最終巻No.431の続きを、命削って全力で書いたらこうなった(全年齢版) 作:練乳グラブジャムン
※SIDE 緑谷
「こ……これからどうしよっか。時間的に、そろそろお昼にしたほうがいいかな」
先ほどまでの恥ずかしさを振り払うように、次の予定を考える。
「麗日さん、何か食べたいものある?」
「ん~っと……ど、どうしようかな……」
麗日さんも恥ずかしいのか、まだ顔が赤い。
とりあえず携帯で探すことにする。
地図アプリで探すと、色々な店がヒットした。
定食屋、ラーメン屋、カレー屋、カフェ、ファミレス、洋食屋、鰻屋、焼肉屋、蕎麦屋、台湾料理屋……何でもあるな。
ステーキハウスとかインド料理屋まであるぞ。
居酒屋はまだこの時間では開いてないから無理だとしても、だいたい何でも希望は叶えられそうだ。
「デク君は食べたいものある?」
「そうだなあ……」
お腹は減ってきているが、特に食べたいものも無い。
何を、と聞かれても、なんでもいい、というのが正直なところだ。
「う~ん、特に希望は……この土地のもの食べたい、っていうくらいしかなくて」
「あ、分かる。折角だし、下呂温泉ならでは、っていうもの食べたいよね」
どうしようか考えながら、地図アプリを動かす。
「このあたり、食べ物屋さんはいっぱいあるみたいだけど。適当に歩きながら決める?」
「じゃあせっかくだし、食べ歩きにしようよ。いろんなもの少しずつ食べた方が楽しそうだし」
「うん、そうしようか」
足湯を後にし、北に向かって移動する。
何かいいお店は、と思っていると、すぐに現れた。
「なんだこれ!? 温泉プリンだって。本当にプリンが温泉に入ってる!」
浅い桶の中に、瓶に入ったプリンがいくつも並んでいる。
桶の上から、かけ流し風呂のように温泉が流れ、温かい湯気が上がっていた。
「ねえねえ、これ食べようよ! どんな味するんやろ!?」
「うん、これは食べよう!」
温泉卵は食べた事はあっても、温泉プリンを食べた事は無い。
プリンは食後のイメージがあるが、そんなこと気にせず食べたい気分だ。
会計を済ませ、桶に入ったプリンを受け取る。
「いや、うまっ!」
「ん~~。温かくてトロトロだねぇ~」
本当に美味しい。なめらか食感で、口の中で溶けていくようだ。
程よい甘さ、卵とバニラの風味。コクのある味わい。
何より温泉で温められた、程よい温度が最高だ。
「あ、そうだ。麗日さん、写真だけ撮ろうか。食べてるところ」
「そうだね。どうする?」
「ん~、ちょっと待ってね」
カメラを自撮りに切り替え、斜めに構える。
さすがにこれは食べてるのが分かれば、並んで撮らなくてもいいだろう。
自分が手前、麗日さんが奥に写ってる感じでポーズを作る。
「じゃあ麗日さん、笑って」
「へへ~。いただいてまーす」
撮った写真を、LINKに送っておく。
「やばい、ほんと美味いねこれ。温かいプリン初めて食べたけど、イケるね」
「ね~。これいくらでも食べれるよ」
プリンを食べ終え、さらに道を進む。
坂道を進むと、また違うお店が見えてきた。
「デク君、牛串だよ牛串! 食事っぽいの来たよ!」
テイクアウト可能な店構えだ。これなら食べ歩きで食べられる。
「うん、これも食べよう」
「五平餅とお団子もあるね。これも一緒に食べない?」
「いいね、それも頼もうか」
その場で焼いてもらい、一人一本ずつ受け取る。
食べる前に二人で写真だけ撮ってLINKに送ると、さっそくかぶりついた。
「うんっま。飛騨牛、美味いね~」
「うん、これはさすがブランド牛って感じするわ」
レアに近い絶妙な焼き加減。やわらかくてジューシーだった。
「お団子もモチモチやねコレ。その場で焼いてもらうと違うね~」
「だね。お団子ってこんなに柔らかくなるんだなあ」
お団子というと冷たいイメージがあったが、これは焼きたてで火が通ってる。
お餅に近いような感じだが、お餅より全然柔らかい。
これが本来のお団子かと思うと感動する。
「五平餅も、くるみかな?タレの味が濃くて美味しいよ」
「うん、これも最高」
麗日さんの、ぷっくりとした唇に目が奪われる。
「ん~~……美味ひい~」
ハムスターみたいに頬を膨らませた姿が、これまた可愛い。
一気にぺろりと食べてしまった。
なんだかんだお腹に溜まる。
「ねえ、次行こ次! 何があるかな?」
僕の手を引いて、先を示す麗日さん。
弾むような足取りで、楽しそうにしてくれているのが嬉しくて、こっちまで楽しくなる。
繋いだ手のひらが温かい。
道を進んでいくと、先ほどとは違う形の足湯が現れた。
「なにこの足湯。中央に彫刻が置いてあるよ」
「こんなのもあるんだね」
人が多くて、ちょっと入れない感じだ。
「デク君、写真だけ撮らない?」
「そうだね、とっても写真映えしそうだし」
周囲の人にお願いして、二人一緒に写真だけ撮ってもらった。
思い出になる写真が増えたことを喜びつつ、そのまま更に道を進む。
「ねえ、麗日さん、わらび餅だって」
「なんやこの器、デザインいいね。温泉地ならではって感じ」
お風呂場の桶みたいなデザインの器に入ったわらび餅。見た目は非常に面白い。
「食べてみよ? どんなかな?」
買ってみると、表面にはきな粉が溢れるほど乗っており、下の様子が伺えない。
「これ、このまま写真撮っても、わらび餅って分かんないよね。麗日さん、箸で出してもらっていい?」
麗日さんに箸を入れてもらうと、きな粉の下から、黒蜜に絡まったわらび餅が、びよ~んとのびて出てきた。
わらび餅を掲げて、にっこにこ笑顔の麗日さんを写真に収め、LINKに送る。
「ん~~~~。美味しいねえ~」
「甘さもちょうどいいし、めちゃくちゃ柔らかいよこれ」
「なんて表現すればいいのかなあ。すぅーって溶けちゃうって感じ」
幸せそうに食べてる麗日さんを見ると、僕も嬉しくなってくる。
一緒に話して、こうして同じものを食べて。
本当に楽しい。
疲れも何もかも吹き飛んでいくみたいだ。
今更ながら、来てよかった。
心から、そう思う。
※SIDE 飯田
「……なあ、オイラ達は何を見せられているんだ?」
「仲睦まじいカップルのデート写真がガンガン送られてくるんだけど」
峰田君と上鳴君が、携帯を片手に死んだ目をしていた。
「それが目的なんだから、願ったり叶ったりだろう」
「こちらの思惑通りですわ。やはり蛙吹さんのジョーカーが、かなり効いていらっしゃるかと」
「そのとおりなんだけどさ、何だろうなこの気持ち。無性に何かをぶん殴りてえというか」
「なあ切島、組み手の練習でもしねえ?」
「ねえ、それ、本気の戦闘訓練に発展しそうだから絶対やめてよね」
「ひとまず写真を見る限り、デートは大成功じゃないか。僕らが頑張ってきた甲斐もあったというものだ」
「腹立つくらい幸せそうだな」
「もうこのまま結婚しろよコイツら」
「でもさあ、信じられないけど、まだ付き合ってないんだよね、この二人」
「どういうことなんだよ……改めて考えるとヤベぇな」
「新婚旅行みてぇな顔してるのに」
親友の写真を見ながら、充足感に満ちていく。
本当に二人とも楽しそうだ。
いろいろと作戦は考えていた。
でもそんなものを必要とせずとも、二人とも楽しそうにしてくれている。
結果としては最良だ。
まだ昼を過ぎたところ。まだまだ時間はある。
緑谷君、麗日君。
ここから、更にいい想い出を作ってくれ。
―――― to be continued