デンレゼで逃げた後のお話はたくさんあるので、それまでのレゼの心境を書いてみようと思います。
ぶっちゃけ本編にかんけーねーので飛ばしてもらってもへーきです。
続きは出ないかもですね。
このお話に出てくる子供達は12歳頃をイメージしてます。
なんで。どうして殺さなかったんだろう。
写真で見てた男の子。
チェンソーの心臓を持つ男の子。
だがそれ以上に。
私を普通の女の子として見てくれた「彼」にそっくりだった。
電話ボックスに入ったのは本当に偶然だった。
人通りも無かったし抱きついてピンを抜くだけで簡単に殺せた。
けど、それ以上に。
私と同じモルモットだった、「彼」にそっくりだった。
北朝鮮が拉致した日本人をソ連が買い取ってモルモットにした。
日本人は栄養の高い食料や衛生環境の良い場所で育っているので、各国は喉から手が出るほど欲しい材料だった。
ツンツンした黒髪にギザギザした歯。
どこか砕けた口調は、凍りついたみんなの心の壁を溶かしていった。
彼は礼儀正しく優しかった。
そして心がとても強かった。
同じモルモットである私たちを鼓舞し、いつかある未来について話していた。
この石造りの無機質な部屋から出て、木材で出来た家で暮らしたい。
たらふくお肉を食べたい。
このボロ切れ以外の服を着たい。
普通の生活をしたい。
恋をしたり、普通に学校に行って。
繰り返される人体実験。薬の投与。血液の搾取。
私たちは脱走を計画した。一年以上をかけて。
巡回のタイミングや檻の鍵がある場所。
出口と思われるルートを絞り、同時に行動を起こす。
そしてみんなで決めた。
「無理な仲間は切り捨てる」「そしてなるべく殺す」と。
生き残っても未来はない。
死にたいと思うほどの余生しかない。
楽にしてくれた方が幸せだ。
そして脱走作戦は開始した。
私は脱走に成功した。
殺されたり、捕まったらする仲間もいたがみんな自決するか仲間に撃たれていった。
彼はその中で捕まってしまった。
私は階段を登り地上へあと少しだった。
彼は実験で契約していた悪魔の力を使い、私が逃げる時間を稼いだ。
手足を落とされだるまにされても。
私は迷っていた。ピンに指をかけ、手は震えていた。
後光が私を照らす中、彼は私の見上げ、目を見て笑った。
「撃て」
私はピンを抜いて手榴弾を下へ投げた。
初恋だったと思う。多分。
そんな彼を私は爆殺した。彼に生かされた。
私は逃げた。ただひたすらに。
生かしてもらった命を。繋がれた命を。
だが、最後の最後に───
私は両足を切断された。
少しの浮遊感の後、地面に転がる。
どはどばと命が足からこぼれ落ちていく。
寒い。胸だけが熱く、手足の感覚がふわふわしていく。
死んじゃうのかな。
私を囲むスーツ姿の看守達。
私の肌を切り刻んだあの手が。
私を殴ったあの手が。
彼の腕を切断したあの手が。私に触れる。
なんで。どうして。普通の暮らしがしたいだけなのに。どうして。
「脱走されたのは初めてだぜ…他にもいるし、別に問題ないんだけどよ」
「…死なない…」
「…あ?なんてぇ?」
「死にたく…ないな…」
「えっと…そうか。なんつーか…そりゃ災難だな。仲間とあっちでも仲良くやれよ」
剣が私の首元へ振り下ろされる。
なぜがその時世界が遅く見えた。
そして雪が降っているのに気づいた。
実験室のような灰色の雲から降る雪。
でも嫌じゃない。温かみがあると思った。
実験の日々。
仲間と少しのチーズを分け合って笑った日。
少しずつ紙を盗んで作ったトランプ。
髪の毛を三つ編みにしたあの子。
彼の手。目。耳。顔。
口。髪の毛。
つん、肩をつつくと、にひーっと笑ってくれた。
その間だけ、私たちは「普通」でいられた。
モルモットではなく「人」として。
次があるのなら───
学校に、彼と行ってみたいな…
二つになった私の体を、雪が埋め尽くしていった。
「ハイ、こちらモルモットの園。…はい、……いえ、特には何も。異常無しです。…はい、新しいのを取りに行きます…はい、それでは」
自分もカフェで会って逃げるifを書こうとしてました。
ですが、新しい話を作るのは苦手な上、読み返すと「面白くねーな…」となったので本編に沿っていく形でやろうかと