アタシの切り札は数が多い 作:コピートークンA'本物exl
なぜって己が生命の識層って言うんだから染まっててほしいし、別の柄を混ぜたり混ぜられたり染めたり染め上げられる過程がドえっちなので。
(本編を見た)
楽しそうなファイトだった。
見知らぬカード、初めて見る戦術、肌で感じるファイトの気配。
アタシならどうやって攻略しよう?
ユウキちゃんのブレイバーと似て秘宝が並ぶと強いんだから、やっぱりそこの妨害から? 羽化した時に秘宝か付与魔法を壊せる子を最近入れてみたし、そこからかな。
それとも個は強くても数では押せるからそれもありかも。
へそ下あたりがむず痒い。
ワクワクが止まらない。
止まらないからこそ。
目の前の相手に、更に釘付けになって仕方がない。
「──」
じたばた駄々を捏ねてたリクちゃんが執事さんに引き摺られるのを見ながら……見えてないのに見ながらでいいのかな?……立ち上がった竜ヶ峰さん。
カツンと、彼女が杖をついただけで空気が変わった。
「楽しんでね、コトちゃん」
「もっちろん!」
セッちゃんとバトンタッチ、入れ替わりでフィールドに入る。
彼女のボードが展開された途端に、感じていた気配がいっそう強くなった。まるで台風の日に外に出てるみたいに、寒くて、重い。怖い。
サレンちゃんさん師匠がモブさん相手に出してた、ヴァイスファングってカッコいい狼さん。
お洋服をいじめてるお姉ちゃんが使っているのを見せてくれた天輪を背負ったドラゴン。
対巨乳同盟ユウキちゃん・アリーシャさんのブレイブ・轟。
あれ、待って?
なんでモブさんのところ、慣れられるくらいにそういう人が集まってるんだろ?
じゃなくて。
「では、」
「それじゃあ」
お互いにデッキをシャッフルしてからセット。ボードを構えた。
(ファイトが終わったら、もっとお話ししたいな)
ざわざわと、足元から競り上がる気配に支えられる。
音が聞こえる。
嵐の音、虫の声、ざわめき、悲鳴、昂る鼓動。
この前3人お揃いで買った、蛇と蝶々のブレスレットを触る。……よし。
「双方準備は整ったな。
ではここに、開始を宣言する。
レディ──」
ひとつ、大きく息を吸って。
「「ファイト」」
宣言と共に、光が灯ったのはアタシのボード。
「先攻はアタシ! れでぃ、アップキープ、ライフ2ドロー」
ちゃりんとブレスレットが揺れる。
手札は──悪くない。今回は最初から、モブさんとかサレンちゃんさん師匠を相手にする時と同じつもりで行く!
「変容色彩〈共和国戦線:第18号海岸〉をセット。
これは(赤)か(青)を生産できる代わりにステイ状態でセットされて──セット時、いずれかのプレイヤーに1点のダメージを与える。
当然、対象はアタシ自身!」
アタシのおこづかいじゃ正真正銘のダメージ色彩には手が出ないけど、こっちはコモンでお安いからもーまんたい!
「チェック、黒の基本色彩だからそのままセットするよ」
「一応ボードから読み取れますので、そこまで丁寧な宣言でなくても
「んー、でもちゃんとやるよ。折角だから!」
挨拶をちゃんとして、宣言は正しく、しっかりして、マナーを守る。
対戦で一番大切なことだってモブさんも言ってた。
「ふふっ、ありがとうございます。ターンエンドでよろしいですか?」
「だね。アタシはこれでターンエンド!」
さて、何が来る。
「では、
なんかちょっと言葉の気配が違うような。
「セット、魔土地〈キレルヴァの霊峰〉」
「魔土地……ってことは」
「これは色を持たない1コストを生産できます。
ただし拙が他の2つ、〈大結晶〉と〈塔〉をコントロールする場合に限り2コストを永続的に生産できますわ」
やっぱりあった特殊な効果。
ただ真価を発揮するのは2ターンあと、それならねじ込める!
「
一瞬、頭が止まった。
全く気配の違うイラスト、大自然と人工物で別々のカード達。もしかして。
「
「はい、拙は二重血統で相違ありません。色を失った今もそう呼べるのかは定かではありませんが」
「そんなの関係なくない?」
この前お店に来てた関西弁のおねーちゃんがそうらしいけど、実戦で対面するのは初めてだ。
「楽しみ……!」
「そう、ですか。ですね。では、存分に。
〈ピケット〉の出撃時効果。拙のライフデッキの上から2枚を確認し、好きな順番で上下に並べ替えます。──こちらをトップに、こちらはボトムに」
澱みない動きでデッキの順番が入れ替えられる。これは、最速で揃えられちゃうかも。
「拙はこれにて
「なら、アタシのターン。
れでぃ、アップキープ、メイン・ライフドロー!」
予定通り、次のターンに動くつもりでいこう。
「セット、白の通常色彩だよ!」
天に向かって吼える狼が描かれた白の色彩。
これで3コスト。コンボの始動には十分で。
「──赤青、黒、白。随分と鮮やかで、賑やかで、眩しい。目が焼けてしまいそう」
「アタシもこんなになったのはここ最近だよ」
言いながら思い返すのは、この前のこと。
「そこまでやるなら、いっそ全色入れるべきだと思う。便利だし」
「サレンさんちゃんししょー! 色事故起きちゃわないでしょーか!?」
「私は起こさない、ふふん」
「ずるい!」
「因みに今アドバイスを聴くなら、このヴァイスファングのカッコいい基本色彩(白)をトレードできる権利もついてくる」
「入れまぁす! 蝶々のやつでいいですか!」
「かわいいのは嫌いじゃない、成立」
「基本色彩の交換、懐かしいなぁ。あの頃はレートを上げて光らせた上に、座標まで揃えてた人もいたっけ」
「変態の話?」
「今回ばかりはサレンが正しい。『ぴゅー!ぴゅっぴゅ!ハイレートの座標が一致してるデッキは全てを幸せに導くぴゅねぇ!!(高音)』とかいう人だったし」
「うわっ。ああいうのには近づいちゃダメ」
「はいししょー!」
変なことまで思い出しちゃった。
でもきっと遅くないと、返事をしようと思ったのだけど。
「まあ拙、焼ける目はもうないのですけど」
!?
「お嬢ー!! お嬢ー!! メッキ剥がれてる!」
「初対面相手にはちゃんとしろと、アレほど毎日言ってるだろうに……!!」
「さっきのわたしも、側から見てたらこんなに面白かったのでしょうか」
ちょっと面白い人かもしれない。
「気を取り直して、(2)(赤)の3コスト!
行っくよ相棒〈
ガシャン、とフィールドに降り立つ機械の蟲。
全部の色を受けて出てきたからか、心なしか普段より甲殻がつやつやしてる気がする。
「拙の手番。レディ、アップキープ、ドロー」
手札に加わったのは、さっき見て上に置いていたカード。となれば。
「セット〈キレルヴァの大結晶〉、名称以外は〈霊峰〉と変わりませんわ」
口調が戻った!
「そして2コスト、秘宝〈はためく
「対策は万全ってことだね」
「あと
「おちゃめな機能!?」
ミレイちゃんの背後にある護衛艦に色とりどりの旗が上る。これでつまり、次のターンから6コストのうち1つは何の色としても使えるわけで。
「拙はこれにてターンエンド」
やっぱり、攻めるなら今!
「アタシのターン。れでぃ、アップキープ、メイン・ライフドロー」
大群が無傷で帰ってきてて、向こうの起きてる色彩は0枚。〈防災〉みたいな
「セット、〈コリトエルフ三角瘴森〉!
効果は赤黒になった〈18号海岸〉、ダメージの対象は当然アタシ自身!」
この時点で〈大群〉の効果は誘発してるけど、色彩の効果の解決が優先される。軽い衝撃の中ボードから飛び出したのは、蛇の眼が描かれた青色!
「ダメージチェック、青の通常色彩だからそのままセット。
色彩が2回セットされたことで〈機動甲虫の大群〉の持つ『開拓』が2回誘発!
1回目の時は条件未達だけど、解決時に色彩が5枚になってるから追加効果は達成扱い。〈大群〉の全ての情報を持つコピー・トークンを2体生成するよ!」
ズズズ、とフィールドの地面から湧き上がるコピーAB。これだけであからさまに警戒され始めたのがわかる。やっぱり、油断しちゃダメだ。
「続いて(2)(赤)の3コスト、『羽化』コストで〈機動甲虫スワロウテイル〉を〈大群〉のコピーAに重ねる!」
「羽化……
「大体そうかな。人間以外のクリーチャーの上か下に代替コストで重ねて召喚出来て、1番上のクリーチャーは重ねられている下のカードの能力を全て持つ」
つまり今回の場合は、
「〈スワロウテイル〉は〈大群〉の増殖する効果を引き継いでいる、と」
「せーかい! そしてスワロウテイル自身の効果、これが羽化するたび、アタシのデッキから効果を持たない色彩1枚をステイでセットし、ライフデッキを切り直す。 スワロウチャージ!」
セットしたのは赤の基本色彩。
アタシ特有の蝶々が舞う綺麗な炎。
「増えますか」
「それぞれの〈大群〉効果が誘発、大群は2体から4体に、スワロウテイルは1体から2体に増殖!」
「わぁ、たくさん」
「これで8点、次のターンで16点。火責めの陣形……いや、機動甲虫なら速攻は自弁できるか。あの色を見るにコンボデッキだろうに、随分とまた足が速い」
「えっ、うそ、お嬢負けちゃう!?」
「──勝つさ。これくらいで負けられるなら、お嬢の目は盲いていない」
「でもその言い方、死亡フラグにも聞こえます」
「……お嬢のレガシー、ここだけの話バリア張ってそうなイラストしてて。ハッ!?」
なんか変なことが聞こえてきたけどむしむし!
「これでアタシはターンエンド!」
今〈
対処か、敗北か。
ちょっと予定とは違うけど、2択を突きつけてる形だ。アタシとしては除去のために
「では、拙の手番を貰います」
さんちゃん師匠なら容赦なく〈黙示録〉とか打ってくるし、モブさんにはそもそも起点から潰されるし、何なら最近はユウキちゃんも全除去引いてくるけど。
「
──刹那。賑やかになったフィールドから聞こえていた音が、消えた。
台風が来る前の日みたいに、何もかもが静かで。
怖い。
来る。
くる。
なにかが、くる。
「……………来てしまった」
呟かれた声は、少し震えていた。
「大丈夫だよ、呼んでも」
ぎゅっとブレスレットを握り締める。
アタシの場にはさんちゃん師匠の白、アタシの赤、セッちゃんの青、オーくんの黒がある。
だから、怖いけどこわくない。
「ダメだと思ったら、拙は
「させないよ、アタシが」
「………はいっ!
拙は魔土地〈キレルヴァの塔〉をセット。3種のキレルヴァが揃ったことにより効果が有効化。これは他2つと違い色を持たない3コストを生産します」
つまり合計7コスト、追いつかれた!
「
バチバチと、フィールドに炎が走る。
「未熟なりし我が身を儚み、どうか透焔の一端を授けたまえ」
それは透明で、苛烈で、綺麗で。
より集まった透明な炎は、ミレイちゃんの額の上で眼のような模様を形作った。
「行きます。
炎が渦巻き、風が逆巻いた。
召喚されたソレの姿は嵐に阻まれて定かじゃない。それでもその存在はきっと、青白く輝く龍の姿をしていた。
人の世界で賢者が倒れた
蟲の世界で賢者が産まれた
人を喰ったその蟲は、瞬きよりも早く頂へ昇った。