最終巻No.431の続きを、命削って全力で書いたらこうなった(全年齢版)   作:練乳グラブジャムン

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No.454 何もしなくて済むのが最善

※SIDE 飯田

 

 

【元A組グループ】

 

デク

『手繋いだよ』

 

 

短いコメントと共に添えられた写真。

傷だらけの手と、指先に肉球の付いた手。

それは間違いなく、重ねられた緑谷君と麗日君の手であった。

 

「「「「「「ぃぃぃよっっっっっっしゃあああああああ!!!」」」」」」

 

A組のみんなから歓声が上がった。

鳴りやまない『手を繋げコール』に対し、ようやく応答があったのだ。

 

「通ったぜええええ! 蛙吹のジョーカー!」

「これはデカい! この一手が通ったのはマジでデカいぞ!」

「神の一手じゃねえ!? コレ出来ただけでも、今回の作戦大成功だろ!」

「梅雨ちゃん最ッッッ高! 面白くなってきたよ!」

 

 

胴上げでも始めかねない勢いだ。

蛙吹君も照れくさそうにしている。

だが、確かにそれくらい効果的な手だった。

 

「いやしかし、やっと手ェ繋いだよあの二人!」

「手強過ぎるし長過ぎるって! どんだけ奥手だよ!?」

 

普通のカップルなら、わざわざこんなアシストをする必要は無い。

だがあの二人は別だ。

高校時代からずっと片思いを続けている超奥手。

緑谷君にいたっては、自分の気持ちに気付いたのすら、つい最近だ。

 

お互いにこれまでフリーだったのが奇跡に近い。

あの二人のペースに任せていたら、手を繋ぐだけで何年かかるか分かったものじゃない。

峰田君の「子供が生まれるより、麗日が閉経する方が早いんじゃねえか」という発言には、誰も否定することが出来なかったほどだ。

……さすがに発言を咎めはしたが。

 

 

「おいオメーら、LINK気をつけろよ!? 絶対に茶化すようなこと書くんじゃねえぞ、あのクソナード、何かあったら手なんざすぐ離すぞ!?」

「分かってる! 蛙吹から全員で繋いだチャンスだ、絶対にモノにするぞ!」

「過度なコメントいらねえぞ、二、三件だ!」

「分かってる、任せといて!」

「コメントするメンバーと、内容のすり合わせ! シンプルに済ませるよ!」

 

みんなの意思は一つだった。

とにかく二人の仲を進展させたい。

そのために、みんな集まっているのだ。

 

 

【元A組グループ】

 

梅雨ちゃん

『それでいいのよ。ありがとうね』

テンタコル

『観光地にいれば当然だろう』

インビジブルガール

『これでナンパの心配も減って安心だね』

飯田天哉

『トラブルが無いことを祈っている。僕も仕事が片付いたら向かうよ』

 

 

「しっかし……緑谷出久、とんでもねえ難敵だぜ」

「初回から連続でツーアウトしたからな。逆に難しいだろ」

「俺達はLINKでしか知らないけど、もしかしたら現地では既にスリーアウトしてたかもしれないぞ」

「相手の気持ちどころか、自分の気持ちすら気付けねえクソナードだからな……おかげで大学行ってる時はヤバかった」

「あ、やっぱ緑谷、大学時代に色々あったんだ?」

「逆だ……色々が無いように気を揉んだ……」

皆が喜びに沸く中、一人だけ疲れたような表情を見せる爆豪君。

何か思う所があるのだろうか。

 

 

「まだデートは始まったばかりですわ。口田さん?」

「任せて。二人はいまここ」

用意した巨大地図の上で、マグネットを動かす。駅から地下道をとおり線路を越え、東へ向かうようだ。

 

「周囲の状況は?」

「大丈夫、変な人はいないみたい。ヒーローも警察官も、あちこちにいるよ。何か起こる兆候も無いし、トラブルの可能性は無いと思う」

「ヒーロー協会が総力を上げて全力で警備してくれてるし大丈夫だと思うけど、やっぱ現状が分かると助かるな」

 

「ここからあいつら、どう移動するかな」

「さすがに行き先の指示は出来ねえからな、不自然だし」

「ちょっと早いけど、お昼食べるとか?」

「セオリー通りの観光なら、こっちに向かいそうだけど?」

地図を前に、皆で意見を出し合う。

 

 

「宿ってどこだ?」

「今日二人が泊まる宿はここ」

上鳴君の確認に、耳郎君が場所を指した。

 

「最終的に宿を目指しながら移動するよな」

「その可能性は高い。ただ、宿は線路の西側だ。最後はタクシー等の移動手段を使う可能性も考慮しておこう」

「まあ口田の追跡があるし、とりあえず移動先にあわせてサポートしていこうぜ」

街中には、いくつかのデートスポットがある。

ここに来たらこうするといい、とか、食事で迷ったらこう答えよう、といった作戦はいくつか立ててある。

 

 

しかし同時に、あまり干渉したくないという思いもあった。

あまり指示ばかりしても邪魔になってしまう。

これはあくまでデート。

二人とも、携帯越しの僕らではなく、隣にいる想い人に意識を向けてもらうのが重要だ。

こちらが何も促すことなく、二人が仲良く、いい雰囲気になってくれれば、それに越したことはない。

 

極端な事を言えば、僕らの出る幕など無い方が良い。

……というか、普通はデートに他人の出る幕など無いのだが……まあ二人はこれがデートだと気付いていないわけで。

 

既に蛙吹君の、神の如き一手が通っている。

このままいい雰囲気になってほしい。

可能であれば何もしたくない。少し寂しいが、それが最善だ。

 

さあ、二人は、ここからどう動く?

僕たちは、これから何をするのが最善だろう?

 

 

―――― to be continued

 

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