素敵なカードショップ MeeKing へようこそ 作:MrBento
秘宝カード一枚だけ出して、クリーチャーを出さずにターンエンドした指輪の少年。
ミカドくんは少々訝しみながらも自分の手版を宣言する。
「よくわからんカードが出てきたが……フィールドががら空きだぞ! レディ・アップ・キープドロー! 魔石<黄金都市・ゴールドーン>を発動!」
初手がボルックだったし、やはりミカドくんは今回オーソドックスな<ゴルゴルトレジャー>で来たか。
王金覇者の専用サポートであり魔土地である<黄金都市>には3種類ある。
王金覇者のクリーチャーにで条件付きの復活効果を与え、デッキの耐久度を補強する<黄金都市・ローディリウム>
王金覇者のクリーチャーが倒されるたび、手札を追加し展開を加速させる<黄金都市・ラピュータ>
そしてミカドくんが使ったゴールドーンは……
「<王金の従者・ボルック>で敵プレイヤーを攻撃!」
「っ……ライフで受けるっ!」
愛嬌のある顔をした亜人の従者が、手にした針を精一杯振り回す。
指輪の少年はその様子によほど驚いたのか、犬にでも追い回されるように手を振って大騒ぎをしていた。
あの様子だと、バトルフィールド使うのは初めてかな? 最初は驚くもんなぁ……
「クソッ、ダメージを受けたからライフデッキを捲らせて貰う……土地をコストゾーンにセット!」
その様子ににんまりと笑うミカドくん。
序盤は相手を加速させてしまうので攻撃力の低いクリーチャーでは攻撃を控えたりもするが、<ゴルゴルトレジャー>ならこの動きが正解だ。
「フハハやったぞ! <王金覇者>のクリーチャーがダメージを与えたので、<黄金都市・ゴールドーン>に<ゴールデンカウンター>を置かせて貰う!」
「えっ、ええ!? なんだよそれ!?」
魔石<黄金都市・ゴールドーン>は<王金覇者>のクリーチャーの特定の行動に連鎖して、<ゴールデンカウンター>を財宝の如く蓄え、それを消費することで様々な対価を得ると言うデザインの魔石カードだ。
カウンターを溜めれさえすれば、召喚コスト軽減や相手の魔法打ち消しなど、かなり幅広い状況に対応できる。
「まぁ、序盤にを除去されるとカウンターごと消えるんだけどね……」
二人に聞こえないように小さな声で呟いた。
ゴールドーンはマジで出来ること多くて色々と悪用出来る万能カードだが
<放火範ゴブリン>などの除去一発で吹き飛ぶ儚い存在でもある。
ある程度カウンターが溜まっていれば、カウンター消費の打ち消しで対抗出来たりもするけど、それでもやっぱり除去の多い相手は苦手だ。
ミカドくんがマキヤくんに負け越しているのも、
黄金都市を守りつつ中盤以降強力なクリーチャーで殴っていく、ミッドレンジの<王金覇者>に、豊富な除去がガッツリと刺さっているからだろう。
「そしてさらに 1/4・クリーチャー<黄金の右腕・ジーノ>を召喚、ターンエンドだ!」
<黄金の右腕・ジーノ>低コストで使いやすい序盤の壁役だ。
特殊な能力こそ持たないものの、2コストでタフネスが高めでとても使いやすい。
「クッ、なんとか流れを掴まないと……俺のターン!レディ・アップキープ、ドローフェイズ」
指輪の少年は少し悩んだあと、手札から一枚のカードをフィールドに召喚した。
「召喚! 来てくれっ! <セイレーンの涙・ウェパル!>」
指輪の少年の叫びと共に、青い衣装の三叉槍を持った少女のクリーチャーが現れる。
――ちょっと待て、やっぱりそのカードも知らんぞ!? ステータスは3/1で、能力が……
「ウェパルは”速攻”能力を持ってる! さらに瞬間魔法<光子の煌めき>を発動、フィールドの<魔縁召還>
やっぱり知らないテーマだ!?
クリーチャーも専用サポートらしきカードも初見で、思わず椅子から腰を浮かせてしまった。
「やっぱりこれは……初めて見るテーマね」
「えぇ、少なくともうちの店では一度も取り扱ったことない……筈です」
絶対にないとは言い切れないのは、山のように積もったストレージの整理が全く終わっていないからだ。
絶賛僕とサレンちゃんで整理を進めているが、果たして終わるのは何時になることか。
ほんっとにうちの店長はマジでさぁ……巨乳の美人じゃなければ許されないよ。
「俺はウェパルのパワーを+2して、そのまま攻撃だ!」
「なら我は<王金の従者・ボルック>と<黄金の右腕・ジーノ>でダブルブロックする!」
少女の足元に湧きだした水から波が渦巻き、その波を身にまといながら少女が疾走する。
少女が手にした三叉槍が、金色の義手の守護者ごと、背後の亜人の従者を貫き消滅させる。
だが少女もそのまま力尽き、泡となって溶け消えた。
「破壊されることで<王金の従者・ボルック>の効果発動! コスト4までの<王金覇者>のカードをデッキから手札に加える!我が指定するのは<近衛騎士ロウガ>だ!」
そして再びニヤリと笑い。
「<王金覇者>のクリーチャー2体が破壊されたので、<ゴールデンカウンター>をさらに2つ<黄金都市・ゴールドーン>に乗せる!」
「しまった!? いや、まだまだ五分だ、落ち着け、落ち着くんだ……俺は手札から<財宝の探し手・シャックス>を召喚」
現れたのは巨大なコウノトリの背中に乗った、天真爛漫な様子の少女。
「ターンエンドだ」
さて指輪の彼はここからどう動くのか。
今のところ、<魔縁召還>独特の動きっぽいものは見せていないが……
「我のターン!レディアップキープ、そしてドロー!」
相変わらずいちいち大仰な仕草でカードを引くミカドくん。
彼がこういう感じの時は、デッキの回転がいい時だ。
「そして<黄金都市・ゴールドーン>の効果発動! <ゴールデンカウンター>を1つ消費して次に召喚するクリーチャーの召喚コストを1下げる!」
複数あるゴールドーンの効果の一つだ。
カウンター1つを取り除くことによって<王金覇者>のクリーチャーの召喚コストを1下げることが出来る。
全体的にコストが高めユニットが多い<王金覇者>のデッキには、かなり重要な効果になる。
ただしカウンターを二つ消費しても、同じユニットの召喚コストを2下げることはできない。
「では行くぞ、我はコストを1軽減し、3コストで<近衛騎士・ロウガ>を召喚!」
黄金の光を纏いながら現れたのは、同じく黄金の鎧を纏った騎士。
狼を模した兜を被り、両刃の剣を眼前に構えたその騎士は、<王金覇者>の近衛騎士シリーズの一体、<ロウガ>だ。
コスト4で5/3のステータスを持つ、<王金覇者>の序盤中盤のメインアタッカー。
「さらに瞬間魔法<黄金の瞬き>を発動! 指定した<王金覇者>ユニットのパワーを+2にし、1ターンの間<貫通>と<速攻>を付与する」
「――――!?」
「<近衛騎士・ロウガ>で攻撃!」
「<財宝の探し手・シャックス>でブロックっ!」
「無駄だ、貫通効果を忘れたか!」
「忘れてないさ……! その攻撃に連鎖して、1コストを払って<ソロモン王の小さな鍵>を発動! 対象は<財宝の探し手・シャックス>」
謎だったあの秘宝カードの効果がついに発動した。
<近衛騎士・ロウガ>の攻撃がシャックスを貫く寸前、少女の足元から紫がかった光があふれ出る。
「俺は<財宝の探し手・シャックス>と交換にデッキから直接<聖域の剣闘士・ガープ>を召喚!」
褐色の肌の剣闘士が左手に持ったラウンドシールドが、<近衛騎士・ロウガ>の攻撃を受け止めていた。
――――なるほど、そう言うデッキなのか!
あの秘宝カードのバトンタッチの効果を使って、状況に合わせて適切なクリーチャーを入れ替えて戦うデッキなのだろう。
他のテーマとの差別化は、直接デッキからサーチして場に出せる点と戦闘が始まってから交代が可能な点だろうか?
とにかく色々面白い動きが出来そうなテーマだ。
冷静に分析しながら、かなり久方ぶりに胸が高鳴る、ワクワクが止まらなくなっている。
カードゲーマーと言う人種は、新しいテーマや見知らぬカードを見るとテンションが爆上がりしてしまうものなのだ。
「なっ、なんだと!? なんだその効果は!?」
「<ソロモン王の小さな鍵>は1コスト支払うことで、場のクリーチャーをデッキ・手札にいる同じコストの<魔縁召環>のクリーチャーと瞬時に入れ替えることができる!」
突然の出来事に狼狽したミカドくんは、しかし交代で出て来た<聖域の剣闘士・ガープ>のステータスを見て、余裕を取り戻したらしい。
「ククク、だが所詮2コストの1/4のクリーチャー、我がロウガの方が圧倒的にパワーは上よ!戦闘続行だ!」
<ロウガ>が弾かれた剣を再び振り上げ、叩きつける。
その一撃は今度は過たず、<ガープ>の盾をたたき割った。
「この効果で召喚した場合、対象に<速攻>を付与し召喚酔いを回避する、加えて各自の固有効果を必要コストを無視して発動することができる!」
少年の手にした指輪が輝きを放つ。
やっぱりこの子も“導かれてる”のか? なんかそれにしては気配が妙な気がするんだが……
<聖域の剣闘士・ガープ>の効果発動! <ガープ>のタフネスは相手のパワーと同じだけ上昇する!」
「――――!?」
続く二刀目が<ガープ>に突き刺さるが、ガープが手にした鎧通しの刃が<ロウガ>の鎧の隙間に差し込まれていた。
互いに互いを貫きながら、両者が光となって消滅する。
「見事だ……だがこの戦闘の結果により、我は<ゴールデンカウンター>を2個置かせて貰う」
撃破で一つ、被撃破で一つ、カウンターが置かれる。
「さらにロウガの効果を発動!<王金覇者>のクリーチャーが敵を撃破した際、追加でカードを一枚ドローすることが出来る! 我はカードを一枚ドロー!」
そこで引いてきたカードを、ミカドくんは即座にボードへと滑らせた。
「ならばその厄介な秘宝から破壊してやろう、瞬間魔法<沈みゆく黄金船>を発動」
<沈みゆく黄金船>は海賊王の財宝を輸送中に海の底へと沈んだ伝説の船だ。
貨物室に積まれた金銀財宝の価格は現代換算で120億にも登ると言う。
「沈みゆく船はその渦潮に周囲を巻き込む! <ソロモン王の小さな鍵>を破壊させて貰う!」
<沈みゆく黄金船>は1コストで打てる優秀な除去だ、通常で1枚、自身の土地をコストに支払うことで2枚までの相手の魔石・秘宝を破壊できる。
ただし墓地に<黄金覇者>のカードがない場合、自身のフィールドのカードも巻き込むデメリット付きだが。
ごうごうと唸る渦潮が渦を巻き、船ごとをすべてのものを巻き込んでいく。
「対応する! 俺は手札から<水底の恐怖・フォルネウス>を墓地に捨てることで、その発動を無効にする」
現れたのは大口を開けた、翠緑の鱗をしたエイのような巨大な怪物だ。
怪物は渦潮と逆の方向に高速で泳ぎ、逆向きの渦を作り出すことで渦潮を収めた。
――――指輪の子、初心者なのになかなかやるなぁ。
「一進一退の、なかなか見ごたえがあるファイトですね」
「えぇ、どっちが勝ってもおかしくないくらい」
ライフデッキは目減りし、土地は増えていく。
ファイトはいよいよ白熱し、そして中盤戦へと差し掛かる。
その船は数多の金銀財宝を積んで海の底へと沈んだ。
だがあの船が沈んだ程度のことで壊れてしまうものだろうか?
冴え冴えと月の光の降る夜には
海の底を悠々と泳ぐ、白亜の船に出会うことがある。
それは近隣の船乗りたちに古くから伝わる噂である。
――――沈みゆく黄金船