最終巻No.431の続きを、命削って全力で書いたらこうなった(全年齢版)   作:練乳グラブジャムン

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No.459 最高の調味料は

※SIDE 緑谷

 

 

「こ……これからどうしよっか。時間的に、そろそろお昼にしたほうがいいかな」

先ほどまでの恥ずかしさを振り払うように、次の予定を考える。

「麗日さん、何か食べたいものある?」

「ん~っと……ど、どうしようかな……」

麗日さんも恥ずかしいのか、まだ顔が赤い。

とりあえず携帯で探すことにする。

 

地図アプリで探すと、色々な店がヒットした。

定食屋、ラーメン屋、カレー屋、カフェ、ファミレス、洋食屋、鰻屋、焼肉屋、蕎麦屋、台湾料理屋……何でもあるな。

ステーキハウスとかインド料理屋まであるぞ。

居酒屋はまだこの時間では開いてないから無理だとしても、だいたい何でも希望は叶えられそうだ。

 

 

「デク君は食べたいものある?」

「そうだなあ……」

お腹は減ってきているが、特に食べたいものも無い。

何を、と聞かれても、なんでもいい、というのが正直なところだ。

「う~ん、特に希望は……この土地のもの食べたい、っていうくらいしかなくて」

「あ、分かる。折角だし、下呂温泉ならでは、っていうもの食べたいよね」

 

どうしようか考えながら、地図アプリを動かす。

「このあたり、食べ物屋さんはいっぱいあるみたいだけど。適当に歩きながら決める?」

「じゃあせっかくだし、食べ歩きにしようよ。いろんなもの少しずつ食べた方が楽しそうだし」

「うん、そうしようか」

 

 

足湯を後にし、北に向かって移動する。

何かいいお店は、と思っていると、すぐに現れた。

 

「なんだこれ!? 温泉プリンだって。本当にプリンが温泉に入ってる!」

浅い桶の中に、瓶に入ったプリンがいくつも並んでいる。

桶の上から、かけ流し風呂のように温泉が流れ、温かい湯気が上がっていた。

 

「ねえねえ、これ食べようよ! どんな味するんやろ!?」

「うん、これは食べよう!」

温泉卵は食べた事はあっても、温泉プリンを食べた事は無い。

プリンは食後のイメージがあるが、そんなこと気にせず食べたい気分だ。

 

 

会計を済ませ、桶に入ったプリンを受け取る。

「いや、うまっ!」

「ん~~。温かくてトロトロだねぇ~」

本当に美味しい。なめらか食感で、口の中で溶けていくようだ。

程よい甘さ、卵とバニラの風味。コクのある味わい。

何より温泉で温められた、程よい温度が最高だ。

 

「あ、そうだ。麗日さん、写真だけ撮ろうか。食べてるところ」

「そうだね。どうする?」

「ん~、ちょっと待ってね」

カメラを自撮りに切り替え、斜めに構える。

さすがにこれは食べてるのが分かれば、並んで撮らなくてもいいだろう。

 

自分が手前、麗日さんが奥に写ってる感じでポーズを作る。

「じゃあ麗日さん、笑って」

「へへ~。いただいてまーす」

 

 

撮った写真を、LINKに送っておく。

「やばい、ほんと美味いねこれ。温かいプリン初めて食べたけど、イケるね」

「ね~。これいくらでも食べれるよ」

 

プリンを食べ終え、さらに道を進む。

坂道を進むと、また違うお店が見えてきた。

「デク君、牛串だよ牛串! 食事っぽいの来たよ!」

テイクアウト可能な店構えだ。これなら食べ歩きで食べられる。

「うん、これも食べよう」

「五平餅とお団子もあるね。これも一緒に食べない?」

「いいね、それも頼もうか」

 

 

その場で焼いてもらい、一人一本ずつ受け取る。

食べる前に二人で写真だけ撮ってLINKに送ると、さっそくかぶりついた。

「うんっま。飛騨牛、美味いね~」

「うん、これはさすがブランド牛って感じするわ」

レアに近い絶妙な焼き加減。やわらかくてジューシーだった。

 

「お団子もモチモチやねコレ。その場で焼いてもらうと違うね~」

「だね。お団子ってこんなに柔らかくなるんだなあ」

お団子というと冷たいイメージがあったが、これは焼きたてで火が通ってる。

お餅に近いような感じだが、お餅より全然柔らかい。

これが本来のお団子かと思うと感動する。

 

 

「五平餅も、くるみかな?タレの味が濃くて美味しいよ」

「うん、これも最高」

麗日さんの、ぷっくりとした唇に目が奪われる。

 

「ん~~……美味ひい~」

ハムスターみたいに頬を膨らませた姿が、これまた可愛い。

 

一気にぺろりと食べてしまった。

なんだかんだお腹に溜まる。

 

 

「ねえ、次行こ次! 何があるかな?」

僕の手を引いて、先を示す麗日さん。

弾むような足取りで、楽しそうにしてくれているのが嬉しくて、こっちまで楽しくなる。

繋いだ手のひらが温かい。

 

道を進んでいくと、先ほどとは違う形の足湯が現れた。

「なにこの足湯。中央に彫刻が置いてあるよ」

「こんなのもあるんだね」

人が多くて、ちょっと入れない感じだ。

「デク君、写真だけ撮らない?」

「そうだね、とっても写真映えしそうだし」

周囲の人にお願いして、二人一緒に写真だけ撮ってもらった。

思い出になる写真が増えたことを喜びつつ、そのまま更に道を進む。

 

 

「ねえ、麗日さん、わらび餅だって」

「なんやこの器、デザインいいね。温泉地ならではって感じ」

お風呂場の桶みたいなデザインの器に入ったわらび餅。見た目は非常に面白い。

「食べてみよ? どんなかな?」

買ってみると、表面にはきな粉が溢れるほど乗っており、下の様子が伺えない。

「これ、このまま写真撮っても、わらび餅って分かんないよね。麗日さん、箸で出してもらっていい?」

麗日さんに箸を入れてもらうと、きな粉の下から、黒蜜に絡まったわらび餅が、びよ~んとのびて出てきた。

わらび餅を掲げて、にっこにこ笑顔の麗日さんを写真に収め、LINKに送る。

 

 

「ん~~~~。美味しいねえ~」

「甘さもちょうどいいし、めちゃくちゃ柔らかいよこれ」

「なんて表現すればいいのかなあ。すぅーって溶けちゃうって感じ」

 

幸せそうに食べてる麗日さんを見ると、僕も嬉しくなってくる。

一緒に話して、こうして同じものを食べて。

本当に楽しい。

 

疲れも何もかも吹き飛んでいくみたいだ。

今更ながら、来てよかった。

心から、そう思う。

 

 

 

※SIDE 飯田

 

 

「……なあ、オイラ達は何を見せられているんだ?」

「仲睦まじいカップルのデート写真がガンガン送られてくるんだけど」

峰田君と上鳴君が、携帯を片手に死んだ目をしていた。

 

「それが目的なんだから、願ったり叶ったりだろう」

「こちらの思惑通りですわ。やはり蛙吹さんのジョーカーが、かなり効いていらっしゃるかと」

 

 

「そのとおりなんだけどさ、何だろうなこの気持ち。無性に何かをぶん殴りてえというか」

「なあ切島、組み手の練習でもしねえ?」

「ねえ、それ、本気の戦闘訓練に発展しそうだから絶対やめてよね」

「ひとまず写真を見る限り、デートは大成功じゃないか。僕らが頑張ってきた甲斐もあったというものだ」

「腹立つくらい幸せそうだな」

「もうこのまま結婚しろよコイツら」

 

 

「でもさあ、信じられないけど、まだ付き合ってないんだよね、この二人」

「どういうことなんだよ……改めて考えるとヤベぇな」

「新婚旅行みてぇな顔してるのに」

 

親友の写真を見ながら、充足感に満ちていく。

本当に二人とも楽しそうだ。

 

いろいろと作戦は考えていた。

でもそんなものを必要とせずとも、二人とも楽しそうにしてくれている。

結果としては最良だ。

 

まだ昼を過ぎたところ。まだまだ時間はある。

 

緑谷君、麗日君。

ここから、更にいい想い出を作ってくれ。

 

 

―――― to be continued

 

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