パチュリー・ノーレッジ
Q:フランが題名に付いているのに、あまり戦いの描写が無いのだけれど?
A:メインディッシュが最初に来ないのは何故だと思う?
~美鈴サイド~
「あ~……負けた~…」
私、紅美鈴は地面に大の字になって寝っ転がっていた。いくらなんでも3連戦の上で3連敗はキツいですね…。いや、お嬢様から本気で足止めしなくてもいいとは言われましたが、ああもあっさり抜かれると、門番としての大切な何かを無くしたような気が…。
「めーりん、門番終わった~?なら遊ぼ~」
「元気だせ、めーりん!今度あたいが敵討ちするからね!」
「ふ、2人とも…」
「たはは…」
まったく、人の気も知らないで…。まあ気を使えるのは私ですけどね。
でもまあ……少し位ならいいですかね。もう警戒する必要は無いわけですし、私も休憩したいですしね。
「とーう!」
「わぷっ!?ちょっ、チルノちゃん!?」
理由を並べてたら、いきなりチルノちゃんが顔にのしかかってきた。容赦無いなあ…。
「ほらほら、2人も一緒に!」
「わは~♪」
「え、ええ…?」
「タイムタイム!分かりましたからこれ以上は………?」
またのしかかれる前に起き上がった所で、違和感を感じた。……地震?地面が揺れたような気がしたけど…。
「あの、どうしたんですか?」
「すみません、静かに」
違和感が段々大きくなる。地面は微かに揺れ…それと同時に大きな気を感じとる。それも2つ。
1つは良く知っている。巨大で、純粋で、邪悪な狂気。
そしてもう1つは、さっき見送ったばかりの優しい気。だけど、今は狂気に飲まれている。いえ、飲まれているのではなく……発している?
その2つの気は段々大きくなり、それにつれて地鳴りも大きくなる。これは……まさか…!
「危ないっ!!」
チルノちゃん達を抱えて急いでその場を離れる。そしてその後……地面が爆発し、そこから2つの影が飛び出した。
片方は地面に墜落し、もう片方は空中に留まったままだ。落ちたのは十中八九レヴァンさん。そして、飛んでいるのは…
「フランお嬢様!」
レミリアお嬢様の妹である、フランお嬢様だ。でも…何でレヴァンさんと戦っているの!?異変を止めに来たのなら、咲夜さんかレミリアお嬢様と戦う筈じゃ…。
「美鈴?…………っ!」
フランお嬢様がこちらを見て、表情を強張らせる。
「……そう。やっぱり、美鈴も…私を仲間はずれにするんだね…」
「え……いえ、これは……」
「聞きたくないっ!!」
フランお嬢様の目に入ったのは、チルノちゃん達と一緒にいる私。それは、地下で殆ど1人でいるフランお嬢様にとっては一番見たくないものだった…。
「いつもそう!みんな私を仲間はずれにして楽しそうに!何で私だけのけ者にするのよ!?」
「……っ」
私はその問いに答えられなかった。フランお嬢様の力は強大。でもそれを上手く使えないから地下へ閉じ込めている。そして、フランお嬢様の精神が狂気に飲まれている。それが理由です。
大好きなフランお嬢様を閉じ込めるなんて辛い……レミリアお嬢様達だって同じです。でも、もし外で無差別な破壊を繰り返したら、フランお嬢様はきっと幻想郷にはいられなくなる…。それならいっそ、地下から出さないようにしよう、というのがレミリアお嬢様の……私達の考えです。
何も答えない私を見て、フランお嬢様の瞳から光が徐々に消えていく。
「……そう……みんな私の事なんてどうでもいいのね。私はいつだって……ひとり……ぼっち…」
「何、寝言ぬかしてる」
光を無くした瞳から涙が零れようとした時、凛とした声がこの場に響く。全員が声のした方へ向くと、砂煙を払いのけながら歩いてくるレヴァンさんが見えた。
「お前は今、僕と遊んでいた筈だが?1人じゃないだろう」
その言葉を聞いて、フランお嬢様の瞳に光が戻る。
「それとも何だ?もう降参したのか?吸血鬼ともあろう者がもう限界か?」
「そ、そんな事無いもん!まだまだこれからよ!」
「そうかい。なら、今度はこちらから攻めさせてもらおう」
レヴァンさんが背中から生えた触手のようなものから光線を放つ。というか、何ですかあれは!?あんなものが背中にあったんですか!?
「当たんないも~ん!」
フランお嬢様は余裕で回避し、弾幕を放って反撃する。
「よく分からん攻撃だな…」
レヴァンさんは光線を放ちつつ、残りの触手で弾幕を叩き落とした。
「おー!何かよく分からないけど凄いなー!」
「頑張ってー!レヴァンさーん!」
「頑張れ~!」
何故だか応援にまわっているチルノちゃん達。でも、私はどちらも応援する気にはなれなかった。
フランお嬢様は弾幕で攻撃しているけれど、レヴァンさんはしていない。いや、弾幕自体を知らないような口振りだった。
これは幻想郷の決闘ルールである、弾幕ごっこではない。
これは…紛れもない殺しあい。互いの全力をもって戦い、どちらかが倒れるまで続く。
……だというのに、フランお嬢様は笑っている。殴り殴られ、吹き飛ばされても笑っている。
そしてレヴァンさんも時々だが、そんなフランお嬢様を見て笑っているように見えた。
………レヴァンさんは何故、フランお嬢様と戦うのだろうか…。
私は2人の間に割って入って止める事もできず、ただ考えながら戦いを見る事しか出来なかった。
その場から、サンドワームが消えている事にも気づかずに。
~魔理沙サイド~
レヴァンを追って紅魔館に来たものの、すっかり迷ってしまったぜ…。広すぎだろこの館…。しかも、通路の所々が壊れてやがるぜ…。こりゃ弾幕ごっこで付けられた跡じゃないな。それに跡が新しいって事は、レヴァンがやったのか?それとも、レヴァンの相手をした奴か?
お、ようやく突き当たりか……扉壊れてるけど。レヴァンの奴、大丈夫かな…。
部屋の中はかなり広いな。それにでっかい本棚が並んでるぜ。どんな本なのかちょっと読んでみるか。
一冊本棚から取り出して中身を見ると………お、こりゃ魔導書じゃないか!今まで見たことないやつだな。もしかして、ここにある本全部そうなのか!?すげえ…!
「……あなた誰よ?」
「うわっ!?」
びっくりした~!この館の住人……だろうな、間違いなく。
「はあ…また侵入者なんてね…」
「侵入者なんて人聞き悪いぜ!ちゃんと門番を倒してきたからな!」
「倒してようとなかろうと、侵入者にかわりないじゃない…」
紫色の髪の住人は呆れたように呟いた。……にしても、随分ボロボロだな…。
「パチュリー様ぁ~、妹様を追いかけなくていいんですか?」
「分かってるわよ!まずはレミィに知らせないとね……う、ケホッ!ゴホッゴホッ!!」
「パチュリー様!」
「おいおい、大丈夫か?」
悪魔っぽい女の子が急かしたように言った後、パチュリーと呼ばれた住人がむせ始めた。
「こぁ、薬を持ってきて…」
「は、はい!」
「病気か?」
「ええ…喘息持ちなのよ…。で、あなた誰?」
「私か?私は普通の魔法使いの霧雨魔理沙だ!」
「そう…私はパチュリー・ノーレッジ。あの子は小悪魔のこぁよ」
「宜しくな、パチュリー!それでさ……何があったんだ?」
自己紹介を終わらせて、さっきから気になっている事を訊いた。ひっくり返った机、床に散らばった本。そして……天井に空いた大穴。犯人はきっと廊下を壊した奴と同じだろうな。
「あなたも、あの外来人と知り合いだったわね。でも、今は説明してる暇はないわ。早くレミィの所へ行かないと…」
「お薬をお持ちしました!」
「ありがとう。………んっ……ごくっ…」
「なら、私の箒に乗ってけよ。飛びながら説明してくれないか?」
「ふぅ……そうね。走るのはキツいし、そうするわ。こぁ、本の片付けよろしくね」
「はい!いってらっしゃいませ~!」
パチュリーを箒に乗せていざ出発だぜ!
…………ところで、レミィって奴の居場所はどこだ?
~霊夢サイド~
「……中々やるわね、博麗の巫女よ」
「余裕たっぷりって顔ね、腹立つわ…」
玄関で十六夜咲夜というメイド長を倒した後、今回の異変の首謀者である紅魔館の主、レミリア・スカーレットの元へたどり着いた。何でも『運命を操る程度の能力』を持っているらしく、私の攻撃が何処に来るか分かっているかのように避けている。このままだとじり貧ね…。何とかしないと…。
「てっきりあの外来人が来ると思ってたんだけど……あてが外れたわね」
「人をハズレみたいに言うんじゃないわよ!」
弾幕をレミリアに放つものの、簡単に避けられてしまう。
「ふふ……スペルカードを使ったらどう?」
「どーせ、ご自慢の能力でかわされるのがオチよ。無駄に使わせようったってそうはいかないわ」
「つまらないわね…。なら、私からいくわよ!」
レミリアの手が光りだし、私を見て笑みを浮かべる。私は攻撃に備えて札を手に構える。
……だが、いつまで経っても攻撃は来なかった。当のレミリアは、上を向いて呆然としている。
「……嘘、なんで外にいるの…!?」
「ちょっと……どうしたのよ?」
「霊夢ーっ!!」「レミィ!!」
扉を勢いよくあけていきなり出てきたのは、魔理沙と……誰?
「パチェ!どういう事よ!何でフランが外にいるの!?」
「フランって誰よ…。魔理沙、説明しなさいよね」
「いや、私よりパチュリーがした方が良いんじゃないか?」
「そうね、2人共ちょっとこっちに来てくれる?」
弾幕ごっこを一時中断し、魔理沙とパチュリーの元へレミリアと向かう。そしてパチュリーから事情を聞く。
「すると…地下に閉じ込めていたあんたの妹が、何故かレヴァンと一緒に地下から出てきたって訳?」
「しかも情緒不安定で、一度狂気に飲まれると破壊の限りを尽くすって……相当ヤバいじゃねえか…」
「そうよ。不味い事になったわね…。大体パチェ、あなた簡単にやられ過ぎよ」
「しょうがないじゃないの…結界を張れるなんて思わなかったもの」
「は?結界?あいつそんなの張れるの?」
「あら、知らなかったの?背中から生えてた妙な触手を使ってたみたいだけど」
「「触手ぅ!?」」
……とうとうあいつが分からなくなってきたわ…。
「………いけない、こっちに来るわ!」
レミリアがそう言った瞬間……天井が破壊され、そこから2つの影が落ちてきた。
「「フラン!?」」「「レヴァン!!」」
美しい金色の髪をなびかせて宙を舞う吸血鬼、フランドール・スカーレット。
奇妙な触手をうねらせて大地に立つ奇才、レヴァン。
紅魔館のあちこちを巻き込んだ2人の遊びは、終結へ向かっていた…。
自分でハードルを上げてしまったなあ…。
ご期待通りの出来映えになるか分かりませんが、頑張ります。