(パリ……、ポリ……、モグモグ……)
「……」
(ペラ……、パリ……、モグモグ……)
「……おい、ヒシミラクル」
「なんですか~、トレーナーさん。あ、ジュースとってください」
「なんですか~、じゃねえわこのクソボケがぁ──!!」
「ひゃぁぁ!!? う~、耳がキーンとする~」
このクソボケウマ娘は俺の担当ウマ娘ヒシミラクルだ。菊花賞、天皇賞春、宝塚記念とG1を3つ勝利した自称ふつ~のウマ娘である。
「おめーは人の膝枕の上でなんで悠々自適にポテチ食ってんだ。制服やスーツにソファーにも結構こぼしてんじゃねーか、このクソボケミラクル」
「え~。宝塚記念勝ったご褒美の一部じゃないですか。夏合宿までは好きに間食とっていいって」
「だからといってなんで人の膝枕の上でポテチ食ってんだって聞いてんだよコッチは」
間食まではいい、許可したからな。だがなんで人の膝枕の上でポテチ食ってんだよ全く。どういう思考回路してんだこのクソボケは。
「トレーナーさんの膝枕がトレーナー室の中で一番いい枕なのが悪いんです。このあいだ膝枕してもらってから肘掛けや座布団だとなんかこう……、イマイチ合わないんですよね」
「だから寛ぐために俺の膝枕でポテチ食ってたと?」
「そういうことです(ドヤ顔)」
(イラッ)
「
コイツのドヤ顔がムカついたからやった。後悔も反省もしてなさそうなコイツが悪い。コレがG1を3勝したウマ娘なのか?
……そうなんだよな。俺の自慢の教え子のハズなんだよな……。(クソデカ溜息)
「そんな大きい溜息ついてたら幸せどころかミラクルも逃げちゃいますよ?」
「こんなクソボケを全国ネットで自慢の教え子だと万感の想いで紹介したのを後悔してる所だよ」
「……アレ、すごく嬉しかったんですよ?」
ん? なんか雰囲気変わったな。
「宝塚記念のインタビューで隣で恥ずかしがってやめてくださいなんて言ってましたけど、あの時ホントは嬉しかったんです」
『「勝った者が強い」という言葉がありますが、あえて言わせていただきます。ヒシミラクルは強いから勝ったのだと! 私が鍛えた自慢の教え子はグランプリを制するほど強いのだと!』
「あ、この人はこんな私に人生を賭けられるくらい期待してくれているんだって気付きました。それに最後の一歩を踏み出せないわたしの代わりに覚悟を決めていてくれたことも」
「……おう」
茶化す雰囲気じゃあないことだけは確かだ。……ようやく一皮剥けてくれたかな?
「トレーナーさんの、応援してくれるファンのみんなの期待に少しは応えたくて、宝塚記念で迷いなく自分を信じて走ることができて、あのメンバーに勝つことができました」
「みんなビックリしてたな」
「そうですね、少しは期待に応えられたんじゃないかと思ってます。……わたしじゃあトレーナーさんみたいに人生を賭けられるくらいの覚悟なんかできません。それでもわたしなりに全力で覚悟を決めようと思います。トレーナーさんと一緒に」
「そうか」
「だから……秋のG1シーズン、本気の本気で走るわたしを観ていてもらえませんか?」
「もちろんだ! ……それじゃあ早速覚悟を決めるか」
「え?」
あの時光るものがあると見出した娘がようやく覚悟を決めると宣言してくれた。何度も何度もプールトレーニングから逃げ出す様な娘が本気で走るわたしを観て欲しいと願ってくれた。それに応えないで何がトレーナーか!
「夏合宿、もう一度自慢の教え子だと紹介できるように厳しくいくからお前なりに全力で覚悟しとけよ?」
「うわ〜ん!! やぶ蛇だった〜!!」
覚悟を決めたことをもう後悔しているようだが、それでも夏合宿はきっといいものになるだろうと確信している。何故なら
「ところでトレーナー室で一番ってことは他にお気に入りの枕があんのか?」
「なんですか急に。まあ一番はダンツちゃんの膝枕ですね〜。やっぱりあの沈み込む様な弾力は癖になります。トレーナーさんの膝枕も悪くはないんですがぷにぷに感が足りません。もうちょっと脂肪つけませんか?」
「アホ、太腿よりも先に腹に脂肪が溜まるわ」
「あはは、ですよね~。(お腹ツンツン) ……痛い痛い!! グリグリ攻撃はやめてください! 謝りますから!」
……コイツがクソボケであることに変わりなかったわ。
今回のお話は膝枕されたままお送りしました。雑に叱っててもイチャコラしてるように見えてしまう雰囲気がヒシミラクルやフクキタルなどにはあると思います