アタシの切り札は数が多い 作:コピートークンA'本物exl
「「ファイト!!」」
心を奮い立たせ、デッキから5枚の手札を引き抜いた。
親父と一緒に1から組み上げて、ジャッジ資格の勉強をしながら今日まで改造し続けてきた
だが共鳴できないということは、つまり共鳴率を奪われる闇のファイトでも普段と変わらずに戦えると言うことでもある。
「俺のターン、ドロー!」
ボードが指し示した先手はこちら。
ライフデッキから2枚のカードを引き抜いた瞬間、右腕が微かに黒く染まる。
話にだけは知っていた、闇のファイトが持つ特徴。
Lifeという名前の通り命を賭けて抗う戦争。その底冷えするような気配に、思わずカードを手繰る手が止まりかけて。
「ッ、」
右腕に巻き付いている蛇が、手を握るように締め上げてくれた。大丈夫、何度も何度も想像して、練習だけはしてきたのだから。
「土地をセット。1コストから〈遺跡荒らし〉を召喚する、スタッツは0/3だ」
「常人ならファイトも儘ならぬこの場で、未だ幼き時分ながらに壁を置ける。素晴らしい。闇カードを掴み取れば、どれだけ強くなれることだろう」
カウント開始──35
冷静さを失うな、怒ったふりはしても血を上らせるな。一手一手、詰めろを必死にさせるまで。
「俺はこれでターンエンドだ」
問題ない。闇ファイトの心得は、胸にもデッキにも刻まれている。
「ならば我のターン。メインデッキから1枚、ライフデッキから2枚を引き、土地をセット」
いつのにやら展開されていた怪人のボードが昏く輝く。怖い、怖いけど……まだ、対処出来ると信じている。
「ターンエンド」
どれだけ不気味な相手でも、俺には2人がついているから。
「俺のターン。レディからアップキープ、ドローフェイズまで」
両デッキから1枚ずつカードを引き抜く。また腕が冷たくなった、それでも!
「土地をセット。この瞬間〈遺跡荒らし〉の『開拓』が誘発。お前のデッキの上から3枚のカードを墓地へ送る……」
墓地を確認、フラッシュバックも誘発もない。あるのは秘宝ばっかりだ。
「ククッ、低コストながら容易に焼けぬ代わりに、相手の墓地を肥やさせるデメリット・クリーチャーか。涙ぐましい努力だ」
「なんとでも言え」
カウント──31と、7の6-1
まだ怪人は、俺のデッキタイプに気づいてない? 確かに
……次のターンまでは隠しておくべきか。
「続けて1コストから瞬間魔法〈熟考〉を発動。何もなければ効果を処理する」
「いいだろう」
「ならデッキトップ2枚を見て……上と下に順番を変更。その後1枚ドロー」
妨害はある、除去も見つけた。
ならば後は俺さえ倒れなければ戦える!
「ターンエンド」
「ならば我のターン、ドロー。
……クククッ、お早いお出ました。見るがいい、我が掴みし闇のカードを!」
──笛の音が聞こえる。
どこか遠くから、懐かしいような、聞いてはいけないような、冒涜的なリズムの囃子が鳴っている。
「土地をセットし2コスト、〈夢幻囃子の仔〉を召喚」
それは、気がついたら時には目の前にいた。
闇の中でもなお昏く、全身にノイズが走ったような人形の黒い影。
片手に握る角笛と歪み捩じくれた羽根帽子だけが、現実に異様さを以って浮き上がっている。
「〈夢幻囃子の仔〉の効果を説明してやろう。コレは『飛行』を持ち有象無象には道行を阻めぬ者、代わりに1/2の貧弱な力しかもたない」
「それで?」
芝居がかった動きで語る怪人の言葉を無視。闇のカードがそんな凡百の能力で終わる筈がない、間違いなく本命の能力がある。
「このクリーチャーはクリーチャーであると同時に『秘宝』であり、我がコレではない『秘宝』を場に出すたび+2/+2カウンターを置く。尤も、ターンの終わりにカウンターは半減してしまうがな」
秘宝、飛行、強化とデメリット。多分、マイナスカウンターも半分にできるからメリットかも。
ジャッジの勉強で得た知識が、オーバースペックだと言っている。全くもってフェアじゃない。
「でも、クリーチャーである以上このターンに攻撃はできない」
「そうだ。次のターンが貴様の最後だ」
こちらにトドメをさせる手段もあるらしい。
「ターンエンド」
「俺のターン。レディからアップキープ、ドローフェイズまで」
両デッキから1枚ずつカードを引き抜く。悪くない。
「魔石/土地である〈蜃気楼の水溜り〉をセット、〈遺跡荒らし〉の『開拓』が誘発。お前のデッキの上から3枚のカードを墓地へ」
「デメリットの誘発が──いや待て、〈蜃気楼の水溜り〉? それは
カウント──27と17、7の6-1
浮オドは0
「遅ぇ。周回遅れだ、『笛吹き』怪人」
このデッキの、親父と組み上げた闇カードに抗うためのデッキの名は──
「ライブラリーアウト、だとぉ!?」
「メインフェイズ突入前に〈水溜り〉を起動、これを墓地へ送りライフデッキから効果を持たない土地をレディ状態でセット──『開拓』、さらに追加で3枚を墓地へ」
カウント──24と、7の6-1
「メインへ突入、2コストから秘宝〈一騎打ちの代償〉をお前を対象に設置。
効果は大したことないさ、アップキープの開始時に指定されたプレイヤーはデッキトップから2枚を墓地へ送る。コストに見合わないしょぼい効果だよ」
こんなのに頼るくらいなら〈納骨〉を使った方がずっといい……普通に使う場合ならば。
「ターンエンド」
俺の残りライフは15。
間違えるな、見極めろ、あのエレウシスの決勝で見た2人のように!
「くっ、我のターン!」
「〈一騎打ちの代償〉が誘発、ドロー前にトップ2枚を墓地へ」
「チィッ!」
墓地に送られた2枚はそれぞれ0コストで配置できる秘宝。一撃で刈り取るという話は嘘じゃなかったらしい。
「ドロー、土地をセットしてメインフェイズ!」
カウント──21と、8の7-1
浮きオドは3
「2コストで秘宝〈雅楽隊の休息所〉を配置、効果で雅楽隊・トークンを1体生成。これはアーティファクトのトークンだ」
1コストと手札1枚を犠牲に1枚カードを引ける能力があるらしい。便利な。
「〈夢幻囃子の仔〉が2回誘発することで、+2/+2カウンターが2つ乗る。よって5/6に成長!」
残1
「バトルだ、〈夢幻囃子の仔〉で攻撃!」
「対応、1コスト〈軽薄な突き出し〉。コスト2以下のクリーチャーを破壊する」
「ならば我は、それに対し瞬間魔法〈儀式の破綻〉! トークンをコストに突き出しを打ち消させて貰う!」
6の5-1、浮きオド0。
「ライフで受ける」
ならずもの達をすり抜けて、三日月のように裂けた真紅の笑顔で影が迫る。ノイズが走る影の腕が、俺の心臓に向けて伸びて──
「あっ」
──俺は、正しいけれど間違えたことに気がついた。
ファイトの道筋としては間違っていない。俺のライフは10点残るし、相手にはリソースを使わせ切った。
闇のファイトとしては致命的に間違えた。俺のライフは10点残るけど、俺自身がこの攻撃に耐えられない。
ファイトが続行不可能になった場合そのファイターは敗北する。
ブロック指定は間に合わない。
ライフで受けると宣言をしてしまっている。
浮かれていた。
戦えるとわかって少しだけ気が緩んでいた。
だから負ける、ここで終わる。
見えてしまった結果に、思わずぎゅっと目を瞑って──
「………………あれ?」
いつまで待っても来ない衝撃に、薄く目を開ける。
『──!』
伸ばされた手を、無数の蝶が押し留めていた。バチバチと稲妻を纏いながら、それでも影の手は俺に届いていない。
ライフデッキが落ちる。
土地、土地、魔石、魔石、呪言。
呪言は条件不十分で不発。処理が完了したことで、悔しそうに顔を歪めながら〈夢幻囃子の仔〉が怪人のフィールドへ戻っていく。
「はぁっ……はあっ……はぁっ……!!」
「精霊がァ、余計な真似を!」
息が怪しい。
怖い。苦しい。
それでも、
「ありがとう……ネコ、センカ」
まだ立ち上がれる。
感覚のない足も、腕も、蛇が締め上げて支えてくれる。死んでしまう筈の衝撃は蝶が受け止めてくれた。
まだ戦える。
「ダメージにより『開拓』が2回誘発! お前のデッキを6枚を墓地へ!」
カウント──15と6の5-1
ならばあとは、勝つだけだ。
2つの思いは、2つの守りを成した。
いつか別たれるその時まで、輝きは揺るがない