路地裏で黒いライダースジャケットを身に付けている壮年の男が壁に背を預け天を仰いでいた。
「何故生きているんだ?それにこの身体は‥‥」
男‥‥‥‥『南光太郎』は自身の身体が創生王へと変化してしまう前の身体に戻っていることに気づく。
そして、自身の身体の変化に戸惑いを隠せないでいた。
「あの時、創生王となった俺の身体を葵がサタンサーベルで貫いた筈だ‥‥」
光太郎は創生王となった後、サタンサーベルによって身体を貫かれた。
しかし、その傷は今は何処にも見当たらない。
「俺は確かにあの時死んだ、一体どういうことだ……」
光太郎の脳裏には葵が泣きながら自らを貫く光景が浮かび上がっていた。
すると、表通りから轟音が響き渡る。
光太郎は路地裏を出て、その音のした方角へと走り出した。
「俺は普段から蜘蛛を虐め過ぎて怪人化した蜘蛛男爵様だ!!」
蜘蛛男爵と名乗る怪物は口から糸を吐き、破壊活動をしていた。
「まだ怪人がいたとは‥‥‥‥」
光太郎の腹部にサンドライバーが出現する。
「どうやらキングストーンも消えていないらしい……怪人は倒すだけだ」
「変‥‥身ッ!!」
光太郎の身体が黒いバッタの姿・ブラックサンに変わり、蜘蛛男爵は後退りする。
その姿を見た蜘蛛男爵は動揺の声を上げた。
「何っ!?貴様もヒーローか!?」
(ヒーロー‥‥‥‥?)
蜘蛛男爵の言葉にブラックサンは疑問を抱く。
「S級か?A級か?まぁいい問答無用!」
蜘蛛男爵は糸を吐きながら突進してくる。
ブラックサンは壁を蹴って三角跳びの要領で蜘蛛男爵の背後へと回り込むと、回し蹴りを放った。
「ぐっ!?」
地面を転がる蜘蛛男爵。
「おのれっ!!」
蜘蛛男爵はブラックサンに再び糸を吐きつけるが、ブラックサンは跳躍して躱す。
そして、空中で身体を回転させ、飛び蹴りを放った。
「ぐはっ!?」
蜘蛛男爵は吹き飛ばされるも何とか立ち上がる。
「こしゃくな真似を!!」
蜘蛛男爵は口から糸を吐くと、それを鞭のように振るい攻撃する。
すると、ブラックサンの近くの電柱が切断された。
「!?」
ブラックサンは蜘蛛男爵の糸を躱しながら、電柱が切断された原因を探る。
(まさかこの糸……)
今まで戦ってきた怪人とは全く異なる戦闘力にブラックサンは警戒する。
「くっ……」
ブラックサンは跳躍し蜘蛛男爵の頭上を取ると、飛び蹴りを放った。
「ぐはっ!?」
地面に倒れる蜘蛛男爵。
「おのれぇ……」
そしてブラックサンは、蜘蛛男爵の複腕部を力一杯踏みつけ引きちぎった。
「うぎゃぁぁぁぁぁぁ!?」
蜘蛛男爵は絶叫する。
「ひ、ひぃ……」
蜘蛛男爵は恐怖で後退りするも、ブラックサンはゆっくりと近づき容赦なく蜘蛛男爵に攻撃を加える。
「がっ!?ぐえっ!?」
蜘蛛男爵はブラックサンの容赦ない攻撃に苦しむ。
しかし、ブラックサンの攻撃は止まらない。
「あぎゃぁぁ!?」
そして遂に蜘蛛男爵は倒れた。
ブラックサンは蜘蛛男爵が倒れたことを確認すると、光太郎の姿に戻ってその場から去った。
「今の怪人は一体……それにここは何処なんだ?」
光太郎はゴーストタウンの街並みを見て呟く。
「とりあえず情報収集をする必要があるな……」
光太郎は乗り捨てられていた深緑のアメリカンバイクに跨がり、エンジンを掛ける。
「さて行くか……」
光太郎はバイクを発進させると、走り出した。
ゴーストタウンを出て、人々がいる街へと辿り着いた光太郎は近くにコンビニを見つけるとそこで新聞を買った。
そして近くの公園のベンチに腰掛ける。
(これは……)
新聞を見た光太郎は思わず呟いた。
「B市?ヒーロー協会?それに……S級ヒーロー?」
光太郎は新聞に書かれている内容を見て困惑する。
「何があったんだ?」
すると、警報のサイレンとアナウンスが鳴り響き始めた。
『B市に怪人が出現しました。災害レベルは『竜』。B級ヒーロー『ドラゴンマン』が交戦中です。付近の市民の皆さんは避難をお願いします』
「災害レベル‥‥‥‥?」
光太郎は疑問を抱きながらも、ベンチから立ち上がる。
「ここが何処だろうと、怪人は全てこの世から消す。俺のやることは変わらない」
光太郎はバイクに跨がり、エンジンを掛けると怪人のいるB市へと向かった。
「ぐははは!!俺様は『地帝グランゾーラ』様だ!!」
怪人は口から岩を吐き出しながら、暴れ回っていた。
「くっ!S級ヒーローはまだなのか!?」
怪人の攻撃で満身創痍のB級ヒーロー:ドラゴンマンは、S級ヒーローの到着を待つ。
「ぐはははは!!俺様に勝てる奴などいない!!」
グランゾーラは岩を口から吐き出し続ける。
(このままでは……)
するとその時、一台のバイクが来た。
「何だぁ?貴様は?」
「俺は……」
光太郎はバイクから降りると言う。
「創生王の器に選ばれただけの人間だ」
「創生王?ぐはは、面白い!貴様を喰らいその力奪ってやる!!」
グランゾーラは光太郎に向かって突進してきた。
光太郎は咄嗟に躱すと、拳に力を込めサンドライバーを出現させる。
「変身っ!」
そしてブラックサンに変身すると同時に、グランゾーラの腹部に拳を叩き込んだ。
「ぐっ!?」
吹き飛ばされるグランゾーラ。
(何だと!?この俺の装甲を素手で貫いただと!?)
グランゾーラは驚きながらも、再び岩を吐き出す。
「無駄だ」
しかしブラックサンは岩を避けながら跳躍すると、グランゾーラに連続蹴りを放った。
「ぐはっ!?(馬鹿な……この俺の装甲がこうも容易く……)」
ブラックサンの圧倒的な強さにグランゾーラは戦慄する。
そして次の瞬間、ブラックサンは勢いをつけたキックを放つと、反撃の隙も与えずグランゾーラを地面に叩きつけた。
「ぐっ!?」
グランゾーラは地面を転がる。
ブラックサンはグランゾーラに近づくと、腹部に拳を叩き込んだ。
(この俺が……こんな奴に……)
そしてブラックサンは更に拳を振るう。
「がっ!?ごふっ!?」
(馬鹿な……この俺が……)
そして遂にグランゾーラは倒れた。
ブラックサンから光太郎の姿に戻ってその場から去ろうとしたその時、S級ヒーロー:キングが現れる。
キングは倒れているグランゾーラに近づくと、光太郎に尋ねる。
「君が倒したのか?」
「そうだ」
光太郎はキングの質問に答える。
「そうか……君の名は?」
「南光太郎だ」
「南光太郎……か。覚えておこう」
(この男……只者ではないな)
キングは、光太郎がS級ヒーローである自分を前にしても全く動揺しない様子からそう判断した。
光太郎はバイクに跨がり、エンジンを掛けるとB市から去って行った。