~レヴァンサイド~
紅魔館。名前の通り紅いな。しかし立派な洋館だ。住んでいる吸血鬼はちっちゃいのに、この洋館は見上げる程巨大だ。その佇まいは、もはや城と呼べる代物である。
僕は紅魔館を見た事にほんの少し感動しつつ、その入り口である門へ歩いた。ルーミアの話では、門番がいる筈だ。
…………ルーミアの話通り、寝ているな。異変を起こしたというのに暢気にお昼寝とは、緊張感の無い奴だ。
「もしも~し、スカーレットさんのお宅でございますか~……っと…」
「zzz……」
「…………」
返事がない、ただの置物のようだ。門をノックして尋ねてみるも、反応せずに寝ている。まあ、起きる気がないなら好都合だ。僕は門を開けて、中に入ろうとした。
瞬間、門番が突然起きて飛び蹴りを放つ。
そして僕は、その門番を回し蹴りではね飛ばした。
~美鈴サイド~
「がはっ…!?」
奇襲をかける筈が、逆に攻撃を受けた…!
飛び蹴りを身を反らしてかわしただけでなく、そのまま回し蹴りを放たれて、私は大きく吹き飛んだ。
まともな防御も出来ずに食らってしまい、ダメージは大きい…。何とか受け身をとって体勢は立て直せましたが、厳しいスタートになりましたね…。
「……寝たふりに気づいてたんですか?」
「ここで起きないような奴なら、スカーレットが宴会にまで連れてくる訳がない」
「ごもっともです…」
ま、流石に不意打ちで仕留めようとまでは思ってませんでしたが、少しはダメージを与えられると思ってたんだけどなぁ…。
「私は紅魔館の門番、紅美鈴です。レヴァンさん、紅魔館に入りたければ私を倒していきなさい」
「だろうと思ったよ。ご託はいいからかかってこい」
両手で挑発してくるレヴァンさん。ですが、そんな簡単に乗りませんよ。私は構えつつ、彼の様子をうかがう…。
「来ないの?ならこっちから行くぞ」
……あれ?何か普通に近づいて来るんですけど…。しかも構えてすらいないって……流石に舐めすぎじゃないですかね…。
なら、妖怪の怖さってのを教えてあげますよっ!!
一気に距離を詰めて掌打をくり出す。
「………い゙っ!?」
突如、掌打をくり出した手に激痛が走る。一旦距離を取って彼の方を見ると………片腕を構えていただけだった。
なるほど、彼は私の掌打に対して肘で迎え撃ったんですね…。確かに有効ではありますが、私のスピードについてこれるとは驚きです…。
そして体の頑丈さ。普通なら骨が砕けていてもおかしくない筈なのに、彼はピンピンしている。明らかに普通じゃないですよね…。この人を通したら、お嬢様の計画が台無しにされてしまいそうです。それだけは防がなければ…!
「ここからは、本気でいきますよっ!」
「ご自由に」
あくまで余裕の表情を崩さないレヴァンさん。私はもう一度近づいて連撃を浴びせる。
「はっ!やっ!せりゃっ!!」
「………ぐっ…」
さばかれてはいるものの、何発か有効打も入った。体の動きは素人ではないけれど、達人レベルには程遠いですね。これなら…いける!!
顎を打ち抜こうと蹴りを放つが、体を後ろに反らせてかわされた。この隙にボディに打撃を……いれようとしたら、嫌な予感がした。思考を切り替えて両腕を交差させて防御の構えをとる。そこへ…
「フンッ!!」
「ううっ…!!」
頭突きが飛んできた…!その威力に腕が痺れ、思わず後退る。
「上白沢直伝の必殺技が効かないとはな」
「充分効いてますって…」
痺れを払うように腕を振り、構え直す。
「まだやるか…」
「当たり前ですよ!まだまだ始まったばかりですからね!」
「なら宣言しよう。そこから一歩でも動けば君の負けだ」
「そんなハッタリ通じませんよ!!」
また接近しようと足を踏み出した瞬間………地面が崩れた。
「えっ……ぐうっ!?」
体勢が崩れたあと、全身が締め付けられる感覚に襲われた…。な…何が起こったの…!?
必死に状況を確認しようとするが、いつの間にか近づいていたレヴァンさんに首を捕まれた。
「……くっ…」
「言っただろう、負けるってな」
これで終わったと言いたいのだろう…。何とか頭を動かして確認したが、私は背後から触手のようなもので締め上げられているようだ。しかも、少し浮かされているせいで踏ん張りが効かない。拘束を解こうとしても力が入れられないのだ。このまま絞め殺すつもりなのだろう…。
私は脱出を諦め、全身から力を抜いた。咲夜さん……お嬢様……負けてしまってすいません…。
「安心しろ、殺しはしない。後で邪魔されないよう、少し眠っていてもらうがな」
「はは…お気遣いどうも…」
どうやら、考えている事を見抜かれたらしい。彼は気絶させようと手を振り上げ、私は痛みに備えて目を瞑った…。
「やめろーー!!」「やめて下さーーい!!」「だめーー!!」
突然叫び声がして目を開けると、3人の友人が私を庇うように彼の前にいた。チルノちゃんは私の目の前で構え、大ちゃんは私に抱きついて触手を外そうと、ルーミアちゃんは彼の前でとおせんぼをしている。
「めーりんに酷い事するなら、あたいが相手になってやる!!」
「美鈴さんを離してあげて下さい…!」
「レヴァンは友達。でも美鈴も友達。だから、酷い事しないで…」
彼は少し驚いたような表情をしていた。
「別に殺しはしない」
「だめ~」
「気絶させるだけだ」
「だめ~」
「………痛くないって」
「だめ、だめ、だめぇ~…」
ルーミアちゃんがしがみついて揺さぶっている…。まるで駄々をこねてるみたい…。しばらくして、彼は諦めたようにため息をついた。
「サンドワーム、離してやれ」
拘束が解かれ、抱きついていた大ちゃんを抱き止める。
「随分と仲が良いんですね」
「さてな…」
ルーミアちゃんがニコニコしながら抱き着いている。……何があったんでしょうかね?
「美鈴さん大丈夫ですか?」
「心配はいりませんよ、これでも鍛えてますからね!」
心配してくれる大ちゃんに大丈夫だと言い聞かせる。まあ…ちょっと危なかったけど。
「それで……中に入ってもよろしいかな?」
「あ、はい。負けちゃいましたからね…。それに、ルーミアちゃん達のお友達なら、手荒に歓迎できませんから」
これ以上戦ったら、この子達も黙ってなさそうだし…。
「今度めーりんに酷い事したら許さないからな!」
「わ、私も怒っちゃいますよ!」
「だめ~」
「分かったから降りろ!!」
3人に絡みつかれているレヴァンさんを見て、思わず笑ってしまう。
「何笑ってる?今の僕の状況がさっきのお前みたいだからか?」
「いえいえ、何だか思ったより良い人だったので♪」
「僕が良い人に見えるのか?お前の目は信用できないな」
「感じたんですよ、貴方の気を。私は『気を使う程度の能力 』を持っているんです。貴方の気は悪人のそれとは違いますから」
「………ファンタジー過ぎる」
「あはは…」
やっぱり外来人の彼には理解し難いんでしょうね…。でもきっと、この能力が無くても分かりましたよ。だって、妖精や妖怪があんなになついているんですから。
「気をつけて下さいね。この館は、私なんて足元にも及ばないくらいの強者揃いですから」
「ご忠告どうも。おいお前達、こいつが変な事しないか見張っててくれ」
そう言って館に入っていくレヴァンさん。残された3人は言い付け通りに私から目を離さない。流石に落ち着かないなあ…。
「あ、そういえばルーミアちゃんはレヴァンさんとどこで友達になったの?」
大ちゃんがふと気づいたように言い出す。あ、私も気になりますね、それ。
「森で会ったんだよ~」
「でも、どうやって友達になったんですか?」
「レヴァンがね~、腕を食べさせてくれたのだ~」
「へ~、そうですか腕を………はい?」
腕?腕って……え?
「「えええええええ!?」」
大ちゃんと一緒に驚いてしまう私……いや普通は驚きますよね!?
「なるほど、だからルーミアはレヴァンが好きなのか!」
「うん、大好き~♪」
なるほどじゃないでしょう!?普通に納得しちゃ駄目でしょ!
「腕は治るって言ってたけど、もう友達だから食べないって約束したの」
「そ、そうですか…」
改めて彼を過小評価していた事に気づきました…。食べられた腕が治る治癒力。そして…会ったばかりの妖怪に腕を食べさせる優しさ…。いくら治るとはいえ、そんな事が出来るなんて…優しいにも程がありますよ…。
…………もしかしたら、彼なら妹様の事も何とかしてくれるかもしれない。そんな淡い希望が浮かび、紅魔館を眺める。
文章の終わりらへんって、どんな事書けば綺麗に収まるのか悩みます…。
サンドワームの初陣は若干地味めの印象ですね。でも勝ったからいいんです。