最終巻No.431の続きを、命削って全力で書いたらこうなった(全年齢版)   作:練乳グラブジャムン

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No.458 周りをみんな笑顔にしてしまう

※SIDE 緑谷

 

 

写真撮影に悪戦苦闘していると、地元の方だろうか、一人の男性に声を掛けられた。

傍らには小さな子供と、母親と思われる女性がいる。見る限りご家族のようだ。

子供は歩き始めたばかりだろうか、とても小さい年齢にみえる。

 

「あ……すみません。お願い出来ますか?」

「はい、もちろん」

 

 

携帯を渡し、男性が少し離れ、写真を撮ってもらう。

お礼を言って携帯を受け取った。

足湯の全景と、背後の街並み、僕ら二人もよく映っている。

いい写真だった。

「ありがとうございます、助かりました」

「いえいえ。お安い御用です」

 

 

「こえなーい?」

子供が、たどたどしい言葉遣いで、足湯を指差している。

「これ? これはねえ、足湯だよ~」

「あちゆ」

「そう。ひーちゃんはまだ小さいから入れないよ~」

女性が、とても幸せそうに教えてあげている。

 

「はいゆ」

「入らないよ。ほら、帰ってゼリー食べるんだろ? さっき買ったゼリー」

「ぜいーたえゆ!」

男性が、コンビニのものだろうか、小さなビニール袋を揺すると、子供が袋を触ろうと手を伸ばした。

「うん、そうだね。じゃあ帰ろうね~」

 

よちよちと歩く子供と手を繋ぎながら、ご夫婦は去っていった。

その姿が見えなくなるまで、ずっと目で追っていた。

 

 

「やば……麗日さん、あの子めっちゃ可愛くなかった?」

「ね! あの子超可愛かったぁ!」

麗日さんと二人、隣同士で顔を見合わせる。

本当に幸せそうなご家族だった。

 

「頑張って歩いてたけど、歩き始めかなあ」

「二歳くらいじゃない? 一生懸命お喋りして、もう超かわいかったぁ!」

両手を胸の前でギュッと握り、身悶えするほど感動している。僕も全く同じ気持ちだった。

 

 

「麗日さん、子供好きなの?」

「うん。保育園とかにも行かせてもらうけど、すっごい楽しいし。デク君は?」

「僕も好きだな。洸汰君とか壊理ちゃんの小さいころとか、一緒に遊んでると、もう楽しくって。今は二人とも大きくなっちゃったし、あんまり小さい子供と遊ぶ機会無いけど」

「あ、じゃあ、個性カウンセリングの仕事、今度一緒にしてみる? きっと楽しいよ」

「本当に? すっごい行きたい。ああでも、根津校長とオールマイトに許可とらないと」

「ダメとは言わなそうだけど。またチームアップの申請出しておくね」

「ありがとう、是非お願いするよ」

 

 

「子供ってさあ、凄いんだよねえ。周りの人が、みんな笑顔になっちゃうんだよ」

「ああ、それすごい思った。なんか、さっきのご夫婦、すごくいい笑顔してたよね」

「そうそう! なんかもう、私達、幸せです! ってオーラ凄かった」

「だよねえ。子供いたら幸せだろうなあ」

「ねー。あんな風に親子で手を繋いで歩くの、すっごい幸せそう」

 

 

「麗日さん、すごくいいお母さんになりそうだよね。滅茶苦茶優しそうな気がするんだけど」

「そうかなあ? デク君こそ、いいパパになりそうじゃない? なんか毎日、すっごい遊んであげてそうやん」

「あーでも確かに、子供いたら一緒に遊びたいなあ。なんかもう、何してるの見ても楽しそうだし」

 

「デク君は子供いたら、どこ行きたい?」

「ええ、どこだろう。どこ行っても楽しそうだけど。ああでも、お弁当作ってピクニックとか楽しそう」

「ああ~、分かる! それすっごいやってみたい。ご飯食べて、その辺で遊んで、お昼寝したり」

「ほんと、最高だろうなあ」

 

 

「デク君は、子供何人くらいほしいの?」

「どうだろう? 僕一人っ子だったし、一人は欲しいけど。兄弟がいたら楽しそうだし、二人くらいは欲しいかなあ。麗日さんは?」

「私も一人っ子だったからね。親も共働きで、一人で家にいることが多かったからなあ。兄弟とか姉妹がいたらどんなかなあ、って思ったことは、何度も……」

 

 

急に言い淀んだ麗日さんの顔が、みるみる真っ赤に染まっていく。

その瞳を見つめながら、ふと、我に返る。

 

……何でこんな話してるんだ?

結婚どころか、まだ交際もしていない男女が、子供が何人欲しいかって……

 

「そ、そろそろ上がろうか!?」

「そそそ、そうだね! 身体温まったよね!」

 

気恥ずかしくなって、お互いに反対側を向いて、足をお湯からあげる。

背中合わせになってしまい、それがまた何か恥ずかしく、ものすごく身体が温まっている事を自覚する。

本当に汗をかきそうだ。

 

 

恥ずかしさを振り払うように、カバンからタオルを取り出す。

 

手元に握ったタオルを見て、ふと考えた。

……これ、どっちが先に使えばいいんだ?

 

僕が使って麗日さんに渡す?

でもそれって麗日さんが使う時に嫌じゃないだろうか。

じゃあ麗日さんが使ってから僕が使う?

でもそうなると、麗日さんの足を拭いた布を使うわけで、なんかそれは、いいのか?

なんか変態っぽくないか?

……正解が分からない。

 

「麗日さん、先にタオル使う?」

「あ、デク君先でいいよ。持ってきたのデク君だし」

即決だった。特に気にしていないみたいだ。

……まあそれならいいか。

 

 

タオルで足を拭いて、麗日さんにタオルを渡す。

なんとなく見てはいけない気がして、背を向けたまま靴下を履き、靴を履く。

足先からポカポカした感覚が残っていて、だいぶ体温が上がった気がする。

 

「はい」

タオルが返される。

カバンに入れようかとも思ったけど、また使うかもしれない。

少し考えた後、カバンに結んで、乾かしていくことにした。

 

温泉の香りに混じって、ほんのりと、いい匂いがした気がした。

 

 

―――― to be continued

 

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