アタシの切り札は数が多い 作:コピートークンA'本物exl
「確かに〈大群〉のコンボは決まれば強い。
でも初動の遅いコンボで必要札も多いから、今みたいにハンデスでパーツを抜かれたり、大群が増える前に除去をされるとすごく辛い」
たったの2枚でアタシの必殺技を粉砕した仇敵たる店員のおにーさん(モブさんって言うらしい。へんなの)が、泣きそうなアタシを気遣ってか優しい言葉で言う。
「だからこそ、大切なのはコンボを通したあとじゃなくてその前。どうやってコンボを通すか、妨害された時にどうやって立て直してゲームメイクをし直すか。そういった所になると思う」
ぐぬぬぬ
「……今ならお店に、丁度コンボ用のレンタルデッキがあるんだ。それ使って練習してみる?」
「や゛り゛ます……!」
がんばれアタシ、くじけるなアタシ。
打倒おにーさんの目標のためにも、泣いちゃいそうだからって足踏みは出来ないのだ!
そうして、ちょっと納得できない気持ちもあったけどレンタルデッキで遊び始めたアタシは────
「ふぐぅぅぅ……」
──絶賛、大スランプに陥っていた。
学校、授業も終わった放課後。
考えすぎてあっつくなってる頭をひんやりな机に押し当てて、あーでもないこーでもないと頭をひねる。
まいなーこーど
かーど・あどばんてーじ
やられて嫌なことを考えてプレイする
モブおにーさんの言ってたとことは難しくて全然わかんない。学校の先生も、パパもママも、そんなこと教えてくれなかった。
しかも、
あとちょっと、あとちょっとで何かがわかる気がするのに。
「むぐぐぐぐ…………あ、ちょうちょ」
おーばーひーと寸前の視界に映ったのは、1匹の綺麗な蝶々だった。不思議と目を離せないその子はアタシの目の前に止まって、くしくしと意味あり気に触覚を擦っている。
「じー……」
もしかしてこの子、スワロウテイルに似てる?
そう思った瞬間、音もなく蝶々は飛び立った。
アタシにはそれが、まるで着いてこいと言っているように見えて。ふらふらと、灯りに誘われる虫さんみたいにアタシも歩き出していた。
パタパタ飛ぶ蝶々に案内されたのは、アタシも所属しているクラブ活動の部屋。
「くそぉ、くしょぉ、また負けたぁ……!」
「まぁ。これではまだ部長になってあげられませんね」
「あ、オーくんまた負けてる」
人が人を椅子にして座っている、最早見慣れてしまった光景が広がっていた。
椅子にされてる男の子が、
座っている女の子が、
どっちもアタシの大切な幼馴染だった。
「コトちゃん! 今日は来てくれたんですね!」
「来たよー! いえーい!」
目があった途端、オーくんを足蹴にひしと抱きついてくるセッちゃん。
そう、そこにアタシこと
「いてて……でも、ネコが来るなんて珍しいじゃん。最近、ずっとファイトで悩んでたけどそれ?」
「ううん、まだそっちはぜーんぜん。ただ、この部屋にちょうちょが入ってくのが見えたから」
見た? と聞くと、ふるふると返ってくる首振り2つ。
というと、結局あれはアタシの幻覚だったのかなぁ。
「もしかしたら、カードの精霊の導きだったのかもしれませんね」
「せいれい?」
それってあの絵本とかに出てくるやつ?
「ええ! そうでとないと、わたし達3人が揃うことなんて滅多にないでしょう?」
「確かに全員が揃うの珍しいな」
セッちゃんの言う通りだ。
アタシは最近MeKingに通ってるからクラブにあんまりいない。
セッちゃんはお家のお稽古があって来る日がそう多くない。
オーくんも男友達とサッカーとかしてる日の方が多い。
みんなが揃うなんて、ひと月に1回か2回くらいしかない。
「なら折角だし言ってみろよ。勉強の悩みだったら俺はダメだけど、ファイトの悩みだったら答えられるかも知れないぜ!」
「そうですよ、コトちゃん。わたしも力になれると思います」
「んー……」
2人の気持ちは嬉しいけど、なーんか
「3人だけの秘密だよ?
今ね、アタシが悩んでるのはむずかしーことで」
「うんうん」
「ファイトの時に、カーってなってぐわーっ!ってカードを使う時じゃなくて、手札を墓地に送られたり、クリーチャーを破壊されちゃった時、どうやって戦うのが正解なのかって感じのことで」
ひたひたする感じ?
なんか言葉にするのが難しい。
「まあ」
「あとちょっとで何か掴めそうなんだ。それでね、教えてくれる人は優しいんだけど、そういうカード使う人って少ないじゃん? だから1人で考えるしかなくってぇ、疲れちゃってぇ」
また頭がぐるぐるしてきた。
1人で戦う相手のことを考えてファイトしてみるなんて、初めてすぎて合ってるのかも分かんない。なんかすごく良くない事してる気もするし。
「なんだ、それなら簡単じゃん」
頭から湯気を出しそうなアタシに、なーんだと呆れたようにオーくんが言った。
「要は『手札破壊』と『カード破壊』をしてくる相手とファイト出来ればいいんだろ?」
「うん」
「目の前にいるじゃん」
「めのまえ?」
目の前。
小さく、アタシと違って上品に手を振るセッちゃん。確かそのデッキは──
「あっ」
──その時、アタシに電流走る。
やはりファイト……!! ファイトは全て解決する……!!
こんな簡単なことを忘れるなんてどうかしてた!
「ありがとうオーくん!」
「困ってる
ぱしーんと自分よりちょっと大きな手とハイタッチして、今度向き合うのは既に卓に着いてるもう1人。
「おねがいセッちゃん、ファイトしよっ!」
「えぇ、勿論。コトちゃんのお願いなら、わたしにいやはないですよ」
「あ、なら俺ジャッジやるよ」
「ありがとついでにプレイマットも借りちゃうね」
「綺麗に使ってくれよな」
「とーぜん!」
そういうことになった。
気を付けな、新入り。ここでは昔からよく人が死ぬ。
そんな昔から蟲がいたのかって? いいや、出るのは──