「スタートしました。
さあ先行争いです。
まずアイシーシッター、じわっと前に上がっていきました。
アメニウタエバ、リッジメイヤー、ダイワスカーレット、ダガーグラマシーと先団後位を形成、ブループラネッツその後ろ、連れてツキヨナガイヨル、リッジメイヤー、幾分下げて内からポリーンです。」
1400、まず前を取る。
逃げるんじゃなくて、ただ速度に乗るだけ。
過度な加速も距離を取る必要もない。
疲れすぎない速度で飛ばしていく!
うまく外側寄りにつけられた。とりあえずはひと安心ってところか。
距離のロスはあるが、スカーレット相手なら前を塞がれるだけで末脚の加速が足りずに敗けかねねぇ。
多少のロスは覚悟の上だ!
「その外に、ウオッカがつけています中団バ群の外め。
後はアメニウタエバさらにはクロノクイーン。
そしてその後にクリーヴァバトラーです。
後は、間からじわじわとシンドウナミノリが前に接近を開始、後はバクソウヒーロー間からキッカラブリー、第3コーナー、16番のブラスウィンド。
そして最後方追走がオサケノーメヌという体制です。」
チラリと後ろを振り返る。
ツキヨナガイヨルはバ群の中、あれなら塞がれて思ったようには動けないから気にする必要はない。
問題はウオッカ。
外側につけている以上、最終直線では間違いなく上がってくる。
末脚勝負は私の方が不利。
どうする、どうする。
...年末年始の合宿でやられたアレをぶっつけ本番でやる?
一か八かの勝負に出来るなら、悪くはない。
「さあ各バ3コーナーカーブ残り1000メートルを通過したところで、ペースを握ったのはダイワスカーレット。
ダイワスカーレット、リードは一バ身です。
二番手ですが、ダガーグラマシーが追走しています。
その二バ身後方ですが、アイシーシッター、残り800を今通過。
ブループラネッツが現在四番手でその後方からは8番のツキヨナガイヨルが追走。
中団バ群の内ウオッカが外め、後は下がりました。
その外からはクリーヴァバトラー、クリーヴァバトラーが中団から後位に接近する構えをみせています。
そしてその後ですがアメニウタエバ 。そして間に居るのがクロノクイーン。
各バ第四コーナーカーブ、直線コースへと向かって参ります。
さあダイワスカーレット先頭!
ダイワスカーレット先頭!」
流石優等生サマだ。こんな距離をあの速度で飛ばしてまだ足が残ってやがる。
だがな、俺だってちゃんと足は残してあるんだ。
行くぞ、スカーレット──
◢◤◢◤◢◤Booster, Ignition◢◤◢◤◢◤
後ろから近づく足音!
まだこの距離なら斜行に取られない...なら!
小さく横に踏み切る。
これでウオッカは外に避けるかここまでの加速を多少捨てないといけなくなる。
悪いわね、ただの末脚勝負は私の方が不利なの。
これぐらいのハンデは貰っていくわ。
行くわよ、ウオッカ──
◢◤◢◤◢◤Wind of Scarlet◢◤◢◤◢◤
「──勝つのは俺だ!」
「──勝つのはアタシよ!」
◢◤◢◤Wind of Scarlet◢◤Booster, Ignition◢◤◢◤
RED ACE Accelerate-X
◢◤◢◤Wind of Scarlet◢◤Booster, Ignition◢◤◢◤
「そして間9番ステイシスですが、今度は外からウオッカが伸びてきた!
外からはウオッカが伸びてまりました!
そして内をつくように!さあアイシーシッター!アイシーシッターも前に接近する構えをみせているが、ダイワスカーレット!ウオッカ!
ダイワスカーレット!ウオッカ!
そしてツキヨナガイヨルが!さぁ四五番手から単独三番手の位置を伺って上がってくる!連れてブループラネッツ等!
さあ前の争いですが!
ウオッカか!ウオッカか!」
足が痛い、呼吸が苦しい、視界が霞む。
霞む視界の端に、ウオッカの背中が入り込んでくる。
うそ、千切られる...!?
─嫌だ。
─嫌だ!
アタシが──!
声にならない絶叫の中、感じたのは何かが割れたような感覚。
「ダイワスカーレット上がってきた!
ダイワスカーレット!ウオッカ!
ダイワスカーレット!ウオッカ!
この二人の追い比べだが!
ウオッカ体半分のリード!ウオッカ先頭!ウオッカ先頭!ゴールイン!
ダイワスカーレット二着!」
身体がふらつく、脇腹が痛い、脳が酸欠で朦朧とする。
危なかった。
あと1ハロン─いや、20メートルでも距離が長ければ、スカーレットに差し返されていた。
あのペースで走って、加速して、それでなお最後の再加速の足があるなんて滅茶苦茶だ。
これからのレース、コイツを相手に勝てるのか?
両膝に走った痛みに我に返る。
...膝から崩れ落ちてしまっただけで、怪我はなさそうでひと安心する。
いや、そもそもどういう状況よ。
ウオッカの背中が見えてから膝から崩れ落ちるまでの記憶がぽっかりと抜けている。
きっと、状況的にゴール後。
じゃあ、順位はどうなった?
振り返り、掲示板を見上げる。
「あ───
思わず内ラチを殴り付ける。
一位二位どころか、掲示板からも漏れてしまった。
それも、一度としてスカーレットの前にすら出れなかったばかりか、おそらく今日はウオッカばかりで気にも止められなかった。
レースで実力を示し選ばなかったことを後悔させると、あの日確かにそう心に誓ったのに、なのにこの体たらく。
...桜花賞では、こうはいかせてなるものか。