霧の中の慧音
~レヴァンサイド~
紅い霧が出てから2日が経った。この霧は人間には有毒だがそれ以外には無害のようだ。それどころか力が増していて、妖怪や妖精も活発になっている。
そのお陰で人里にいる人達も家の中に籠ってしまっている。紅魔館について情報収集しようと思っていたが、文字通り話にならない。人里をぶらついても人と出会わないのだからな。
……お、誰か出歩いているな。家に戻ってしまう前に話を聞こうと近寄る。
「………レヴァン君!?」
顔が見えた瞬間、反転して逃げ出す。めんどくさい奴に出会ってしまったな…。
「待て!!こんな状況で何をしてるんだ君は!」
叫びながら追いかけてくるが、無駄だな。身体能力では僕が勝っている上に、この霧だ。撒くのは簡単だな。みるみるうちに上白沢の姿が霧に飲まれて消えていく。
「待てと言って………きゃあっ!!」
……悲鳴?僕は立ち止まるが、追いかけてきた上白沢が来る気配がない。
「……上白沢?」
名前を呼ぶも返事がない。
……………まさか……。
僕は急いで今来た道を戻る。まさかとは思うが……妖怪に襲われたのか…?
「レヴァン君……」
声がした方を振り向くと、上白沢が座り込んでいた。見た所外傷はないようだが…霧のせいでよく見えない。近づかなければ…。
「すまない……手を貸してくれないか…?」
怪我はないようだが、腰が抜けたらしいな。仕方なく手を差し出すと、彼女はその手を
「つーかまえた♪」
とてつもない力で掴んだ。ハメやがったなコイツ…。
「ふふ、君がお人好しで助かったよ」
「趣味の悪い事だ」
「君だって悪いんだぞ。人に悪影響を与える霧の中にいるなんて…」
「1日外にいたが、別に平気だった」
「……君は本当に人間なのか?」
「人間だよ。普通ではないがね」
僕がこう言うと、上白沢が一瞬暗い表情になった……気がした。
「君こそ危ないんじゃないか?女性1人で出歩くなど」
「そうか、君には言っていなかったね。私は半人半獣の獣人なんだ」
「そうは見えんな」
「そうかい?」
只者ではないとは思っていたが…ハーフだったとはな。どこら辺が獣なのやら…。
「ところで、何故外に出ていたのかな?私は見回りをしていたんだが」
「紅魔館についての情報が欲しくてな」
「……まさか、行く気ではないだろうな?」
「そのまさかだよ、大正解」
上白沢はその言葉を聞き、僕を睨み付ける。
「駄目だ!君がどれほど強いのかは知らないが、行かせられない!妖怪達の力が増している事を知らない訳じゃないだろう!?」
「知った上で言ってるのさ。それに頼りになるボディーガードも戻ってきたしな」
「テンプルアーマーの事か?だが…」
「それにな、宴会の日に喧嘩売られたんだよ、僕は」
上白沢が黙り込む。
「……私達が止めていれば」
「たらればの話はナンセンスだ。行動を起こさなければならない時は特にな」
「……すまない。だが、やはり君が行く必要は無いよ。異変解決は博麗の巫女に任せればいい」
「それとなく仄めかしたが、面倒なんだと」
頭を抱えて唸っている。堂々と職務放棄されたんだから当然か。
「それに、押し売り同然だが君にも借りがある。それを返すいい機会だ」
「そんな、借りだなんて思わなくていい」
「ただの建前だ」
「……君って奴は…」
呆れたような諦めたような表情をした後、上白沢は真面目な表情になった。
「分かった、そこまで行きたいなら止めはしない。ただし!危ないと思ったらすぐに戻るんだぞ!」
「分かっているさ」
「……約束だぞ?君がいなくなったら……妹紅も私も泣いてしまうからな?」
……そこまで僕の事を気にかけていたのか。意外だな…。藤原はともかく、上白沢までとは。
「ま、心配するな。逃げるのは得意だ」
「そうは思わないけどね」
クスクスと笑っている上白沢。だがどこか不安そうだ。
……なるべく早めに済ませよう。
次回からバトル予定……弾幕やスペルカードはまだ先になりますが…。