アタシの切り札は数が多い 作:コピートークンA'本物exl
教室の中はアタシ達の部室とそんなに変わらない、けど不思議な雰囲気に包まれていた。
ファイトする机があって、ちょっとだけ物が少なくて、美術室と保健室が混ざったみたいな不思議な匂い。
そんな部屋の中心に、2人は居た。
「どんな子が来るのかしらねシノブ?
「それで夜更かしして体調崩したんですから、自重して下さいお嬢様。それにほら、お待ちかねの相手が来ましたよ」
「本当!?」
傍に杖を置いた色が抜け落ちたお姫様みたいな女の子。
それもいかにも執事って感じの凛とした男の子。
その女の子の目は、両方ともかわいい眼帯で覆われていた。
「リク、紹介を頼む」
「はいな! ぁ御控えなすってぇ! 軒先3センチお借りに」
「そういうのはいい」
「へーい」
ぶーぶーと口を鳴らしながら、リっちゃんはこっちへ向き直って。
「めんご! お嬢、色々あってお目目が見えなくてさ。
先にアッシから2人の象徴だけ紹介させて?」
「アタシはいいけど、セッちゃんはいい?」
「わたしもいいですよ。あとでこの鉄砲玉さんととファイトさせていただければ」
あ、ヤバい。すっごい根に持ってる。
「お嬢お嬢ー! 見えてる?」
「はい、拙にもくっきり」
「おっけー!
こっちの蟲と火の姫君が八重木ネコトちゃん、
あっちの蛇と水の姫君が百合ヶ咲センカ嬢。
よしなになー」
「しかと覚えました」
ゆっくりと頷いたあと、お嬢と呼ばれた女の子は執事さんの手を借りて立ち上がって。わ、かーてしー。きれー……
「初めまして、ネコトさん。センカさん。
「よろしくね、ミレイちゃん!」
「わたしも、よろしくお願いします。ミレイさん」
えっと、確か目の見えない人には急にハイタッチとかはダメだから。ゆっくりと握手するために手を出した。
美味しいお茶とお菓子があれば話は弾みます。
リクさんにはお好きなようですしケジメを付けてもらうつもりですが、それはそれ。Lifeを手繰るファイターが集まっていて『仲良くなる為に何をするか?』なんて、誰が見ても明らかな話です。
「改めて、俺は
お嬢の執事かつ介助……お助け係だ。今日は怪我もあって、簡易的にジャッジをさせてもらう」
「よろー!」
「よろしくね!」
「よろしくお願いします」
「シノブにも楽しんでもらいたかったのだけれど」
当然の流れとして、そうなりました。
「全員、ボードの準備はいいな? お嬢は目が見えない。お客様にお願いするのは心苦しい話だが、丁寧なプレイと宣言を頼む」
全員が頷きます。
コトちゃんなら『友達と遊ぶのに1人だけノケモノにはしたくないもんね!』なんて言ってくれるでしょうか? ふふ、目に浮かびますね。
では、
「初戦は、わたしとそこのリクさんとでお願いしましょうか」
「おんやぁ、アッシとの試合をご所望でい?」
「えぇ」
コトちゃんを取られそうになったことは許せませんが、それ以上に。強い相手とファイトできる家でも貴重な機会、逃す手はありません。
「やたー! お互い大人にハブらつちまつた悲しい身分、楽しく発散しましょうやぁ!」
「存分に果たし合いましょう」
わたしは愛用する蛇のようなボードを。
リクさんは流星のようなボードを展開。
わたしたちの部室と違って、部屋の中央に設置されたフィールドに足を踏み入れます。
「したらば!」
「それでは」
向かい合い、ボードを構えて。
「「ファイト!」」
先手は……残念、あちらですか。
「アッシのターン!
レディは飛ばしてアップキープ、メインはなし、ライフデッキから2枚をドロー!」
宣言が丁寧。
見習いとは言っていましたが、流石は
「アッシは手札より、変容
「ッ、ブリッジ
「せやよ」
変容
それは複数の色を選んで発生させることのできる代わりに、通常
「〈赤錆山の渓谷橋〉は『破壊不能』を持ち、ステイすることで(赤)か(黒)のコストを生産できまっせ。変わりに、セットはステイ状態限定でさぁ」
色違いの物は幾つか見たことがあります。
そして当然、その使い手も。
「これでアッシはターンエンド」
このタイプの色彩を使う相手は、殆どが遅いデッキでした。
ならば。
「参ります。わたしのターン。
レディ・アップキープ、メインから1枚、ライフデッキから2枚引かせていただきます」
わたしもゆっくりと盤面を整えるとしましょう。
「セット、魔石〈レズニアの湖沼〉」
「ありゃ? 事故った?」
「いいえ。この魔石がある限り、わたしは自身のアップキープ時にライフ1つを失い1/1の蛇・汚染体・トークンを生成いたします。このトークンでわたしはブロックを行えませんが、代わりにそれは『発症1』を持ちます」
「うげっ、腐死だぁぁぁぁ!!!」
いちいちリアクションの大きな方ですね。
「これにて、わたしもターンエンド」
ゆっくりと、しかし確実に。息の根を止めにいくとしましょう。
「アッシのターン。レディ、アップキープ、どろー!」
赤と黒、果たしてなにが出て来るでしょうか。
「こいつぁゆっくりしてる暇はありゃせんね。
セット、赤の
「また特殊な土地を……」
「これは色彩でありながら秘宝でもある、ダメージチェックでも場に出せるぜぃ!」
代わりに生産できるコストは1色、通常の土地と代わりはなかったはずです。
「そしてアッシのこのカードは『共心(秘宝)』を持つ為、アッシのコントロールする『秘宝』1つに付き
よって、3(黒)から2軽減──1(黒)!
カモン!〈機械化された妖精〉!」
銃を持ち、防弾チョッキを来た小さな妖精。
そのステータスは。2/1の飛行!
「この召喚時〈妖精〉の効果が起動、各ファイターは手札を1枚選んで捨てる。そう出来なかったファイター1人につきアッシは1枚引けるけど、今回は関係ナッシン!」
「では、1枚墓地へ」
「アッシも1枚墓地へ──この時、捨てた呪言〈藁の手〉が起動。メインから1枚ドローして、ターンエンド!」
そしておちゃらけてる本人と違って、いえ、こちらが本性なのでしょうか? なんとも抜け目のない。
「わたしのターン。レディ、アップキープ。〈湖沼〉の効果が誘発、ライフを1つ
ならば、こちらも全力で参りしょう。
「セット、変容
「それ絶対変なコンボで見るやつー!!」
「この色彩は『活性化』カウンターが2つ乗った状態でセットされ、ステイする際にカウンターは1つ取り除かれ、カウンターが0個になった場合ゲームから除外されます」
「それだけのデメリットがある効果はいかほどに?」
「単純明快。レディ状態でセットされるうえ、生産できるコストは(黒)(黒)の2コストです」
「やだー!」
「2コストを生産し、カウンターが1つへ」
駄々を捏ねるようにジタバタしていますが、止める理由はありませんね。
「黒1コストで〈不意のひと咬み〉をプレイ。
対象の〈機械化された妖精〉に-1/-1の修正を与えます。対応はありますか?」
「ない!」
「では解決し〈妖精〉が死亡。リクさん、あなたに腐死カウンターを1つ贈呈します」
「わぁい、嬉しくない!」
これで、残り9個。
「続けて1コスト、〈穢れ沼の毒蛇〉を召喚」
ひとまずはここまででしょうか。
「ターンエンド」
思わず浮かんだ笑顔を手札で覆い隠す。
コトちゃんとも、オルガくんともまた違う歯ごたえのある気配。先生にはあとで、ありがとうとお伝えしなきゃですね。
僕のゴーレムで1人でも多く生かす。
戦禍は子供たちの世代へは受け継がせない。
それが大人の、最後のまともな人間の義務だから。