青い春と退魔師と   作:幻視回線

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和風エロゲ風な世界の、普通の男子高校生の日常


委員長、その言葉……フラグだよ

HRが終わるや否や、各々が部活や下校と思い思いの時間を過ごす放課後。

 

当然、僕のような帰宅部はただ家に帰って無為の時間を過ごすもの……と言いたいところだが、そういうわけにもいかない。

委員会やクラブがあるわけでもない。

 

ただ、もっと大きな……地方自治体クラスの集団から為すべきことを課せられているからだ。

……まっ、そんなことを言えばこの学校の人間の何割かは、僕と同じ『退魔師』なわけだけど。

 

「おら、どけどけ! 保健室に運べ!!!」

 

僕がぼけっーとやる気もなく、ゾンビのように歩いていると目の前の廊下から慌ただし気に担架が迫る。

筋骨隆々、まるでゴリラのような顔立ちをしたジャージの教師が必死な形相で担架を運んでいる。

 

ウチの高校の体育教師である剛崎教諭。

生徒間ではその容貌からゴリ崎と呼ばれている教師だ。

 

霊力を持った退魔師であり、僕ら退魔師の生徒たちを引率する立場の教師陣の一人である。

正直、女子生徒からの受けが悪い。

なんでも救助や指導にかこつけて淫行を働いているとか、体育中に厭らしい目で見られたとかセクハラされたとか。

 

……まぁ、男性である僕としてはどうでも良い。

というか、指導についてはしっかりしているし、淫行云々もあの見た目で誤解されてるだけかもしれない。

 

「椎名! 椎名! くそ、やはり完全に人格を抜かれてやがるな! でも、まだ残滓は残ってるんだろう!? おい、椎名! お前はそのデケェケツから人格をうんこする時みたいに気張りながら『んお゛~』とブリ出したのか!? これはお前をこうした怪異を特定する為に必要なんだ! おい、椎名! 椎名!! マグロ顔でぷるぷるパイオツ揺らしてる場合じゃないぞ椎名!!!!」

 

「ぁ……ぁ……」

 

ゴリ崎はデカい声を出しながら、担架をユラユラ揺らして椎名という少女の胸を揺らしていた。

……いや、女子生徒一同が言っていることは本当かもしれないな。

し、知ーらねっ!

 

にしても、椎名という少女の顔の横に会ったテラテラと輝き、度々びくつくゼリー状のもの。

ありゃあ、人格だろう。

怪異の中には、何かしらの手段で人間から人格を一定の固形化して引き抜く種類も居るのだ。

 

有名どころで言えば、河童の尻子玉。

マイナーなところで行けば、厠神の亜種にもそんなのが居たっけ。

 

残滓が残っているというのは、抜き出す過程で人格ゼリーカスが体内に残っていて、言うなれば99分の一椎名さん状態になっていると言うことだろう。

あの状態では体の方は外からの刺激にピクリと反応する程度だろう。

 

あの後、保健室で人格を戻す処置をするのだろうが……願わくば怪異に霊力調達の一環に一部齧られていなければ良いな。

 

 

地域でもマンモス校である僕らの学校は、この地域の中で怪異対策室が置かれている学校の一つだったりする。

私立偲草学園。

それ故、あんな風に負傷者が運ばれてくることが度々ある。

まぁ、学校に入ったころはいちいちビビっていたが……今じゃ慣れっこだ。

 

見るたびに自分は気を付けようと、兜の緒を締めるって感じかな。

 

 

さて、今日の課外活動のペアは誰だろう。

願わくば安生か、夢野くんが良いな。

 

安生はいわば、同じクラスの友人の一人。

俺の悪友の一人だ。

先日は自転車置き場で学年の数人の男子でガラス用洗剤の掛け合い戦争をやって、全校集会で謝らされていた。

 

チクった女の子が安生のことが嫌いで、アイツだけ真っ先に名前出ちゃったんだよな……。

お気の毒というか、自業自得というか……。

まぁ、良いスケープゴートだったよ。

アイツは。

 

まぁ、結局僕も委員長によって名前を出されてしまったんだけどね。

はぁ……つらい、別に誰にも迷惑をかけてないのに……。

強いて言うなら洗剤の消費が極端になされただけ、そして僕らの制服がその日一日薬品臭くなっただけだというのに。

 

特別棟3階の対策室。

扉の前には今週の当番表が掛けられている。

 

月曜日には毎回、見知った仲と一緒になれますようにと祈ることが常だ。

 

「げっ……」

 

まぁ、今回ははずれもはずれ。

大ハズレという感想が最も相応しいのだが。

 

知らない名前ではない。

しかし、知らない名前であったほうがありがたかった。

 

なにせ、噂をすれば……ではないが、本日一緒に課外活動に当たるのは僕をチクったあの委員長。

鶴見美緒その人なのだから。

 

 

 

「遅い、遅いです。大方グダグダと歩いてきたのでしょう。お見通しです!」

 

入るや否や、ぷんすかと怒りながらこちらに詰め寄る少女。

 

整った容貌を飾るメタルフレームのメガネ。

左右に垂らした三つ編みにキッチリと着こなした制服。

絵に描いたような真面目系の女の子だが、それだけじゃない。

はち切れんばかりに膨らんだ胸と、タイツにムチッと肉が乗った足が特徴のーー

 

「あっっっ!! またおっぱい見ましたね〜〜〜!! いけないんですよ! 不埒! 不埒です!」

 

「ご、誤解だ。み、見てないよ……」

 

「いーや! 見ましたね! すごく鼻の下伸ばして見てました!! わたしの目は誤魔化せませんよ! 『おっひょ〜、チビメスの癖に乳でっけぇ〜〜、説教中に乳首摘み上げたらどうなるのかなぁ~ぐへへ』って顔してました」

 

どんな顔だよ。

 

「キミは一体、僕をなんだと思ってるんだ……」

 

「ふんっっっ!! 知りません!! 不良生徒なんてそんなもんですっ! いっつも手を焼かせて……少しは内省したらどうですか!」

 

プイッとそっぽ向く委員長。

どうにも僕は鶴見さんから目をつけられてる……いや、それどころか目の敵にされている。

 

確かに、僕だって真面目な優等生というわけじゃない。

どちらかといえば、不真面目であると言えるだろう。

真面目な人間が駐輪所で洗剤掛け合ったり、学校の裏庭で放課後に聖杯戦争と言いながら枝でしばきあったりするわけないからな。

 

とはいっても所詮、僕なんてシャバいもんだ。

にも関わらず、彼女は僕の一挙一動を挙げ連ねるのである。

まるで検察官だよこれじゃあ。

僕も弁護士雇って逆転させてくれ。、

 

なので、正直やりにくい相手ではある。

ある種、天敵という形容が正しいか。

 

「……はぁぁぁ〜〜。もういいです、あなたがお猿さんだってことは今に始まったことじゃありませんから」

 

やれやれと肩を竦める鶴見さん。

不本意がすぎるだろ……その言い様。

 

「それで、ちゃんと活動内容には目を通してますね? メール、来てますもんね? まさか文字が読めない文盲というわけじゃないでしょう? 読み聞かせしてあげましょうか??」

 

「めちゃ畳みかけてくるじゃん……! い、いらないよ……ちゃんと読んできた」

 

「それは重畳、ではお猿さんが正しく理解できてるか補足説明をしてあげましょう」

 

あ、もうお猿さん扱いなんだ。

そのうちジョージか、パンって呼ばれそうだ。

誰が天才チンパンジーやねん。

 

「今回の事案は黄泉彼我公園周辺のトイレにて発生した、連続婦女自失事件。被害者は10代女性で、皆一様に人格を抜かれていたようです。なんとか逃げ切った女性の証言では公衆トイレから長い腕のようなものが出てきたとか。うら若い少女の人格を狙った犯行でしょう」

 

「わたしたちは周辺地域の下水道に入り込んで、該当の怪異の処分を行うことが今回の活動の内容です」

 

「10代の女の子が対象で、怪異の種類も分かってないよね? ……不安だったりしないの?」

 

「不安? なぜですか? 所詮トイレや下水道に発生するような低級の怪異でしょう? わたしの敵ではありません。わたしがお尻から人格抜かれてアヘアヘする様を楽しみにしていた最低チンパンジーのあなたには悪いですが、さっさと終わらせてしまいましょう」

 

ツーンとした態度で断言する鶴見さん。

自信満々、万が一もありえないといった感じだ。

おぉ……、なんだろう。

 

すごい、フラグが立った気がする……。




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