ガチャッ キンッ
ゲートが閉まる音。
胸を埋め尽くす、えもいわれない高揚感。
風がうるさいはずなのに、ひどく静かに感じる。
血が騒ぐ、とはまさにこの事なのだろう。
「よし...」
小さく息を吐いて、構える。
「──スタートしました!
さあ先行争いに入ります。
広がっています。
ツキヨナガイヨル伺います。
ダイワスカーレット、さらに外からハイヤーボルテスと先団を形成です。
その後ですがホーキンスラップわずかに四番手、内からダガーインペーラです。
そして外からはミセスタカオ、後位集団の一角。
そしてその後にインザレイヤーが追走してこの辺りが中団になります。
最内から接近するヒノデギワ。
各バ1コーナーカーブしていきます。
先頭を奪いましたツキヨナガイヨル、二バ身のリードをとります。
ダイワスカーレットがすっと単独二番手上がりました。
ハイヤーボルテス三番手。
その後はダガーインペーラとホーキンスラップ並んでいます四五番手。
その後にミセスタカオが追走しています。
ヒノデギワ、インザレイヤーと続いて、第2コーナーから向こう正面へ。
さらに二バ身後方ですがセイホーレーザーが追走して、
そして後方二頭ですが並んでいます。
外がティムスレイヤ、そして内がカゼマウローズという体制です。
バックストレッジ中程、淡々とした流れ、これから内回りコースの第3コーナーを目指していきます。」
スカーレットが前寄りの位置につける。
作戦よりは少し前気味だけど、あれでも抑えている方だ。十分許容範囲。
「...うまく前につけました。」
「そうだね。彼女の足ならそれが定石だ。」
アグネスタキオンは双眼鏡から目を離し、こちらの手元のストップウォッチに目を落とす。
「ペースも申し分ない。風の影響は無さそうだ。」
後は、圧倒するのみ。
1000mのハロンが近づいてくる。
もうすぐ急な上り坂、前に追い付きやすいタイミングだ。
逃げ寄りな以上詰められるのは避けるべき、そして何より先頭に立つのには都合のよいタイミング。
──つまり。
「ここォッ!」
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右足を深く地面に食らいつかせ、足のバネに力を溜める。
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RED ACE
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右足で地面を蹴り飛ばし、その反動で吹き飛ぶように加速する。
「ここォッ!」
叫び声が聞こえると共に、自分の後方にいたダイワスカーレットが急加速する。
一秒にも満たない一瞬で思考が巡る。
上り坂。
確かに仕掛け時だが、それは後方脚質が前に詰めるならの話だ。
クラシックやシニアならいざ知らず、ジュニア級のウマ娘では前方脚質だとこのタイミングでは足が持たなくなる。
普通に考えるならただの判断ミスで、彼女はこのまま自滅する。
だが、そんなミスをこの女がするだろうか。
そんなミスを、あの人がさせるだろうか。
──否、断じて否。
つまりそれは足が十分持つということ。
「無茶苦茶ね...!」
努力していたのは自分だけではない。
苦労してきたのは自分だけではない。
そんなことはわかりきっている。
恐るべき才能。
...でも、だからと言って諦められるものではない。
そう、育てられてきた。
私には、それしかないのだから。
だから、私は。
地面を大きく踏みしめる。
「──私はぁ!」
短い溜め、からの急解放。
少女の体が加速する。
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Γυάλινο δαχτυλίδι, η υπόσχεση εκείνης της ημέρας
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「さぁ押さえきれないという形でダイワスカーレットがじわじわとあがって先団を形成していきます。
ダイワスカーレット、インザレイヤーさらにその間食い下がるようにしてツキヨナガイヨルなどが固まっております3コーナーカーブ。
12番ハイヤーボルテスは後退していきます。
そして後方集団ですが、1番ダガーインペーラあるいはホーキンスラップ等が続いております。
そしてミセスタカオはその外目。
三四コーナー中心、後方集団からはセイホーレーザーなどもちらっちらっと押し上げを開始して、第4コーナーカーブまもなく直線に向かいます。
先頭はわずかに3番のダイワスカーレット、ダイワスカーレット。
そして外からはツキヨナガイヨル!
さらに外からはインザレイヤー、インザレイヤー。
ツキヨナガイヨルじわじわと上がってきた。
捉えたか。
捉えたか!」
「...まずい。」
上がってきた時点で想定外もいいとこだが、ツキヨナガイヨルとの速度差が大きすぎる、あの分だと再加速しても抜き返す時には既にゴールの向こうになる。
「...勝負あったね。」
アグネスタキオンが微笑みながら漏らす。
「......ッええ、これは...」
トレーナーとしてあるべき姿は、ここで諦めず応援することなのだろう。
だが、この状況は。諦めざるを...
「ダイワスカーレット君の勝ちだ。」
そんな思考は、アグネスタキオンの一言に吹き飛ばされた。
足が痛い。
呼吸が苦しい。
心臓が悲鳴をあげている。
少し、また少しとツキヨナガイヨルの横顔が前に進んでいく。
負ける?
アタシが?
ピシッ
ガラスにヒビが入るような音が脳内に響く。
─嫌だ。
一端から生じた音が、少しずつ。
─嫌だ。
少しずつ、全体へ広がる。
─アタシは──
そして。
─────勝ちたい!
砕ける音。
「さあ前の争いですがツキヨナガイヨル、ツキヨナガイヨル先頭だ。
一バ身から二バ身とリードをとっていく。
そしてインザレイヤー、インザレイヤーが上がってくるか。
今度は外から接近するシールダーフレイム!」
チラリ、とダイワスカーレットの方に目をやると、失速しているのが見える。
とはいえ、まだ安心はしていられない。
左後ろから迫る気配に目をやると、シールダーフレイムが追込をかけてきていた。
だが、この距離ならゴールまでに抜かされることは無い。
スタンドに目をやる。
最上階の関係者室に──いた。
鮮明に見えなくても、私にはわかる。
見てる?トレーナー。
私、勝つよ。
だから私を見て。
私を。
どうか、私を。
─ふわり。
緩やかな横風が通り抜ける。
軽く毎時70kmは出ている以上、本当に緩やかなら彼女にそれは感知できなかっただろう。
即ち、それは突風だった。
慌てて視線を風の吹いてきた側、右にもど──そうとして、途中で止められる。
自分の真正面。そこに、居た。
「なん…で……?」
なんでそこにいる。
貴女は、確かに失速していたはず。
睨み付けた背中はゴールの向こう。
なんで──
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「さぁ加速してきた単独先頭にダイワスカーレット!
さらに外からもう一度インザレイヤーが!盛り返して二番手争いに加わってくるか!
先頭は3番のダイワスカーレット!
先頭は3番のダイワスカーレット!
ダイワスカーレットゴールイン!
二番手2番のツキヨナガイヨル!
三番手には5番インザレイヤー!
ダイワスカーレット!初戦に鮮やかな白星を輝かせました!
...えー、確定のランプが灯りました。
一着は3番ダイワスカーレット。
二着、2番ツキヨナガイヨル、一と四分の三バ身差。
三着、5番インザレイヤー、一と四分の一バ身。
四着、9番シールダーフレイム、四分の三バ身。
五着、6番ヒノデギワ 、三バ身。
以下、画面の通りとなっております。
ウイニングライブは18時半より、楽曲はメイクデビューでお送りいたします。
....それではVTR見てみましょう。
さて敷島さん、残り1000地点ですが..........」