実家住みおじさん、私道のど真ん中に湧いた邪魔なダンジョンと配信者どもをヘッドショットでぶっ潰す   作:CarasOhmi

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【始】実家住みおじさん、私道のど真ん中に湧いた邪魔なダンジョンと配信者どもをヘッドショットでぶっ潰す
#1 くたばれ!ダンジョン配信者


 令和の始め頃から、日本各地において「ダンジョン」が現れたという話は、今となっては皆の知る所だろう。俺の住んでいる北関東の実家の土地も、その御多分に漏れることなく、ある日突然ダンジョンが生えてきた。

 

 ダンジョンに眠るのは、産業用途にも用いられる「魔石」と呼ばれる結晶。最初はそれを国が独占管理するため、ダンジョンの湧いた土地はすぐに政府に接収されてしまった。しかし、雨後の筍のようにダンジョンが生えてくる現状では、国に権利を持っていかれることに地権者も反対するようになり、法整備が進んだ結果、ダンジョンの土地や構造物、中に眠る財宝はその土地の所有者に帰属し、必要に応じて自治体が買い上げるようになった。

 

 じゃあ、俺も実家の資産価値が上がってハッピーだったかというと、そうでもない。ダンジョンが湧いたのは、実家の私道のど真ん中だ。この辺りは車社会だ。この私道を売ったら、買い物に行くために車を出すこともできないし、宅配の車も玄関先までたどり着けない。というか、入り口の祠が邪魔で、何度も車のバンパーを擦っちまった。

 邪魔くさすぎて重機で解体してやりたいのが本心だが、ダンジョンは物理攻撃で破壊できない。いつだったか、ダンジョンに固定資産税をかける法案が出たこともあったが、世論の猛反発にあって潰された。まったく、当然だ。

 

 ……とはいえ、不便ではあるものの、これだけならまあ生活はできないことはない。だがしかし、このダンジョンにはもう一つ問題がある。それは「ダンジョン配信者」の存在だ。

 ダンジョン内のモンスターを討伐し、異世界考古学的な価値を持つダンジョン内部の映像を記録、魔石を回収して産業を促進する「現代の冒険者」。こう聞くと社会貢献性とロマンを感じるが、とんでもない。奴らがやってることは「山菜泥棒」と何も変わらない。

 

 まず落ち着いて考えてくれ。そのダンジョンがあるの、誰の土地だ?

 ……俺だよ!いや、正確には親父から土地を相続したおふくろのものだが、山林の管理をしてるのは俺だ。それを、なんで勝手に不法侵入してきた連中に、拾得物を持ち去られ、盗撮映像をインターネットで晒されなきゃならん。

 

 モンスター退治だって、奴らがやるのは殺処分まで。……それ放置したらどうなる?

 ……腐敗するんだよ!宅配便の兄ちゃんに「窓開けたらやばい臭いしたので……」って通報されたんだぞ!通報したいのはこっちの方だよ!

 

 極めつけは、その「冒険者自体」だ。幸いにして、ダンジョン攻略に際して「帰還の指輪(エスケープリング)」なる物が普及したおかげで、戦闘不能になった挑戦者はダンジョン内で腐乱死体になることはなく、祠の入り口に送還されるようになった。技術発展は素晴らしいな。

 ……そうだよ!祠の入り口に、ぶっ倒れた不法侵入者が重なってんだよ!おふくろが車出した時、間違って轢きそうになって大ごとになったんだよ!送還するなら自宅まで送れや!俺んちの道で倒れてんじゃねぇよ!

 

 そんなわけで、俺はリモートワークが終わって日が沈んだら、ダンジョンまで見回りをする手間が増えた。奴らのおかげで、しばらく悩んでいた運動不足がすっかり解消されてしまっている。くそったれ。

 最近じゃコスプレ配信者まで現れやがった。何のキャラか知らんが、エロい格好の女がダンジョンに入っていった。配信者連中に慣れっこになっていた俺も、これには流石にぎょっとした。それから三十分ぐらい後になって、おふくろが入口で倒れてるエロコスプレ女を発見した。見つけて通報したのがおふくろだったからいいが、俺だったら警察にあらぬ疑いがかけられたかもしれん。そういうのは渋谷のハロウィンでやれ。

 

 散々愚痴ったように、連中はとにかく邪魔だ。どこから嗅ぎ付けたのか、最初に配信者を見かけて注意した日から、加速度的に配信者が現れるようになった。きっと、あのガキが仲間内で共有しやがったんだろう。

 

 俺は決意した。このダンジョンは、俺とおふくろの平穏な生活を乱す、諸悪の根源だ。必ず除かねばならない。

 ダンジョンは重機でも壊せないが、永遠に存在するわけではない。内部のコアとなる魔石を除去することで、ダンジョンは再び地下深くに沈む。完全攻略をすれば、二度と挑戦できなくなる。そう、有名百科事典サイトにも書いてあった([要出展])

 ならば話は早い。このダンジョンを完全攻略してしまえば、奴らは俺たちの敷地に不法侵入することは無くなる。完璧な計画だ。

 

 俺は兄弟に招集をかけるべく、グループチャットに投稿した。

 

 ――「曖昧にしてた、親父の遺産分与を始めるぞ」と。

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――

 

 実家住みおじさん、

 私道のど真ん中に湧いた邪魔なダンジョンと

 配信者どもをヘッドショットでぶっ潰す

 

――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

「あっ!同業者の方を発見~っ!パーティー攻略してるみたいですね!せっかくなのでコラボ撮影でも持ち掛けてみましょうかw」

 照明の絵巻(ライト・スクロール)の明かりに照らされながら、スマホを持った若者が一人元気にしゃべっている。配信者だな。

 

「すいませ~ん!あなたも冒険者(ぼうけんしゃ)ですか~?」

「いいや、地権者(ちけんしゃ)だよ」

 

 俺は魔導猟銃(マジカル・ショットガン)のフォアエンドを引き、若造の上半身を吹き飛ばした。瞬間、指輪が眩く輝き、若造の身体が光の粒子になり、地上に送還される――

 

「ええ……カズ兄……初手で人間に発砲するの、人の心なさすぎない?」

「アメリカ流の挨拶だよ」

「……修学旅行の京都が最長移動距離でしょうが」

「ぶぶ漬けじゃ、配信者どもにはお帰り願えないからな」

 

 さて、俺のダンジョン攻略に同行する頼もしいメンバーは以下の通りだ。

 カッコいい二つ名もスキルもないので覚えないでいいぞ。

 

 

 

・山神カズヒロ(38):長男。俺。実家暮らし。魔導猟銃(マジカル・ショットガン)装備。

・谷岡フタバ(37):長女。結婚して別世帯に。魔導鉈(マジカル・アックス)装備。

・山神ミツキ(29):次男。大学卒業後、就職して独立。魔導円匙(マジカル・スコップ)装備。

・谷岡ハルト(13):長女の息子(甥)。ダンジョン配信好き。魔導映板(マジカル・タブレット)装備。

 

 

 

 甥っ子のハル坊はダンジョン配信好きということで、攻略ノウハウに詳しかったため連れてきた。教育に悪いからチャンネル登録解除しろと言いたいが、その辺は攻略が終わってからにしよう。へそ曲げられたら困る。

 

 ハル坊は、手元のタブレットをいじっている。……魔法のタブレット便利だな。ダンジョンまでwifi届くのか。ダンジョンはクソ迷惑だけど、こういう便利な発明だけは許せるな。

「あっ……この人、MOGURA(モグラ)かぁ……結構有名な配信者だね」

「なんかラーメンすすってそうね」

「言ってない暴言で音MAD作られたりしてない?」

「あっ、配信見っけ……、さっきのシーン結構ウケてるみたいだよ」

「やっぱり、『ざまぁ』感のある映像って人気出るのねぇ……」

 

 ハル坊のタブレットを見ると、まだ配信は続いているようだ。第一村人にショットガンで吹っ飛ばされた光景がウケたのか、赤スパ(10000円)が飛びまくってる。

 ……一瞬、ざまぁみろと愉快に思ったが、これがあのガキの収入になるのかと思うと、腹立たしさが勝る。ダンジョンを掃除して攻略済ましてくれるってんなら、まあ魔石持ってくのは構わねぇけどさ。こういう小遣い稼ぎ目当てで、人の敷地内でギャーギャー騒がれちゃ、たまったもんじゃない。

 

 俺は、送還されずに地面に落ちたMOGURA(モグラ)のスマホを拾い上げ、画面に向かって一言いい残した。

「こいつがスマホ返してと土下座してる様子は、サブチャンネルをご覧ください」

「そのネタはラーメンの人の方ね」

「言ってないって」

 

 俺は、アプリを終了し配信を切った。

 ……この俺の発言が、後日音MADの素材となり後悔することになるのだが、今は触れまい。

 

 

 

 

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