アタシの切り札は数が多い   作:コピートークンA'本物exl

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4回行動


20:ライブラリアウトや特殊勝利は闇のゲームにおいて致命傷になり得る

 

 闇カードの使い手と会話なんて成立しない。

 親父には何度も何度もそう言い聞かせられた。

 あの【笛吹き】とかいう怪人もそうだし、昨日と今日、巻き込まれている七不思議だってそう。問答無用だった。ファイトするしかなかった。

 

「だから、1回だけ聞く」

 

 それでも。

 昨日まで友達だった相手を何も聞かずにファイトでぶちのめす──それは何か、違う気がする。

 それをしたら、大切な幼馴染に2度と顔負けできなくなってしまうような気がする。たったいま目の前で繰り広げられた、焼き尽くすようなファイトを見てよりそう思った。

 

「どうする? お祓いを受けて2度と人間を襲わないか……この場で、また俺とファイトするか」

 

 強くて、迷わなくて、速い。

 でも()()()()()()()()()()()()()()()()

 だからこそ、ボードを突きつけながら問いかけた。

 

『──くすくす。ばっかじゃないの?』

 

 一瞬、呆れたような表情のあと。

 

『名前も嘘、楽しさも嘘、みんなみーんな嘘! 嘘! 嘘!

 こんな楽しいこと、今さらやめられる訳ないじゃない!!』

 

 返ってきたのはたったいま作ったような顔と、わざとらしいまでに悪辣な言葉で。

 

 ――誓言 敗者は勝者に隷属する――

 

「『ファイト!!』」

 

 そうして、避けることのできなかったファイトが始まった。

 

『私のターン、ドロー!』

 

 デッキから手札を引き抜き、手元に持ってきた時点でその異変に気が付いた。

 

 変わっている。

 

 こちらじゃない、向こうのデッキが──

 

()()()?」

『そうよ! 鏡の魔人と聖耕夕読のおかげで、そのデッキがライブラリーアウトなのは知っている。こうしてしまえば、貴方のデッキは機能しない!』

 

 ボードに収められたそのデッキは、パッと見で普通のデッキの倍くらいの厚さがあった。

 

『セット、〈放課後の怪校舎〉。そのまま起動して手札のカードを2/2のクリーチャーとして裏向きで召喚!』

 

 無事にファイトを終えられないかもしれない。

 思わずよぎった不安に、なんとなくブレスレットを握り締めて。

 

『ターンエンドよ!』

 

 覚悟は決まった。

 

「俺のターン。レディ、アップキープ、ドロー」

 

 カウント開始。

 デッキ枚数不明-5枚、手札5の1-4。

 

「色彩をセット、1コストで〈遺跡荒らし〉を召喚してターンエンド」

 

 やることは変わらない。

 冷静に、正確に、最後は必ず家に帰る。2人と約束した通りに。

 

『忌々しい賊風情が……私のターン、ドロー!』

 

 遺跡荒らしは0/3、あのトークン1体なら問題ない。出来れば鏡の魔人が出てくる前に対処したいところだけど。

 

『セット、変容色彩〈煤けた火事図〉当然2点のライフを支払ってレディin!』

 

 落ちていったカードは、さっき見た〈放課後のチャイム〉と通常の色彩。なら残りは〈焼畑〉だけ? 考えの隅にだけは置いておこう。

 

『そして2コスト──御伽話〈放課後怪談物語〉をプレイ!』

「御伽話……」

 

 それは最近モブさんもよく使っているのを見るカードのカテゴリ。

 ページを巡るように効果を発揮するそれは、放置すればするだけリソースを稼がれてしまう厄介な置き物。せめてその効果は把握しなければとボードを操作して──

 

「7ページ!?」

 

 初めて見るその長さに、思わず声が出た。

 

 

 


 

〈放課後怪談物語〉(2)

 秘宝 怪談 御伽噺

 このカードが場に出た時、【栞】カウンターを1個乗せる。

 このカードのコントローラーがメインデッキからカードを引いた時、このカードの上に【栞】カウンターを乗せる事が出来る。

 1P〜6P──まだこの効果で除外されていない〈七不思議〉カード名を宣言する。それを自分のデッキから探し、除外し、それの常在型能力のみを持つ怪談・トークン1つを生成する。それは0/0であり、攻撃できないを持つ。

 7P──これを生贄に捧げる。その後、これを変身させた状態で貴方のコントロール下で戦場に出す

 


 

 

 

『壱頁目、私はデッキから〈七不思議の陸、地獄階段〉を除外。その常在効果のみを持つ0/0の怪談・トークン1つを生成!』

 

 本来ならそのまま墓地へ送られる筈だが、

 

『〈陸〉は怪談クリーチャーを強化する。よって怪談トークンは2/2!』

 

 おどろおどろしい気配を放つ本から零れ落ちたページは、崩れ落ちることなくフィールドへ降り立った。

 コピー、トークン、そしてブロック不可。狙ってやってきてるなら……なんか、すごく嫌だ。

 

『ターンエンド』

 

 人の想い出を、土足で踏み荒らされるみたいで。

 

「俺のターン。レディ、アップキープ、ドロー!」

 

 ほんの少しだけ、ドローに力が入った。

 

「青の色彩をセットして〈遺跡荒らし〉の効果を誘発!

 お前のデッキの上からカードを3枚墓地へ!」

 

 カウント-10、手札5の1-4。

 まだデッキはかなり厚いままだ。

 

「続けて1コストで〈橋脚の潮招き〉を召喚!」

 

 遺跡荒らしの足元に呼び出したのは、片方のハサミだけが異様に大きな。この前3人で買ったBOXから出てきた、このデッキの新しい力。0/2なのは不安だけど、多分まだ大丈夫。

 

「これで俺もターンエンド」

 

 打ち消しはある。

 このターンならまだ、たぶん大丈夫。

 

『〈竜魔法の盗掘者〉じゃない?

 いえ、それなら攻めるだけね。私のターン、ドロー!!』

 

 ぺらり、頁が捲られる。

 

『〈放課後怪談物語〉が誘発、デッキから〈七不思議の伍、聖耕夕読〉を除外してトークンを生成!』

 

 3/3の壁が2体。

 そして今から、裏向きのクリーチャーは全て速攻を持って出てくるようになった。

 

『色彩をセットして〈怪校舎〉を起動、2体目の2/2クリーチャーとして裏向きでカードをセット』

 

 打ち消しは……するとしたら〈鏡の魔人〉のコピーに対して、いや、それもナシか。1ターンの延命にしかならない以上、出てきた後に除去するほうがいい。

 

『そして2コスト、付与魔法〈七不思議の弐、血染め桜〉を()()()()()()()()()()()発動! これが付与されている限り、その色彩は『赤』として扱いステイする度に2点のライフを失わせる!』

 

「スタック、1コストで瞬間魔法〈ターンパイク〉!

 追加で1コストを払わない限り、〈血染め桜〉は打ち消される」

 

『チッ、払えるコストはないわ』

 

「解決後、俺が瞬間魔法を唱えたことで〈橋脚の潮招き〉の効果が誘発。お前のデッキトップから3枚墓地へ送る」

 

 潮招きがカチカチと鋏を鳴らす音に連動して、何故か相手のデッキが上から崩れ落ちる。ターンパイクのコスト追加はプレイされるカードにかかる効果、誘発した効果には反応しない!

 

『ッ、ならバトルよ!

 2/2の裏向きクリーチャー2体で攻撃!』

 

「片方は〈遺跡荒らし〉でブロック、もう片方は──ライフで受ける!」

 

 左のボードを盾にして、顔と身体を覆い隠す。

 片足を引いて踏ん張り、防御態勢。

 【笛吹き】とファイトした少し後、MeeKingの店長さんとサレンさんから教わったいざという時の構え。

 

「来い!」

 

 ──衝撃。激痛。

 ボードを動かないよう蛇の精霊が締め上げて、何匹かの蝶々が庇うように前に出てくれた。それでも涙が勝手に出るくらい痛いし、全身がギシギシと変な音を鳴らしている。

 

「……て゛も゛、耐えた゛!」

 

 ライフデッキから飛び出したのは、魔石/色彩と白の2枚。

 

「〈遺跡荒らし〉の開拓が誘発、3枚墓地へ!」

 

 カウント-18。なのにまだデッキはぶ厚い。

 

『くす、これだけ頑張ったのに私のデッキはまだまだぶ厚い。痛い? 苦しい? 諦めたい? 楽になってもいいのよぉ?』

 

 甘い。

 甘ったるい言葉と空気。

 こちらを堕落させようとする、昏く甘美な闇の誘惑。だけどそれはもう知っているから。

 

「ワンパターンなんだよ誘惑が! 

 俺は俺の意思で、自分の道を行くって決めてんだ!」

 

 

 ブレスレットを頼りに闇の気配を振り払う。

 

 

『これだから『開拓』使いは……ッ、ターンエンド!』

「俺のターン。レディ、アップキープ、ドロー」

 

 

 正しい宣言とルーティーンで迷いを拭う。

 

 

「1コストで〈竜魔法の盗掘者〉を召喚。

 続けて魔石/色彩〈蜃気楼の水溜り〉をセット!」

 

 一歩ずつ。

 少しずつ。

 確実に。

 

「〈盗掘者〉と〈遺跡荒らし〉が誘発、デッキを6枚破壊!」

 

 積み上げていく。

 

「〈水溜り〉を起動。これを生贄に、デッキから青の色彩をセットして2体の能力を再誘発! もう6枚を墓地に送る」

 

 カウント-30、手札は変わらず5枚の1-4。

 それで道が拓けることを、俺は知っている。

 

「そのデッキ、元は多分70枚だろ」

 

 トークン越しに見える相手のデッキは、気づけば見慣れた厚さに変わっていた。

 

『な、何を根拠に!』

「いきなりデッキを増やしてもどうしようもない。でも七不思議って噂にこじつけた数字なら、共鳴もできるはず」

 

 闇のカード使いで、精霊。

 闇の精霊で、ファイター。

 色々と違う部分はあるけれど、大切な部分はきっと人のそれと大きく変わらない。

 

『……分かったところで、何ができる!』

「勝負ができる」

 

 あくまで、()()()()()()()()で終わりたい。

 退くことは出来なくても、闇のファイターであっても。ほんの僅かな時間だけでも、間違いなくそうあれたはずだから。

 

「ライフが尽きるか」

 

 指をさす。

 

「デッキが尽きるか」

 

 また指をさす。

 

「怪談が完成するか」

 

 頁が捲られつつある物語に指をさす。

 

「勝負しよう、_ ̄ _  ̄(ザザザザ)ちゃん」

『私の名前すら呼べないくせに』

「最近はネットとかもあるし、名前なんて知らなくても友達にはなれる」

『どんなカードかも知らないくせに』

「今から見れる」

『私は闇のカードなのに!』

「許さないのと友達なのは、両立できる」

 

 後ろで観戦しているシノブさんが何かを言ってるが無視する。

 俺はあんなに強くなれない。

 切り捨てられない。

 守ることしか出来なくて、それでも俺が目指す強さとファイトを諦めたくないから。

 

『……いいわ、そこまで言うならやってあげる。後悔してももう遅いんだから!』

「当然。これで俺は、ターンエンド!」

 

 おそらく最も激しい、最後の攻防になるターンが始まる。

 

『私のターン、ドロー。〈放課後怪談物語〉が誘発、3頁目〈鏡の魔人〉を除外してトークンを生成!』

 

 これで裏向きのカードは全て『ブロックされない』効果を得る。

 たった2点であれだけ痛いのに、4点素通しなんて考えたくもない。

 

「通す」

 

 が、打ち消すべきはここじゃない。

 

『1コストで〈七不思議の壱、不幸の手紙〉! 

 デッキトップから2枚を見て1枚を1/1の裏向きクリーチャーとして召喚!』

「通し」

 

 打点の追加。それでも俺のライフはまだ14ある。

 痛くても、苦しくても、そのダメージじゃ敗北しない。

 

『2コストで秘宝〈七不思議の参、彷徨う瞳〉をセット!』

 

 ステイしてドローを加速する秘宝、止めるならここ!

 

「スタック、青1コストで瞬間魔法〈オーバーテイク〉!

 それを打ち消す代わりに、打ち消すカードと同じコストX=2のカードをデッキからプレイする権利がお互いに、打ち消される側から与えられる」

『なら私は〈机の底の罠〉を発動! 条件付きの2枚ハンデスを喰らいなさい!』

「同じくデッキから〈反応解呪〉、再度打ち消し!」

 

 これで浮いているコストは1、ビッグアクションは起こせない。

 

「そして〈潮招き〉が2回誘発、6枚墓地に!」

 

 鋏が打ち鳴らされデッキが崩れる。

 そのうちの1枚を見て、相手の唇の端が上がった。

 

『墓地からカード4枚を除外して〈ゆうやけこやけ〉をフラッシュバック! 対象は2/2の裏向きクリーチャー!』

「通す」

『来なさい、〈七不思議を語る者〉!』

 

 現れたのは〈地獄怪談〉の補正でそれぞれ、8/9となっている巨大クリーチャー達。新たなクリーチャーの効果は、

 

「プレイヤーに無色クリーチャーがダメージを与えた時のドロー効果!」

 

 怪談物語の頁を一気に進める効果持ち。

 

『バトルよ、裏向きの2/2クリーチャーと1/1クリーチャーで攻撃!』

「スタック、白1コストで〈渓流の侵食〉2/2のクリーチャーを破壊する! 代わりに、基本色彩をそっちはセットできる」

『ならセットして続行!』

「その前に〈潮招き〉が誘発、3枚墓地送り!」

 

 攻撃のうち、片方が光に包まれ消滅する。

 それでもブロックできない1撃はこちらに直撃して。

 

「──ッ、」

 

 ボードで受けて、歯を食いしばって耐えた。

 ライフデッキから落ちたのは魔石/色彩、共鳴のないこのデッキでそうそう誘発はしてくれない。

 

『〈七不思議を語る者〉が誘発、1枚ドロー。

 ドローに反応して〈放課後怪談物語〉の4頁目、〈不幸の手紙〉を除外してトークンを生成!』

 

「ならそれにスタックして〈書庫の崩落〉をプレイ、デッキを8枚墓地へ!」

 

『8枚も……でも4頁目までは捲られる!』

 

「〈潮招き〉で更に3枚!」

 

 カチンカチンと煽るように鋏が鳴らされ、バラバラ、ばらばら、山のようなデッキが崩れていく。

 

『メイン2、2枚目の〈ゆうやけこやけ〉をフラッシュバック。戻りなさい、〈鏡の魔人〉!』

 

 カウント-56、手札4の1-3。

 4体のトークンで攻撃は通らず、次のターンには10点クラスの攻撃が2回くる。そのうえ妨害だって1つは見えている。1コスト起きている以上、簡易的な打ち消しが来てもおかしくない。

 

『ターンエンド』

 

 でも、これで勝ちだ。

 

「俺のターン、レディ、アップキープ、ドロー」

 

 こちらの手札は呪言1枚と色彩1枚、そしてドローカードにとっておきが1つ。

 セットするのを含めてコストは5。

 それだけあれば十分すぎる。

 

「色彩をセット、〈遺跡荒らし〉と〈盗掘者〉で6枚デッキを破壊!」

 

 カウント-62。

 

「青1コスト、通常魔法〈彼方を望む〉。

 デッキから1枚ドロー、ただしいずれかのファイターの墓地に20枚以上のカードがある場合3枚ドロー出来る!」

 

『通さないわよそんな横暴! 1コストで〈献身の証明〉!」

 

「対応はない。打ち消される」

 

 残りの手札は3枚の1-2。

 

「──でも、これで決着だ。

 (青)(青)(青)で魔法〈精神崩壊〉をプレイ。各対戦相手は、デッキの上から12枚のカードを墓地に送る」

 

『ッ、〈防災〉で打ち消し!』

 

「呪言〈火事場の力〉で〈防災〉を打ち消し!」

 

 代替(ピッチ)の打ち消しを代替(ピッチ)の打ち消しで相殺する空中戦の果てに、最後のデッキ破壊が貫通。

 山のように積み上がっていたデッキの、最後の1枚が墓地に落ちた。

 

カウントオーバー──下校時間だ、悪いな」

 

 メインデッキを回復するカードがないのは確認済み。

 

『非道い子ね、あの時にはもう勝ちまで見えてたんじゃない』

 

 ぱらぱらと頁が捲れるように、景色が元の色を取り戻していく。時計が逆巻き、空が渦巻き、逢魔ヶ時から忙しない朝の空気へ。

 

「俺はまだ、負けるわけにはいかないから」

『ふん、デッキの色らしい子だこと』

 

 最後に、そんな言葉を吐き捨てて。

 

『私の負けよ。アンティは絶対、カード()のことは煮るなり焼くなり好きにしなさい』

 

 元の街並みに戻った公園で、1枚の黒ずんだカードが地面に落ちた。

 それで終わりだった。

 

「……どうにかするアテはあるのか?」

 

 お互いの拳を突き合わせて、どことなく放っておかない闇のカードをポケットにねじ込んだ。

 

「一応。供養するよ。学校の先生が元教会の人だから、たぶん詳しいと思う」

 

 流先生なら多分そういう話も聞いてくれると思う。多分すっごく怒られるけど、お願いすればネコとセンカには秘密にしてくれるだろうし。

 

「そうか、なら任せる。頑張れよ、オルガ」

 

 そう言って、親切だけど変な兄ちゃんは帰っていった。

 

 ……………いやまじでなんなんだこの人。

 

 ファイトしてくれたのはありがたいけどさぁ! 

 

 結局名前も聞けてないし、なんか執事とか言ってたし!

 

 なんも分かんないだけど!

 

 たぶんめっちゃ変な人だ。

 

 ネコトにもセンカにも気を付けてもらった方がいいのかなぁ、いやでも結構な恩人だしなぁ。

 

 うーん。

 

 うーん……

 

「あっ、遅刻じゃん」

 




 逃げられた、蟲はそう思った。
 相変わらずそういうことだけは上手いんだから、蟲はそう笑った。
 融解した炉心の火と汚染の中、その蟲は動かなかった。
──〈彼方を望む〉 
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