「あっ」
登校中、隣で歩いていた幼馴染が唐突に声を上げる。
「どうした?」
「……」
彼女は呼び掛ける俺を無視して、トタトタと右手にあった空き地へと向かい、
「……」ジーッ
空き地の中央、何もない空間を凝視し始めた。
「おい、なにして」
「シッ、静かに」
「……」
早く学校に向かいたいのだが、彼女はそれどころじゃないらしい。
彼女の奇行は今日に始まった事じゃない。付き合いの長い俺は、彼女が何に夢中になっているのかおおよその予想が付いていた。
「……何が見えてるんだ?」
「ホームレスのおじさんが猫と縄張り争いしてる」
「いや本当に何が見えてんの?」
訂正、予想斜め上の物が見えてたわ。
「ホームレスはこの空き地を寝床にしてたらしいけど、猫はずっと前からこの空き地は自分の物だと主張してるね」
「縄張り争いって口論かよ」
なに猫と口喧嘩してんだよおっさん。
「あ、猫がこれは無断占拠だってホームレスの事を糾弾し始めた」
「猫、法律に詳しいのな」
「ホームレスは畜生如きに土地を所有する権利なんか無えって」
「ホームレス口悪っ」
「お互い一歩も譲らない。これは長い戦いになりそう」
「なあ学校は?」
心底どうでも良いけど、俺は心証的に猫に勝って欲しいかな。
「……あ」
「終わったか?」
「ごめん、ちょっと呼ばれたから行くね」
「はい?」
まさかの呼び出しが来た。俺が静止する前に彼女は猫とホームレスが居るであろう空き地の中央に行ってしまう。
「〜〜〜」
「……」
彼女は首を左右に振りながら何か喋っている。早く終わってくんないかなーっと待つ事数分、彼女はコチラに戻ってきた。
「終わったか?」
「うん、二人の縄張り争いのジャッジを任されてたの」
「そうか……で、結果は?」
「猫の勝利としました」
猫が勝ったか。まあ俺も猫とホームレスのおっさんのどっちを味方するかと言われたら猫になるな。
「後日、ウチに野良猫達を集めて沢山モフらせてくれると言ってくれた。とても楽しみ」
「賄賂じゃねえか」
そして買収されてんじゃねえよ。
「というか、たかが猫一匹にそんな権限あるのか?」
「なんでもこの町に古くから居る猫又らしくて、この辺りの猫達なら言う事を聞かせられるらしい」
「猫又」
なんてもんと縄張り争いしてんだホームレスのおっさん。相手が悪いにも程があるだろ。
「はぁ〜……まあ良いや、終わったなら学校に行くぞ」
「うん……あ、ちょっと待って」
「今度はなんだ?」
「あっちで陰陽師っぽい人と牛みたいな鬼が戦ってる。あ、陰陽師が手からビーム出した」
「…………それ見終わったら学校行くぞ」
ホームレス vs 猫又より何千倍も面白そうな対戦カードに俺の好奇心は屈服し、再び寄り道をする事になった。
なお、この後無事に遅刻した。陰陽師 vs 鬼は聞いてて面白かった。
(気が向けば)続きます。