アタシの切り札は数が多い   作:コピートークンA'本物exl

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3回行動


16:カテゴリ名を持たないカテゴリのエースは稀にいる

「アタシのターン!」

 

 次のターンに未来はない。

 

「れでぃ、アップキープ、ドロー!」

 

 アタシの手札はライフ2枚、メイン6枚。

 使用可能なコストは8。

 このターンで、19まで回復したミレイちゃんのライフを削り切る!

 

「セット、変容色彩〈荒れ果てた蟲戦場(こせんじょう)

 前の2枚と同じダメージ付き、赤白の色彩」

 

 ただこれまでと違うのは。

 

「1点のダメージは、ミレイちゃんへ!」

 

 ダメージを相手に与える使い方にすること。

 

「ッ、受けます。ダメージチェック!」

 

 捲れたのは、赤の通常色彩。ドラゴンっぽくてかっこいいな、いいなぁ。

 

「ウィンが6体に増えつつ、続けて1コストで〈雷撃〉。対象はミレイちゃん本体!」

 

「対応はありません。……っ、1枚をステイセット」

 

 赤の色彩、霊峰、大結晶──残り15点。

 ここまでの回復は6点分、つまり呪言を気にするのはあと9枚分だけ!

 

「2コスト〈起動甲虫スカラーベ〉をウィンコピーCの下に羽化、効果を誘発!

 スカラーベの効果で墓地の瞬間魔法〈雷撃〉を回収

 スワロウテイルでライフデッキより色彩をセット

 ウィンの効果でデッキトップを除外、1枚、2枚目〈機動指令:総攻撃〉が出たのでプレイ。アタシのコントロールする昆虫・クリーチャーは全て、ターンの終わりまで速攻を得る!」

 

「ですが〈ウィン〉は昆虫ではありません!」

 

「唱えることはできる! 使用した〈総攻撃〉は墓地に、土地が増えたことで〈ウィン〉が再び増殖!」

 

 ウィン 6→18

 

 

 

 

 

 

「なるほどな、運にも寄りそうだがいいダメージコンボだ。同じバーンデッキ使いとして心が躍る」

「いやー、シノっさんのバーンは毛色が違うっしょ。3ターン以内に全部焼けば勝ちなんてバカみたいないだだだだだだ!!」

「余計なことを言うのはこの口か? この口だな?」

「タバスコ!? タバスコはやだ、やめっ、ヤメロォ!!」

 

「コトちゃーん、がんばれー!」

 

 

 

 

 

 がんばるぞい!

 

「再び1コストで〈雷撃〉、対象は本体!」

「チェック……再び1枚のみセット」

 

 ライフデッキの上を入れ替える土地、赤の色彩、3枚目の大結晶──残り12点!

 

「1コストで〈双雷〉を発動、対象はアタシとミレイちゃんに1点ずつ」

 

「「ダメージチェック!」」

 

 お互いのデッキから捲れたのは──

 

「くっ、3枚目の霊峰です」

「ゲット、呪言〈焼畑〉! 使い終わった土地を3枚デッキに戻してライフを回復!」

 

 これでスワロウテイルの効果もまた使えるようになった!

 

「1コストで〈先触れ〉をウィンCの下に羽化、誘発!

 スカラーベで〈雷撃〉を回収

 スワロウテイルで色彩をセット

 ウィンの効果でデッキトップを除外──1枚目〈静電気〉を発動、1点のダメージを本体に!」

 

「チェック……! 呪言〈天秤の釣り合い〉を発動!

 拙の場にあるオブジェクト、〈嵐の御名〉〈信号旗〉〈ピケット〉及び〈ウィン〉ABCを指定。そのステイとレディ状態を入れ替える!」

 


 

〈天秤の釣り合い〉(2)(白)

 呪言

 色彩を除く自分のオブジェクトX個と相手のオブジェクトX個を対象とする。それらがステイ状態であればレディし、レディ状態であればステイする。Xは同数を指定しなければならない。

 


 

「スタック、ウィンABCの下敷きコピーされた〈先触れ〉の効果! それぞれがステイして1コストを生産、〈天秤〉でレディ状態に!」

 

「ですがこれで〈嵐の御名〉がレディ状態へ」

 

「あ、増殖だけ処理させてね」

 

 〈ウィン〉 18→54

 

「その後の優先権は拙が頂きます」

 

 何かが、来る!

 

「増殖効果の処理後に〈嵐の御名〉の効果を起動!」

 

「回復とドローだけじゃ凌ぎきれないよ!」

 

「自身に-1/-1カウンターを11個置くことで使用可能な、最終奥義!」

 

 -11/-11の修正!?

 死亡が確定する代償を背負った効果なんて、絶対にロクでもない。

 防災か、献身の証明か。手札にある2つの打ち消しを使いかけて、いつの間にか隣にいた〈ウィン〉に止められた。

 使うなってこと???

 

「拙の両デッキから、色彩ではない色を持たないカードを5枚までゲームから除外。このターンの終わりまで、拙はそれらをコストを支払わずにプレイできる。また、この効果は打ち消されない!」

 

「無茶苦茶だ!」

 

 でもありがとう〈ウィン〉!

 

「拙が除外するカードは

 2枚目の〈天目に座すもの、嵐の御名〉

 通常魔法〈神罰照覧〉

 瞬間魔法〈両舷全速ヨーソロー!〉

 瞬間魔法〈弾幕防御〉

 瞬間魔法〈弾幕防御〉

 の5枚!」

 

 嵐が起きた。

 主人はもう居ないはずの炎嵐が吹き荒れ、幾つかののカードを巻き上げて強く、強く、逆巻いて天を焼き焦がす。

 

「レガシーが2枚!?」

 

「ご覧の通り、拙のお目目は2つあるのですよ?」

 

 眼帯で見えない!

 

「持ったままの優先権で瞬間魔法〈両舷全速ヨーソロー!〉を、5コストを踏み倒してプレイ!」

 

「効果は!」

 

「このターン、拙がプレイする無色のカード全ては速攻と瞬間発動を得る!」

 

 止めなきゃ終わる、ここが正念場!

 

通さないよ!

 ウィンコピーを生贄に1コスト〈献身の証明〉!」

 

通りません!

 瞬間魔法〈弾幕防御〉! このカードのコスト、つまり5以下の効果を打ち消します!」

 

押し通る!

 使い切った色彩3枚をコストに〈防災〉!」

 

通しません!

 もう一度、瞬間魔法〈弾幕防御〉! 〈防災〉を打ち消し!」

 

 アタシの手札に打ち消しはもう──ない。

 

「効果が解決、拙の〈両舷全速ヨーソロー!〉が有効化!」

 

 となれば来るのは恐らく残りの2枚。

 きっとひどいことになるけど、向こうの妨害は使わせ切った………はず。向こう、ライフ1枚と塔、メイン4枚も手札があるけど。

 

「10コストを踏み倒し瞬間発動を付与された〈神罰照覧〉をプレイ!

 色を持つ全てのクリーチャーを破壊する、それらは再生できない」

 

「ぜ ん め つ だ ー !!」

 

 ごめん〈ウィン〉!!

 54体に増えていたウィンが、降り注いだ艦砲射撃に消し飛ばされる。これが鉄のカーテンとかいうやつ???

 

「はぁ……はぁ……」

「ふぅ……」

 

 限界まで搾り出した攻防に、お互いに荒くなった息を整える。

 楽しい。

 たのしい!

 まだこのファイトが終わってほしくない!

 

「でもまだ終わらせる! 使い終わった赤の色彩1つを生贄に、墓地から〈静電気〉をフラッシュバック! 対象はミレイちゃん!」

 

「チェック──呪言〈間一髪〉、1点ダメージなので使用を拒否して墓地へ」

 

 残り9点。最後まで一気……かせい? に攻めていく!

 

「2コスト」

 

 これが大本命。

 

「通常魔法〈機動甲虫群(ラ・バグレギオ)クラスターム〉を発動!」

 

 ここまで隠してきた最後の切り札。

 

「その効果により、アタシの場に1/1の昆虫・クリーチャー・トークン1体を生成する。

 この呪文は、このターンプレイされた色彩を除くカード枚数だけコピーされる」

 

 即ち、

 

「コピー回数は50! そしてこのターン、アタシの昆虫・クリーチャーは速攻を得ている。──通りますか!!

 

 102体の1/1速攻クリーチャーによる数の暴力。

 破壊不能でもない限り、5回はファイトを制して余りある群れの暴力が炸裂──

 

「今回は、拙の方が一枚上手でしたね。

 通りません。色彩3枚をコストに〈防災〉!」

 

「ゔぇっ」

 

 ──しない。変な声が出た。

 呼び起こされた大群の気配が打ち消され、どこか遠くに消えていく。

 

「うぅ、渾身の一手だったのにぃ」

 

 というか今気づいたけど、多分アタシたち同じ人の影響受けてないかなぁ! かなぁ?!

 

「まさか、〈嵐の御名〉を呼んでここまで食い下がられるとは思いませんでした。それも初めてファイトする人に」

 

「もう勝ったつもり?」

 

「はい」

 

 それはちょーっと聞き捨てならないかも!

 

「ならアタシは1コストで〈雷撃〉を自分自身に!」

 

 残りライフは9、ダメージは3。

 メインデッキからならともかく、ライフから1枚しかない欲しい呪言が捲れる気がしない。けど、今ならデッキは応えてくれる!

 

「ダメージチェック──色彩、色彩、呪言〈機動指令:回収〉!」

 

 きた!

 

「アタシの墓地から基本色彩4枚とウィンをデッキに戻し、戻した枚数以下のコストの機動甲虫を再生する!」

 

 ウィンは機動甲虫のカードだけど、その名称を持たないから蘇生できない。だから呼び出すカードは、

 

「来て、〈機動甲虫の大群〉!」 

 

 いつでも頼れるアタシの相棒。

 アタシのコントロールする色彩は6つ、今ので発生させてたコストは使い切ったけどまだ赤がひとつ残ってる。雷撃で出なかったからデッキには〈間一髪〉も1枚ある。

 手札の〈静電気〉で2回セプクすれば、1→3→9で大群は増える。そうなれば8点のライフを6点の巨人と4点の巫女、後続の攻撃だけじゃ削りきれる筈がない! ことによってはもっと増える!!

 

「やはり拙の勝ちは揺るぎません。

 呪言の発動にスタック、瞬間発動

 

「あっ」

 

 そうだ。

 最後の1枚、まだ、残って。

 

「来たりませい、もうひと柱の〈嵐の御名〉!」

 

 除去が来る。

 増殖が間に合わない。

 

「召喚時の効果で、赤の色を持つ〈大群〉をゲームから除外!」

 

「あー……」

 

 手札を見る。

 墓地を見る。

 フィールドを見る。

 うん。

 

「続けてステイ、効果を起動。+1/+1カウンターを2つ置き、1ドローと3点の回復まで」

 

 ここまで減らしてきたライフが12に、手札もライフ2枚のメイン4枚まで回復される。そしてここになってようやく、ボートが〈嵐の御名〉の情報を全て表示してくれた。

 


〈天目に座す者、嵐の御名〉(7)

 7/7

 ████(あらしのみな) 唯一無二のクリーチャー

 【象徴】──このクリーチャーは攻撃できず、ブロックできず、ファイターにダメージを与えられず、召喚酔いせず、攻撃対象となる

 このクリーチャーが召喚された時、フィールドの色を持つオブジェクト1つを対象とする。それをゲームから除外する。

 (S)+このカードに+1/+1カウンターを2個置く:あなたは3点のライフを得て、メインデッキからカードを1枚引く。

 (S)+このカードに-1/-1カウンターを11個置く:あなたのライブラリーから5枚まで色を持たないカードを探し除外する。その後デッキ切り直す。ターン終了時まで、あなたはそれらのカードをコストを支払うことなくプレイできる。これは打ち消されない。

 


 

 すごいなぁ、レガシーカード。

 ほんとにあるんだって思うし、こんなのそりゃ伝説って言われちゃうよ。

 次にファイトするときは即座に焼いて倒す。

 

 でも、アタシの手札にあるのは〈静電気〉とライフカードが1枚だけ。

 

 うん!!

 

 無理!!!

 

 

「アタシはターンエンド。

 さあ、やるならひと思いにやれー!!」

 

「では色々と場を整えて………バトル!

 いやー!」

 

「ぐわー!!!」

 

 アタシは負けた。

 

 

 

 

 

 

「それではまた! いつか! 拙とファイトを!!」

「またねー! 今度一緒にカードショップとか行こーね!」

 

 あの後、他の部のみんながやってる交流会が終わるまで何度もアタシ達はファイトをした。

 〈嵐の御名〉の奥義は2度と通さなかったし、アタシの増殖コンボもそんなに通らなかった。セッちゃんの毒は割と通って、共心の軽減だけはずっと安定してた。

 うーん、デッキのとくちょーよ。

 

「そろそろ出発する、窓から乗り出すのはやめてくれ八重木。身共は交通違反で捕まりたくない」

「でーもー!」

「同世代のライバルは得難く有難いものだが、Loinの交換もしたのだろう? 昨今物騒な世の中ではあるが、またいつでも遊べるさ」

 

 ちょっと難しくて分かりづらいけど、なんとなくその意味は分かる。

 今日、チャットアプリに増えた3つの名前。

 新しくできた友達の連絡先。

 ほんの少しだけ広がった世界が、アタシの手の中には残っていた。

 

「──そういえばコトちゃん、明日提出の宿題、覚えてます?」

 

 ふふんふふんと鼻唄が出てきちゃうくらい嬉しい気分に水を刺したのは、思い出したかのようなセッちゃんの呟き。

 

「…………………………なにそれ」

「算数と国語、出ていましたよね?」

 

 記憶の彼方からフラッシュバックする、明日でいいやと投げてLifeばっかりしてた記憶。宿題をやった記憶は、ない!

 

「教会育ちの身共が言うのもなんだが、一般常識と約束を守る意識は持っておくべきだぞ八重木。身共は風邪で倒れた夫にお粥すら作れず、泣いたことがある」

 

(ながれ)せんせー……」

 

「今朝も夫の弁当に冷凍食品という姑息な手を使う無様を晒している」

 

「大丈夫です、土部(はにべ)先生。わたしの母も1品は冷食です!」

 

「身共はな、ご飯と卵焼き以外──全てだ」

 

 ……

 

「せんせー。アタシ、頑張るよ」

 

 車の窓から見える夕陽は、やけに眩しかった。

 




 この手に限る
── 壺蟲天・放逸する夢奏、ウィン=ドリク 

──〈肉体言語〉より 
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