最終巻No.431の続きを、命削って全力で書いたらこうなった(全年齢版)   作:練乳グラブジャムン

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No.436 第一回 恋仲発展プロジェクト会議

※SIDE 飯田

 

 

かつてエンデヴァーが経営し、現在は轟君のヒーロー事務所となっているビル、その最上階の大会議室。

そこに、かつてのA組メンバーが集結していた。

部屋は証明が落とされ、プロジェクターの明かりが部屋を照らしている。

 

 

あれから個別に意見を収集し、意見の異なる部分については認識合わせを行って、話を纏めていった。

率直にいって、普段の仕事と変わらない……いや、それ以上の労力が必要だった。

ただのグループLINKから始まった恋愛相談とは思えない力の入れようだったが、全員が非常に協力的で、意外なほど早く話が進んだ。

A組の皆と、これほど早く再開できたのは、皆の協力あってこそだ。

 

「皆さんお集まりいただきましたので、これより会議を始めさせていただきます」

前に立った八百万君が、指揮棒を片手に口を開いた。

 

 

「本プロジェクトは、我々共通の友人である緑谷出久さんと、麗日お茶子さんの、恋仲を発展させることを主目的としています」

プロジェクター画面に、緑谷と麗日の顔写真が映される。

刑事ドラマの捜査会議みたいだ。

 

「事前の証言調査より、緑谷さん、麗日さんが、お互いに対し、双方共に片思い状態であることが確認されています」

二人の写真の間に、ハートマークの付いた矢印ボックスが表示される。

 

 

「我々はこの喜ばしい事実を知り得ています。ですが、緑谷さんと麗日さんは、まだお互いの気持ちを知りません」

さらにスライドが切り替わる。

この資料を準備したのは八百万君だが、どれだけ気合を入れて作成してくれたかが伺える。

 

「お二人の尊いお気持ちを、外野である私達が勝手に伝えることは許されません。そんな蛮行が許されるのであれば、この会議は不要です」

うんうん、と何人かが首を縦に振る。

耳郎君が申し訳なさそうに顔を伏せていた。

 

 

「本題に入る前に、今一度、ここにいる全員の意思を統一する必要があると感じています。まず最初に、恋愛の定義と、目的について整理させてください」

予想していなかったであろう展開に、何人かが怪訝な顔をした。

 

「一言で恋愛と言っても、実はその目的は人によって異なります。恋愛の目的は千差万別、人の数だけ存在しますが、大きく4つに区分可能と考えております」

 

スライドが切り代わり、四つの四角が表示された。

「想いを伝えること。交際に至ること。婚姻を結ぶこと。それから……ど、同衾に至ること!」

八百万が最後のひとつを、頬を染めつつも、多少ヤケクソ気味に言い切った。

会議室に、ヤオモモ頑張ったな、という空気が漂う。

 

「この四つは、それぞれ何をしたいか言い換えることが出来ます」

八百万君が指揮棒で指しながら続ける。

 

 

「想いを伝えること。これは、片思いの終了を目的にしています。上手くいく保障が無かろうと、とにかく良くも悪くも関係を転換させることが目的になります。どちらかというと失恋するのも覚悟の上で、博打に出るという側面が強いでしょうか。例としては、卒業してしまう先輩にダメ元でアタックするような。そんな分類になります」

 

「次に、交際に至ること。これは相手と相思相愛になることを目的としています。『想いを伝える』ことと混同してしまいがちですが、こちらは限りなく100%の成功を目指すという点で異なります。失恋することは絶対に避けたいですから、時間をかけて石橋を叩いて渡るような、そんな本気の恋が該当するかと思います」

 

 

「3つ目に、婚姻を結ぶこと。これはどちらかというと、既に交際中の方が願うことが多いでしょうか。お互いに身を固め、生涯他の恋をしないこと、終わらせることが目的になります。自分達二人だけでなく、周囲の人間の理解を得ていくなど、巻き込む関係者が非常に多くなるものです」

 

「最後に……同衾に至ること。これは端的にいえば、肉体関係を目的としたものですね。好意的な解釈をすれば、子宝を望む、と考えることもできます。あまりこういった場で出す話題ではありませんが、定義のひとつとして掲載させていただきました」

 

 

「この中から、緑谷さんと麗日さんが望まれている、『お二人にとっての恋愛目的』はどれか。ここにいる皆さんに事前調査し、推察される目的を集計したのがこちらですわ」

画面が切り替わり、円グラフが表示された。

 ・想いを伝える 4票

 ・交際を始める 12票

 ・婚姻を結ぶ  2票

 ・同衾に至る  1票

 

「更に、事前にお二人と話した方々の証言から、有益と思われる証言をピックアップしております」

 《緑谷出久》

 ・もっと麗日さんと仲良くなれたらなって思う

  (証言者:インゲニウム)

 《麗日お茶子》

 ・次の約束をしなかったことを後悔している

  (証言者:イヤホン=ジャック、インビジブルガール、クリエティ、フロッピー、Pinky)

 

 

「これらのヒアリングとデータから、本プロジェクトにおいて、お二人の恋愛目的は、次のように定義できるのではないか、と考えました」

 

 《想いを伝えあい、交際を始めること》

 

「これは本プロジェクトの大前提になる部分です。文は私の起案ですが、認識の齟齬があってはいけません。表現でも、認識でも、異議のある方は挙手をお願いいたします」

八百万君が挙手を促すが、誰も手を挙げない。

 

 

「……いいんじゃね。俺らからすると、もうさっさと結婚して子供でも作れよ、って思うけど。あの二人の目的としてはこれで合ってるだろ」

上鳴君の発言に、皆頷いた。

 

「ところで同衾に票入れたのって誰? 峰田?」

「オイラじゃねえよ? オイラは二番の交際に入れたし」

「あん? 同衾に入れたのは俺だ。何かあんのか?」

「爆豪……あー、いや……何でもない。続けてくれ」

「では、次の話に移ります。皆さんには、何度もご相談させていただき、お知恵を貸していただきました。そのご意見をまとめていく中で、ある統一見解が出てきたと感じています。ここにいる全員の意思を言語化したものが、こちらです」

スライドが切り替わり、ひとつの文が表示される。

 

 

 《緑谷出久と麗日お茶子に、幸せになってほしい》

 

「先ほど確認したのは、お二人の目的。これは私達A組、全員の願いですわ。異論のある方はいますか?」

皆がジェスチャーで異論無いことを示した。

「ありがとうございます。概ね皆さんの認識も一緒でしたが、意思統一をしたかったんです」

 

 

前置きし、スライドが更に切り替わる。

「では、想いを伝えられない二人に、我々は何ができるか。」

 

《周りで囃し立てて、告白を促す。》

 

スライドに乱暴な一文が表示された。

落胆の吐息と共に、皆の眉根が寄る。

 

 

「……おそらく皆様、これは下策であるとお考えでしょう。そのとおりです。こんな方法では、お二人の気持ちを尊重していませんし、我々の願いも十全に果たせません」

スライドの一文に、大きく×印が付けられる。

 

「あくまで、お互いの大切な想いは、お二人から、自発的に伝えていただくべきです。では、そのためには何が必要でしょうか。皆さんのアイデアの中に、その答えがありました」

一拍おいて、スライドが切り替わる。

 

 

「それは、舞台です!」

八百万君が画面を指揮棒で叩いた。

 

「人が、大切な想い人に気持ちを伝えるとき。人は誰しも、最適な場所を考えます」

スライドに、ドラマの一部を切り取ったような画像がいくつも表示された。

体育館裏にいる男女、夜景をバックにした二人組のシルエット、公園で語らうカップルなどがあった。

 

「お二人に、想いを伝えあい、幸せになっていただきたい。そのために我々が出来る事は、これです。

 

 

 《緑谷出久と麗日お茶子が想いを伝えあうために、最も相応しい「舞台」を用意する》

 

「ムードを高め、お互いを意識せざるを得ない状況。感情を昂らせ、想いが自然と口をついて出てくる。そんな舞台を用意する事こそが、私達がお二人にしてあげられる、最大限のサポートです!」

誰ともなく拍手が上がった。

 

「……あのカオスなグループチャットからよく纏めたな」

「表現はこの一文でよろしいでしょうか」

「いいと思うよ。分かり易いし」

 

 

「ここから先は僕が進行しよう。八百万君、ありがとう」

八百万君が着席し、代わりに僕が前に立つ。

 

「事前のヒアリングで、皆には最適な舞台として好ましいデートスポットを挙げてもらった。こちらを見てくれ」

パソコンを操作し、資料を切り替えた。

プロジェクターにみんなのアイデアが表示される。

 ・喫茶店

 ・お洒落なレストラン

 ・夕日の海岸

 ・夜景の見える高台

 ・街をデート

 ・ペットショップ

 ・公園

 ・映画館

 

 

「これらを参考に、緑谷君、麗日君のために用意する舞台を考えたい。どのような場所で、どのような準備が必要か、案をいただけるだろうか」

 

「はーい、夜景がいい!」

「海岸沿いとかも結構いいと思うんだよね」

「海岸ってムードあるのか? 実際行くと、ただの海だったりしねえ? 案外殺風景な……」

「街デートなら結構会話弾むんじゃない?」

「あ、それだと映画はよくねえって話だぞ。時間のほとんど、会話無いからだって」

 

 

あーでもない、こーでもない、と、喧々諤々の意見が出てくる。

 

それからしばらく続けてみたが、有益な意見はなかなか出てこない。

 

「皆、いったん待ってくれ。ただ場所の希望を挙げるのではなく、どうやってそこに連れ出すか、といった事も考慮して挙げてくれないか」

その一言で、途端に静まり返った。

 

「そう言われるとな……」

「結局どのプランにしたって、あの二人をデートさせるのが、まず最初にして最大の難関なんだよね……」

「結局そこなんだよなあ。俺らが一緒に遊んでたらデートにならねえし、かといって俺らが『デートしろ、誘え、いけるいける』、みたいに言っちまうと、バラしてるのと変わらねえし……」

皆が口を閉ざす。

 

ううむ、これは困った。

場所の前に、どのように二人にデートをさせるか、そこから考えた方が良かったか。

 

 

議題を誤ったか、と思った時、ぽつりと、轟君が口を開いた。

「……なあ。これって、全部やったらダメなのか?」

「全部?」

「まあ全部は無理かもしれねえけど。いくつか合わせるのは可能じゃねえかな。街歩いて、カフェ行って、夕日見て、飯食って、夜景見て……みてぇな流れなら」

「まあそう出来れば一番いいけど……」

「それにしたって、問題はどうやって、緑谷と麗日にそれをやらせるか、だしな」

「そうか? 出来そうな気がするけど」

「どうやって?」

 

 

「一日空いてれば、時間取れるわけだし。泊まりで遠出すれば、全部できるんじゃねえか?」

 

その一言に、皆が顔を見合わせる。

 

泊まりで遠出。

宿を取ってしまっていれば、そう簡単に中止には出来ない。

みんなで集まると言えば呼び出せる。

あとは自分達が行かなければ……

 

アイコンタクトだけで結論が出され、全員の声が揃った。

 

 

「「「「「 旅 行 だ ! 」」」」」

 

 

―――― to be continued

 

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