今回はレヴァンとパチュリーが喋りまくる一話となっています。
「パチュリー様!いらっしゃいますか、パチュリー様!」
「パチュリー様~!」
大図書館に着いた咲夜と美鈴はパチュリーの名前を呼ぶ。しかし、パチュリーの返事は無く、代わりにこぁが飛んできた。
「こぁ!パチュリー様はどうしたの?」
「え~と、なんと言いますか…」
歯切れの悪い物言いに、二人とも疑問を感じる。まさか、パチュリーの身に何かあったのではないかと心配するが、どうやら違うらしい。
「取りあえず、来て頂ければお分かりになるかと…」
そう言われてこぁについていく咲夜と美鈴。そして、着いた先には…
「だからな、水が水として形状を保てるのは100度までだが、火の場合は上限が無いようなものなんだよ。だから、火と水をぶつけ合っても火が勝つ見込みは充分ある。温度1万度とか出せたら、ぶつかる前に蒸発するからな」
「成程…。火は水に弱いと思っていたけれど、一概にそうとも言えないのね」
「術者が超高温に耐えられる仕組みと、酸素と燃料を供給し続ける事が必要だがな」
「ふぅむ…耐熱性に優れた服を作れば、前者はクリア出来そうね。後者はどうしたものかしら…。木符系統の魔法で木の葉と風を送るのじゃ駄目?」
「火力出ないだろそれだと…。幸いにも酒を作る技術はあるから、それを使えば燃料用のアルコールは作れるだろう。それを魔法で噴射して火の魔法で着火。その後に風を送り続ければいい。本当は酸素だけを吹きつけられればいいんだが」
「流石にそこまでは無理ね…。それにしても、すごく手間がかかりそうね…。燃やしちゃうから、燃料なんていくら作ってもすぐに無くなるわよ?」
「そこがネックなんだよな…。やはりこれは現実的ではないか。……思ったんだが、魔法で火を出した後、魔力を供給して火を出し続ける事とか出来ないのか?」
「超高温の火を作り出せても、それを維持するのは難しいのよ。そんな温度の火なんて滅多に使わないでしょう?松明みたいに明かりに使うなら超高温の必要なんてないもの。それに魔法使いは妖怪程頑丈じゃないから、下手をすれば自分が燃えるわ」
「ああそうか…。なら、この術式を使ったこの方法なら…」
「いえ、それよりこっちを使った方が…」
机を挟んで向かい合って座り、熱く議論しているレヴァンとパチュリーがいた。普段はどちらかというと落ち着いている印象がある分、熱気を振り撒いている今の二人には言い知れぬ迫力があった。
「あの…お話し中申し訳ございません。パチュリー様?レヴァン様?」
「あら、咲夜。おはよう。もう朝食の時間かしら?」
「朝からご苦労、メイド長」
恐る恐る話に割り込んだ咲夜に、議論を中断して挨拶する二人。熱気が消えた事に安堵したのち、美鈴の頭を鷲掴かんで下げさせ、自身も頭を下げた。
「昨晩は申し訳ありませんでした!うちの門番が不躾な真似をしてしまいました!どうかお許しを!」
「も、申し訳ありませんでした!私、レヴァンさんにお怪我をさせてませんでしたか!?お恥ずかしながら、何も覚えていないんです!」
必死に謝る二人を見て、レヴァンは首を傾げる。
「別に何もされてないよ。ただお前が寝ぼけて部屋に入ってきて、そのまま寝ちまったからベッドに寝かせてやっただけ」
それを聞いた二人は更に頭を下げた。
「お客様を追い出して寝てしまうなんて…本当に申し訳ありません!」
「別にいいさ。寝るより有意義だったしな。なあパチュリー」
「そうね。あなたのアイデアのおかげで私の魔法にもバリエーションが増えそうだものね、レヴァン」
許してもらえて胸を撫で下ろす美鈴。紅魔館のメイド長としてのプライドか、咲夜はどこか納得していないようだが、本人が気にしていないと言っている以上、口を挟む事はしなかった。
「さ、早く上に行って朝食にしましょうか。美鈴は早く寝間着から着替えなさいな?」
「あ、はい!ではお先に!」
走って行った美鈴の後に続き、咲夜、パチュリー、レヴァンの三人は大図書館を後にした。
「ねえレヴァン、もっとないのかしら?あなたの世界の面白い話」
「そうだな……水に入れると燃える金属とかあるぞ」
「何それ!?それを錬金術で作り出して、水符と組み合わせたら面白い事になりそうね!」
「お前、元々二つ同時に唱えられるだろう…」
「それとこれとは話が違うわよ」
「そーなのかー…」
「ぷっ…何よそれ…」
「(…話に入れない…)」
たった一晩で思い切り距離が縮まった二人を、咲夜はチラチラ羨ましそうに見ていた。
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紅魔館の朝食会は不穏な雰囲気に包まれていた。その原因は美鈴が寝ぼけてレヴァンの部屋で一晩を過ごしたこと………ではなかった。
「はふぅ……いつもながら、咲夜が作るフレンチトーストは最高ね…」
「ホント美味そうに食べるなお前…」
「そう言うあなたは食べないの?なら私が貰っちゃおうかしら…?」
「いいよ別に」
パチュリーの前にフレンチトーストの盛られた皿を差し出すレヴァン。それを見たパチュリーは目をぱちくりさせる。
「え、本当にいいの?冗談のつもりだったんだけど…」
「僕は普通のトーストで充分だ」
「そう…ならありがたく頂くわね」
またフレンチトーストを食べ始めたパチュリーから目を放して、咲夜に普通のトーストを頼もうとするが、一瞬の内に目の前に焼きたてのトーストが現れた。
「悪いな」
「いいえ」
言う前に用意してくれた咲夜に礼を言ったレヴァンは、トーストにイチゴジャムを塗りたくって食べ始めた。偶然、備え付けのバターが目に入ったレヴァンはパチュリーに話しかける。
「パチュリー、僕の世界には面白い入れ物があってな、こう…凹字を逆にしたような形をしてるんだ」
「もぐもぐ…?変な形してるのね」
「片方にはジャム、もう片方にはバターが入っててな、潰すように握ると両方をいっぺんにパンに塗れるんだ」
「それは画期的ね…」
「だろう?幻想郷でも取り入れるべきだと思うんだが」
「どうかしら…。人里ではパンはあんまり食べられてないみたいだから、厳しいんじゃないかしら」
「そこは他の物で代用すれば問題ない。納豆に醤油とからしとか…」
「……ミスマッチだと思うわ。私は納豆あまり食べないけど…」
「和洋折衷という路線で…」
「やめておきなさい」
残念だ。と肩をすくめてコーヒーをすする。それを見て今度はパチュリーが話しかける。
「あなたってコーヒーをブラックで飲めるのね」
「ん?まあ…。お前は違うのか?」
「そもそもコーヒーをあまり飲まないのよ。親友が紅茶ばっかり飲みたがるから、それに付き合わされてね」
「ふーん…。だが、紅茶もそれなりに苦いだろう?」
「そうなのよ…。苦いのが苦手だからコーヒーじゃなくて紅茶を飲みたがってたけど、どうやら紅茶も苦いって事知らなかったみたいなのよね。きっと、色を見て甘い飲み物だと勘違いしたのね」
「味覚と発想がお子様なんだな」
「まったくね。今だって紅茶に角砂糖をバンバン入れてるし」
「何年経とうと成長しないのか……身長と同じで」
「ええ、成長してないのよ…胸と同じで」
「あんたたち、本人を目の前にして平然とそんな話してんじゃないわよっ!!!!!」
バアンッ、と勢いよくテーブルを叩いて立ち上がったレミリア。
「何よ、レミィ。今まで黙ってたのにいきなり騒ぎ出して」
「あんたたちが二人で喋ってるから、何となく喋れなかったのよ!見なさいよ、他の人だって……ちょっと、顔背けて笑ってんじゃないわよ!」
テーブルに座っていた霊夢、魔理沙、フラン、美鈴は笑いを噛み殺していた。レミリアの後ろにいた咲夜も、顔だけを背けて震えていた。
「大体パチェ!いつからレヴァンとそんなに喋るようになったのよ!?」
「いつからって…昨夜からよね?」
「そうだな」
「早いわよ!私だって全然喋ってないのに、ズルいわよ!」
「そうだよパチェ!私もお兄ちゃんと喋りたいのに、二人だけで喋っててずるい!ずーるーいー!」
「あら、ごめんなさいね。彼、とっても優秀だから、色々と教えているうちに…ね」
「優秀?どういう事だよ?」
「記憶力と理解力が尋常じゃないのよ。彼が自力で書いた魔法陣を私が使ってみたけど、問題なく発動したわ」
「…はぁ!?嘘だろ!?」
今度は魔理沙が立ち上がって声を上げる。魔法を使うために長い時間を費やした彼女にとって、たった一晩で素人が魔法陣を作り出した事は到底信じられるものではなかった。
「…ちょっと待って。パチュリーが使ったの?」
ふと疑問に思った霊夢がパチュリーに聞く。
「ええ…。彼、魔力を持っていないのよ。それどころか、霊力や妖力といった幻想郷の特殊な力の反応も全く無かったわ」
「え、じゃあ…あの触手とかどうやって動かしてるのよ?」
「テンプルアーマーに使われている動力炉を体に埋め込んでる」
あっさりと暴露された事実に、霊夢達は言葉を失う。パチュリーは既に知っていたらしく、冷静に紅茶をすすっていたが。
「ああ、出力は僕の方が圧倒的に上だ」
「いやどうだっていいのよそんな事は!?体は大丈夫なの!?」
「大丈夫じゃなければ埋め込んでねえよ」
「霊夢、落ち着きなさい。私達が騒いでもどうにもならないわ。彼が自分の意思でやったのだから」
「……」
ある意味当たり前の返事だが、体に何かを埋め込むという行為自体が受け入れられない霊夢。
「…なあ、レヴァン。どんな事情があって、体に…」
「それを話すには好感度が足りないな」
魔理沙の問いに冗談めかして答えたレヴァン。だが、その目からは確固たる意志が見て取れた。それに感づいたレミリアが話題を変える。
「記憶力が良いって言ってたわよね」
「そうね。レヴァン、見せてあげたら?」
「見せるといっても…どうすればいい?」
「私が質問するから、それに答えてみせて?答えは昨日読んだ本に書いてあるから」
「なるほどな」
先程までの少し暗い雰囲気が変わり、全員が興味津々という視線をレヴァンとパチュリーに向けた。
「じゃあ、最近レミィがおねしょしたのはいつ?」
「36年前の火曜日」
「…ブッ!?」
優雅に紅茶を飲もうとしていたレミリアが吹き出す。
「ち、ちょっとしゃくや!?あれは秘密にしてって約束したでしょ!?」
「お嬢様……36年前に私はまだいませんよ…。約束したのは2年前……あっ」
「うわぁぁぁぁぁぁぁばかぁぁぁぁぁぁぁ!?」
咲夜がうっかり口を滑らせて痴態を増やされたレミリアは顔を真っ赤にして騒ぎ出す。そんなレミリアを無視して二人は続ける。
「3年前の春の季節、紅魔館で大変な事件が起きました。それは何?」
「スカーレットが自分で十六夜をおつかいに行かせたのを忘れて、十六夜を呼んでも出てこないから辞めたと勘違いして大泣きした」
「お、お嬢様!?そういえば、帰ってきた後いつもより優しかったような…」
「やめてよぉぉぉぉぉぉ!?」
「60年前、レミィが夜泣きして私の所に来たの。夜泣きの理由は?」
「妹と仲良く遊んでた夢を見て、閉じ込めてた現実との落差にショックを受けた」
「…お姉様…」
「う、うぅ……」
「47年前に、昼間にも関わらずレミィが外に出ようとしたの。その理由は?」
「紅魔館を襲撃してきた妖怪を紅が追い返したんだが、その時に紅が大怪我をしたからキレた」
「…お嬢様…私の為に…?」
「…お願いだから…もうやめてよぉ……」
ナイトキャップを深くかぶって真っ赤になった顔を隠すレミリア。本人は恥ずかしい過去を暴かれてカリスマに傷が付いたと思っているが、実際は従者や家族に対する深い愛情を感じられて、カリスマは急上昇していた。
「(へぇ…結構良い奴なんだな)」
「(可愛い所もあるのね)」
「(……こいつが主でいられる理由が今分かった)」
紅魔館メンバー以外の好感度も密かに上がったのは、秘密である。
朝食会も終わり、これからどうするか皆で考えていたところ、
「レヴァン!この私が弾幕ごっこの何たるかを教えてやるぜ!」
普通の魔法使い、霧雨魔理沙がそう宣言した。
次回、魔理沙との本格的な弾幕勝負が始まります。
※東方紅魔郷を買いましたので、原作未プレイのタグを一応消去しておきます。