封印が解けた思ったら貞操逆転の世界になっておるじゃと!?どうなっておるのじゃ!? 作:ミタケ
「ぜぇ……! はぁ……! あぶなかった……!」
あれから何とか逃げ出せた我は、近場のこうえん? ……と言う場所で隠れたのじゃ。
「あの奴ら……! 我の事を愛玩動物か何かじゃと思っているのか!? ふざけるでないぞ……! 我は魔神じゃと言うのに……」
我はドーム状になっている、遊具の中で縮こまっていた……。
ううー。なんという体たらくじゃ。嘗ては女神に封印されるまで、無敗の身であったと言うのに……!
「変わり果てたこの身で世界征服等、どうやってすればいいのじゃ……」
己の変わり果てた、小さな手を見て一人呟く……。
嘗ては封印されるまで不敗であったこの身は今では、魔法もまともに使えず身体能力ですら女子供よりもか弱い……。
変わり果てた己の姿を見て、このままでは世界征服なんてできるのか? ……できないのではないだろうか、と言う不安に駆られる。
「このまま落ち込んでも仕方ないのじゃ。まずは、征服する世界の事を知らなくてはいかんな!」
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あれから数時間たったのじゃ。我は道行く人々から隠れたり、逃げ回ったりしながら情報を集めまわっていたのじゃ……。
わかった事は大きく分けて三つ。
一つ目は男女の貞操観念が逆転しておる、と言う事じゃ。
我が封印されてから色々あったらしく今では男という物はか弱く家で家事などの事を、女は外へ出稼ぎを行って男を養う……と言うのが常識になっていたのじゃ。
力関係も男より女の方が強いらしい……。下手したら成人している男は女児にすら勝てないだとか……。
二つ目は男女の比率という物が、あまりにも偏っているという事じゃな……。
これまた我が封印されてから色々あり、男の出生率が減少していったものらしいのじゃ。
なんとその比率は1対10000……もちろんこの1と言う物は男側じゃ。
何ともまぁ、奇怪な世界になった物じゃな。
それで最後の三つ目……それはこの世界は我が封印されてから5000年後の世界らしいのじゃ。
これを知った時、我は凄く驚いたのじゃ。たったの5000年でここまで変わるというのか……と。
存外我は人間族という物を、見くびっていたらしい。たった数千年でここまで変わるとは……。
だが、どれだけ調べても我が民である魔族の情報がなかった。我が民は潰えたのだろうか。
いや! きっと何処かでまだ生き残りはいる筈じゃ! ……我が民はそんなに柔じゃないからな!
きっと、思ったより人族が繁栄しておったから、人前に出ることができなかっただけじゃ。
我が民なら大丈夫! 我がこの世界を征服したら安心して出てくるはずじゃ!
だからまずは力を蓄えなければ……。力はまだ少し残っているが世界征服するには圧倒的に足りんのじゃ……。
「だから我が民が表に出れる世界を作ればいいだけじゃ! ……」
「だから……まだ大丈夫。まだ生き残っている筈じゃ……」
「女神にも任せたのじゃから安心じゃ……」
「だから……涙なんて出るでない……! ううっ!」
5000年と言う時間はあまりにも膨大なものだったらしい……。それだけのの年月が経てば人族は勿論、魔族も大きく変わるくらいの年月……。
それは良い意味でも、悪い意味でもじゃ……。
人族は大きく繁栄しただろうが魔族は……。
ここで5000年と言う膨大な年月を、身をもって感じてしまう。かつて歩いていた台地は、異界と呼べるまでに変わっている。
嘗て我が救済しようとしていた民は、誰一人残ってすらいないのかもしれん。
だとしたら、我はこの世界でただ一人……。我が生まれた意味である、魔族の救済……その対象がいない。
だとしたら、我は何のために生まれたんじゃろうな……。
そんなネガティブな、思いが心の中を渦巻く。
「ううっ……! うぁ……」
涙がボロボロと溢れて止まらないのじゃ。どうやら中身までも幼くっているらしいの……この世界で孤独。そう思うと悲しくて止まらない。
そうして、我は一人でなくのじゃった……。
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あれから何時間泣いたのじゃろうか……もうとっくに、日が暮れておるのじゃ。
夜の闇が支配する世界で、我一人ただ歩く……。
まるでこの世界で一人になったように。
「嗚呼まるでじゃなくて、本当に一人になっておるのじゃったな……」
この世界でただ一人の魔神……。
何処までも暗くて静かな、この世界は嫌が応にでも我一人だと伝えてくる。
「嗚呼、我は生きる意味もなくしてしまったのじゃな。このままどうするとしようかの……」
夜闇の中で孤独で歩く。
こんな状況、こんな世界だからこそ我の弱みがわかった。
……わかってしまった。
「我は一人という物が嫌なんじゃなぁ……。この世界で一人取り残されるのが怖くてたまらないのじゃ……」
我と言う存在はどうやら一人でいるという物が、あまりにも耐えがたい物だったらしい。
封印されているときは、魔族が繁栄しているかもしれない……と言うただ一つの希望を、藁にも縋る思いで信じていたのだが……。
こうやって現実に引き戻されると、どうにも嫌な物なのじゃな……
そうやって一人で考えて歩いていると突如声が聞こえてきた……。
「いや……! もうやめて!!」
……声的に少女の物だろう、どうやらいじめかなんかに会っているのじゃろうか。
人間という物は変わらない物じゃの……。何故同族同士ですら、争うのじゃろうか?
そう考えていたら不思議と足がその方向へと、向かっていることに気づいた。
何故かその方向に進む足……普段は無視していたであろうに、何故じゃろうか?
この身に余る孤独感から、逃げたいためじゃろうか? まあ、そんなことはどうでもよいじゃろう……。
たまにはそんなのもいいやもしれん。どうせこれから先……やることもなく、放浪していたであろうじゃからな……。
そんなこんなで、先程の声の方向へと歩き始めて数分ついにその場所に着いたのじゃ……。
その光景を見た瞬間、我は目を見開いた……。
何故か?
そこにいた人物が物凄く傷つけられたから? そこにいた人物たちの所業があまりにも惨たらしいから?
一部正しいが……完全に正解と言うには、物足りない。
では何故か?
それは……
それは
そこにいるいじめられていたであろう、少女には普通の人間とは違う部分があった……。
頭部に生えている角のような物……。
青い頭髪の下から、突き出ている黒……。
それは外ならぬ我が民の、魔族の象徴で……!
それを見た瞬間……今まで灰色になっていた世界が色づいていく。
我が生まれた意味が、我がこの瞬間まで生きてきた意味が再び浮かび上がってくる。
だがその少女は酷く傷ついていた。
着ている服はボロボロで、所々焼けている。肌も所々血が滲んでいる……。
魔族という物は、元から強い再生能力が備わっている……それは子供大人問わずに。
何故そんな再生能力あるのに傷が再生しないのか? 場合にもよるが体力がないのがほとんどじゃ。
何も魔族とは言え、何もなしでただ傷が治るわけがない……人間だって同じように、ケガを治すためにはそれ相応の栄養が必要じゃろう?
それと同じだ、傷を治すためには多くの体力が必要になる……。
ならばこの魔族の少女は、傷を治しきれないほど痛めつけられたのじゃろう……。
我は足に力を込めてその場に割入る……。
「あ? なんだこのガキ」
「おお! 姉貴! このガキ男だぜしかも角突きだ!!」
「……! マジじゃねえか! これは売っぱらっちまえば相当な金になるぜ!」
「女の角突きでさえ金になるのに男なんざどれ程なんでしょうか!」
「そこらへんは私もわからんな。売っちまえばすぐわかんだろ」
「だけどその前にちょっとぐらい楽しんでも問題ねえだろ」
「人間の男ですら中々会ぇねえんだ角突きの男なんて一生に一度レベルじゃねぇか?」
「そう考えると興奮するっす! 初めては譲るんで後で回してくださいっすよ!」
「わかったよ!」
なにやら後ろの方から下卑た声が聞こえるのじゃが、それはいったん無視じゃな……。
それよりも、今は目の前の我が民からじゃ。
目の前に居る少女を抱き上げて、目を合わせる。
「おい……少女よ。意識はあるじゃの?」
「……うぁ」
どうやら意識はあるみたいじゃの。なら問題ないのじゃ。一先ず安心じゃな。
「おい! そんなメスほっといて私らと遊ぼうぜ坊主!」
「後ろがうるさいの……どれ、少し待っとけ。お主の事は、後ろの奴らを黙らせてからじゃ」
嗚呼……どうやら我が民は、潰えていなかったらしい。じゃがそれが、いじめの対象になっておるとは……。
どの時代になっても人間という物は、変わらないらしいのじゃな……。
どうにもこの世界には我一人では無かったらしい。
女神はちゃんと頼み通りにやってくれたのじゃな……。感謝の念でいっぱいだ。
それはともかく
……我が民はちゃんとこの世界で生きておった。
これだけでどれだけ、我が救われたか……。
じゃがせっかく生きておる、我が民がいじめの対象とは……。
ならやることは一つじゃ……。
「頑張ったな……」
手で抱いている少女を一回地面に降ろしてから頭を撫でる。
すると少女は、安心したように目を瞑った。
「後は我に任せとけ……」
……さて、力は万全とは言えないのじゃが。
まぁ、小娘二人程度どうにでもなるじゃろ。
「よくもまぁ、我が民をいたぶってくれたの」
後ろを振り向いてそういう。
我はこの子たちの光だ……。
忌み嫌われる子たちの希望……。
この子たちを救うために生まれた存在……
「我は魔神だ……」
「何を言ってんだ? このガキ」
いじめっ子のリーダらしき小娘がそういった。
身体に魔力を込める……。
「せめて貴様らがあの子にやった分だけ、し返すまで死んでくれるなよ」
牙をむき出しにしながら笑う……。随分と弱体化してしまったが……。
こいつらを倒す分の魔力はある。
牙を剝きだして笑う姿は魔神と言えるだろうか? 生憎と自分の顔は見えないのじゃが。
なぁ、お前たち──
「どう見えてる?」
「な!」
「ひ……!」
少女達がそう言葉を漏らして後退った……。
さて、魔神の力……その一端を見せてやるとしよう……。
そうして我は、今一度我が民の敵を見据えるのだった……。
続いた……