その頃避難所では
「勝てる勝てないじゃなくっ!!‥‥‥‥ここで俺はお前に立ち向かわないといけないんだっ!!」
深海王がジェノスに攻撃しようとした瞬間、無免ライダーが背後から深海王に組み付いたことで阻止された。
深海王に振りほどかれた無免ライダーは力なく雨に濡れた外の道路のアスファルトへ叩きつけた。
しかし、無免ライダーは何度も立ち上がり深海王と対峙する。
S級・A級ヒーローを再起不能にした怪人にC級1位の無免ライダーが敵うわけがないということは、この場の誰もが理解していた。
だが、避難所にいる市民達は彼に最後の希望と願いを託した。
「無免ライダー、勝って!!」
「そうだっ!!無免ライダー頑張れぇっ!!」
応援する市民達。
「しつこいわ、雑魚の分際で。それに哀れな人間に現実を見せてあげるわ」
雨の水分を吸収した拳を繰り出す深海王。
その攻撃を避ける体力は無免ライダーにはもう残っていなかった。
そこへバイクに乗ってブラックサンがやって来た。
「そこまでだ……」
ブラックサンは、深海王の拳が無免ライダーに当たるまえに左胸にある黒い飛蝗の脚を無理矢理引きちぎり勢いよく振るって剣状に変化させ、深海王の右腕を斬り落とした。
「ぐあっ!?」
突如、攻撃を阻止され深海王はバランスを崩してその場に倒れた。
「遅くなってすまない」
無免ライダーにそう言いながらバイクから降りるブラックサン。
「あぁぁっ!!よくもやってくれたわね、人間風情が!!」
深海王は怒りの声をあげると、口から酸性の液を吐いて攻撃する。
しかしブラックサンはそれを避けるとジャンプしてキックを放った。
バキッ!!
そんな音と共に蹴り飛ばされた深海王の身体は数センチ後ろに下がった。
「くっ、このっ!!」
深海王は雨の水分を吸収して上半身の筋力を一時的に強化すると、ブラックサンに向かって突進しブラックサンの腹部にパンチを放つ。
するとブラックサンは防御態勢を構えたが吹き飛ばされて避難所の壁に激突し、瓦礫に埋もれる。
「ぐふっ!?(なんて威力だ……だが……)」
瓦礫に埋もれるブラックサンだったが、すぐに瓦礫を押しのけて立ち上がる。
そして深海王に向かって走りだすとジャンプして飛び蹴りを放った。
「はあぁぁぁっ!!」
しかし、深海王はブラックサンの攻撃を手で受け止める。
「ぐっ!?うおおぉぉぉぉぉっ!!」
それでも怯まず攻撃を続けるブラックサン。
「無駄……」
深海王はそう言うと、ブラックサンにパンチを放つ。
「ぐあぁっ!?」
その攻撃を受けて苦しむブラックサン。
(くそっ……力が入らない……このままでは)
その時……サイタマが駆けつけてきた。
「ジェノス、大丈夫か?」
「はい、サイタマ先生」
サイタマはブラックサンに視線を向けると言った。
「お〜い!!お前大丈夫か?」
すると深海王は怒りの声をあげる。
「この深海王の前で随分と余裕があるわね、人間の分際で」
深海王は口から酸の液を吐き、サイタマに向かって放つ。
だが……
「あぶねっ!!」
そんな声をあげながらジャンプして避ける。
「私達海人族は地上を統べる選ばれた存在!!そんな私に下等な‥‥‥‥」
サイタマは深海王に向かってパンチを放つ。
そのパンチは深海王に直撃し、深海王は粉々に吹き飛ばされた。
(強い……あの怪人をいとも簡単に)
ブラックサンも無免ライダーもそんなことを思うのだった。
そして雨は止み、雲の隙間からは日が差していた。
J市を恐怖に陥れた深海王率いる海人族事件から数日後のこと。
光太郎はいつものように怪人出現の知らせがあるまでZ市の廃アパートで過ごしていた。
(結局、今回は怪人が一体も現れなかったな……)
そんなことを思っていると、ドアをノックする音が聞こえた。
光太郎が扉を開けると、20代後半と思しき一人の男が立っていた。
「お前は誰だ?」
光太郎が男に尋ねる。
「私は‥‥‥‥」
すると、男の姿がクジラのような姿に変化する。
「海人族!?まだ生き残りがいたのか?」
構える光太郎。
「ま、待て!私は君と争いに来たのではない、話をしに来たのだ」
「話?」
するとその海人族は言った。
「私は海人族穏健派、深海王率いる過激派に追いやられた身だ」
「穏健派?」
光太郎がそう言うと海人族が続けて言う。
「そうだ、深海王率いる過激派が地上に進行する際に我々穏健派を一人残らず……」
「……そうか、それで俺にどうしろと?」
光太郎の問いに海人族は答える。
「深海王率いる過激派が倒れた今、私をここに匿ってほしいのだ」
そんな海人族に光太郎は言った。
「協力はしたいが、お前が人間を襲わないという保証はない。仮に襲ったとしても俺は容赦なく貴様を倒すぞ」
「安心しろ、私は過激派の連中のような野蛮な真似はしない。人間を襲ったりもしない。信用してくれ!!」
海人族の必死の訴えに光太郎は尋ねる。
「なら証明しろ」
すると、海人族はクジラの姿から先ほどの人間の姿へ戻る。
「私を含む一部の海人族は人間への擬態能力を持っている。擬態中は力は人間とほとんど変わらない」
「なるほど、わかった。人間を襲ったりしないことを誓ってくれるなら匿おう」
すると海人族は嬉しそうな声になる。
「ほ、本当か!?ありがとう!」
「あぁ。一応名前を教えてくれ」
「私は『イサナ』だ」
こうして海人族の穏健派・イサナは光太郎に匿われることになった。
ある日の夕方、廃アパートでイサナと過ごしていると扉をノックする音が聞こえてきた。
扉を開けると、そこにはヒーロー協会本部役員の姿があった。
「S級ヒーロー・ブラックサン、いたのか。良かった、はぁはぁ‥‥‥‥」
「協会本部役員が直々にやって来るとは、一体何の用だ?」
「S級全員に緊急招集命令が出ている、本部に来てほしい」
「わかった。イサナ、留守は頼んだ」
光太郎はイサナに留守を任せると、バイクに乗ってA市にあるヒーロー協会本部へと向かった。