長い時間夢を見ていたみたいだった。
体がどうしようもないくらい気だるい。
はあ、プールに入りたいな。デンジ君と。
どうせ私は地獄行きだろうから、彼とはマグマ風呂か。
いやだなあ、熱いのは。
そんな杞憂をしていた。
すると、肌にだれかが触れて来る。
あの世っいうのは触覚があるのだろうか?
そう思い目を見開く。
「レゼ、早くしないと罰則が下っちゃう。早く行こう」
「え?え?」
どういうことなの...
目覚めると私はあの施設にいた。
「どうしたのレゼ?具合でも悪いの?」
「お、お姉ちゃん..なんでいるの?」
お姉ちゃんは確かイラクの紛争地帯に派遣された際に亡くなったはず。
おかしい...どういうこと。
「本当に大丈夫なの?」
「ねえ、お姉ちゃん。お姉ちゃん紛争地帯って行ったことある?」
「何言ってんの。この施設からすら出たことないじゃない。」
私はどうやら過去に戻ったらしい。
______
一週間がたった。
姉と懐かしい友人たちと話す中で、分かった子がある。
それは今は日本に行く五年前だという事。
つまり、私には五年間の準備期間、猶予がある。
一つ目標を立てた。
それは五年後この施設から脱走するという計画。
そのためには、協力者がいる。
一人では実現できない。
私は仲間探しから始めることにした。
「おはよう!レゼ」
「おはよう、イズニクゥ」
彼女はイズニクゥ。この時代に戻ってくる前にも仲良くしていた子だ。
私が日本に行くのと同時期に、戦地へ赴いてしまったが。
前の時代の彼女は元気だろうか。
まぁ、ともあれなんやかんやでこの時代でも仲良くさせてもらっている。
見た目は金髪に透き通るようなブルーアイ。
みんながイメージする通りの見た目だ。
顔もくそ可愛くて、スタイル抜群。
、、、デンジ君に会わせるのはやめておこう。
まぁ、万が一にもぉ、好きになっちゃったら困るしいぃ?~
仮にも、前の時代で恋人らしい事やっていたわけでぇ~
という事で、彼にイズニクゥは会わせません!
残念!
まぁ、と言ってもここまでの美人はそういない。
そも、金髪はロシア全土で十パーセントくらいしかいないのだ。
この施設内にも十何人くらいしかいないのだ。
そして、何故かこの施設には純粋なロシア人よりも多国籍の子供が多い。
アジア系の顔立ちに、中南米の顔立ち。
噂によると、人身売買で子供を施設が買っているとか。
道具としての素質がある子は施設に。
ない子は悪魔に間引かれる。
そんな闇深い話をよく聞くのだ。
「レゼ、本当に逃げるの?」
「うん、本気。マジのマジ」
イズニクゥが小声でぼそっと呟いてくる。
彼女にはもう脱走の話をしていた。
彼女の信頼できる友人に口伝してもらうためだ。
と言ってもまだ二、三人程度にしか言っていない。
いつこの話が広まってもおかしくない。
そうなれば、間違いなく処刑される。
それだけは避けなければいけない。
信頼できる人間を選別して反乱軍を作る。
レゼの脱走するという目標は進んでいた。
______
「でも、レゼ。なんで貴方いきなり逃げたいなんて言い出したの?」
「逃げたかったから。」
「なんで?」
「なんでもだよ。イズニクゥ」
「私は一生この施設で社畜として生きていく」とか言ってたのに」
「そんなこと言ってた?」
「すごい遠い目をしながら言ってたよ。」
えぇ、昔の私そんなんなの?
口から爆弾出るぐらいに恥ずかしいぃ
ボンっ!
「そんなこといいからさー、本当は何でなの?」
「ん~」
理由、理由か。
デンジ君と会いたいから
そのぐらいしか思いつかないなー。
あ、でも結婚はしてみたいかも。
一緒に逃げてくれるっれことは、プロポーズみたいなものだもんね。
「愛の告白をしてくれた男に会いに行くため?かな」
「ええ、レゼいつの間に!?」
両手で口をふさぎながら、目をかっぴらいているイズニクゥ。
「夢の中でね。言ってくれたの。」
「なんだ~夢の話かー」
そう、夢みたいな日々。
二人で泳いだプール。
鼻先10センチで語り合ったあのカフェ。
そして、彼との口づけ(出血多量の)
あの居心地のいい空間の中で、私は初めて生きていてよかったと思えた。
未だに鼻孔の中に残っているコーヒーの香りが抜けきらない。
心の中に、なんて言葉じゃ形容しきれない。
体の奥深くに刻まれているのだ。
彼の記憶と匂いは。
きっとこの世界でも彼はいるはずだ。
もう一度会いたい。
そんな思いだけでこの灰色の世界に抗う勇気が出てくる。
だからこそなのだろうか。
「もう一度会いたいな」
ふとした時、ぼそりとそう呟いてしまうのだ。