~レヴァンサイド~
上白沢の話では、紅魔館は霧の湖の畔にあるらしい。名前の通り紅い洋館だからすぐ分かるそうだ。しかし、そこまで行くのが大変だ。興奮した妖精が弾幕をばら蒔きながら飛んでいる。相手にするのも面倒だから、隠れながら進んでいる。時間がかかるな…。
…………。
…………何だあれ…。真っ黒い塊が飛び回っているぞ…。
「人間、みーつけた!」
黒いのが消えたかと思ったら、金髪の幼女が出てきた。くそ……つい立ち止まって見てしまったせいで気づかれた…。
「久々の人間だ~…」
そういや、妖怪は人間を食うんだったな。……嫌な予感がする。
「いただきま~す!」
いきなり飛びかかってきやがった。バイオレンスな子供だな。何とか避けると金髪は後ろの木に激突。なんと幹を食い千切った。こう見ると、あいつら本当に妖怪なんだと思う。
「う~……逃げるな!」
金髪がそう言った瞬間、視界が黒に染まった。どうやらさっきの暗闇に取り込まれたようだな。僕は視界を暗視用に切り替える。
………馬鹿な、何も見えない…?ただ暗くしているのではなく、光を全く通さないのか…。
だが甘い。たとえ視界を奪っても、他に使える物はいくらでもある。音の反射、風の流れ、体温……お前の場所などすぐに割り出せる。
「どこだ~?どこへ行った~?」
………まさか自分でも見えてないのか?冗談だろ…。だが好都合だ。金髪の位置を割り出し、先に攻撃を仕掛ける………そこか!
「あうっ!?い、痛い痛い痛い!」
頭を鷲掴みにして思いきり力を入れる。妖怪だから多分大丈夫だろ。
「おい、このまま潰されたくないならさっさとこの暗闇を消せ」
「わ…分かった…」
暗闇が消えて元の景色に戻る。アイアンクローを決めていた手を放し、周りを見渡す。道から外れてしまったな…。ちょうどいいからこの金髪を道案内にでもするか…。
そう考えていたら、金髪がフラフラと地面にへたりこんだ。
「うぅ……おなかすいたよ~……」
駄目だな。空腹で動くことが出来なさそうだ。紅い霧のせいで人も出歩いていないから、食料を確保出来なかったんだろう。
「おなか……すいた……う…うぇぇぇん……うぇぇぇ…ん……!」
………泣き出してしまった。もしかして、紅い霧が出る前から食ってないのか?
「なあ…何日前から空腹なんだ、お前?」
「……ひくっ……分かんない…霧が出る前からおなかはすいてた……」
2日以上か……まあ妖怪なら大した問題でもないだろう。人を襲う妖怪を助ける義理も無いしな。
「うわぁぁぁん……うぇぇぇん……」
…………。
「ひくっ……ひっく…………ぐすっ……」
………………。
「…ぐすっ……うわぁぁぁぁん…!」
…………ああ…畜生…。
「おい………金髪」
「……ぐすん………なに…?」
「…あー……僕の腕を分けてやる…」
「…………え…?」
左腕を差し出し、それを驚いた表情で見ている金髪。そりゃ驚くだろうな……僕だって驚いてる。畜生……見た目が子供のせいか、どうにも放っておくのが気にくわない…。泣いてるのは僕のせいではないのに…。
「………いーの?」
「……あまり深く噛みつくなよ。骨に当たればお前の歯が折れるからな」
「う…うん……じゃあ、いただきます…」
そう言って僕の腕に食らいつく金髪。鈍い痛みが腕に走る。いくら治るとはいっても……自分の腕を妖怪に食わせる事になるとは思ってもみなかった…。肉を食いちぎり、口を血で汚した姿はまるでホラーだ…。見た目子供だから尚更な。
「……もぐ……もぐ…」
「…………」
「…もぐ…………ごちそうさま」
「……なんだ、もう良いのか?」
3回程噛みついたら満足したようだ。もっと抉り取られると思っていたが、少食なのか?
「……いたくない?」
「そりゃ痛いさ。もう頼まれたって食わせないからな」
「うん……ありがとう」
「フン…」
はあ……何をしてるんだかな。さっさとこの霧を消して帰らないと、上白沢に要らん心配をかけてしまう。そして帰ってからゴチャゴチャ言われてしまう…。
………今度は何だ?金髪が前にまわって……とおせんぼでもしてるのか?
「私、ルーミア~」
「…………は?」
「わ・た・し、ルーミア~」
………ああ、自己紹介か。分かりづらい。
「僕、レヴァン」
「…レヴァン……えへへ~♪」
今度は抱き着いてきたぞ…何なんだこいつ…。
「レヴァン、腕いたくない?」
「もう治ってるよ…。念のためにもう一度言うが、もう食わせんからな」
「ほんとだ~♪レヴァンは友達だから食べないよ~」
「いつ友達になった?僕の記憶には無いな」
「わすれんぼ~」
「………」
何か知らんが記憶障害にされた。腕を食った友達とか嫌なんだが…。
「ん~…♪」
で、こいつは離れようとしない。……もういいや、考えるの疲れた。こいつ多分なんも考えてないだろうし。
「ルーミア、お前紅魔館へ行く道知ってるか?」
「知ってるよ?」
「なら案内してくれ。友達だろ?」
「うん!ついてきて!」
僕の手を引くルーミア。別に手を繋ぐ必要ないだろ…。お前の歩幅狭いから僕が気を遣うんだが……とか言ってもルーミアに分かる筈も無い。ゆっくり散策しながら行くか。
……ゆっくりしたい場所ではないが。
サブタイトルは閃きと語呂で決めてます。