ウマ娘プリティーダービーST   作:十和田 永一

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ST-01-10 FirST

外周トラックの向こう、ターフを囲う斜面の方で控えめな歓声が沸く。

どうやら、一つ前の模擬レースが終わったらしい。

落下物の有無の確認を済ませたら、いよいよこちらの番がまわってくる。

ダイワスカーレット、そろそろ出番だ。

わかったわ。

彼女は声を返し、体温維持の為の小走りのまま駆け寄ってくる。

彼女が横に並ぶのを待って、外周の模擬レース用トラックの方へ歩を進める。

 

...で、持ち越しの疲れが無いようだから怒りはしないけど、昨日も走り込んでただろ。

何かあったりはしたのか?

スカーレットの表情が固まる。

.....なんで知ってるの?

ああ、やっぱり。

わざわざ日曜日に確認しなくても、土曜日の出来事を考えれば日曜日の行動は想像に容易い。

歩様に影響のない辺り、ちゃんと練習量は調整したのだろう。そこはまあ褒めるべきところか。

 

スカーレットは目を丸くして、それから鋭く細める。

鎌を掛けたのね...!

証拠は無いけど確信はあったからさ。

...そう睨まなくても別に説教なんてしないよ。歩様を見るにちゃんと考えてトレーニングしたんだろう?なら言うことはない。

 

それで?わざわざ日曜日にやったなら、そうする理由があったんだろう?

...土曜日に昔の知り合いに会って、散々に負けたのよ。代わりに色々教えてもらったけど。

その人に教えてもらったことを練習してたの。

...ああ、あれはやっぱりそういう事か。

契約当初から考えれば想定外だが、ほとんど問題はない。

 

タブレットにデータベースを呼び出す。

...君を圧倒して勝つ、となるとその人はデビュー後かな。走者名は?

知らないわ。...教えてもくれないだろうし。あ、でも冠名はメジロかも。

多分アンタと同じぐらいの年で、紫髪の子。

スカーレットは両手を開いて首を横に振る。

...そうなると年齢的に学園は卒業後。

引退後の街頭レース(フリースタイル)走者って可能性が高いか。

ちょっとツテで調べてみるよ。

 

内ラチとターフの境目を前にして、スカーレットが足を止める。

......トレーナー、少し試したいことがあるんだけど、良いかしら。

レース中?

ならその教えてもらったことに失敗しても勝てると思うか?

.........。

スカーレットは言い淀む。

まだ自信は無いか。

当然と言えば当然だ。今日は自信をつけさせる為のレースなのだから。

なら僕は首を振らない。縦にも横にも。

...アタシの判断次第、ね。わかったわ。

理解が早くて助かるよ。

行けると思ったなら試していい。

難しいことを言うわね。試さなくて勝てるかもわからないのに。

スカーレットはため息をつく。

 

姉さんから見た(あの頃)の僕も、こんな感じだったのだろうか。

なら、小さなおまじないを。

 

...気負わないでいい。

"You are ST(エスト)."だ。

..........エスト?

スカーレットは首を傾げる。造語だ、無理もない。

そ、STって書いてエスト。

僕の姉が作った造語だけどね。最上級のestと一位の1st、そしてスペイン語で星を意味するestrella(エストレーリャ)から来てる。

要は、君が一番星だ、何も恐れることはない。って感じの意味。

アタシの事、高く見積り過ぎでしょ。

呆れたような瞳がこちらに向けられる。

正しい評価だと思うよ。君の力なら時間の問題だから。

今日この日、君はウオッカを越える。

そして、いつかはその昔の知り合いも、ね。

 

むしろ、そうしてくれなくては困る。

始めから僕の目的はそれなのだから。

 

 

スカーレットは両目を閉じ、大きなため息をつく。

...信じるわよ。

ああ、そうしてくれ。

それじゃや君が 一番(1ST) だと 証明(SubsTantiation) しようか。

ええ。

ダイワスカーレットは頬を叩き、気合いを入れ直す。

再び開いたその目に、もはや勝負への不安の色はない。

 

"You are ST.(君が一番)"だ。

行ってこい!

勝利への欲求を滾らせた瞳を称え、スカーレットはゲートへ歩み出した。

 

 

その背中を見送り、ターフの外側の斜面へ足を運ぶ。

 

通信機器なんかで都度指示を出る訳でない以上、トレーナーの指示は指針に過ぎない。

だから、最終判断はスカーレットの手に握らせる。

こうすれば彼女は彼女自身の判断でウオッカに勝てる。

必要なのは瞬時の判断と自信とその正確さ。

その基礎には成功体験は必要不可欠だ。

それさえあれば、彼女はきっと常勝出来るだけのウマ娘に大成するだろう。

 


=========

 

アタシがゲートインすると、ウオッカは隣で既にスタートの準備に入っている。

 

..........。

 

こちらに、一瞥も寄越さない。

へこんだアタシなんか、視界にも入っていない訳だ。

...ウォッカ。

...なんだ?

ようやく、こっちを向いた。

 

今度こそ、アタシが勝つ。

ウオッカの口角が、わずかに上がる。

いいや、今度もオレが勝つね。

言ってなさい!後で泣き言っても知らないから!

やれるもんなら、な!

 


 

「さぁゲートイン始まりました第5模擬レース芝1600。

グラウンド管理委員会からはバ場状態は良との発表です。

実況解説はレーススタッフ学科人材養成コース2年、クラッシデントとサクラサクがお送りします。

 

さてサクラサクさん、今回の注目はやはり。」

「ええ、ウオッカ走者とダイワスカーレット走者でしょうね。

ウオッカが連勝するか、ダイワスカーレットの逆襲か、はたまた恐るべき伏兵が潜んでいるのか。

目が離せないレースになりそうです。」

「ですね。

..........さあ各走者ゲートイン完了し体制整いました!」

 

「...スタートしました!

まず飛び出したのはダイワスカーレット!

先頭はダイワスカーレット!

ダイワスカーレット!

ダイワスカーレット!

 

...バ群整いまして先頭はダイワスカーレット。

斜め後方に2番ナンド。

少し離れて6番ハナハサイタカ。

続いて1番サンリクワカメ。

並んでウオッカ。

一馬身離れて7番タビビトドリーマ。

それを見るようにして8番アナタトコンビニ。

シンガリから3番トーブサンセクタです。

さあもう一度先頭から──


バ群を眼で追う。

ダイワスカーレットとウオッカの二人以外にとって、明らかなハイペース。

彼女ら以外には、スパートする力も残らないだろう。

ならば、直線で二人の叩き合いか?

否。それではウオッカの方が有利だ。

だから、こちらの有利な戦場に巻き込む。

 

...もっとも、向こうもそれを予見して、その上で自分の戦場に引きずり込もうとするだろう。状況的にそれが失敗するとは思えない。

だから、その戦場でも戦える仕掛けはした。

 

問題は仕掛けが上手くいくかだ。

後は彼女次第、か。

 

随分と遠慮したことを言うのですね。

彼女が負けるなどと思ってもいないのに。

 

横を見ると、いつの間にか薄紫の髪のウマ娘が立っている。

髪とよく似た薄紫色の目と視線が合う。

これはこれは。ご無沙汰しております。

...進んで負ける勝負に出る愚か者になった覚えはございませんよ。

自分でも露骨だと思うほど嫌な声で返し、バ群に視線を戻す。


 

──600のハロンが前に見えた。

 

ついてきなさい、ウオッカ。

今日、私は、アンタに勝つ。

スカーレットは一気に加速する。

ぁぁぁぁぁああああっ!!


 

「残り800、已然先頭はダイワスカーレット。

6番ハナハサイタカ追走。

並んで1番サンリクワカメ

ウオッカはここに居ま──!?

ダイワスカーレット急加速!

まだ700はあるぞ、血迷ったか─!?」


 

「─やっぱりか!

スカーレットの加速する姿が目に写る。

この距離でスパートは、普通ならば最後で失速する。

なのに仕掛けてきたということは、トレーナーの読み通り持久力勝負に持ち込もうとしている事を意味する。

対策(体力作り)はしてきた。

させるかよ!スカーレットォ!


「ここでウオッカも加速!

更に遅れてバ群全体が加速して行く!

最終コーナーを回って最初に立ち上がったのはダイワスカーレット!

少し遅れてウオッカも立ち上がる。

徐々に距離が縮まる!

後続は完全に置いてきぼりだ!

ウオッカがやってくる!

ウオッカがやってくる!」

 


 

聞こえる。

アイツの足音が。

近づいてくる。

アイツが。

また、負ける──?

 

嫌だ。

アタシが。

 

◢◤◢◤◢◤Wind of Scarlet◢◤◢◤◢◤

 


 

スカーレットが失速し、視界の端に消える。

 

直線の叩き合いはこっちの方が得意だ。

なのに、そこに至ってすぐに失速した。

...アイツの本調子、だったのに。

期待はずれ、だったか。

 

スカーレットが失速した今、全力で走って体力を使いきるよりも、少し落として最後まで走り抜けた方が良い筈だ。

 

ウオッカは速度を落とそうとして、踏みとどまる。

 

おかしい。

()()()()()()()()()()()()()()()()


=========

ダイワスカーレットの右足が深く地面に食らいつき、足のバネに力を溜める。

 

アタシが。

アタシが、一番だ──!

 

◢◤◢◤◢◤Wind of Scarlet◢◤◢◤◢◤

       RED ACE

◢◤◢◤◢◤Wind of Scarlet◢◤◢◤◢◤

 

ダイワスカーレットはそれを解き放った。

右足が地面を蹴り飛ばし、彼女の体が反動で吹き飛ぶ様に加速する。

 

 

 

彼女の体が切り裂いた空気が吹き荒ぶ。

それはまさしく風だった。

緋色の、風。

 


=========

 

「ダイワスカーレット先頭!

ウオッカ上がってくる、

ダイワスカーレット失速ここまでか!

ウオッカ先頭!

ウオッカ先頭!

ダイワスカーレットが再加速!

ウオッカなおも先頭!

スカーレットが戻ってきた!

ダイワスカーレット!

ダイワスカーレット先頭!

スカーレットがさらに引き離していく!

ダイワスカーレット今一着でゴールイン!

遅れてウオッカ入線!

三着以下はまだ来ない!

ダイワスカーレットが逆襲の白星を飾りました!」


ゴール板が視界の端に消えたところで、ようやく我に帰る。

 

速度を大きく落とし、後ろをふりかえる。

どっちだ。

アタシは勝ったのか──?

 

..........だああああぁーっ!

くそっ!負けた負けた、ちくしょー!!

ウオッカの叫び声が耳に届く。

 

そうか。

アタシは、勝ったのか。

 

溢れ出る喜びに胸を張る。

「─っどーよ!

アタシが一番なんだから!

...ああ、ちげえねーや。お前の勝ちだ。

ウオッカの顔が挑戦的な笑みに変わる。

次は、オレが勝つ。

やれるもんならやってみなさい。

次もアタシが一番だから。


=========

外ラチ側に歩いてきたスカーレットへ駆け寄る。

おつかれさま。足は大丈夫か?

問題ないわ。

スカーレットにボトルとタオルを渡す。

そして、冷却ジェルのスプレーを取り出しダイワスカーレットに吹きかける。

 

.....ちゃんと、見てたでしょうね。

顔を覆ったタオルの隙間から、緋色の瞳がこちらを向く。

ああ、しっかり見てた。

だから言っただろ、君が一番だって。

...アンタのトレーニングと作戦が無ければ敗けてたけどね。

それを言い出すなら、君が切り札を用意してあそこで使っていなければ並ばれて敗けだよ。外周トラックの向こう、ターフを囲う斜面の方で控えめな歓声が沸く。

どうやら、一つ前の模擬レースが終わったらしい。

落下物の有無の確認を済ませたら、いよいよこちらの番がまわってくる。

ダイワスカーレット、そろそろ出番だ。

わかったわ。

彼女は声を返し、体温維持の為の小走りのまま駆け寄ってくる。

彼女が横に並ぶのを待って、外周の模擬レース用トラックの方へ歩を進める。

 

...で、持ち越しの疲れが無いようだから怒りはしないけど、昨日も走り込んでただろ。

何かあったりはしたのか?

スカーレットの表情が固まる。

.....なんで知ってるの?

ああ、やっぱり。

わざわざ日曜日に確認しなくても、土曜日の出来事を考えれば日曜日の行動は想像に容易い。

歩様に影響のない辺り、ちゃんと練習量は調整したのだろう。そこはまあ褒めるべきところか。

 

スカーレットは目を丸くして、それから鋭く細める。

鎌を掛けたのね...!

証拠は無いけど確信はあったからさ。

...そう睨まなくても別に説教なんてしないよ。歩様を見るにちゃんと考えてトレーニングしたんだろう?なら言うことはない。

 

それで?わざわざ日曜日にやったなら、そうする理由があったんだろう?

...土曜日に昔の知り合いに会って、散々に負けたのよ。代わりに色々教えてもらったけど。

その人に教えてもらったことを練習してたの。《/font》」

...ああ、あれはやっぱりそういう事か。

契約当初から考えれば想定外だが、ほとんど問題はない。

 

タブレットにデータベースを呼び出す。

...君を圧倒して勝つ、となるとその人はデビュー後かな。走者名は?

知らないわ。...教えてもくれないだろうし。あ、でも冠名はメジロかも。

多分アンタと同じぐらいの年で、紫髪の子。《/font》」

スカーレットは両手を開いて首を横に振る。

...そうなると年齢的に学園は卒業後。

引退後の街頭レース(フリースタイル)走者って可能性が高いか。

ちょっとツテで調べてみるよ。

 

内ラチとターフの境目を前にして、スカーレットが足を止める。

......トレーナー、少し試したいことがあるんだけど、良いかしら。

レース中?

ならその教えてもらったことに失敗しても勝てると思うか?

.........。

スカーレットは言い淀む。

まだ自信は無いか。

当然と言えば当然だ。今日は自信をつけさせる為のレースなのだから。

なら僕は首を振らない。縦にも横にも。

...アタシの判断次第、ね。わかったわ。

理解が早くて助かるよ。

行けると思ったなら試していい。

「難しいことを言うわね。試さなくて勝てるかもわからないのに。《/font》」

スカーレットはため息をつく。

 

姉さんから見た(あの頃)の僕も、こんな感じだったのだろうか。

なら、小さなおまじないを。

 

...気負わないでいい。

"You are ST(エスト)."だ。

..........エスト?

スカーレットは首を傾げる。造語だ、無理もない。

そ、STって書いてエスト。

僕の姉が作った造語だけどね。最上級のestと一位の1st、そしてスペイン語で星を意味するestrella(エストレーリャ)から来てる。

要は、君が一番星だ、何も恐れることはない。って感じの意味。

アタシの事、高く見積り過ぎでしょ。

呆れたような瞳がこちらに向けられる。

正しい評価だと思うよ。君の力なら時間の問題だから。

今日この日、君はウオッカを越える。

そして、いつかはその昔の知り合いも、ね。

 

むしろ、そうしてくれなくては困る。

始めから僕の目的はそれなのだから。

 

 

スカーレットは両目を閉じ、大きなため息をつく。

...信じるわよ。

ああ、そうしてくれ。

それじゃや君が 一番(1ST) だと 証明(SubsTantiation) しようか。

ええ。

ダイワスカーレットは頬を叩き、気合いを入れ直す。

再び開いたその目に、もはや勝負への不安の色はない。

 

"You are ST.(君が一番)"だ。

行ってこい!

勝利への欲求を滾らせた瞳を称え、スカーレットはゲートへ歩み出した。

 

 

その背中を見送り、ターフの外側の斜面へ足を運ぶ。

 

通信機器なんかで都度指示を出る訳でない以上、トレーナーの指示は指針に過ぎない。

だから、最終判断はスカーレットの手に握らせる。

こうすれば彼女は彼女自身の判断でウオッカに勝てる。

必要なのは瞬時の判断と自信とその正確さ。

その基礎には成功体験は必要不可欠だ。

それさえあれば、彼女はきっと常勝出来るだけのウマ娘に大成するだろう。

 


=========

 

アタシがゲートインすると、ウオッカは隣で既にスタートの準備に入っている。

 

..........。

 

こちらに、一瞥も寄越さない。

へこんだアタシなんか、視界にも入っていない訳だ。

...ウォッカ。

...なんだ?

ようやく、こっちを向いた。

 

今度こそ、アタシが勝つ。

ウオッカの口角が、わずかに上がる。

「いいや、今度もオレが勝つね。《/font》」

言ってなさい!後で泣き言っても知らないから!

やれるもんなら、な!

 


 

「さぁゲートイン始まりました第5模擬レース芝1600。

グラウンド管理委員会からはバ場状態は良との発表です。

実況解説はレーススタッフ学科人材養成コース2年、クラッシデントとサクラサクがお送りします。

 

さてサクラサクさん、今回の注目はやはり。」

「ええ、ウオッカ走者とダイワスカーレット走者でしょうね。

ウオッカが連勝するか、ダイワスカーレットの逆襲か、はたまた恐るべき伏兵が潜んでいるのか。

目が離せないレースになりそうです。」

「ですね。

..........さあ各走者ゲートイン完了し体制整いました!」

 

「...スタートしました!

まず飛び出したのはダイワスカーレット!

先頭はダイワスカーレット!

ダイワスカーレット!

ダイワスカーレット!

 

...バ群整いまして先頭はダイワスカーレット。

斜め後方に2番ナンド。

少し離れて6番ハナハサイタカ。

続いて1番サンリクワカメ。

並んでウオッカ。

一馬身離れて7番タビビトドリーマ。

それを見るようにして8番アナタトコンビニ。

シンガリから3番トーブサンセクタです。

さあもう一度先頭から──


バ群を眼で追う。

ダイワスカーレットとウオッカの二人以外にとって、明らかなハイペース。

彼女ら以外には、スパートする力も残らないだろう。

ならば、直線で二人の叩き合いか?

否。それではウオッカの方が有利だ。

だから、こちらの有利な戦場に巻き込む。

 

...もっとも、向こうもそれを予見して、その上で自分の戦場に引きずり込もうとするだろう。状況的にそれが失敗するとは思えない。

だから、その戦場でも戦える仕掛けはした。

 

問題は仕掛けが上手くいくかだ。

後は彼女次第、か。

 

随分と遠慮したことを言うのですね。

彼女が負けるなどと思ってもいないのに。

 

横を見ると、いつの間にか薄紫の髪のウマ娘が立っている。

髪とよく似た薄紫色の目と視線が合う。

これはこれは。ご無沙汰しております。

...進んで負ける勝負に出る愚か者になった覚えはございませんよ。

自分でも露骨だと思うほど嫌な声で返し、バ群に視線を戻す。


=========

──600のハロンが前に見えた。

 

ついてきなさい、ウオッカ。

今日、私は、アンタに勝つ。

スカーレットは一気に加速する。

ぁぁぁぁぁああああっ!!


=========

「残り800、已然先頭はダイワスカーレット。

6番ハナハサイタカ追走。

並んで1番サンリクワカメ

ウオッカはここに居ま──!?

ダイワスカーレット急加速!

まだ700はあるぞ、血迷ったか─!?」


「─やっぱりか!

スカーレットの加速する姿が目に写る。

この距離でスパートは、普通ならば最後で失速する。

なのに仕掛けてきたということは、トレーナーの読み通り持久力勝負に持ち込もうとしている事を意味する。

対策(体力作り)はしてきた。

させるかよ!スカーレットォ!


「ここでウオッカも加速!

更に遅れてバ群全体が加速して行く!

最終コーナーを回って最初に立ち上がったのはダイワスカーレット!

少し遅れてウオッカも立ち上がる。

徐々に距離が縮まる!

後続は完全に置いてきぼりだ!

ウオッカがやってくる!

ウオッカがやってくる!」


聞こえる。

アイツの足音が。

近づいてくる。

アイツが。

また、負ける──?

 

嫌だ。

アタシが。

 

◢◤◢◤◢◤Wind of Scarlet◢◤◢◤◢◤

 


 

スカーレットが失速し、視界の端に消える。

 

直線の叩き合いはこっちの方が得意だ。

なのに、そこに至ってすぐに失速した。

...アイツの本調子、だったのに。

期待はずれ、だったか。

 

スカーレットが失速した今、全力で走って体力を使いきるよりも、少し落として最後まで走り抜けた方が良い筈だ。

 

ウオッカは速度を落とそうとして、踏みとどまる。

 

おかしい。

何で足音がまた近づいてくるんだ?(・・・・・・・・・・・・・・・・)

 

 


 

 

ダイワスカーレットの右足が深く地面に食らいつき、足のバネに力を溜める。

 

アタシが。

アタシが、一番だ──!

 

◢◤◢◤◢◤Wind of Scarlet◢◤◢◤◢◤

       RED ACE

◢◤◢◤◢◤Wind of Scarlet◢◤◢◤◢◤

 

ダイワスカーレットはそれを解き放った。

右足が地面を蹴り飛ばし、彼女の体が反動で吹き飛ぶ様に加速する。

 

 

 

彼女の体が切り裂いた空気が吹き荒ぶ。

それはまさしく風だった。

緋色の、風。

 


 

「ダイワスカーレット先頭!

ウオッカ上がってくる、

ダイワスカーレット失速ここまでか!

ウオッカ先頭!

ウオッカ先頭!

ダイワスカーレットが再加速!

ウオッカなおも先頭!

スカーレットが戻ってきた!

ダイワスカーレット!

ダイワスカーレット先頭!

スカーレットがさらに引き離していく!

ダイワスカーレット今一着でゴールイン!

遅れてウオッカ入線!

三着以下はまだ来ない!

ダイワスカーレットが逆襲の白星を飾りました!」

 

 


 

 

 

ゴール板が視界の端に消えたところで、ようやく我に帰る。

 

速度を大きく落とし、後ろをふりかえる。

どっちだ。

アタシは勝ったのか──?

 

..........だああああぁーっ!

くそっ!負けた負けた、ちくしょー!!

ウオッカの叫び声が耳に届く。

 

そうか。

アタシは、勝ったのか。

 

溢れ出る喜びに胸を張る。

「─っどーよ!

アタシが一番なんだから!

...ああ、ちげえねーや。お前の勝ちだ。

ウオッカの顔が挑戦的な笑みに変わる。

次は、オレが勝つ。

やれるもんならやってみなさい。

次もアタシが一番だから。


=========

外ラチ側に歩いてきたスカーレットへ駆け寄る。

おつかれさま。足は大丈夫か?

問題ないわ。

スカーレットにボトルとタオルを渡す。

そして、冷却ジェルのスプレーを取り出しダイワスカーレットに吹きかける。

 

.....ちゃんと、見てたでしょうね。

顔を覆ったタオルの隙間から、緋色の瞳がこちらを向く。

ああ、しっかり見てた。

だから言っただろ、君が一番だって。

...アンタのトレーニングと作戦が無ければ敗けてたけどね。

それを言い出すなら、君が切り札を用意してあそこで使っていなければ並ばれて敗けだよ。

 

白々しい事だ。と心の中で自分に毒を吐く。

 

アンタとアタシだから、か。

スカーレットが空を仰いで、小さく呟く。

...さしあたり"We"ってところか?

拳を差し出す。

そうね。

ダイワスカーレットがそれに応じる。

 

「「"We are ST."(私達が"一番"だ。)」」

 

二人の拳が打ち合う。

 

 

 

 

 

ウマ娘 プリティーダービー ST

 

白々しい事だ。と心の中で自分に毒を吐く。

 

アンタとアタシだから、か。

スカーレットが空を仰いで、小さく呟く。

...さしあたり"We"ってところか?

拳を差し出す。

そうね。

ダイワスカーレットがそれに応じる。

 

「「"We are ST."(私達が"一番"だ。)」」

 

二人の拳が打ち合う。

 

 

 

 

 

ウマ娘 プリティーダービー ST

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