アタシの切り札は数が多い 作:コピートークンA'本物exl
カウント──15と6の5-1
ならばあとは、勝つだけだ。
「ターンエンド。エンド時に〈夢幻囃子の仔〉が誘発、5/6から3/4に弱体化する」
「俺のターン。レディ、アップキープからドローまで」
メインデッキを削り落とすまであと僅か。だからもう油断はしない、なけなしの5オドを最大限に使い尽くす。
「土地をセットし『開拓』を誘発、更に3枚を墓地へ!」
相手の手札は残り6枚。
墓地も途中から確認できていない。だから、何があっても間に合うように場を固める!
「1コストから秘宝〈銀世界〉を配置! これが場に存在する限り、お互いのクリーチャーは攻撃できない」
「………チィッ!」
「続けて1コスト〈思考〉を発動! デッキトップを確認し、これを手札に加える」
こちらの残りの手札は4枚と呪言が1枚、浮いているオドは3。
「これで俺は、ターンエンド!」
一歩ずつ。
少しずつ。
派手さはなくていい、確実に、積ませて必死に追い詰める。それこそが俺の、唯一の勝ち筋だから。
「ッ、我のターン!」
「〈一騎打ちの代償〉により2枚を墓地へ!」
「ドロー!」
カウント──9、8の6-2
「土地をセット」
怪人の浮オドは4。あれだけ抱え込んだ手札に除去がないとは思えない。
「2コスト、瞬間魔法〈削ぎ落とし〉。効果により場の秘宝を1つ、お前の〈銀世界〉を破壊する!」
来た!
「対応! 1コストで瞬間魔法〈チキンレース〉、直前に使われた〈削ぎ落とし〉を打ち消す」
「1コストの確定打ち消しだと!?」
「違う。〈チキンレース〉の効果は1コストを支払うことで、対象となったカードをコントロールするファイターはコピーできる」
つまり今回の場合〈削ぎ落とし〉←〈チキンレース〉←〈チキンレースコピー〉←〈チキンレースコピーコピー〉と続いてスタックする形だ。
「ならありがたくコピーさせて貰おう!」
「なら俺もコピーを行う」
残りのオドは俺が1、怪人も1。
削り合いを続けても確実に打ち消せる。そしてそこまで付き合った場合、怪人の負けもまた確定する。
「……コピーは行わない。効果は解決され〈削ぎ落とし〉が無効に」
これで攻撃の封鎖は継続。怪人の手札は6枚のうち5枚のメインカードと1枚のライフカード。いける……か?
「ならば続けて我は魔法〈再起動〉を発動! 我の墓地よりクリーチャー1体を戦場に戻し、そのオド総量に等しいライフを我は失う!」
「対応! 瞬間魔法〈オーバーテイク〉!2コスト以下のカード1枚を打ち消す!」
〈オーバーテイク〉(1)
瞬間魔法
あなたは〈オーバーテイク〉をターンに1枚しかプレイできない。
相手のコスト2以下のカード1つを対象に、それを打ち消す。その後、相手は自身のデッキからコストXのカード1枚を探して、コストを無視してプレイしてもよい。あなたは自身のデッキからコストXの瞬間魔法カード1枚を探して、コストを無視してプレイしてもよい。
Xはこの効果で妨害したプレイのコストの値に等しい。
「ただし、打ち消したのちにお前はコストX=1のカードをコストを無視してデッキからプレイできる」
「デッキに〈再起動〉は……くっ、ならば〈儀式の破綻〉を発動する! コストとして生贄に捧げるのは〈雅楽隊の休息所〉」
「続けて俺もX=1の瞬間魔法をコストを無視してプレイできる、発動するのは〈献身の証明〉! コストは〈遺跡荒らし〉!」
スタックが解決。
儀式の破綻が献身の証明で打ち消され、再起動がオーバーテイクに打ち消される。
これでお互い浮きオドは0・0。
カウント──8、5の4-1
準備は整った。
「だがこれで壁はいなくなった、我は墓地から〈命の泉〉の効果を
「対応!」
「バカな、貴様のオドコストは0の筈!」
「このターン、相手がデッキからカードを探してプレイしている場合、このカードのオドコストは5点軽減される」
これが、俺のデッキのフィニッシャー!!
「瞬間魔法、〈崩落する書庫〉を発動。お前のデッキの上から8枚のカードを墓地へ送る」
〈崩落する書庫〉(5)
瞬間魔法
このターンの間、対戦相手1人が自分のライブラリーからカードを探していたなら、あなたはこの呪文のオド・コストを(5)軽減できる。
対戦相手1人を対象とする。そのプレイヤーはカード8枚をメインデッキの上から墓地へ置く。
「まだだ! まだ我の土地は生きている!
我の墓地から6枚のカードを追放することでコストを軽減、1コストで手札より7コスト〈プローホルの腐敗竜〉を召喚す──」
「対応、土地3枚をコストに〈防災〉!」
「ぐぅぅ……!!」
怪人の手札は4の3-1。
今打ち消した〈腐敗竜〉を攻撃に参加させるための物に、〈銀世界〉を割るためのフラッシュバックや0コストもあった筈。だけど……
「カウント0、タイムオーバーだ」
残り土地は2、手札は1、盤面には秘宝が2つだけ、ライフは10。満身創痍だ、打ち消しは……まあ1枚残ってるけど、次のターンは耐えられない。
だが。
ここに、俺の勝利が確定した。
「バカな、馬鹿な……我が、こんな子供に!」
闇の領域が剥がれていく。
薄闇にヒビが入り、世界に暖かさが戻ってきた。それと同時に、俺を守ってくれていた蛇と蝶の姿も溶けて消えていく。
「あぁ………つか、れた」
それを見届けながら、どさりと俺も崩れ落ちた。もう無理、立ってるのも限界だ。
親父がムキムキマッチョだった理由がよく分かる。こんなものに対応するなら、身体を鍛えないとやってられない。
「だが、ならば! 我に打ち勝った貴様だけは、意地でも連れて行く──!」
崩れかけの闇の領域の中、異様に大きな怪人の手が動けない俺に伸びて──
「ふんっ!」
──割って入ってきたワイヤーが、ガラスのように領域を粉砕しながら手を弾き飛ばした。
「ふぅ、ギリギリセーフ」
それは透き通る紫色の髪をした女の人だった。手には物騒なワイヤーを持ち、着ているエプロンにはMeeKingの文字。
「その歳でよくやった。あとは任せて」
明らかに全力で逃げ出し始めた『笛吹き』を追って、おそらく店員の人が路地裏を駆けていく。
いいなぁ、武器。俺もカードショップのウェルカムカード投げ以外で、何か出来るようにならないと。いやその前に身体を鍛えて──
「オーくん!」「オルガくん!」
「ぐえっ」
なんて考えは、飛び込んできた幼馴染2人に吹き飛ばされた。
無事でよかった、とか。
助けてくれてありがとう、とか。
言いたいことは色々あったけど……やっぱり、好きな相手の前ではこうだろう。
「へへっ、勝ったぜ」
あんなカードに見せられたのとは違う、笑顔と涙を前に。掲げたVサインはどこか、誇らしかった。
明けない夜はない
だが、1人で歩む夜ほど辛いものもまた、ない