「ん〜、よく寝た……。あれ?」
土曜日の昼下がり。カーテン越しの暖かい陽射し。扇風機のそよ風。い草の香りがする畳。こんな良い環境で取る仮眠は最高だわ。……ってウララ? いつからいたんだ?
「トレーナー……、ムニャムニャ」
うーむ、グッスリと眠っていらっしゃる。俺の太腿を枕にしてスーツをガッチリと掴んで離してくれそうにないな。あーあー、よだれも垂らして……、拭いてやらないと。
「むー」
……これでよし、あとはハンカチを頬の下に差し込んでおけばいいか。
「しっかし、何時見ても気持ち良さそうに眠ってるな」
こうしてみると日々研鑽を重ねるアスリートというよりは何の変哲もない一人の少女でしか無い。気ままな良い子のウマ娘、そう表現するのが一番ウララに合っていると思う。
「……やったー。……かてたよー」
レースに勝った夢を観てるのかな? 昔のレースか、はたまた未来の大きなレースなのか。見当はつかないがウララが嬉しそうなのでヨシとするか。
「よくやったな。えらいぞ」
そう声をかけつつ軽く頭を撫でてやる。気持ち良く寝ているウララを起こすのは気が引けるから邪魔にならない程度に。
「……えへへ~」
しばらく頭を撫でていると、途切れ途切れではあるがメロディーを感じられる寝言になりだした。……ホントに寝てるのか? ……寝てるな、間違いなく。
「ひびけ……、とどけ……」
……コレは『Make Debut!』か? ということは未勝利戦かな?
トレーナーたるもの担当ウマ娘のレースを覚えているのは至極当然だが、担当が初めて勝ったレースは目に焼き付いているものだ。
……懐かしいな。ハナ差で差し切っての一着。声を枯らして叫びまくった甲斐があったなあ。
「さきまーでー……、ありがとーございましたー……」
ウイニングライブもガラガラな声で声援飛ばしたなあ。……その後ウララにすっごく心配されたけど。
何にせよあの日は俺のトレーナー人生で忘れられない1日になったことは確かだ。本当によく頑張ってくれたよ。
「失礼します。ウララさんを知りませんか?」
おや。キングヘイローさんがウララを探しに来たようだ。右手の人差し指を口に当てつつ左手でウララを指差しして寝ていることを伝える。
「んもう、ウララさんったら……」
「仮眠から起きた時にはこの状態だったから俺もいつ来たかは分からないよ。でももう30分は寝てるかな」
「起こさないんですか?」
「逆に聞くけどキングさんは起こせる?」
「朝なら無理矢理にでも起こします」
「そういうことだよ」
畳に腰掛けたキングさんと小声で話しながらゆっくり過ごす。そうしてしばらくのんびりしているとようやくウララが目を覚ました。
「んぅ……。おはよ〜トレーナー……」
「おはよう、ウララ」
「……あれ? キングちゃんもいる〜」
「ええ、おはよう。ウララさん」
寝起きでポワポワとしていたがキングさんが用意してくれた濡れタオルで顔を拭いてやると次第に意識がはっきりしてきたようだ。
「スッキリしたか?」
「うん!! ありがとー!! トレーナー!!」
ところでキングさん。ウララに何か用があるんじゃないかな?
「ウララさん、今日はビコー先輩やカワカミさんとキャロットマンを観る約束をしているそうね? そろそろ時間じゃあないかしら?」
「あー!! そうだった!! 早く帰らなきゃ!! キングちゃん行こっ!! じゃーねー!! トレーナー!!」
「気を付けて帰るんだぞー!!」
「うん!!」
「ウララさん!! んもう!! すみません、私も帰ります」
「ああ、気を付けてな」
「失礼します」
慌ただしく帰っていった二人を見送ると明日も頑張ろうという気持ちが湧いてくる。気合を入れて立ち上がりやるべきことを見据える。ウララがもっともっと成長できるように。……まずはスーツを洗わないとな。
この話を書いている間にトランと温泉旅行に行けました。書いたら出るってやつなのかな?
初めてなので楽曲情報ちゃんと出来てるか不安です