アタシの切り札は数が多い 作:コピートークンA'本物exl
「3コストの1/1? なにかあるんでしょうけど……重いデッキなら、仕留め切れるラインまでは攻める! 私のターン、ドロー!」
ターンが回る。
これで向こうは2コスト、除去とかマイナス修正か飛んで来ませんよーに!
「土地をセットして、2コストで
よしよし、ゆっくり動いてくれている。
これなら何とかなってくれそうだ。
「因みに〈水晶〉も、2コストを払って生贄に捧げることで、私のライフを3回復し私のクリーチャー1体に+1/+0の修正を与える効果を持っているわ」
回復は代用カード3枚を下から押し込む形らしい。
Lifeのライフは最大で20枚、今のおねーさんのライフは16だから、攻めるなら一気に攻めなくちゃいけなくなった。
「バトル! 〈ひよっこ魔術師〉で攻撃」
「ライフで受けます!」
ていや、とひよっこの放った魔法が目の前で弾け、ライフデッキが1枚捲られる。そのカードは魔石や呪言ではなく、
「この瞬間、アタシのコントロールする土地が場に出たことで〈大群〉の『開拓』能力が起動します!」
「開拓?」
「はい! 土地が自分のコントロール下でフィールドに出る度、1/1の昆虫・クリーチャートークンをレディ状態で生成する能力です」
「へぇ、同じトークンを使うファイターだったのね。でもそれじゃ──」
「
大群の能力の真骨頂はその先にある。
「アタシのコントロールする土地が5枚以上の場合、代わりにこのカードの全ての情報を持ったコピー・トークンを生成します!」
〈機動甲虫の大群〉 (3) 1/1
クリーチャー・昆虫
開拓(土地が自分のコントロール下でフィールドに出る度、1/1の昆虫・クリーチャートークンをレディ状態で生成する。自分のコントロールする土地が5枚以上の場合、代わりにこのカードの全ての情報を持つコピー・トークンを生成する)
ズズズ、とフィールドへ出現する鋼の蟲。
ステータスは貧弱、だけどねずみ算式にその数を増やしていく厄介者。何が起きるかを察したのか、おねーさんの笑顔が引き攣ったように見えた。
「……ターンエンドよ」
あるいはそれは、台所の厄介者でも思い出したからかもしれないけど。
「アタシのターン!
れでぃ・アップキープ・ライフドロー・メインドロー……そして、
当然、開拓が誘発する。
「大群とコピー、それぞれの『開拓』が誘発! それぞれのコピートークンを生成!」
効果で〈機動甲虫の大群〉の数が4体へ増殖。
使えるコストも6あるし、土壌はこれで充分……なはず!
「アタシは羽化コストの1で〈
えーと、こういう時おにーさんは。
「通りますか?」
「何も対応はないわ。けど、羽化ってどういう効果かしら?」
「はい! 羽化は本来のコストとは違うコストで使える代わりに、人間以外の
メリットとしては、殆どのカードが本来のコストより低いコストでプレイできること。デメリットとしては、クリーチャーがいない限りそのコストにしては弱い能力のクリーチャーが多いこと。
「追加の能力として、1番上のクリーチャーは重ねられている下のカードの能力を全て持ちます。今回なら『開拓』を、あとは『飛行』とか、〈ひよっこ魔術師〉のトークンを出す能力みたいなのもコピーできます」
「それはそれは……厄介ね。〈先触れ〉も教えてくれるかしら」
「はい! 2コスト、0/1、飛行、羽化1、ステイすることで1コストを生産できます。また羽化している場合、この子は速攻を持つ」
「ふふふふ…………ごめんなさい、本気も本気でいくわ」
おねーさんの気配が変わった。
こんなのを聞いたら誰だってそーする、アタシだってそーする。でも油断してくれてたおかげで、アタシが一歩先を行く!
「何もないなら解決、〈先触れ〉が着地します。
続けて羽化の3コストで〈
ブゥンと飛び立った鋼のミツバチと、キラキラと舞う鋼のアゲハ蝶。鋼の蟲が変態する、数を頼みとする姿から新たな形を得て。
「この瞬間〈スワロウテイル〉の効果が起動!
このクリーチャーが羽化する度、アタシのライフデッキから効果を持たない土地・カード1枚をステイでセットし、ライフデッキを切り直す。 スワロウチャージ!」
土地が置かれる、それが意味することは即ち。
「それぞれの『開拓』が誘発します。
〈大群〉が4体、〈先触れ〉が2体、〈スワロウテイル〉が2体へ増殖!」
残念ながら先触れの片方は羽化をしていないので速攻を持たず、スワロウテイルも効果を発動してくれない。でも、まだまだ終わらない。
「続けてアタシは手札から瞬間魔法〈大群の乱動〉をプレイ! 土地は2コスト分しかないですけど、先触れ1体は速攻を持っているのでステイしてコストをねんしゅつ?します!」
「〈乱動〉ってまさか!」
「そのまさか! 効果によりアタシの土地を1つ生贄に捧げ、ライフデッキから効果を持たない土地・カード2枚をステイ状態でセット!」
典型的なコストの加速カード。使いきれなかったコストはダメージに変わるLifeにおいて、人によって好き嫌いがすっごく分かれるカード。
だが土地が置かれるということは、
開拓が誘発する。
「2回誘発した効果によって、〈大群〉の数が12、〈先触れ〉が6、〈スワロウテイル〉も6体へと増殖!」
フィールドを埋め尽くす蟲、蟲、蟲。
隣のフィールドにいる人がギョッとした顔を向けるこちらのフィールドは、所狭しと蟲が溢れている。
アタシのライフをたったの10になるまで燃やして生まれた、数という名の暴力。1/1が12体、3/2飛行が6体の合計29打点。24体のクリーチャー。
「アタシはこれで、ターンエンド!」
事実上の
──キチキチ
ギィギィ──
ピ─────
蟲たちが、騒がしく声を上げている。
なにかが来ると、危ないと。アタシ自身も感じる感覚に、ぎゅっと手札を握り締めた。
「私のターン。レディ、アップキープ、ドロー」
淡く光る引き抜かれたカードが反転、アタシにも見えるようになって。
「この瞬間、私が引いた魔法〈魔女たちの篝火〉のオープンを適用! このターン、私は本来のX+1コストではなくXコストだけでこのカードを唱えられる」
引き抜かれた全体除去に、今度は私が顔を引き攣らせる番だった。
「土地をセット。
Xの2コストを支払って、
このカードはファイターを対象として、ファイターとそのコントロールするクリーチャー全てにX点のダメージを与える。対象はあなたよ!」
「嫌です、対応して〈防災〉をプレイ! 土地を3枚墓地へ送ることでコストを代替します!」
キャンプファイアーのように燃え上がりかけたフィールドが、元の静寂を取り戻す。危なかった、全滅するところだった。もっててよかった妨害カード!
(これで残りは1コスト)
まさか大型のクリーチャーなんて出せる筈はなく、次のターン一斉攻撃でアタシの勝ちだ。そのはずなのに。
──キチキチ
ギィギィ──
ピ─────
まだ死んでいない。
そんな予感がした。
強力無比な筈のその一撃は、迫る大群の前には小さな細波にしか見えなかった