東方奇才伝   作:サンダーボルト

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何故レヴァンは空へ行ったのか。その謎が今回解けます。

そして、レヴァンの最後の奥の手が明らかに…。


日輪の下の仲直り

紅い霧を切り裂きながらジェットパックは飛んでいた。レヴァンに動きを封じられたフランはどうする事も出来ずにただもがいていた。だが、フランには理解出来なかった。何故こんな事をするのかが。

 

 

「……これからどうする気?このままだと、先にダウンするのはレヴァンだよ?」

 

 

高速飛行で先に体力が尽きるのは間違いなくレヴァンだ。フランもそれは理解していた。

 

 

「まあ確かに大したスタミナだよ、吸血鬼ってやつは。だがな、今回ばかりは吸血鬼ってのが仇になったな」

 

 

フランにはレヴァンが何を言っているのか分からなかった。それを知ってか知らずか、レヴァンが説明する。

 

 

「お前の『ありとあらゆる物を破壊する程度の能力』だが、それは視界に入ってるものにしか使えない。背後のサンドワームを撃退するのにわざわざ振り向いたから分かった」

 

「……ふ~ん、それがそんなに大切な事なの?」

 

「当然だ。ジェットパックを破壊されたら僕の作戦は台無しだからな」

 

「………作戦?」

 

 

嫌な予感がした。自分が何か大事な事を見落としているようだと、フランは感じていた。

 

 

「さて、ここで問題だ。吸血鬼であるお前が太陽を気にせずに外に出られたのは何故だ?」

 

「そ、それは、この紅い霧が太陽の光を遮って……!!!」

 

 

フランはレヴァンの作戦を理解した。すぐに離れなくては、と。

 

しかし、レヴァンがそれを許さない。ジェットパックを壊そうにも、頭を固定されて対象を見る事が出来ない。翼は密着しているレヴァンが邪魔をして動かない。手も足もアームが絡み付いていて動かない。

 

 

「今更気づいたって遅い」

 

「あ………あぁ……!!」

 

 

 

フランは更に力を入れて暴れる。それでも僅かに揺れただけ。フランは初めて死の恐怖を知った。強大な存在である筈の吸血鬼の自分が、今や何も出来ずに殺されるのを待つだけだった。フランは叫び、必死にもがく。だが、無意味だった。

 

 

 

ジェットパックは紅い霧が届かない高度に到達し、吸血鬼を太陽の下へ引きずり出す事に成功した。

 

 

 

 

 

 

「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁーーーーーーー!!!!!!!!????」

 

 

 

 

フランの絶叫が空へ響き渡る。光に焼かれた体から煙が噴き出す。

 

 

 

 

「ゔあ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙ーーー!!!!!!」

 

 

 

 

身を焼かれる痛みに涙を流し、体をよじらせて逃れようとする。しかし、太陽の光を浴びた事で吸血鬼の力は大幅に下がっている。抵抗らしい抵抗もする事もできなかった。

 

 

「だずげでお゙姉様ーー!!お゙姉様ぁぁぁぁーーーーーーー!!!!!」

 

 

涙で顔をぐしゃぐしゃにして遥か下にいる姉に助けを求めるフラン。その叫びは地上まで届く訳はない。それでも、フランは叫び続けた。

 

 

「スカーレットに助けを求めたって無駄だろう?お前、もう縁を切ったじゃないか」

 

「!!!」

 

 

 

【お姉様なんか……もうお姉様なんかじゃないっ!!!】

 

 

 

最後に姉に言った言葉……それを思い出した瞬間、フランは叫ぶのをやめた。

 

……私は何をしているのだろう。お姉様がくれたおもちゃを壊して、お姉様がくれた部屋も滅茶苦茶にして、挙げ句の果てに………大好きなお姉様との繋がりも壊してしまった。

 

こんな……何もかも壊してしまう私なんて嫌だ…。

 

お姉様といっぱいお喋りしたい。

 

咲夜の淹れてくれた紅茶が飲みたい。

 

美鈴と外で思いっきり遊びたい。

 

パチェやこぁと一緒に本を読みたい。

 

だけど、この願いはもう叶わない。何故なら、私がこの手で未来を壊してしまったからだ。

 

フランは薄れゆく意識の中、自分を照らす太陽に手を伸ばす。もう傷みも感じていない。

 

 

「……ねえ…レヴァン…。」

 

「何だ?」

 

「私に…こんな力が無かったら……お姉様達ともっと遊べたかな…?」

 

「どうだろうな。」

 

「……生まれ変わったら……吸血鬼じゃないものに…なりたいな。」

 

「……そうか。」

 

「太陽に邪魔されないで……いっぱい遊ぶの…。レヴァンの他にも…友達いっぱい作るんだぁ…。」

 

「なれるといいな。」

 

「………う…ん……。」

 

 

フランは笑みを浮かべて目を閉じる。来世に希望を託して…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だが、フランが消える事は無かった。

 

 

ふと、自分に影がさした事に気づいたフランは目をあける。そこには…、

 

 

 

 

「あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙ーーー!!!!!」

 

 

 

 

レミリア・スカーレットが庇うように覆い被さっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~レミリアサイド~

 

フランを空へ連れていった理由。それは霧に包まれていない所まで飛び、太陽光を浴びせる為だ。それに気づいた瞬間、私は飛び出した。

 

方向はだいたい分かっているものの、紅い霧のせいで視界が悪くて追い付けない。まさか、自分で発生させたものに自分がイラつく事になるなんてね…。

 

紅い霧が届くギリギリまで来たけれど、フラン達は見当たらない…。もし、もう霧の範囲外に出ていたとしたら、もう私には…。

 

 

「だずげでお゙姉様ーー!!お゙姉様ぁぁぁぁーーーーーーー!!!!!」

 

「!!」

 

 

馬鹿か私は!?妹が助けを求めているのに尻込みしてどうするの!?

 

声のした方に全速力で飛んでいく。太陽が私の体を焼くが、そんな事を気にしていられない。

 

ようやく見えた妹の姿は、弱りきって今にも消えてしまいそうだ。私はフランに被さるようにして太陽光を遮る。私も長くはもたないだろう。でも、妹を見殺しにしてしまうよりはマシだ。

 

 

 

 

「………お姉様!?」

 

「………フラン」

 

 

フランは驚いているわね。まあ…当然か。私はフランに嫌われているものね…。でも、たとえ嫌われていても……伝えたい事はあるわ。消えてしまう前に…。

 

 

「フラン……今までごめんなさい」

 

「え……」

 

「私は…あなたの気持ちも考えずに酷い事をしてしまったわ…。でも、これだけは信じて。あなたを閉じ込めたのはあなたの為なの。あなたの力は危険すぎるから、制御出来るまでは外に出さないって皆で決めたの」

 

「……でも、お姉様は私を嫌いになったんでしょ?いつまで経っても力を抑えられないし、お姉様達から貰った物も、すぐ壊しちゃうから…」

 

「そんな事あるわけないじゃない!」

 

 

涙を流しながら言うフランの言葉を否定する。

 

 

「私達にとって……私にとって、フランはかけがえのない存在よ。部屋がボロボロになっても、壁が壊されても、フランを嫌いになんてならないわ」

 

「……嘘だっ!!ならどうして遊んでくれなかったの!?お姉様は来てくれなかったの!?私…寂しかったのに!!」

 

「……嫌われるのが怖かったのよ…」

 

「え?」

 

「だって当然でしょ?あなたを閉じ込めた私の事なんて好きなわけないものね……。面と向かって嫌いって言われたら、耐えられる自信が無かったの…」

 

 

実際に言われて、咲夜にビンタされるまで放心していたものね……。

 

 

「ごめんなさい。全ては私の心の弱さがいけなかったの。本当に…ごめん…なさい……」

 

「……お姉様…」

 

「……フ…ラ…ン……」

 

「お姉様っ!!死んじゃやだよぉっ!!」

 

 

フランが泣きながらこちらに手を伸ばす。いつの間にか、アームの拘束が緩んでいたようね。私もそれに応えるように手を伸ばし、もう少しで触れるという瞬間……視界が黒く染まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……眩しい。暗くなったと思ったら急に明るくなったわね…あら?何ともない?この光は太陽じゃないの?

 

 

 

「……お姉様…?い…生きてるの…?」

 

「フラン…?」

 

 

私の腕の中でフランが心配そうな顔で見上げてくる。この様子だと、フランが何かしたわけじゃなさそうね…。

 

 

「生きてるか?ヴァンパイアシスター」

 

 

若干くぐもったレヴァンの声が響く。でも、姿が見えないわね?

 

 

「レヴァン?どこにいるの?」

 

「外にいる」

 

 

外?……光に目が慣れてきて分かったけれど、私とフランは狭い空間に閉じ込められているみたいね。壁には照明の様な物が取り付けられていて、私たちを照らしている。ここは一体…?

 

 

「今、君達がくつろいでいるのは個人用のシェルターの中だ。緊急時に展開して、あらゆる危険から身を守る。本来なら一人用なんだが……君達は小さいから平気だろう」

 

「「なんだとぅ!?」」

 

 

思わず2人同時に抗議の声を上げる。そして驚いた表情でお互い顔を見合わせ…笑いあう。思えばこんなに近くで触れ合ったのなんて何十年ぶりだったろうか…。

 

 

「それで、私たちを閉じ込めてどうする気?」

 

「さあね。取りあえずは地上に戻るとしようか」

 

「え…じゃ、じゃあ私たちは閉じ込められたままなの?」

 

「お日様浴びたいならご自由に」

 

 

フランは思いっきり首を横に振る。

 

 

「まあ、姉妹水入らずでお話でもしてたら?話したい事も山ほどあるだろう?」

 

 

今度はフランは満面の笑顔で頷く。私もそんなフランを見て笑みをこぼす。

 

 

「じゃあ、お言葉に甘えるわ」

 

「ごゆっくり」

 

 

さて…地上に着くまでどんなお話をしてあげようかしらね。

 

 

 

―吸血鬼と奇才の遊び、閉幕―




テンプルアーマー:パーソナルシェルター


非常時の緊急回避用テンプルアーマー。

普段は小さなカプセル状であり、強く握ると装甲を展開して楕円形のシェルターになる。
対衝撃、対熱、対寒、対腐など耐性の異なる装甲を何重も組み合わせており、あらゆる攻撃に対して絶対的な防御性能を誇る。更に、密閉された状態になるので毒ガス等も通用しない。ただし、長く中にいると酸欠になる。

とにかく生き残る事を追求したアーマーなので攻撃性能は皆無であるが、その堅牢さはトップクラスである。
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