「グサッ」
顔のほほに血が垂れて来る感触。
意識が朦朧として今にも倒れちゃいそう。
でも、何とか首のピンを抜こうと必死になる。
なんで?
多分それはきっと彼の為、
あのカフェで待っている彼の為、
俺と一緒に逃げない?と聞いてくれた彼の為、
砂鉄の味がする。
口の中が血まみれだ。
でも、歯を食いしばる。
今ここで「ボム」になればきっと、マキマを殺さずとはいかずとも逃げ切れることは出来る。
そうすればデンジ君とまた、、、
ピンに手をかける
、、、抜けない。
指が動かない。
きっとわかっているのだろう。
ここで今「ボム」になれば私はもう「ボム」としてしか生きられない。
それがどうしようもなくつらい。
「レぜ」でも「ボム」でもない。
私の本当の名前で生きられなくなっちゃう。
____早く、早く動いてっ
「ゴリッ」
「かはっ!」
心臓を貫かれた。
どんどん体が寒くなっていく。
景色が、、見えない。
ああ、私死ぬんだ。
っはあ、バカだなぁ
あそこで逃げてれば死なずに済んだかもしれないのに、、
私が死ぬっていうのにさ、デンジ君呑気にカフェで待ってるし
花束持ってる、、私が来るかもわからないのにね。
___受け取ってあげたかったなぁ
ちゃんとあなたの気持ちは伝わってます。
そう言えればどれほどよかったことか。
「デンジ君、私もね学校行ったことなかったんだ」
それとね、デンジ君
私の本当の名前は_____
何だったんだっけ?
目の前がブラックアウトした。
何処から私は間違えたのだろうか。
生まれた時からモルモットとして育てられて、
自由を奪われ、人すら愛すことが出来なかった。
私の人生は作られたものだったのだ。
盛大な余興に過ぎなかった。
今ここで死ぬために生まれてきたようなものだった。
あの時、施設から逃げていたら。
こんな気持ちになる前にデンジ君を始末できていたら。
もし、生まれた場所が違っていたら、
人生そのものが違ったんじゃないかと思う時がある。
デンジ君と私は隣の席で、普通の学校に通う。
肘でつつきあったりして、ちょっかい掛けたりして。
学校帰りにはアイスをかって、お互い分け合ったりしちゃって、
二人で、、、幸せに、、
そんな未来もあったのかなぁ
ああ、嘆かわしい。
でも、羨ましい。
出来ることならやり直したい。
今なら選択をきっと間違えない。
自分を愛して、幸せにすることが出来る。
あの時に戻れたら。
次はちゃんと「レゼ」でも「ボム」でもなく、「私」として、生きていくために。
でも、もう遅い。
死んでからじゃ遅い。
死体は喋ったりはしない。
気づくのが遅すぎたんだ。
そう言ってレぜは眠りについた。