「チュンチュン」
鳥の鳴き声が聞こえる。
絡みつくような熱波と雲一つない青空。
二日目の朝が始まった。
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熱い、ひたすらに熱い。
日本の夏ってなんでこんなに熱いの?
手をパタパタ仰ぎながら、天を仰ぐ。
手持ちのロシアルーブルを日本円に変えて、電車を乗り継ぐ。
昼間だったので、人込みは少なく快適だ。
背中を壁にもたれ掛け、首を横に倒す。
風景が見える。
マンション、マンション、建造物、マンション。
もうちょい自然は無いのかね、、、
ふうとため息とも、深呼吸ともとれる息を吐く。
「会いたいなぁ」
誰に?
なんでこんなこと言ったんだろう。
最近やたらとぼおーっとする。
考えても行動できないことが増えたような。
きっと疲れているんだろう。
金銭はなるべく使いたくなかったが、今日は美味しいご飯でも食べに行こう。
それから、何駅も乗ってはおり、乗っては降りを繰り返し目的地に到着した。
自分が来る前に抱いていたの本のイメージとはずいぶん違った雰囲気に息を呑んだ。
もっと、活気あふれて自然があふれている島国。
そう思っていた。
実際は全方位に並ぶ住宅街。
駅前のショッピングモール。
死んだような目で歩く人々。
人口物で彩られたようだ。
まあ、そんなもんだろうと自分に言い聞かせる。
ぶらぶらと何処を目指す訳でもなく、感覚だけを頼りに歩き進める。
すると、一つの店が目に着いた。
古い内装の中華屋。
まあ、地味と言えば地味だ。
でも、これはこれで味がある。
期待できそうだ。
「ガラガラ」
中華屋特有の建付けが悪そうな音が響く。
「いらっしゃいやせー」
少しざらついているような、
そんな音が響く。
初めて聞いたのに何だか懐かしい声。
声の方をたどっていく。
其処にはツンツン頭の黒髪の少年が立っていた。
その姿を見た瞬間、心臓の呼応が少し早くなった。
焦る気持ちを抑えるように、ゆっくりと席に着く。
黒髪の少年の目の前のカウンター席だ。
「お兄さんのおすすめはどれですかぁ?」
猫なで声でたずねてしまった。
いつもならしないはずなのに。
言った後でなんだが、猛烈に恥ずかしくなってきた。
「んー、そっだなー。あ!チャーハン!うめえよ」
「なら、チャーハンでお願いします」
先ほどの失態を踏まえて、今回は気を付けた。
どうしても目で追ってしまう。
名前...なんて言うんだろ。
あ!ネームプレート。ネームプレートを見れば、、、
「デンジ」
デンジ?
随分と珍しい名前だなあ
聞いたことないや。
イメージだと一郎か、三郎か、次郎だったのに。
でも、デンジ君か...
うん、悪くない響きだ。
「デンジ君は田舎のネズミと都会のネズミ...どっちが好き?」
「うお、、いきなりだな。しかも名前呼びだし。まあいいか。」
うーんと言いながら首を傾け、顎に手を添える。
一頻り唸った後口を開いた。
「今は田舎のネズミが好きだな。平和だし」
「ふふ、デンジ君。私も田舎のネズミの方が好きだよ。」
彼がそう言ってくれた時、どうしようもないくらいの嬉しさがこみあげてきた。
ただ、ひたすらにこの目の前にいる少年がいとおしい。
そう思えたのだ。
_____
お袋の店の手伝いしてたら、変な美人が来た。
顔はめっちゃ美人。
今までにあった女で一番いい面だ。
でも、俺は信頼しない。
むしろ、面のいい女ほど危ないんだ。
俺は過去の経験から学んだからな!
にしても、この女ずっと俺の事見てきやがる。
調理してる時も食材切ってる時も、おまけに下の名前で呼んできやがる!
普通「店員さんー」とかだろ!?
ぜってー俺のこと好きじゃん。
俺の直感は当たる。
間違えない。この女俺に惚れてやがる。
だったら話は早え。
「なあ、俺のこと好きなの?」
直接聞いてみることにした。
「そうだね。うん。多分好きだと思うよ。」
「へ?」
いや、なんか。うん。
自分で聞いてなんだけど、マジ?
今まで女に好かれたことはおろか、告白されたことだってなかったんだぜ?
それがこんな面のいい女が言ってくるか?普通。
答えは簡単だ。
この女は嘘をついてるか、普通の女じゃねえってこった。
「マジで?」
「自分から聞いたくせにぃ?がちのマジだよ」
「お前みたいな面のいい女が俺のこと好きになるわけねぇ」
「あら、もしかして私の事口説いてる?「面のいい女」なんて。積極的だなーデンジ君は。後私レゼね」
「え?レゼ?」
「そう、レゼ。私の名前。次からそう呼んでね」
「ん、あぁ...」
「いや、まあそれは置いといて、面がいいのは認めんけどよ」
「ふふっ、君のそうゆうとこが好きなんだよ。」
「なあ!?まあ嬉しいけどよ。何で俺なんだ?」
「そうだなー」
うーんといいながら、首を小動物の様にこてっと傾け人差し指を添える。
かわいい。いや、マジでかわいい。
さっきまで美人にしか見えなかったのに急にめっちゃ可愛く見える。
ずっと見てられるぜ....
そう思っていたら、不意に彼女がこちらに目線を移す。
「君に一目ぼれしちゃったんだ」
好き......
デンジの何度目かもわからない初恋の瞬間だった。