東方奇才伝   作:サンダーボルト

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皆さんあけましておめでとうございます。

続きを待っていた方、お待たせして申し訳ありません。待っていない方も申し訳ありません。

今年も東方奇才伝を宜しくお願いします。


決別、死闘、時々逆転。

対峙する2人の周りを禍々しい狂気が支配する。霊夢や魔理沙、パチュリーらは狂気にあてられ、顔色を悪くする。吸血鬼であるレミリアでさえ影響を受ける程だ。

 

 

「…っ……フラン!!何をしているの、部屋に戻りなさい!」

 

「……お姉様?」

 

 

それでも負けずにフランに向かって叫ぶ。

 

 

「聞いてるの、フラン!?」

 

「うるさいっ!!!!!」

 

 

だが、フランはそれを超える声量で叫び返す。言い返されるのを予想していなかったのか、レミリアは驚いた表情をしている。

 

 

「お姉様はいっつもそう!!私を閉じ込めて自分達だけ楽しい事をして!!その上、私からレヴァンまで取るの!?ふざけないでよっ!!」

 

「フラン、待ちなさい。レミィは…」

 

「黙っててよ!!みんな嫌いよ!大っ嫌い!!美鈴も咲夜もパチェもこぁも!!」

 

 

フランは今だ唖然としているレミリアに向き直り、

 

 

「お姉様なんか……もうお姉様なんかじゃないっ!!!」

 

 

その叫びを受け、レミリアは膝から崩れ落ちた。フランの為に……フランを守る為にやってきた事。それは、フランを狂わせる原因になっていたのだ。

 

 

 

「…フ……フ…ラン…」

 

 

うわ言のように呟くレミリア。だが、フランはその言葉が聞こえていないのか、それともわざと無視したのか、反応すら見せずにレヴァンの方に向き直る。

 

 

「……お待たせ」

 

「随分表情が明るくなったな」

 

「そう?うるさいのが静かになったからじゃない?」

 

「ククッ……果たしてそうかね…?」

 

「……どういう事?」

 

「知らないでいいさ。じきに分かる」

 

「むぅ………ま、いっか」

 

 

フランが戦闘体制に入り、レヴァンが迎え撃とうとアームを広げるように展開する。

 

 

「お、おいおい……レヴァンだけでやらせていいのか?」

 

「いいわけ無いでしょ…。でも、あいつ絶対邪魔するなとか思ってるわよ」

 

 

レヴァンは霊夢達の方を見て、手で追い払うような仕草をしている。

 

 

「……ビンゴだぜ」

 

「まあ、危なくなったら助けに入りましょう」

 

 

邪魔が入らない環境を作る事に成功したレヴァンは、改めてフランを見据える。

 

 

「あははは、いっくよ~!」

 

「来い」

 

 

フランは弾幕を張りつつ接近する。レヴァンは当たりそうな弾幕をアームを盾にして防ぎ、熱線砲で撃ち落とそうとする。

 

フランは急加速して熱線砲を振り切り、鋭い爪で襲いかかる。だが、爪が胴体に届く前にアームがフランを叩き落とす。

 

 

「うぐぅっ…!」

 

 

そのままフランを締め上げようとアームが迫るが、それより早く空中へ逃げ出す。アームの動きがフランを捉えきれないうちに、レヴァンへ突進を仕掛ける。咄嗟に腕を交差させてガードするも、衝撃で吹っ飛ばされる。

 

 

「うぅ…いたーい…。何でそんなに硬いの~?」

 

「超合金の骨格だからだよ。と、言っても分からんだろうがね」

 

 

レヴァンだけでなく、突進したフランも軽いダメージを受ける。もっとも両方すぐに回復するが。

 

 

「む~……それなら、【禁忌・フォーオブアカインド】!!」

 

 

スペルカードを発動させるフラン。すると、フランが4人に分身した。

 

 

「……はぁ?マジか…」

 

「マジだよ♪ちなみに強さは4等分じゃなくて、4倍だよ!」

 

「げ……」

 

 

あからさまに嫌な顔をするレヴァンを尻目に、2人のフランが突撃する。

それを見て、レヴァンはアームを2本地面に叩きつけ、それを跳躍力にして飛び上がる。

 

 

「「……えっ!?」」

 

「やあ」

 

 

まさか飛んでくるとは思ってなかったフラン達は急いで回避行動をとろうとするが、それより先にフランの腹にラリアットを食らわせる。更にそれには止まらず、フランの服を掴んで残りのフラン達に向けて投げ飛ばす。

 

 

「「きゃあああああ~!!?」」

 

「「うわわっ、危ないな~!」」

 

 

だが、残りのフラン達は何とかかわし、レヴァンに向けて弾幕を放つ。流石に防ぎきれず、弾幕を食らって地面に落ちる。

 

 

「くっそ……」

 

「「「「アハハハハハッ!!」」」」

 

 

4人のフランがレヴァンの頭上を囲むように回っている。

 

 

 

 

一方、パチュリーは未だ失意の底にいるレミリアを呼び覚まそうとしていた。

 

 

「レミィ、聞こえてるの!?しっかりしなさい!」

 

 

レミリアの肩を掴んで揺さぶり、必死に声を張り上げる。

 

 

「……私が……あの子を……」

 

 

だが、そんなパチュリーの声は届いていなかった。

 

 

「どうしよう……「パチュリー様!」…咲夜!」

 

 

扉を開けて入ってきたのは、十六夜咲夜と紅美鈴。美鈴がフランが外に出て暴れている事を咲夜に伝え、そして一緒にレミリアへ報告しに来たらしい。もっとも、パチュリーの方が先に着いたが。

 

 

「……お嬢様?」

 

 

咲夜がレミリアの異変に気づく。非常事態にも関わらずに、冷静に状況を見られるのはメイド長故か。

 

 

「お嬢様、お気を確かに」

 

「……咲…夜………?」

 

 

咲夜が呼びかけると、多少反応するもまだ完全には立ち直れていない。

 

 

「……失礼します」

 

 

乾いた音が響く。なんと、レミリアの頬に平手打ちをした咲夜。フランとレヴァンを除く全員が咲夜へ視線を向ける。レミリアもぶたれた頬を手で押さえ、信じられないといった目で咲夜を見る。

 

 

「ご無礼をお許し下さい。後程どのような罰も受け入れます。しかし、事は一刻を争います。主であるあなたがその様では、示しがつきません。どうか、お気を確かに…」

 

 

レミリアは目を閉じて深く息を吸い、ゆっくりと吐き出す。そして目を開けると、元の落ち着いた顔に戻っていた。

 

 

「……そうよね、私が浮き足立ってどうするのよ…。ありがとう、咲夜。あなたの振る舞いは不問とするわ」

 

「いえ…」

 

 

落ち着きを取り戻したレミリアを見て、紅魔館の面々は安堵の息をつく。

 

 

「お、おい霊夢!あれってありなのか!?」

 

 

魔理沙の叫びに反応して緊張感が戻る。見ると、分身したフラン全員がスペルカードを使おうとしていた。

 

 

「重ねがけは有効よ……でも、不味いかもね…」

 

「レヴァンさんっ!!早くそこから離れてっ!!」

 

 

霊夢が冷や汗をかき、美鈴が危険を知らせようと叫ぶ。レヴァンは立ち上がろうとしているが、スペルカード発動の方が早かった。

 

 

「「「「【禁忌・クランベリートラップ】!!」」」」

 

 

十数個の魔法陣が浮かび上がり、それが移動しながらレヴァンに向けて弾幕を発射する。

 

 

「「「「いっけー!!」」」」

 

 

あちこちに敷き詰められた弾幕が逃げ場をふさぐ。視界を埋め尽くす程の光の束がレヴァンを飲み込もうとしていた。

 

 

「うわ、やばっ!!」

 

「いけないっ!!」

 

 

魔理沙が帽子からミニ八卦炉を取り出して援護射撃を試み、咲夜が時を止めて助けだそうとする。

 

 

「甘いんだよ、間抜け」

 

 

だが、レヴァンは動じていなかった。アームを1本伸ばしてかざし、それに向けて熱線砲を発射した。

 

すると、熱線砲はアームに弾かれ、拡散しながら飛んでいく。アームをうねらせると拡散された熱線も軌道を変え、次々と弾幕を撃墜していく。

 

 

「「「「えっ、嘘!?」」」」

 

 

瞬く間に全ての弾幕が撃ち落とされ、フラン達は驚愕している。

レヴァンは隙を見て残り2本のアームを伸ばし、フランの体を貫いた。

 

 

「「あああああっ!!!」」

 

 

2人のフランは悲鳴をあげて消え去る。

 

 

「「【禁忌・レーヴァテイン】!!」」

 

 

残ったフラン達は負けじとスペルカードを発動させ、手に巨大な炎の剣を召喚する。1人が斬りかかろうと突進し、もう1人はレーヴァテインを振り回して弾幕を発生させる。

 

 

「おりゃああああー!!」

 

「……もうちょい考えて動けよ」

 

 

レヴァンは2人のフランの直線上の位置を割りだし、そこへ移動する。斬りかかってくるフランを盾にして弾幕を避ける為だ。

 

 

「あ、ちょっとそこどいてよ!レヴァンがよく見えないじゃない!」

 

「知らないよそんなの!そっちが動けばいいでしょ!」

 

「何よー!邪魔してるのはそっち……あ、危ない!!」

 

「え?きゃー!?」

 

 

言い争いをしてる間に、斬りかかってきたフランに向かってアームが襲いかかる。レーヴァテインを振り回して追い払おうとするも、逆に絡めとられてしまう。そのままギリギリと締めつけられ、苦悶の声をあげてフランは消滅した。残るは本体のフランのみ。

 

 

「うっとうしいのは消えた。後は……お前だけだ」

 

「あはは、本当に凄いね♪こんなに楽しいのは生まれて初めて!」

 

 

凶悪な笑みを浮かべたレヴァンの言葉に、フランも笑顔で答える。ゆっくりと地面に降りてくるフラン。その間も互いに視線を外さない。地面に降り立った後も暫く睨みあう。

 

 

そして、ほぼ同時に飛び出し、弾幕無しのインファイトが開始された。

 

 

アームの牽制をいなしながら、レヴァンへ攻撃を仕掛けるフラン。防ぎながらも反撃するが、吸血鬼の驚異的な身体能力の前には苦戦を強いられる。

対するフランも、尋常ではない強度を誇るレヴァンの強化骨格やアームに防がれ、致命傷を与えられずに焦れていた。

 

 

爪が皮膚を切り裂き、拳が骨を砕く。辺りにおびただしい量の鮮血が飛び散り、両者が紅く染まってゆく。傷を受けてもすぐ治る体質のせいで、永遠に続くかと思われた遊びにも次第に変化が現れる。

 

 

レヴァンに疲れの色が見え始めたのだ。吸血鬼のフランと人間であるレヴァンではスタミナが違う。ましてやレヴァンは幻想入りして間もない。ストレスも少なからずあったのだろう。

 

 

そんな状態のレヴァンに生まれた隙をフランは見逃さない。大振りの攻撃を受け流し、体勢を崩したレヴァンの頭にムーンサルトキックを食らわせた。

 

 

だが、レヴァンも負けてはいなかった。キックを受けて吹き飛びそうになったが、アームを地面に突き刺して無理矢理堪える。後ろにのけ反った状態で耐えたレヴァンは、そのまま勢いをつけた頭突きを繰り出した。フランは防御も回避もできずに食らい、大きく後ろに下がった。

 

 

肩で息をするレヴァンに対し、フランは頬についた返り血を舐めとり、愉悦の表情を浮かべていた。

 

 

「レヴァンの血、美味しいね……♪もっと飲みたいよ!」

 

「冗談じゃねえよ…」

 

 

拒否したところで止まる訳もなく、フランはレヴァンに向かって真っ直ぐ飛んでいく。レヴァンはアームを地面に叩きつけ、床を奮起させて簡素な壁を作り出す。

 

 

「アハハ!そんなものじゃ止められないよ!?」

 

「止める気なんざ無い」

 

 

レヴァンは作った壁を渾身の力でぶん殴る。すると壁は石の弾丸と化してフランに襲いかかった。フランは一瞬驚いたが、すぐさま弾幕を発射して撃ち落とす。何発か食らったものの、それでスピードが落ちる事は無かった。

 

 

アームを自分の前で絡ませて盾を作ってフランの突進を受け止める。だが、完全には受け止められずに盾を破られ、レヴァンは吹き飛んで地面にめり込んだ。そんなレヴァンにとどめを刺そうとフランがゆっくり近づく。

 

 

「……見ていられるのもここまでね」

 

 

霊夢が意を決して札を数枚手にする。それに気づいたフランが視線を向ける。

 

 

「……勝手に決めるなよ。僕はまだやれる」

 

 

レヴァンはまだ立ち上がる。その疲労から若干ふらついているが、その瞳には戦う意志が残されている。

 

 

「あんた、まだやる気…!?」

 

「さっすがだね!普通ならもう立ち上がれないよ!」

 

「だから普通じゃないんだよ、僕は」

 

 

霊夢は驚きの声をあげ、フランは喜んでいる。レミリア達も信じられないといった目をレヴァンに向けている。

 

 

「さて、楽しい遊びも終わりの時間が近づいている」

 

「え~?もう終わっちゃうの?つまんないなぁ…」

 

「安心しろ、最後にとっておきのものを用意しておいた」

 

 

レヴァンはニヤリと笑う。そして、一歩一歩ゆっくりとフランとの距離を詰めていく。

 

 

「ふ~ん、とっておきかあ…」

 

 

対するフランはそこから動かない。まるで何かを待っているように…。

 

 

「それって…」

 

 

突如、轟音と共に地中からサンドワームがフランの背後に現れた。そして触手を体に絡ませようと襲いかかる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これの事じゃないよね?」

 

 

だが、フランは後ろを向くと同時にサンドワームを裏拳ではね飛ばした。

壁に激突して動かなくなったサンドワームを見て、フランはつまらなさそうにため息を吐いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ああ、違う」

 

 

その言葉を聞いて振り向こうとするフラン。だが、それは叶わなかった。

レヴァンはフランがサンドワームに気をとられた隙に背後に移動し、両腕で頭をガッチリと固定、アームを体と両手足に絡ませて動きを封じたのだ。いかに吸血鬼といえど、これでは身動き1つとれない。

 

 

「……っ…凄い力だね。でも、これからどうするの?これだと、レヴァンも動けないよ?」

 

「構わないさ。君を動けなくするのが目的だからな」

 

「ふーん、私を動けなくしてあそこの人間にでも攻撃させるの?」

 

 

フランは霊夢達を見ている。

 

 

「外れだ。耳をすませてみな」

 

「……?」

 

 

そう言われて静かに音を探るフラン。霊夢やレミリア達も耳をすませる。

 

 

 

 

 

 

 

 

………音が、聞こえた。キーーーンと言う音が、段々と大きくなっていく。

その音の出所を探ろうと辺りを見回す霊夢達。そして、音が最も大きくなった瞬間にそれが分かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

サンドワームの掘った穴からジェットパックが飛び出した。

 

 

ジェットパックはフランの胴体に体当たり。そのままレヴァンごとフランを空中へ連れていく。紅魔館の窓を突き破って、紅い霧で覆われている空へ飛んでいった。

 

 

 

「…………え、逃げた?」

 

「いやいや、フランドールまで連れていったら意味無いだろ」

 

「……なら、私達からフラン様を遠ざけようとしたのかしら…?」

 

 

残された少女達は、レヴァンのした事が理解出来なかった。

 

 

「ねえ、あなたはどう思うのレミィ………レミィ?」

 

 

 

ただ1人、青ざめたレミリア・スカーレットを除いて。

 

 

 

「………まさか……。」

 

 




レヴァンが何をしようとしたのか、お分かりの方はお分かりでしょう。

感想をくれたら嬉しいな~…と、思います。
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