アタシの切り札は数が多い   作:コピートークンA'本物exl

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本日4話目


13:ライフデッキが尽きることによる敗北と呪言の発動は敗北が優先される(一部例外あり)

 

「起動、呪言(カース)〈毒血の噴出〉。

 このタイミングでの効果は、腐死カウンター1つの付与 or 拡大を1回です」

 

「選ばれたのは、腐死でした!」

 

「残念、拡大です。リクさん、わたしの色彩2つ、そして〈ミアライトエンフォーサー〉の4つ」

 

「アズ=ルテム! アズ=ルテムにも-1/-1カウンター乗ってるよ!」

 

「打ち消されるので選びませんよ?」

 

「けちぃ!」

 

 効果が解決。

 腐死カウンターが8つになり、エンフォーサーの修正が-4/-4に到達したことで死亡。アズ=ルテムも秘宝が減ったことにより5/5まで弱体化。

 

「改めて、わたしはこれでターンエンドです」

 

 

 

 

 

 

 

「偶発の呪言込みとはいえ、全体除去を使わずにあの盤面を……すごい」

「ふふん、アタシの親友は強いんだよ!」

「でも、拙の親友だって負けないですわ。がんばれー!」

 

 

 

 

 

「うおお! 頑張る!!

 アッシのターン!」

 

 和やかな声援に応えるように、彼女のデッキが光った気がしました。

 

「レディ、アップキープ、どろー……うぇっ」

 

 苦虫を噛み潰したような顔。

 気のせいだったのかも知れません。

 

「フル軽減、黒1コスト。カモン〈機械化された妖精〉!」

 

 土地をセットしなかった?

 

「お互いに手札を墓地へ!」

「わたしは……そうですね、〈毒蛇〉を墓地へ」

「アッシは〈藁の手〉を墓地へ送り、呪言が起動。1どろー!」

 

 これで彼女の手札にあるライフデッキのカードは0枚。

 

「なるほど、カラスク*1。先の火力呪文はその焦りもあってでしたか」

「そ、そそそそ、そんなことないしー!」

 

 ただ、共心(秘宝)による軽減の多さを考えるとあれだけで十分とも考えられますか。機械化された妖精もまた秘宝/クリーチャー。

 

「それにメイン2とライフ1の手札3枚じゃ、これはもう処理できまいて!

 7軽減──0コスト!

 〈魔造護兵(スイストアッフェ)ミアライトエンフォーサー〉3枚目!

 

 もいっちょ7軽減──0コスト!

 〈魔造護兵(スイストアッフェ)の技師、パトス〉!

 

 最後に8軽減──青ダブル!

 〈空鳴(そらな)らす戒響(かいきょう)、アズ=ルテム〉セカンド!」

 

 9/9飛行・神秘2、8/8飛行・神秘2、2/1飛行、4/4、パトスは……ああ、色彩のサイクリングが付いたエンフォーサー、確か制限カード。これも4/4。

 こんな無法も通ってしまうなら多少のマナスク程度、意にも解さないはずです。

 

「アッシはこれでターンエンド!」

 

「おや、8点は空いているのでは?」

 

「あんまり舐めてもらっちゃあ困りますぜ。

 アッシの負け筋は腐死が2個増えること。アンタのライフは支払い(ルーズ)で次ターン11、ゲイン込みで14。これまでのゲインは5、つまり呪言の可能性は残り6枚!

 よってぇ、ギリギリまで削ってからオーバーダメージでふっとばーす!

 これがアンタのファイナルターンだぁ!」

 

 

 

 

 

 

 

「全体除去の警戒を怠ったな。お嬢の剣としては減点だ」

「でも拙、こういう派手な展開は好きですわ」

「アタシ、青の〈黙示録の光〉とか〈滅びの闇〉みたいなカード知らないかも」

 

 

 

 

 

 

 ありますよ、コトちゃん。

 

「では、お望み通りファイナルターンにいたしましょう」

 

 尤も、白や黒とは違う形のものにはなりますが。

 

「レディ、アップキープでトークンを生成──ッ」

 

 コストとして落ちたライフは呪言〈間一髪〉。

 

「よっし!」

 

 ガッツポーズされちゃいました。

 

「マナー違反ですよ」

「ごめん」

「許します」

 

 これでわたしのライフデッキに呪言は0枚。好機に見えるでしょうか? 油断してくれるでしょうか? 緩んでくれれば幸い、そうでなくても──押し通します。

 

「メイン、ライフドロー!」

 

 意味深に立っている赤1コスト。さっきの口ぶりですと、おそらく〈絶縁破壊〉は握っていませんね。なら、ファイナルターンを宣言できる手札は何か。

 

 打ち消し

 

 それ以外にはないでしょう。

 残り3枚の手札のうち、幾つ握られているか。そして代替(ピッチ)があるか。その対象は何か。

 以前MeeKingでお会いしたエレウシスのチャンピオンでもあるまいし、全てがカウンターということはない筈。あって2枚、おそらく1枚。

 ここまで使ってこなかったことから、恐らくですが効果は限定的。〈防災〉のような万能性はないと見ました。

 

(確か、コトちゃんのサイドデッキにも入っていましたね。珍しい赤の打ち消し。青のカードのみを対象としたカウンター)

 

 それを前提に動きますか。

 

「メインに入り、通常色彩をセット。〈大渦〉より2コスト。

 魔法〈懐疑的な報告〉を発動、1枚ドローと拡大を行います」

「させっかぁ! 瞬間魔法〈バックドラフト〉

 青の魔法1つを対象として、その効果を打ち消す!」

 

 

 チェック

 

 

「では続けて1コスト、蛇トークンへ〈うらみ、ねたみ〉を付与。3/1となり貫通を得ます」

 

 対応なし。チェックメイトまであと3手。

 

「バトル。蛇トークンでアタック!」

 

「ッ、〈エンフォーサー〉〈パトス〉、マイナス修正を受けてる〈アズ=ルテム〉の3体で()()()()()()!」

 

 慎重極まる宣言の中、視線が向いている先はわたしの2枚しかない手札。既に見せたバウンスカードを警戒しているのでしょう。

 3体ブロックは低コストの〈血清〉では対処不能、複数バウンスの呪言は概ね高コスト。残り4コストしかない今、握っていても〈アズ=ルテム〉の神秘を突破できない。

 

そこのけ そこのけ 蛇の目が通る

 

 わたしの蛇が相手でなければ。

 

「詠唱!?」

 

「ブロック指定後、ブロック中の〈エンフォーサー〉〈パトス〉〈アズ=ルテム〉を対象に瞬間魔法〈波打つ蛇紋の侵攻〉をX=3コストかつ、手札の青を持つ呪言〈毒血の噴出〉を除外することで発動いたします!」

 

 


 〈波打つ蛇紋の侵攻〉(青)(X)

 瞬間魔法

 この魔法をプレイする追加コストとして、あなたの手札にある望む枚数の青のカードをゲームから除外してもよい。この魔法を唱えるためのコストは、これにより除外されたカード1枚につき(2)少なくなる。

 クリーチャー最大X体を対象とする。それらとそれに付随する全ては次のレディフェイズ開始時まで消失する(消失している間はそれらは存在していないように扱う)


 

 

「〈アズ=ルテム〉の神秘2が誘発!」

「支払います。〈侵攻〉のコストは2、追加で2、超過はありません」

 

 チェックメイト

 

 小さな蛇の行く手を阻んでいた青い結晶の巨人が、巨人を従えた技師が、嵐を纏う龍が、神隠しにでもあったかのように姿をかき消した。

 

「……うそ」

 

 妖精は間に合わず、龍の嵐は届かない。

 ──彼女を守るものはもういない。

 

荘厳なる砂上の世界は、取るに足らない虫のひと咬みで崩れ去る

 

 腐死カウンター 8→10

 

「ガッチャ、心の踊るファイトでした」

 

 

 

 

「ゔぇぇぇぇ!! まーけーたぁぁぁ!!」

 

「わたしのクッキー食べますか?」

 

「くっしょー! アッシは施しなんて受け、あっ美味しい。でもちょっと待って粉、粉が、はへん、ゔぇっほ! 咽せる。咽せる!」

 

 すごいファイトだった。

 珍しいファイトだった。

 荒ぶる高コストのカードを低コストのカードで捌ききって、最後には手札を使い切って一撃を通すことで決着。

 こんなの、初めて見た。

 

 拙のデッキとも、シノブのデッキとも、それこそいま戦ってくれたリクのデッキとも違う。拙にはその光景は見えないけれど、スピリットの気配だけはとてもよく分かるし見える。

 

 これが、あの先生が言っていた特別。

 拙たちと同じ、網からあぶれてしまった星。

 星座に列席する手前まで行ったあの先生が、直々に強いと断言した原石。

 

 

「ね! ね! アタシたちもやろうよ! ね!!!」

 

 拙の手を握って、はしゃいだ様子でいる蟲の姫君。

 無数の精霊に愛されている大輪の花にも似た、けれど不思議な根の張り方と成長をしている子。

 

 ああ、きっとこのファイターなら。

 

 拙の目を。

 幻視してしまって、しきれなくて、それでも産んでしまった、産まれてしまった秘札を。

 

「お手柔らかに、いえ、全力でお願いしますわ」

 

 レガシーを呼んでも、きっと大丈夫。

 

「でも、この通り拙は目が見えず……今はデッキのカードの判別をスリーブに貼ったシールで行っていますの。マークドと言われてしまえば、それまでなのです」

 

「ボードに駄目ってされてないんでしょ? それなら全然かんけーなし!」

 

「──そう、ですね。

 それが分かってくださる方が、どれだけいるか」

 

「ここからだとちょっと遠いけど、MeeKingってお店オススメだよ! 多分、常連のみんなは殆ど受け入れてくれると思う!」

 

「そんなお店が!?」

 

 あとでシノブに連れて行ってもらいましょう。

 先の約束も考えると、これはもう友達になったと思っていいのではないかしら。2人以外の、友達。ともだち。特別な響き。

 

 高揚と、喜びと、込み上げる笑顔を隠すこともせず杖を突く。

 

 シノブに引き摺られていくリクの音を見送りながら、入れ替わるようにフィールドへ。拙もボードを展開します。

 

「それでは」

 

 メインデッキとライフデッキをそれぞれシャッフル、ボードにセット。あの日、拙を闇のファイトから助け出してくれた男の人の真似。一切の光が見えないのに誰よりも強かった、その心の強さを借りるためのルーティーン。

 

「丁寧なんだね」

「本気のファイトの前のルーティーンでして」

「カッコいいもんね、これ」

 

 シャッシャッと聞こえる小さな何かの擦れる音、続けて機械的なシャッフル音。ネコトさんも同じことをしている? あれだけのスピリットの輝き、もしかしたら同じ人に助けてもらったのかも知れませんわね。

 

 そういったお話も、あとでしてみたいですわね。

 

 

「では、」

「それじゃあ」

 

 ボードを構える。

 心の中に嵐を呼ぶ。大丈夫、きっとネコトちゃんなら大丈夫。また友達がいなくなるなんてことはない筈だから。

 

「双方準備は整ったな。

 ではここに、開始を宣言する。

 レディ──」

 

 

「「ファイト」」

 

 

 戦いの幕が開けた。

 

 

*1
必要枚数の色彩(土地)が引けないこと。カラースクリューの略




 死を強いる指導者に正義なんてねえよ。
 それでも、俺たちの故郷はここなんだ。

──隻腕の負傷兵 
 
──〈真実の戦場〉より 
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