最終巻No.431の続きを、命削って全力で書いたらこうなった(全年齢版)   作:練乳グラブジャムン

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No.464 思い出すために

※SIDE 緑谷

 

 

クレープを食べ終えたところで、宿に向かって歩き出した。

坂を下り、橋を通って、もう一度飛騨川を渡る。

そのまま歩くと、ちょうど最初に休憩した、お土産屋さんに差し掛かった。

 

「さっきは私が休憩しただけで、中には入らなかったったけど……せっかくだから見ていく?」

「そうだね、時間あるし。この辺のお土産ってどんな物があるか気になるよね」

お土産は明日買えばいいかと思いつつも、店内を見てみたい気分だった。

 

 

店内に入ると、土産物としてのお菓子、漬物、置物などが並んでいた。少し変わったものといえば、風鈴なんかもある。

「デク君、ここお菓子の試食できるね」

「どうする? 今買っちゃった方がいいかな?」

「戻ってキャリーケースに入れちゃえば帰る時に楽やし、いま買っちゃおうか」

「そうだね。試食できるし、ここで選んじゃおう」

 

雄英の教職員と、実家と……頭の中で必要な数を考える。

漬物は冷蔵が難しいし、無難にお菓子でいいだろう。

二人で試食しながら、どれがいいかを選んでいく。

だいたい選んだところで、面白いものを見つけた。

 

 

「ねえ麗日さん、これ見て」

ひとつを手に取って見せる。

 

「なにこれ。ご当地オールマイトやん」

「そう。面白くない?」

カエルの着ぐるみを着た、ご当地バージョンのオールマイトだ。

温泉地だからか、湯浴みタオルを頭に載せてあり、タオルには【下呂】と刻印されている。

デフォルメされて非常に愛嬌があるデザインになっている。

オールマイトのグッズは色々と持っているが、こういった全国各地のご当地アイテムまでは、さすがに集めきれるものでもない。

当然これは持っていなかった。

 

 

オールマイト以外にも、エンデヴァー、ベストジーニスト、翼のあったころのホークスといった、有名どころが並んでいる。

 

「デク君、デク君。これ見て」

麗日さんが指したのは、A組のみんなのキャラクターだ。その内容に自然と笑いが零れる。

 

「ダイナマイト……目つき悪いよかっちゃん。梅雨ちゃんは着ぐるみ着てないね。個性カエルだからかな」

元A組のみんなも、今や立派な有名ヒーローだ。こうした商品も展開されていた。

 

「ショートはカッコいい感じにしてあるんやね。やばい、テンタコルめっちゃ可愛えぇ」

「インゲニウムとかすっごいカッコいいよ、ロボっぽくて。うわ、ファントムシーフはカエルの執事にしか見えない」

一緒に声を上げて爆笑したかったが、店の中だから、堪えるのに必死だった。

 

 

ようやく笑いの波が引いてきた頃、真面目に買うかどうかを考えだした。

 

普通のぬいぐるみやストラップなどはどこでも買える。

しかし、こういったご当地商品はそうはいかない。普段手に入らないし、その場所でしか買えないから、価値がある。

 

「気持ちだけなら、全部ほしいけど……集め出したらキリがないしなあ」

「コレクションしたいんじゃなくて、旅行の想い出だもんね」

「うん……でも、いざ選ぶとなると難しいな」

「だよね。すごく分かる」

今日この地に来れたのも、本当に偶然だ。

全部は無理でも、どれか一つくらいは買って帰りたい気がする。

 

 

(皆特別は、誰も特別じゃねぇンだってよ)

先日の幼馴染の言葉が蘇る。

 

「……これがいいかな」

しばし逡巡して、『ウラビティ』を手に取った。

カエルの被り物をしてデフォルメされたデザインで、とても可愛らしい。

 

「私!? どうして? デク君、オールマイトじゃなくていいの?」

「だって、今日ずっと一緒に回ってるから。一緒に歩いた思い出になるかなって。なんか急に来れない人多かったし、余計に。あ、だからインゲニウムとかは、後で飯田君が合流できたら、明日またここで買ってもいいし……ああでも、麗日さんが嫌なら、他のにするけど」

「ううん、嫌じゃない!」

とっさに麗日さんに手をとられ、キーホルダ―を握らせられた。

これを買ってくれとお願いされているようにすら感じる。

 

「じゃ、じゃあ……僕はこれで。麗日さんは?」

「私は……そうだなあ……」

 

 

麗日さんはなにを選ぶだろう?

自分のものを選んでほしい気持ちはあるものの、悲しいかな、そもそも『デク』のご当地キーホルダーは無い。

あの大戦で僕も有名になったとはいえ、あの頃は仮免だったし、ヒーロー活動に復帰したのも、アーマーが出来てから。つい最近だ。

僕のグッズも一般的なものはいくつか存在するけど、こんなご当地商品まで作られてないのは当然といえる。

 

そもそも、こんなの無理に買うモノでもないし。

麗日さんは何も選ばない可能性もある。

 

口元に人差し指をもってきて、んー、と目線を動かしている麗日さん。

こんな仕草も可愛いな、と思ってしまう。

 

 

「じゃあ、私はこれにしようかな」

麗日さんが選んだのは、僕が最初に手に取った『オールマイト』だった。

 

「あれ? 麗日さん、オールマイトでいいの?」

「うん」

もちろん嫌いなわけでないだろう。

雄英でも指導してもらったし、好きなヒーローの一人だと思う。

けど、特別好きだという印象も無い。

仲のいい『フロッピー』やA組で一番チャートの高い『ショート』、それこそ自分の『ウラビティ』もある。

わざわざ『オールマイト』を選ぶ理由が思い当たらない。

 

 

「だってこれが一番、デク君のこと思い出せそうやし」

にっこりと微笑む麗日さん。

今日一日かけて慣れたはずなのに、心臓がまた、どきっ、とした。

 

「僕のことを、思い出す……ため?」

「え……あれ……?」

瞬間的に、ボンっと音が鳴るような勢いで、真っ赤になる麗日さん。

 

 

「あ、えと、あのね!? 私だって、今日のこと思い出したいし!? だったら一緒に歩いたし、デク君かなって思うけど、デク君のやつ無いやん!? 私がウラビティを買うのもなんか違うし!? って思ったら、デク君に一番近いのって、やっぱりオールマイトなんかなあ、って思って!」

「あ……う、うん! そうだよね、分かるよ、分かってるよ! ありがとう!」

何故か二人して焦ってしまう。

 

落ち着いたら、なんだか可笑しくて、笑いあい、一緒にお会計をした。

お土産のお菓子と一緒に買った、旅先の、どこにでもある安物。

 

それでも、何かとても大切な宝物かのように思えて。

優しくそっと、鞄に仕舞ったのだった。

 

 

―――― to be continued

 

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