七月のある日、俺はデートをしていた。
行先は水族館。
生まれてから行ったことがなかった。
というか、生まれてきて今日までそんな楽しかった思い出ない。
こんなこと、お袋の前では口が裂けても言えない。
いつか、行けたらいいな、くらいで思っていた。
でも、今日は違う。
隣に恋人がいる。
手をつなぎながら歩いちゃってる。
死んでもいいくらいの幸福感がある。
ただ単に手を合わせてるだけなのに、、、
「ね、デンジ君!どこから行く?」
「うーん、おれあ、でけぇの見たい!レゼのけつみたいな!」
ぼこっと腹を殴られる。
「もう、、、デンジ君のえっち」
かわいい
「そういうのは家に帰ってから...ね?」
そういいながら、上目遣いで見て来る。
なんて女だ。
それにしても家に帰ったら、、、か。
うん。今日は丁重にエスコートしよう。
そう心の中で決めた。
今まで最高の一日が始まった。
まずはジンベイザメから見に行くことになった。
「なあ、レゼ。ジンベイザメって食えんのかな?」
「うーん。どうなんだろ。でも、クジラとかは食べれるじゃん?だから、食べられるんじゃないかな。」
「あー、確かに。レゼ頭いいな!!」
「むっふー。でしょでしょー」
「レゼはさ。なんか見たいものとかある?」
「んーーーあ、ネオンテトラは見たいかも」
「ネ、、ネオンテトラ?」
「そういう魚がいるんだよ。それ見たい。」
「よし。それも見に行こう」
ふっとレゼが手を差し出してくる。
こちらを見ず真っすぐ正面を向いている。
何だかそれがとても愛おしいことに思えた。
あー、緊張する。
手汗大丈夫かな?
意を決してぎゅっと握る。
レゼの手汗も俺の手汗もすごかった。
「ふふっ、デンジ君手汗すごいね」
「レゼも手汗凄いぞ」
「だって、緊張してるんだもん」
「実は俺も」
「ふふっ、あはっ」
「ははっ」
何だかおかしくて笑ってしまう。
心が揺らいでいる。
すごく楽しい。
幸福だ。
俺の人生唯一の幸福だった。
_____
二人で飯を食って、魚を見て回って、ゆっくり歩く。
薄暗い暗闇の中、水槽の明るさだけがやけに目についた。
何故か気だるく、まどろみのなかを歩いているみたいだった。
暗闇の中、二人だけの世界みたいだった。
お互い顔を合わせたりはしなかったけど、
泣いてるようなそんな感じがした。
暗闇の中、微かに照らされている彼女は美しかった。
______
「今日は楽しかったね。」
「な!めっちゃ楽しかった!」
「よかったよ、そんなに喜んでくれてさ」
「俺、今まで行ったことなかったから嬉しかったよ。おふくろも仕事ばっかで誘う相手も居なかったからさ」
「そっか。また今度行こうね約束だよ?」
「おう!約束な!」
そういいながら指きりげんまん。
話すのかと思えば握り方を変えて恋人繋ぎ。
とても暖かかった。
そして家に帰ってからは、、、
まあ、お楽しみだな。
夜はふけていく。