アタシの切り札は数が多い 作:コピートークンA'本物exl
2回行動なのでご注意ください
「テーブルでやるときって、どれくらいシャッフルすれば良いんだっけ?」
「はて? ファロー2回にヒンズー2回もやれば十分、と家庭教師の方は仰っていましたが」
「アタシ達だとまだ、カードの方がおっきいからやり辛いよねー」
「「ねー!」」
「ジャッジとしてもそれくらいで十分な気がする」
「あ、ごめん。トークン生成だけボードでやるね」
「では、わたしもカウンターの生成だけはそちらで」
「先攻後攻はどう決める?」
「「さーいしょは、ぐー。じゃーんけんぽん!」」
負けたー。
後攻になってしまったけど、ファイトはファイト。
ファイトだアタシ!
「準備はOKか?」
「おっけー!」
「問題ありません」
机の上で向かい合って、メインデッキ40枚とライフデッキ20枚をきちんと並べる。カウンターとトークンの為のボードを置いて、これでよし。
「セッちゃんとファイトするの、けっこー久し振りな気がする」
「コトちゃんと遊べなくて、わたし寂しかったんですよ?」
ふわりと広がる、お花のような優しい香り。それに惹かれるようにアタシを案内した蝶々さんも戻ってきて、いつのまにか見慣れた部屋が彩られていく。
「わかった。お悩み中だから難しいけど、それでも全力でいくよ!」
「受けて立ちます」
バチバチと、部室に緊張感が満ちて。
「なら、双方これより。レディ――……ファイト!!」
お互いに、手慣れた動作で5枚の手札を引き抜いた。
「わたしのターン、参ります。
ライフデッキから2枚をドローして、土地をセット。1コスト〈穢れ沼の毒蛇〉を召喚」
「出たね、そのデッキのキー
黒い沼を背景に、赤い舌をチロチロと出した小さな蛇。
1/1の小さなクリーチャーだけど、持っている能力が厄介極まる。
「〈毒蛇〉は『発症』を持ち、わたしのコントロールするクリーチャーが効果の対象になった時、そのファイターに『腐死』カウンターを1つ置く能力を持ちます」
「『発症』を持ったクリーチャーはモンスターには-1/-1カウンターで、ファイターには『腐死』カウンターの形でダメージを与え」
「『腐死』カウンターが10個になったファイターは、敗北いたします」
つまりセッちゃんのデッキは、10回効果の対象になったり攻撃を通せば勝つデッキ──
例えば魔石の〈ザ・エントリー〉とかで+3の修正をすれば、クリーチャーには-4/-4の数カウンターが乗るし、ファイターには4つの腐死カウンターが乗る。
気を抜いた瞬間、即負けが確定してしまうもっと恐ろしいデッキだった。
何回も負けたもん、忘れるわけない。
「では、ターンエンド」
「アタシのターン!」
迷いを振り切って、不恰好な手札のままターンを迎える。
「れでぃ・アップキープ・メイン・ライフドロー!」
除去の当て先を散らす。
初めて聞いた時から納得するまで時間がかかったけど、それは多分こういうこと!
「セット、魔石〈始まりの実験室〉!
配置した時の効果で、アタシの場に0/1の昆虫・クリーチャー・トークンを1体生成!
実験室は魔石かつ土地のカードだから1コストを出して、羽化1のコストで〈機動甲虫の先触れ〉をトークンの上に羽化させるよ!」
これでアタシは次のターン〈大群〉を場に出せる。
今までならそうしてきたけど、なんども手札破壊をされて分かった。これだと場でも手札でも狙い放題、どっちかを放置してたら危ない!って思わせないといけない。だから。
「続けて羽化したから速攻を持ってる〈先触れ〉で1コスト、手札から〈
〈
クリーチャー・昆虫
このクリーチャーが羽化する度、これの上に+1/+1カウンターを1つ置く。
呼び出したのは、羽化で重ねれば重ねるほど強くなるクリーチャー。
これで放っておきたくない場所がフィールドと手札の2箇所になった。除去と手札破壊、どっちかがあってもどっちもはもう狙えまい。ふふん!
「これでアタシはターンエンド!」
ターンが回る。
「ではわたしのターン、ドロー。
……ふむ。ではわたしも魔石〈レズニアの
置かれたのは、毎ターンライフデッキを1枚失う代わりに、ブロックには参加できないものの発症を持つ1/1蛇トークンを出す魔石。
そして何より、土地がひとつ起きたままターンが帰ってきた。
いやーな。なんとなくいやーな予感がする。
「ならターン貰うね。
れでぃ・アップキープ・ライフ・メインドロー」
来てくれた、〈大群〉!
「
「
「──んにゃっ!?」
意気揚々とコンボを始動させようとしたアタシの手を、凛とした言葉が止めた。
「1コストで瞬間魔法〈蔑み〉を発動いたします。追加コストは?」
アタシの手札にあるカード達は、やっぱり殆ど
「支払わないぃ……」
「あはっ、それじゃ手札を見せて貰いますね?」
なんか見せちゃいけいないものを見せているよーな、変な気分。じっとりとした目が3枚あるクリーチャーの中から選び取ったのは、
「〈機動甲虫の大群〉を捨ててください」
「はーい」
当然、コンボの核である〈大群〉だった。
むぎぎ
「んー、なら3コストで〈
なんとなく手札を入れ替えてから、もう何も飛んでこないので安心してカードをプレイ。ライフデッキも切り直して、残りのコストは0。次の次の次まで考えて……うー、お菓子食べたくなってきた。
「ターンエンド!」
難しく考えすぎてこんがらがっちゃう前に思考を打ち切る。
「では、ターンをいただきます。
レディ、アップキープのタイミングで〈湖沼〉の効果が誘発。わたしのライフデッキを1枚墓地へ送り、蛇・トークンを生成。ドローに進み、土地をセット」
なる、よね?
「1コストで秘宝〈うらみ、ねたみ〉を〈毒蛇〉を対象に発動。これが重ねられた〈毒蛇〉は+2/+0の修正と『貫通』を持ち、秘宝自体は戦場から墓地へ置かれた時わたしの手札へ戻ります」
ならないかもしれない!
「バトル〈毒蛇〉で攻撃いたします」
また1コスト分余ってるぅ。
受けたら3つ、防いで2つかスワロウテイルと交換。パワーアップの瞬間魔法持ってたらヤだし……
「……〈先触れ〉でブロック!」
「はい。では貫通2点、コトちゃんに『腐死』カウンターを2つ付与しますね」
-3/-3の補正を受けて先触れが死亡、貫通してきたダメージで
「ターンエンド」
しゅるりと、冷たい何かが手足に絡む感覚がした。
「アタシのターン!
れでぃ・アップキープ・ライフ・メインドロー」
あと8点、だからまだ大丈夫。
大きく息を吸って、吐いて。元気を出してカードを引いた。
「
〈先触れ〉が居なくなっちゃったから、このターンアタシが使えるオドは4。やりたいことに1コスト足りない、ぐぎぎ。おのれ妖怪1足りないめぇ……
「1コストで瞬間魔法〈双雷〉! 対象にするのは蛇・トークンと〈毒蛇〉の2体。1点ずつダメージは割り振るよ!」
「はい、では〈毒蛇〉の効果が誘発。コトちゃんに『腐死』カウンターを追加で1個付与します」
ぐぬ、でもこれは必要けーひ!
「
ひぃん。
「〈双雷〉解決前に再
「対応ないよー」
「では解決。〈毒蛇〉が
「『腐死』カウンターが4つになるよ……」
「〈双雷〉が解決されて、わたしの蛇・トークンが墓地へ。対象がいなくなって墓地に置かれた〈うらみ、ねたみ〉は効果で手札に」
これでこのターン邪魔されることはもうない。
アタシは勉強したんだ、ここで手札の〈モスキーテン〉を3コストで羽化させるのは良くない。羽化時にカードは引けるし、+1/+1カウンターが増えるから3/6の硬いクリーチャーになってくれる。
でも、除去呪文には無力。
ここでスワロウテイルまで墓地へ送られてしまったら、ぼーど・あどばんてーじ……ううん。盤面の建て直しが効かなくなっちゃう。
だから!
「2コストで〈
「はい、どうぞ」
「羽化した〈スカラーべ〉の効果で、墓地から瞬間魔法〈双雷〉を回収。〈スワロウテイル〉の効果で土地を追加、〈素体〉で+1/+1カウンターを追加。4/3から5/4へ成長!」
これが今のアタシにできる最善だと信じて。
「これでアタシは、ターンエンド!」
1コストに希望を託して、ターンを回した。
人の仔に出来て、我らドラゴンに出来ぬ筈もなかろう。退ね。