「最近レゼの様子がおかしい」
そう、おかしいのだ。
今まではどちらかと言うとおバカ系のキャラを演じていた。
誤解されるかもしれないが、これは決して陰口ではない。
事実なのだ。
あの子は頭がいい。だから他人に求められている自分を演じる。
いうなれば悪癖だろう。
需要と供給を分かっているのだ、あの子は。
私はずっとそんなレゼしか見てきてないから、特に彼女に言ったりはしなかった。
何をって?
「その強化外骨格いつ取れるの」って。
さすがにそこまで悪魔ではないよ。
とはいえ、友達としては何とも言えない感じだった。
決定的に変わったのは確か二週間前。
軍事演習があった時。
私は第三班で、レぜは第一班。
リゼ姉ちゃんも一班だった。
この時ばかりは上官の首を袈っ切ろうかと本気で思ったね。
なんで私がレゼとリゼ姉と一緒じゃないんだ。
おかしいだろ。
まあ、結局その日も一歩間違えれば死ぬ地獄は無事に終わった。
軽い足取りで相部屋に帰るとリゼ姉がいた。
ばっと、こちらに勢いよく振り向くリゼ姉。
「うわぁあ!びっくり仰天よ」
「聞いて驚くなよ、イズニクゥ」
「な、なに?どうしたの?」
すーと深い深呼吸をしてからこちらを見る。
「レゼの頭おかしくなっちゃった」
「え?」
______
その日からレゼは変わった。
目に光を持つようになった。
前までは何か諦めてしまったようなそんな瞳をしていたのに、
異常なまでの生への渇望が感じられるようになった。
それに加えて彼女はこの施設から脱走する。
外に出るという目標が出来たらしい。
正直聞かされた時はこいつ正気か?と疑ったものだ。
だが私は協力した。
理由は簡単。前のレゼより今のレゼの方がいいからだ。
前のレゼは上層部から死ねと言われれば本当に死んでしまうような脆さがあった。
生への執着がなかったんだろう。
だが、この施設そのものが使い捨ての兵器の生育所みたいなものだ。
そんな非情な命令が来ることもあるだろう。
それだとまずい。
だが今のレゼならそんな命令はねのける。
そんな確証に近しいものがあった。
私はレゼがより幸せに生きられる方を選択する。
これは絶対だ。
たとえレゼが望まなくとも。
この件を知っているのは今のところ三人。
私、レゼ、リゼ姉。
だがリゼ姉はこの作戦を黙認するのだろうか。
おそらく何十人もの犠牲は必ず出るだろう。
ハイリスクハイリターンだ。
リゼ姉はどう考えているのだろうか?
私は彼女の部屋へと足を運んだ。
______
「リゼ姉、脱走の話どう思う?」
「どう思うって何が?」
「どう思うかってこと」
「うーん、そう思うね」
「......」
リゼ姉はガチなのか冗談なのかマジで分からん。
「まぁ、おふざけはここまでにするとして、脱走は私個人としては反対」
「...それはどうして?」
「リスクが高すぎる。リターンに見合ってない。脱走できたとしても外で生きていける保証もない。それに軍がおってこないとも限らない。いかにモルモットと言えども、この施設の情報を漏らす可能性がある限りは。」
そう、それが問題。
軍を制圧することが必須条件なのだ。
それが前提条件として進んでしまっている。
軍直属の悪魔達との契約はあと5年後に行われる。
脱走する場合悪魔との契約直後か、契約を結ばずに行うことになる。
前者の場合能力を扱いきれない。
後者の場合、制圧を諦めなければいけない。
どっちにしても詰んでいる。
それに側には齢8歳にして、悪魔の力を使いこなした秘密兵器があると聞く。
私はレゼをサポートすべきか、しないべきなのか、、、
「まぁ、私個人としてはそう思うがレゼのサポートは勿論するがな。」
「えっ?どうして」
「あの要望も欲しいものも、何か行動を起こすこともなかったレゼが脱走すると言ったんだ。あの子を変える何かがあったんだろう。きっとそれは良いことで今までにない変化だ。」
リゼは一呼吸おいて、ゆっくりとつぶやく。
「だからこそ、姉としてあの子を支えなければいけないだろ?」
深く考えれる必要はなかったのかもしれない。
ただ、あの子を支える。
自分の命が費えようとも守り切る。
それが私の勤めなんだ。
覚悟が決まった。
そんな一日になった。
_____
最近俺ぁ、変な夢見る。
クソを食ったみたいな夢だ。
そのせいで寝起きは最悪だ。
朝、起きる前に必ず変な女が出て来る。
首んとこに変な飾り付けてる女だ。
んで、めちゃくちゃかわいい。
その女と出かける夢だ。
カフェん所で話したり、二人で夜の学校に行ったり、花火見たり。
俺ぁ、そんなところ行ったことねぇのによ。
第一ぼろ小屋で借金だらけだし。
デビルハンターもやんなきゃだしな。
でもよ、ポチタ。
その夢見るとよ、どうしようもなく悲しくなるんだよ。
なのに、その女に会いてーと思っちまうし。
俺の心と体はめちゃくちゃになっちまった。
だから、泣いちまうんだ。
この夢見ると。
______
朝起きる。
「はぁはぁ」
嫌な夢を見た。
マキマに殺される夢。
いや、実際には夢ではなく現実にあったことだけど。
右腕を貫かれて、最後に心臓を貫かれるあの感触。
目の前に私を待っている人を見ながら、死んでいく喪失感。
指をくわえてみることしかできなかった。
あの時、確かに心も体すらも彼に委ねたいと思えたのに。
彼に触れるはずだった肢体をあの女に触られた嫌悪感。
今度は絶対に間違えない。
必ず彼と会う。
何を犠牲にしてでも、彼と幸せに生きる。
そんな決意を胸にレゼは歩き出した。