最終巻No.431の続きを、命削って全力で書いたらこうなった(全年齢版)   作:練乳グラブジャムン

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No.460 あっ(察し)

※SIDE 麗日

 

 

食べ歩きをして更に進むと、また足湯が見つかった。

今なら人もいないから、すぐに入れる。

 

向かいにはプリン屋さんがあるけど、ここから先には、あまり食べ歩きできるようなお店は無さそうだ。

 

何だかんだ食べ歩いてきたし、また戻るにしても、ちょっと休みたい気分でもある。

それに……さっき、肌が綺麗って、褒めてもらえたし。

 

 

「ねえデク君。もう一回、足湯入らない?」

「え?」

「まだ時間あるし、せっかく温泉に来たし……戻る前に、もう一回入りたいなって」

「足湯……入るのはいいんだけど……」

困ったような、悩んでいるようなデク君。

 

「どうかしたの?」

「あの、麗日さん……入る前に、お願いがあって……」

「なあに?」

 

 

「その……お湯の中で、足当てるの……やめてね……?」

口元を隠し、どこか違うところに目線を流して、真っ赤になっているデク君。

 

かわいすぎるっ!

やばい、なにその顔、すっごいかわいい。

男の子がそんな顔しちゃダメだよ!?

 

急に反則的な顔を見せられ、胸が、きゅうん、と高鳴った。

 

 

「な……なんで、ダメなの……?」

かわいい顔を見せてくれたのが嬉しくて、自分の顔がにやけていくのが分かる。

 

「その…………ごめん、言えない」

すごく恥ずかしそうに顔を伏せるデク君。

 

かわいいっ!

言えないってなに!? なんで!? 恥ずかしい理由なの!?

 

胸がきゅんきゅんする。嬉しくて仕方ない。

 

 

だって足が当たるだけだよ? なんで? なんか困ることある?

私のことが嫌いとかじゃないよね、だって手繋いでくれてるし。

じゃあ逆? 足が当たるとドキドキするから?

足だけで? 手繋いでるのに? それ以上なの?

 

だって、えっちなことしてるわけじゃないし。

太ももに手が当たったりすると、っていうなら、まだ分かるけど。

でも足首から下だし。

え、全然分からない。

デク君は何がそんなに困るの?

でも、とにかく、かわいい。

 

 

「わ……分かったよ……足当てないから、入ろう……?」

ついさっきまで一緒に手を繋いでご飯食べてたのに、何でこんなに急に恥ずかしがってるんだろう?

私もつられて恥ずかしくなってくる。

 

ここの足湯は向かい合わせに座るのが難しかったので、隣に座った。

靴と靴下を脱ぎ、ちゃぽん、とお湯に入る。

ゆっくりと足を動かしながら、じんわりと足先から身体が温かくなっていくのを感じる。

 

「ああ~、気持ちいいねえ」

「うん、すっごく」

何度入ってもいい温泉だ。

こすり合わせた足が、スベスベになっていく感覚。

 

これが毎日無料で入り放題とは、この周辺に住んでいる人が心底羨ましい。

 

 

「はぁ~~……」

隣で、気持ちよさそうにリラックスしてるデク君を見ていると、ふと悪戯心が芽生えてきた。

 

……どうしよう。

すっごい足当てたい。

 

さっきのかわいい顔、もっと見せてほしい。

でも、やめてって言われてるし。

 

 

……怒るかな?

あんまり怒らなさそうだけど……でもそれで嫌われたら、嫌だし。

 

そもそも、なんで足が当たるのがダメなんだろう?

もうずっと手を繋いでるのに。

足ってなんか違うの?

 

そういえばさっき写真撮るとき、座ったまま立とうとしなかったけど。

 

 

…………立つ……?

 

 

 

 

「――――――っっっっっ!?」

 

脳裏によぎった可能性に、一瞬で頭が沸騰する。

反射的に顔を背けた。

 

…………え!? いや……いやいや…………違うよね……?

そんなはずないって。

だって、足が触っただけで、そんな風にならないって。

 

でも、知識として聞いたことはある。

オトコノコは、その……アレが大きくなると、座ったまま立てなくなるって……

 

 

そうっと、隣のデク君の様子を伺う。

表情と、こっそりとズボンを……いまのところ、普通だと思う。

デク君は気持ちよさそうに足湯を楽しんでいるだけだ。

 

眼を閉じて、さっきの足湯の光景を思い出す。

どうだったっけ……?

ズボンなんてよく見てなかったけど……

 

 

「ん? 麗日さん、どうかした?」

「はあえっ!? いや、あの、えっと、その、え、何がや!?」

急に声をかけられて、物凄く慌ててしまう。

 

ちょん。

 

慌てた拍子に、お湯の中で足が当たった。

びくっとして、私の反対側に足を動かすデク君。

私の胸も、どきっと跳ねた。

 

頭の中にあるピンク色の可能性が、さらに確信に変わっていく。

 

 

「ご、ごめんなさいっ!」

斜めに座るように、身体全体で反対側を向いてしまう。

足が当たらないように遠ざける。

 

「あっ、あの、あのね!? わざとやないねん! いまの、わざとやないんよ!?」

「う、うん……分かってる、大丈夫……」

 

恥ずかしそうにしているデク君。

……やっぱり、そういうことなの?

でも、他に理由が思いつかない。

 

 

っていうか、よく考えたら、これって相当マズイんじゃ?

 

私は何を考えていたんだろう?

そりゃ誰だって手は当たるよ。

手を繋いだりすることもあるよ。

 

でも、足の先って、こんなの普段当たるわけがない。

だって靴履いてるか靴下履いてるんだから。

足が当たるのってどういう状況?

机に座った時に、二人とも素足だったら机の下で、とか?

でも靴下履いてるから、そんなこともまず無いよ。

じゃあそれ以外だと?

 

 

それこそ一緒にお風呂入るとか、えっちしてるときじゃなきゃ、当たったりしないんじゃ?

 

さっき自分がやっていた事が脳裏に思い出される。

お湯の中で、足をこすり合わせて……

 

「~~~~~~~っ!!」

両手で顔を覆った。

 

なにやってんの!?

なにやってんの!?

さっきの私、バカじゃないの!?

 

 

デク君がかわいい顔するから、面白くってやってたけど!

自覚した今はもう無理だ、足当てるなんて恥ずかしくて出来ないっ!

 

急激に襲ってくる、とんでもない羞恥心。

恥ずかしくて顔から火が出そうだ。

何か、とんでもなくイヤらしいことをしてしまったんじゃないかという気になる。

 

……これ、謝った方がいいのかな。

 

もし予想どおりなら、すごく悪いことをしてしまった。

外で、こんな人が多いところで、アレを大きくさせられたら……男の人は、とんでもなく恥ずかしいんじゃ?

 

 

でも……どうやって? なんて謝ればいいの?

おっきくしてゴメンね? そんなこと言えるわけ無い。

足当ててゴメン? でもそれを謝るのって、なんで謝ってるの、ってならない?

 

困った……謝り方が分からない。

悪いことをしてしまったと思う。謝らなければいけないと思う。

でも、どうやって謝ればいいか、その方法が分からない。

 

 

最悪だ。

デク君、私のこと嫌いになってないよね?

 

足湯を出た後のことを思い出す。

タオルを貸してくれて、手を繋いで歩いて、一緒にいろんなもの食べて、ずっと楽しそうに笑っててくれた。

……嫌われてはいない、と思う。

 

でも、やっぱり謝らなきゃ、とは思って。

 

 

「ねえ……デク君?」

「うん、どうしたの?」

「あの……さっき足当てたの……ごめんね……?」

「へ? いや、全然いいよ」

「もう、せえへんから……許してくれる?」

「いや許すも何も。全然気にしてないっていうか……どちらかというと、僕が悪いというか」

 

照れくさそうに頭をかくデク君。

全然気にしてない、って言ってくれたのが、なんか凄く嬉しくって。

 

気にしないでくれた。

嫌われてないんだ。

よかった。

 

 

なぜか、無性に抱きつきたくなって……でも、それはどうしても出来ないから。

 

そっと、下ろしてるデク君の手に、自分の手を重ねた。

 

「……麗日さん?」

「ナ、ナンパ防止!」

「へ?」

「こ、こうしてた方が、絶対、トラブル起こらないからっ!」

 

ただの言い訳だ。こんな場所でナンパの心配なんて全くしてない。

でもやっぱり、どうしても……甘えたくって。

 

この手のひらだけでいいから。

ちょっとだけ、触れあっていたかった。

 

 

ゆっくりと、お湯の中で足をくぐらせる。

周囲を見ると、いろんな人がいる。

その中には、腕を組んでるカップルなんかもいて。

 

……いいなあ。

 

私も、本当に付き合えたら。

腕を組んだり。頭を肩に乗せたり。

いまよりもっと、ああして甘えることができるのに……

 

 

 

※SIDE 緑谷

 

 

麗日さん、さっきはあんなに楽しそうに足を当ててきたのに、急にどうしたんだろう?

 

なぜだか一転して恥ずかしそうで。

向かいに座るのはいいけど、隣に座るのは恥ずかしいのかな?

……いや違うよな、さっき写真撮るときに隣に座っても普通だったし……手だけは繋いでるし。

本当に分からない。

 

まあ、足を当てられないのは助かる……立てなくなるから。

ちょっと残念ではあるけれど。

 

 

さっきより随分と静かな足湯を堪能してから、散策を再開する。

来た道を戻るようにしてまっすぐ進むと、また違った店が見つかった。

「デク君、飛騨牛のにぎり寿司だって」

「テイクアウト出来そうだね、これも買って食べよう」

 

おすすめとある、にぎり三種盛りを頼む。

その場で炙って出してくれた。

「すごい、お煎餅に乗っとる」

「とりあえず先に、写真だけ撮っちゃおうか」

「あ、今度は私が撮るよ。デク君、食べてるポーズとって」

 

 

麗日さんに携帯を渡し、上を向いて握り寿司を口に放り込むみたいな格好をする。

「はいチーズ」

手前にニコニコで写った麗日さんと、上向で映る僕。

なんかバカっぽいな、僕。

でもまあ、楽しそうな感じが出てるし、これはこれでいい写真だ。

 

「霜降りと、赤身と、豚バラか」

「とりあえず、いただきまーす」

順に食べていく。

「いや、うまっ」

「本当にね。」

「なんか、霜降りと赤身だと、赤身の方が好みかも?」

「ん~、若干霜降りの方が濃厚というか、柔らかい感じするね。しっかり食べてる感じするのは赤身の方かも」

「でもすっごい美味いよね」

「うん、それは本当に」

豚は牛と違って、これもまた美味しかった。

残ったお皿のお煎餅も食べたが、口直しになってゴミも出なくて最高だと思う。

 

 

お店を後にして進むと、麗日さんが指をさした。

「かえるの滝だって。よみがえる、若返る、か」

小さな用水路のようなものから水が流れ落ちている。

滝というほどのものではないけど、子供がいたら喜びそうかもしれない。

 

「へえ、僕らには縁起がいいね」

「どうして?」

「カエルって、帰る、と語呂合わせになるから。ヒーローが無事帰る、って」

「あ、そっか。デク君物知りだね~」

「さっきから、色々とカエル関係のものあったよね」

マンホールとか神社とか、カエルに関係するものが沢山あったのを思い出す。

 

 

「梅雨ちゃんがいたら喜んでくれたかも。早く来ないかなあ」

「あ、それは本当に。じゃあ、写真撮って送ってあげようか」

「手を清めよ……ってあるけど」

「じゃあせっかくだし、洗ってるところを撮ろうか」

麗日さんが流れ落ちる流水に手をかざして、その場面を携帯に収める。

ついでに自分も手を洗わせてもらった。

そういえば、さっき握り寿司とか食べてたから、本当に手を洗うみたいになってるけど……まあいいか。

 

LINKに写真を送り、持っていたタオルで手を拭いて。

また手を繋いで、先に進む。

 

もうずっと、意識することもなく、自然に手を繋いだままだった。

 

 

―――― to be continued

 

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