俺の幼馴染には何かが見えてる。
「……」ジーッ
「ここに居たのか、ミヨ」
昼休み、彼女は学校の中庭のベンチに座って空をボーッと眺めていた。
「あ、ヒカル」
「なに見てたんだ?」
「……んっ」
俺は彼女の隣に座って尋ねる。すると彼女は空に向かって指先をピンと伸ばした。
「アレを見てた」
「アレ?」
昼飯の弁当を食べようとしていた俺は、その手を止めて彼女の指先の方向に視線を向ける。恐らく見えない何かを指してるんだろうが、彼女と違って霊感の欠片も無い俺には何かがあるようには……いや、あるにはあるな。
「あの雲か?」
「うん」
どうやら正解だったらしい。中央にポッカリと穴が開いたドーナツのような雲、彼女はそれを見ていたらしい。
「あそこで羽の生えた人達がバンジージャンプしてたの」
「バンジージャンプ」
なんちゅー所でスリルを楽しんでるんだ。というか羽生えてるんだから落ちた所で飛べるだろ。……雲の上に居る羽の生えた人って、まさか、
「なあ、そいつらってもしかして天使か何かか?」
「……さあ?」
彼女は視線をバンジーから俺の方に向け直すと、こてんと首を傾げた。
「さあ、って……」
「もしかしたらそうなのかもだけど、あの人達は前に見た自称天使と見た目が大分違うし」
「ふーん……え? なにそれ、天使名乗ってる奴居たの?」
「うん、羽は生えてたし体も人っぽかったけど、顔が……あっ」
「どうした?」
「紐なしバンジーに挑戦しようとしてる人がいる」
「急な話題転換」
彼女の視線が再び空に向けられていた。どうやら例の天使(仮)達のやってる事に興味が移ったらしい。
「みんな止めてる。どうやら相当危険なチャレンジらしい」
「なあ、それより自称天使って何顔だったんだ?」
「みんなの静止を振り切ってやろうとしている。自信があるのか、はたまた蛮勇か」
「そんな語り部やらなくていいから。自称天使が何顔だったか教えてくれよ」
というか紐なしバンジーって、それただの飛び降り自さ……いや羽が生えてるなら飛べるか?
「そのまま紐なしのまま飛び降りて……!」
「……」ゴクリ
「……おー」パチパチ
「いやそこは語ってくれよ」
拍手しているという事は成功したんだろうけど、やはり何があったか気になってしまう。
「成功してたよ」
「質素な答え」
「みんな彼の事を褒め称えてたよ」
「知りたいのそこじゃないんだよなぁ」
もっと詳細を尋ねようとした俺だが、そこでハッとある事に気付き、スマホで時間を確認する。
「やべっ、もうすぐ昼休みが終わっちまう」
膝の上にある弁当はまだフタを開ける段階だった。早く食べなければと俺は会話を中断して食べる事に意識を向ける。
「……そういえばなんだが」
「なに?」
……だが、食べる前に一つどうしても確認しておきたい事があった。
「さっきチョロっと話してた自称天使って、結局どんな顔してたんだ?」
「ああ、それ? えっと、猿顔だったよ」
「……猿顔?」
「うん」
「……体は人で、顔は猿?」
「うん」
「……そうか」
それは顔が猿似の人じゃないのか、それとも本当に顔が猿だったのか、モヤモヤとした気持ちのまま昼休みが終了した。