アタシの切り札は数が多い 作:コピートークンA'本物exl
ということでお焚き上げpart1
「クラブ活動で、他校と攻略練習試合?」
「はい。先生がぜひ参加してほしいと」
アタシ達3人がMeeKingっていう魔境に通い始めてからしばらく経ったある日。
部室で合流したセッちゃんこと、
確かに、偶にそういうイベントをやっているって話は聞いたことがある。
「でも確かアタシたち、“そういうの”に参加しないよーにって話じゃなかったっけ?」
【隔離枠】
今日ここには居ないオーくん、大垂氷オルガくんを含めたアタシたち幼馴染3人はそう呼ばれている。
先生が泣きそうな顔で『すまない……まだ自転車に乗り始めたみんなの中に、自動車を混ぜるわけにはいかないんだ……すまない……』って言って外された、みんなとファイトしちゃいけない特別枠。
「わたしも何が何だか。でとね? 向こうがわたしたちを呼んでいるみたいで……」
「なじょして?」
「さあ?」
ぴょーんとセッちゃんの隣を陣取ってみたけど、なんで今回に限ってそうなのかは知らないらしい。
「そこから先は
いつだったかみたいにならなきゃいいなー、なんて思っていると待っていたと言わんばかりに現れた人影がひとつ。
ガラリと部室の扉が開き、答えの方が先に飛び来んできてくれた。
「
「まぁ、もう少し遅くてもよかったんですよ。
土部 流 先生。
うちの学校のLife部の顧問をしてくれてる先生で、アタシ達をダメって言ったちょーほんにん。
そのぶん先生も頑張ってファイトできる相手とか場所とか探したりしてくれてるけど。
「と言っても、まー簡単な話だ。
うちでお前らを持て余してるのと同じで、向こうも持て余してる児童がいる。折角だから引き合わせてみようってやつよ」
「アタシ達の扱い雑な気がするんですけどー!」
「そもそも、わたしたちのような者をこそ教え導くのが先生なのではないでしょうか?」
「なんとでも言え、身共とて無垢な児童を救わねばならぬ」
ぶーぶーと文句を言ってみるが、案の定いつも通りの言葉で受け流されてしまった。大人ってずるい。
「せんせーすぐソレで誤魔化すよねー」
「マイナス3ポイントです」
「ポイント制!?」
相談すれば乗ってくれるし、こういうのにも付き合ってくれるからいいせんせーだとは思うけど。
「話が逸れたが、今回の相手は期待してくれていい。なにせ見習いだが
「『ちゃねらー』と『とらんすれーたー』?」
「Lifeのカードを作ってる人たちのことだよ、コトちゃん」
「はえー」
確かにそんな凄い子と友達になれたら嬉しいかも。あとは──
「当然、強いぞ。気を抜いたらお前らでも負けておかしくない。かつて88星座の席に指先を掠めたこの身共が保証しよう」
自信満々なその表情に、アタシ──八重木ネコトに電流が走る。そんなことを言われて、断る飢えたファイターなんていないと思う。
「てな訳で、そこの
そう言って、せんせーはいつも通り部室から帰って行った。
セッちゃんの膝を枕にすっかり眠りこけて、アタシに髪をアレンジされたオーくんに触れることなく。
ぶー、折角かわいくできたのに。
そして迎えた当日。
「おー、すごい。これが『あうぇー』ってやつ?」
お熱を出して倒れちゃったオーくんを除いて、アタシ達は普段とは違う小学校の中に居た。
レンタルのボードがあったりフィールドがあったり、なんか新しくって綺麗な感じ。そんな場所てアタシ達は。
「念のため、念のためテキスト内容を確認させてほしい。本当に僕は2ターンキルされてしまうのか?!」
「ええ」
「……ねえこれ僕どうすればよかったの? グワーッ!!」
「「「きゅ、給食当番の伊賀ぁぁぁぁ!!」」」
「64体のスワロウテイルで攻撃! 192点のダメージだよ!」
「イワーーーーーク!!」
「「「ガキ大将の武田ぁぁぁぁ!!!」
絶賛、なぜか予定にないファイトの真っ最中だった。なんだ今の。終わった。なんだ今の(2回目)
「くっくっく、伊賀と武田がやられたか。奴らはLife部四天王の中でも最強……………えっ、どうしよ」
「だから私たち言ったじゃん! あの2人と今日お休みの3人は意味不明なくらい強いって!」
「わかんないよ! ウチのお嬢たちくらい強いなんて聞いてない!」
「えっ、そっちにも居るの? ウチの幼馴染ーズみたいなの」
「うん、いるいる。戦っちゃだめだよ」
「そーするー! だって
助けて、イマジナリーサレンちゃんさん師匠。こういう時の空気ってどうすればいいの!?
『ん、何事もファイトで解決するのが一番。
一般の大会に出よう。楽しくストレス発散できて賞金も貰えてハッピーハッピー』
絶対そんなこと言わないと思う。
クールで綺麗でカッコかわいいサレンちゃんさん師匠が。
『MeeKingに来ればいいと思うよ!』
これは本物ユウキちゃんでも言いそう。
「おまたー!!」
ギスギスし始めた空気を貫通したのは、そんな元気な声だった。
体育館の扉を勢いよく開いて飛び込んできた、長い緑の髪の女の子。その手にあるボードを見ただけでわかる。多分、この子つよい。
「やーめんごめんご!
お嬢が楽しみにしすぎて体調崩しちゃってさぁ、お薬吸って貰うのに時間かかっちゃって────あり? なにこの空気」
目をぱちくりとさせて、ぐるりと体育館の中を見て、
「あぁ〜、そゆこと」
なにか納得したように、ポンと手を叩いた。
ポニーテールが大きな動きにばるんばるん揺れている。
「ここはひとつアッシの顔を立てて、ぁぃゃ、場を収めて貰いましょーじゃありませんか!」
すごい、ポーズまでキメッキメだ!
良すぎる勢いにみんながみんなが呆然とする中、お芝居みたいな動きで女の子はアタシの所まで来て。
「ヘイ! かわいい虫のカノジョ」
「えっ、アタシ!?」
「こんなつまらないパーティー、2人で抜け出さない?」
手を取られた。
「???」
「沈黙はこーてーとあんだすたぁん!」
腕まで取られちゃった!?
「いざいざ、めくるめくファイトの世界へレッツラごーごー!!」
「にゃぁぁぁ!?」
「コトちゃぁぁぁん!!?」
滅茶苦茶なんだこの子!!!
パタパタと上履きが泥落としの緑マットを叩く。
「ま、待って。どこ、誰、アタシ、なんで!?」
「みゃっはは〜! 乱暴はしないから! わったーしのあいどくしょは少女漫画なもので!」
「わたしのコトちゃんを奪うなんて……ゆるしません」
ポニーテールを揺らし走る女の子と、手を引かれて走るアタシ。後ろの方で黒の
奇妙な鬼ごっこだった。
そうして渡り廊下を抜けて、広い玄関ホールも越えて、たどり着いた大きな教室の前。
「さってー! ここら辺まで来ればもーいーかな!」
そこでようやく、アタシの手を引く女の子は止まってくれた。
肩で息をするセッちゃんが落ち着くのを待たずに振り向いて『うぇっほん』とわざとらしく咳払い。
「ほいじゃまあ、改めまして御ふた方。
アッシ姓は
「アタシはネコト! よろしくねリッちゃん!」
「ほぁぁ……!! アッシのノリに乗ってきてくれたの初めて! いえーい!」
「イェーイ!」
ここで負けちゃダメな気がして名乗り返したけど、なんか、こう、噛み合わせがいい? みたいな? 感じ。
「どうやらアッシらは姉妹だったらしい……
「それはセッちゃんとがいいなぁ」
ただ、それとこれとは話が違う。
ペカーと効果音がつきそうな笑顔から、理科のフラスコみたいな涙になっても知らないったら知らないのだ。
「それで! あなたの目的は、ぇほ、なんなのですか。あんな無理矢理、連れだし、て……」
「え? ヤだった? でもあんな場所いても良くなくなくない? お互いに。
だってアッシら、同類でしょ?」
繋ぎかけたアタシの手をもぎ取ったセッちゃんの息も絶え絶えな言葉に、コテンと首を傾げてリッちゃんが言う。ということは、つまり──
「アッシとお嬢、それと今日は怪我してるけどお嬢の執事さんで、合わせて3人。今日はいっぱいファイトしよーうぜ!」
太陽が爆発するような笑顔のまま、教室の扉が開け放たれた。
隣国の方じゃ、魔術師と竜が手を取って蟲との戦線を保ってるらしい。どっかの都市は押し返したとよ。冗談キツいぜ。