Re.レゼ   作:mokahurapeto-no

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reze?

 あれから、約半年が経った。

 

 長い、、本当に長かった。

 

 やっと舞台は整った。 

 私たちは一週間後、この施設から脱走する。

 

 私たちは、、、脱走した。

 

 

 

 

 

______

 

 

 

 

 

 

 「ガタッ!ガタガタガタ」

 

 暗闇の中嫌な音がする。

 地面が揺れている感覚。 

 訳が分からないが不快感が常に付きまとう。

 

 不意に誰かに触られた感覚がした。

 目を覚ます。

 

「ねーちゃん!大丈夫かい!?」

 

 大柄の男が運転席からそう言ってきた。

 どうやら私は車の荷物台の上にのせられていたらしい。

 

 私?不意にそう思った。

 

 「私って誰だっけ?」

 

 不意に視界の左側を見る。

 草原地帯なのだろうか?草木が生い茂り、小麦の様な物が風邪に当てられなびいている。

 黄金色に光る夕焼けが大地を黄金色へと変貌させていた。

 

 何故か分からないが、私はこれを見るために生まれてきたんだと思った。

 強くそう思った。

 

 訳が分からず混乱、、いや混乱を通り越して冷静になっていた。

 きっとこれは取り乱すよりも良くないことだ。

 

 だが、この景色を見た私は少し安心した。

 ああ、たぶん大丈夫だと。

 

 

 

 

 

 

______

 

 

 

 

 

 

 あれから、運転手に話を聞いた。

 彼曰く、いきなり一人が話しかけてきたと。

 そして私を田舎町から、都市部まで運んでくれとそう言われたらしい。

 その際、かなりの金額をもらったのだとか。

 

 幸いなことに、運転手は優しい人だった。

 よかった、よかった。

 いざという時、玉を蹴り飛ばす必要がなくなった。

 

 あれから、丸二日かけてフライトがある、空港まで運んでくれた。

 ついた際に労いの言葉と私宛に謎の女から預かっていた金銭をくれた。

 半年は楽して生きれる額だ。

 ありがたい。

 

 私はたぶん記憶を失っている。

 ただ幼少期の頃の記憶と基礎的なことは覚えていた。

 そうだな。例えば飛行機の乗り方。金銭の数え方。社会情勢など。

 社会的な模範は記憶に残ったままだった。

 

 ただ、青年期。

 ざっくり行ってしまえば5歳から今日までの記憶がない。

 記憶だけがない。

 

 でも、なぜか行きたいところは決まっている。

 日本だ。

 なんでかはわからない。

 

 ただどうしても行かなきゃいけない気がする。 

 どうせ行きたいところなんて他にはない。

 日本に行こう。

 私はそう決意した。

 

 

 

 

 

______

 

 

 

 

 

 

 飛行機に乗り、長々とした旅が終わる。

 うう、頭いたい。

 気圧のせいだろうか。

 機内からターミナルを通り空港から出る。

 暑い日差し、じめつく空気、額から滴る汗。

 

 自分は本当に知らない国に来たんだという実感。

 本当に日本に来てしまったんだな。

 そう感じた。

 

 さて羽田のターミナルに着いたはいいものの、これからどうするべきだろうか。

 

 一先ず、都心の方に行こう。

 何となくそう思った。 

 

 移動、休憩、移動、休憩。

 いや、酔う事よ。

 ろくに車なんて乗ったことなかったのだろう。

 全く、不便な体だよ。本当に。

 

 都心に着いてからまず弁当を食べた。

 幸いなことに日本語は何故か喋れた。

 なんでかはしらないけど。

 もしかしたら私って優秀?

 ふっふっふっ。

 

 なーんて。

 傍から見たら美少女が変質者に見えかねない行為をやっていた。

 

 そんなニヤついた笑みを浮かべていると店員さんが話しかけて来る。

 「はい!いらっしゃい!なんにしましょうか!?」

 「そうだなー、...じゃあ!幕の内弁当で!」

 「お嬢ちゃんセンスあるねぇ、はい八百五十円ね!」

  

 そんな他愛もない会話を続けていた。

 そんな中、ふと店員のお婆さんが口にする。

 

 「最近は悪魔出てるらしいから、あんたも気を付けなさいよ~」

 「悪魔?」

 「そう、悪魔」

 「どこらへんで出るんですか?」

 「最近は千代田区あたりでよく出るって言われてるわねー」

 「千代田区、、、」

 

 悪魔。

 何となく引っかかった。

 耳に残る言葉。

 

 私の過去の記憶を戻すヒントかもしれない。

 千代田区に行こう。

 

 そして私の当面の方針は記憶を戻すことに決まったのだった。

 

 

 

 

 

______

 

 

 

 

 

 その日私は河川敷の下で寝ることにした。

 寝むる。

 静かだ。

 何もない。 

 でも、すべてがある。

 そんな途方もない矛盾の言葉を反芻するようにつぶやく。

 

 疲れたな。

 

 その瞬間強烈な眠気が襲ってきた。

 意識は途切れた。

 

 

 ああ、またこの夢か。

 たまに同じ夢を見る。

 

 大切だった誰かとの記憶。

 前までは確かに覚えていたはずの彼の名前。

 そして、何もできなかった無力感と脱力感が胸にしこりとしてのこっている 。

 

 彼は、、、いったい誰だったんだろうか。

 私は今日も眠る。

 

 かつて手を握っていた誰かの体温を残して。

 

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