素敵なカードショップ MeeKing へようこそ   作:MrBento

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『3回ファイトすると死ぬカード 編』その3

 

 

「<マーマメイドの大掃除>を発動!」

 

 

「自分の場のクリーチャーを手札に戻し、戻したクリーチャーの数だけ相手のクリーチャーを相手の手札に戻す」

 

 

 祈る、どうか相手が妨害を握っていませんように! と。

 けれどいつまで経っても宣言はなされない。

 あれは悩んでいるというよりも……

 

 

「妨害とか、ないですか?」

 

「ひゃ、ひゃい!」

 

 

 目がとろんとしてたし、血糖値スパイクで気絶しかけてただけ?

 

 

「ならわたしは<波乗りマーマメイド・ナミ>を手札に戻し、<挟み潰すくるみ割り人形>を選択!」

 

 

 呪文と共に人魚従者の軍団が現れ、フィールド上の全てを跳ね飛ばしながらお掃除ミッションを遂行。

 その勢いに跳ね飛ばされて、わたしのナミと相手のくるみ割り人形が、互いの手札に戻っていった。

 

 よし! これでくるみ割り人形のアタックを封じつつ、ナミを出して再び回復できる。

 さらにナミに乗せられたカウンターも消すことが出来た。

 

 

「これでターンエンド!」

 

 

「レディアップキープドロー! よぉくもやってくれたわねぇ~、あたしは<回帰する呪詛>と<夜霧の倫敦人形>を召喚」

 

 

 帰ってきた気持ち悪いクリーチャーと、両手に地に濡れたカギ爪を携えた黒いゴシックドレスの人形が現れる。

 そのカードも知ってる、<人形解放戦線>の展開の要だ。

 

 

「<夜霧の倫敦人形>は場に出た時、2体の<ミストクリーチャー・トークン>を出現させる!」

 

 現れたのは、形すら定かではない霧で象られた二体の怪物。

 

「そして<ミストクリーチャー・トークン>は、生贄にすることで手札の2コスト以下の<人形解放戦線>のクリーチャーを手札からコスト無しで召還できる」

 

 霧が集まるようにして現れたのは、色以外鏡合わせのようにそっくりな赤と青の<氷炎の双子人形>

 

「双子人形は、相方がフィールドに存在する時、強化される! 」

 

 双子の人形がまさに鏡合わせのように、それぞれの手にもった剣を振り上げ……

 

「<速攻>を得た双子人形で攻撃!」

 

 交差するように、私を切り裂いてきた。

 

「ぐあっ!」

 

 さらに炎人形の攻撃で手札が燃え上がり、氷人形の攻撃で土地が凍り付く。

 今の攻撃でせっかく回収ナミが墓地へ送られた……4点ダメージも併せて、正直とても痛い。

 けどこれで……ライフデッキが捲れる。

 

「今のダメージでライフデッキから引いた呪言<報復する意思>を発動……!」

 

 喰らった分は、お返ししてやるんだから!

 

「このターンにわたしが受けたダメージを、相手の全てのクリーチャーに与える!」

 

 わたしの体から飛び出した怨霊が双子人形と回帰する呪詛を、呪いの沼に引きずり込んでいく。

 <夜霧の倫敦人形>のタフネスは5、ギリギリだけど落とせない……!

 

「なかなかやるわねぇ! あたしはターンエンド!」

 

 

 

 

 

 

「わたしのターン、レディアップキープドロー!」

 

「わたしは1コストで<見習いマーマメイド・ロラ>を召喚!ロラの効果で<マーマメイドの大掃除>を墓地から手札に戻す!」

 

「ちっ、厄介なことを……いいわ、好きにしたら?」

 

「さらに<幻界海賊(ホロウパイレーツ)・夢見る大船長マリン>を召喚!」

 

人魚従者(マーマメイド)じゃない!?」

 

 マリンは一枚だけ引けたレアカードだ、共鳴率のせいで入れるか迷ってたけど、「相性がいいから入れてみたら?」と

 店員さんに言われていれてみたら大当たり。

 

 現れたのは巨大な海賊船と、その船首に仁王立ちしたカトラスとピストルを構える赤い服の女海賊。

 

「マリンは味方のクリーチャー一体を手札に戻すことで、このターン<速攻>能力を得た上、そのクリーチャーのステータス分を自身に加算できる!」

 

「わたしはロラを手札に戻し……マリンで攻撃!」

 

「しょうがないわねぇ、ライフで受けるわ……ちょうどもう少し土地が欲しかったところなのよ!」

 

 赤衣の海賊がフィールドを駆る、その刃が狙うのは対面のファイターではなく……

 

「マリンは<決闘>能力がある! 狙うのは<夜霧の倫敦人形>」

 

「なっ、でもマリンのパワーは4のはず、タフネス5の倫敦人形は倒せな……」

 

「マリンはファイターへの攻撃能力を持たない代わりに<双撃>を持つ」

 

 赤い服の海賊が、右手のカトラスで切りかかり、すぐさま左手のピストルで追撃する。

 倒された黒いゴシックドレスの人形は、墓地へと行かずデッキへと戻っていった。

 

「そしてマリンが倒した相手は、墓地へは行かずデッキの一番下へと戻される!」

 

「ちまちまちまちまバウンスばっかり……でもいいわ、あたしのライフは全く削れていないもの」

 

「わたしはターンエンド」

 

 

 

「あたしのターン、レディアップキープドロー!」

 

 変質者は自分の手札をじろじろと眺めて、宣言した。

 

「このターンで終わらせてあげるわ! あたしは<回帰する呪詛><舞い踊る妖精人形><黒衣の指揮官人形>を召喚」

 

 現れたのは先ほどの2体と、さらに執事服を纏った一体の人形だった。

 

「そして瞬間魔法<おぞましき儀式>を発動、<回帰する呪詛>を生贄に<舞い踊る妖精人形>のパワーを3上げ、さらに<貫通>を付与するわ!」

 

 妖精人形の腕に血が纏わりつくようなエフェクトが発生する、これで妖精人形のパワーは7。

 

「さらに指揮官人形は場に存在する全ての<人形>に<速攻>を付与し、パワーを2上昇させる!」

 

 これで9、わたしの残りライフは7、拙い貰ったら即死する。

 

「あたしは<舞い踊る妖精人形>で攻撃!」

 

「その攻撃にチェインして瞬間魔法<人魚従者の大失敗>を発動!」

 

「なっ、なによ、そのカード!?」

 

「対応ありませんか?」

 

 効果は説明しない、妨害が飛んでこないなら儲けものだ、なんとかここは通したい……

 

「な、ないわよ!?」

 

「わたしは手札をすべて捨て」

 

 人魚従者の見習いロラが表れてフィールドに現れた巨大なゴム製の『栓』を引き抜く、その跡に出来た『穴』に向かってすべてのものが吸い込まれていき……

 

「フィールドの全てのクリーチャーを互いのデッキの一番下へとバウンスする」

 

 フィールド全てにあった全てを飲み込んだ。

 大海賊も妖精二体も、そしてわたしの手札も。

 

「そしてこの効果でバウンスしたクリーチャーの数だけ、デッキカードを引く」

 

 改めて3枚引く……相変わらず引きは悪いけど……

 

「倒しきれなかった……けど知ってるでしょう? <舞い踊る妖精人形>が場を離れた時の効果をまた受けて貰うわ!」

 

 妖精の羽がわたしに突き刺さる……パワー9の半分の切り捨てで4点ダメージ。

 

「あとライフ3……!」

 

 次のターンでライフカードをドローしたら2になる、対して変質者のライフはまだ16も残っている。

 

「そうね、次のターンで決めてあげるわ、ターンエンド」

 

 だけどまだ勝ち目は残ってる……!

 

 

 

「わたしのターン、レディアップキープドロー!」

 

「わたしは墓地から<見習いマーマメイド・ロラ>の効果を発動、デッキから手札に<マーマメイド長・ロザリア>を加えます」

 

 妨害は……ない。

 

「次に手札から<マーマメイド長・ロザリア>を効果発動して、<マーマメイド長さん大噴火>を手札に加えます」

 

 こっちも通った……!

 

「無駄だって言ってるのがわからないの? はやくやられて……」

 

「えっと……じゃあ、<マーマメイド長さん大噴火>をプレイします」

 

 通りますか? って聞いたら、ちまちましつこいと言う返答が帰ってきた。

 

「えっと……じゃあ、勝ちです」

 

「――――は?」

 

「相手がカードを手札かデッキに戻した回数×2点のバーンなので……」

 

「ちょ、ちょちょちょ、ちょっと待って……!?」

 

「その<回帰する呪怨>4回墓地から手札に戻しましたよね?」

 

「アッハイ……」

 

「わたしのカードの効果で4回クリーチャーを場から手札に戻しましたよね?」

 

「マチガイナイデス……」

 

「そう言う訳で16点バーンです」

 

「なんの瞬間魔法<焼畑>で土地4枚をライフデッキに戻して回復を……」

 

「あ、墓地から<マーマメイドの午睡時間>を発動して打ち消します」

 

「あっ……」

 

「なにか他にあります、か?」

 

「――――ないです」

 

「じゃあ、あの……勝ち、です……」

 

 

 ――――どうしよう、勝ったというのに空気が重たい。

 

 追い込まれてギリギリだったけど、最終的にMeeKingの店員のお兄さんみたいな勝ち方をしてしまった、どうしようこれ……

 

 

「じゃあわたしはこれで……」

 

 

 気づけば周囲の変な霧もなくなって、普通にすぐそばに路地の出口もある。

 わたしは四つん這いでうなだれる変質者をそのままに、足早にこの場から立ち去ろうとして……

 振りむいた先の足元に落ちていた、“それ”を見てしまった。

 

「えっ、このカード……」

 

 それはさっきの変質者が使っていた、何度捨てても手札に戻ってくる気持ち悪いカード。

 何故だろう、気持ち悪い、とても気持ち悪いのにそのカードから目が離せない。

 

「そうだ、お友達を増やさないと……」

 

 わたしはそのカードに手を伸ばそうとして……

 

「やめときなさい、まだまだ産まれたての雑魚だけど、なかなかに厄介な奴だから」

 

 そう言われてわたしはハッとした、なんでこんな気持ち悪いカードを手に取ろうとしたんだろう。

 いったい誰が声を掛けてくれたのだろうと周囲を見るが、少し離れた場所に項垂れたままの変質者だけ。

 不思議に思ってみると、見たことのある男の子が息を切らして路地裏へと走ってきた。

 MeeKingで会ったことある、確か……

 

「えっ? アルスくん?」

 

「ハァ……ハァ……間に合った」

「間に合ってないわよバカ、ほら早くしなさい」

 

 再びどこから聞こえて来た声、アルスくんは息を切らしながら。

 

「これから俺がやることは、秘密にしておいて欲しいんだ」

 

 そう言って、気持ち悪いカードに向かってその指輪を着けた手を伸ばした。

 

 

 ――――これが始まり、わたしたち4人が少し不思議な世界の裏の物語にちょっとだけ関わることになる、第一歩だった。

 

 

 





彼のメイド長は激怒した

かならずやあの邪知暴虐なる配下達の


サボり行為を正さねばならぬと激怒した


――――マーマイド長さん大噴火
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