振り回し、角度を変えて観察している。

 

 

やだ、やだ、おねがい、やめて、かえして!

 

慌てて手を伸ばす。

下卑た嘲笑があたりに響き渡った。

怖いものが、踊るように喜び、手の届かない位置に持って行ってしまう。

 

かえして、かえして!

 

子供のように泣き喚いた。

縋るようにしがみつき、手をのばし、でも返してくれない。

 

ぶんぶんと振り回し、ぽんぽんと放っては掴み、どこまでも乱暴に扱われる。

 

 

やめて、やめて、やめて!

 

このままじゃ壊される。

とっても大事なものなのに。

 

かえして、おねがい、かえして!

 

ぼろぼろ泣きながら、必死に懇願する。

私の宝物。何より大切なもの。どうしても失いたくないもの。

 

怖いものが、にっこりと微笑んだ。

そっと私の前に、その手の星を差し出してきた。

 

慌てて手を伸ばす。

 

 

手が届く直前で、ぐしゃりと乱暴に潰された。

 

 

 

「――――ぁっっっ!」

 

目が覚めた。

見慣れた自室が視界に入る。

 

「ぁ……ぁ…………ぅぁ………………」

 

……気持ち悪い。すっごい気持ち悪い。

ベッドの上で吐きそうになるほどに。

心臓が全力疾走したように、変な動きをしている。

 

 

「はっ……はぁ……はぁ……ぁ……」

 

なにこれ……また変な夢でも見た?

夢……ああ、いいや、思い出さなくて。

疲れがたまっているんだろうか。

 

髪も額も汗で濡れていた。

パジャマもベタっと湿っている。

最悪の寝起きだった。

 

 

洗面所に向かい、乱暴に水を飲む。

吐きそうなのは収まったが、気持ちの悪さは残っている。

 

鏡に写った自分。見ていられないほど酷い顔をしている。

立っていられず、水の入ったコップを持ったまま、ぺたん、と床に座り込む。

 

「はぁ……は……ふぅ……」

水を飲みつつ、ゆっくり呼吸を整えていく。

気持ち悪いのが、だんだん落ち着いていった。

 

 

時計を見やる。

夜中の三時を過ぎたところだった。

早起きにしたって限度がある。

 

……もう一度寝よう。

疲れているなら、なおさら寝た方がいい。

起きたらシャワー浴びればいいや。

 

コップを戻し、ベッドに戻り、布団をかぶる。

 

 

水を飲んで落ち着いたせいだろうか、すぐに睡魔がやってきた。

微睡んで、意識が落ちていく。

 

……どうせなら、楽しい夢を見たい。

デク君と一緒に……お散歩するような……

 

……きっと……楽しい……

すごく……すご…く…………

 

 

―――― to be continued

 

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