今回の話は、見る人が見ると不快になるかもしれません。ご容赦下さい。
「弾幕ごっこ…って、ねえ魔理沙…話聞いてた?レヴァンには魔力も霊力も何もないのよ?そもそも弾幕を作り出せないじゃないの」
霊夢が呆れて魔理沙を止める。だが魔理沙は満面の笑みを浮かべたままだ。
「甘いぜ霊夢!お前も見た筈だぜ?フランと戦ってる時にレヴァンがレーザーを出してたのをな!」
「正しくは熱線砲な」
「そうそう、熱線砲!」
レヴァンが冷やかに訂正するが、魔理沙の熱意は冷めないままだ。
「……というか、そもそも弾幕ごっこってなんだよ?」
「え、そっから説明しないと駄目なのか!?」
「そういえば、レヴァンには説明してなかったわね。ちょうどいいから、今説明するわ」
弾幕ごっこを知らないレヴァンに魔理沙がつっこむ。そして、霊夢が弾幕ごっこの説明を開始した…。
~レヴァンサイド~
弾幕ごっこ。
それは一言で言えば、幻想郷において新たに確立された決闘方法である…らしい。妖怪同士の殺し合いは幻想郷に悪影響を与えるらしく、それを防ぐために作られたそうだ。スペルカードという誓約書を用いた決闘であり、互いに取り決めたスペルカードの使用枚数を使い切るか、残機と呼ばれる被弾回数制限を超えて被弾すると負けである。
決闘といえば殺伐としたものをイメージしがちだが、この弾幕ごっこにおいて一番重要なのは美しさだ。勝敗よりも人を魅せる戦いをするのが醍醐味だと霧雨が言っていた。使用する弾幕やスペルカードは千差万別であり、博麗のような人間なら霊力、八雲のような妖怪なら妖力、パチュリーのように魔法を使う者なら魔力といった具合だ。しかし、これは大まかに分けた場合であり、もっと言えばどんな物でも弾幕として使っていいようだ。博麗は霊力弾の他に札や針、十六夜ならばナイフ、スカーレットに至っては血液を弾幕として使うんだという。更に突き詰めると、紅の格闘のように直接殴ったりするのでも弾幕ごっことして成立するらしい。こいつら弾幕の意味を分かってんのか?
スペルカードというのは、各々の決闘においての意味を持たせる紙だ。ぶっちゃけ僕も何言ってるのか分からん。
つまるところ……一種の必殺技といったものだろうか…?しかし、普通の弾幕の場合も同じなのだが、必ず逃げ道を用意しなければならないらしい。必殺技と呼んでいいのか…?得意技と言った方が良いかもしれないな。
ちなみにスペルカード自体は単なる紙切れであり、別に特別なパワーが込められているとかそんな事は無い。使う時には宣言をする必要があるため、『これからこういう攻撃をしますよ~。』と相手に示す事がスペルカードの役割と言えるかもしれない。もっと良い役割与えてやれよ…。
この弾幕ごっこは妖怪が異変を起こしやすく、そしてそれを人間が解決しやすくする為に生み出されたものらしい。実際に、博麗とスカーレットも異変の終息を賭けて弾幕ごっこをしていたという。ちなみに人間が負けても殺される事は無く、たとえどちらかに余力が残っていても、勝負が終わったなら手を出すことは認められない。人間側にハンデがありすぎるような気もするが、これくらいしないと妖怪とはまともに渡り合えないといったところだろうか。
「……ま、ざっとこんなものかしらね」
「よし!じゃ、早速やろうぜ!」
説明が終わった途端に弾幕ごっこを始めようとする霧雨。だが、残念ながら問題がある。
「待て、お前は空飛べるだろう。ジェットパックを装着するとアームが使えないから、熱線砲も撃てんぞ」
そう、箒で空を飛ぶ彼女と弾幕ごっこをするには、ジェットパックを装着して同じく空を飛ぶ必要がある。あるんだが……アーマーを装着するとアームが使えなくなってしまう。地上でも戦えないことは無いが…やはり決闘というなら、同じ土俵に立たなければならないだろう。
「え、そうなのか?…でも、そのジェットパック?ってのにもなんか積んであるんだろ?」
「そりゃまあ、そうだが…かなり危険だ。そう簡単に撃てるもんじゃない」
ジェットパックの武器は、チェーンガン、ミサイル、ブレードの三つ。エネルギーを調節して威力を弱められる熱線砲と違い、実弾や実体剣では加減がきかない。流石に遊びの場で出す訳には…。
「ははっ、心配すんなよ!どうせ当てられないからな!」
……。
ほ う ?
今の言葉は…僕に対する当てつけか?挑戦か?まあ、何にせよ…気に入らんな。
事実、僕が霧雨に弾幕ごっこで勝てる確率は低いだろう。だが、だがな、こう、余裕そうな態度をとられると…イラつく。
「……いいだろう、そんなにやりたいなら相手になってやる。お前から言い出したんだ、怪我をしても文句言うなよ」
「…!へへっ、望むところだ!弾幕ごっこのやり方を体に叩き込んでやるぜ!」
霧雨は力強く僕を見据え、僕を指差してニヤリと笑う。やってやろうじゃないか。一太刀でも二太刀でも…食らわせられるだけ食らわせてやる。
~~~~~~~~
「何であたいとは戦わないのに、魔法使いとやるのさ!?」
「チルノちゃん、まあまあ…」
「わは~♪がんばれ~♪」
何故か紅魔館の近くをうろついていたチルノ、大妖精、ルーミアもギャラリーに加わり、僕と霧雨の弾幕ごっこが始まろうとしていた。場所を屋外へと移し、どこから持ってきたのかテーブルセットで紅茶を飲んでいるスカーレット達。完全に見世物にされている……チッ、気分が悪い。あいつらがそんな悪趣味だとは思っていない。思っていないが……嫌な想像が頭から離れない。
―――――――――――こいつら、僕が負ける様を見て、楽しむ気なんじゃないか?
―――――――――――勝てないと分かっている僕の戦いを見て、笑ってるんじゃないか?
「…それで?ルールはどうするの?」
思考にふけっていた僕を、審判をつとめる事になった博麗の声が現実へ引き戻す。……そういや、僕スペルカード持ってねえじゃん。これ、試合すらできないのでは…。
「博麗。僕、スペルカード持ってないんだが…」
「ああ、そうよね…。どーする魔理沙?」
「うーん…よし!ならレヴァンの残機は3!スペカは私が一枚だ!それで、私が一発でも攻撃を食らうか、私のスペカをかわしきったらレヴァンの勝ちで良いぜ!」
………は?
「おい…何だそのふざけたルールは。なめてんのか?」
「おいおい、これはハンデっていうんだぜ?まあ、私は先輩だからこれくらいは付けるもんだぜ!」
一発入れるか、かわしきるか…。極端な話、攻撃しないで回避に専念しても勝てる訳だ。……完全になめられてるな。
「で、どうするの?このルールでいいの?」
「………それでいい」
腹は立つが…条件は有利なのに越したことはないからな。
「…レヴァン、これを」
弾幕ごっこを始める前に、パチュリーが僕に近づいて手袋のような物を差し出した。
「これは?」
「私の魔力を溜めてある手袋よ。これを使えばあなたも弾幕を作れるわ」
「…ありがたい」
本当にありがたいアイテムを受け取ったな。これを使えば攻撃のバリエーションが増えるな。危険な武装を使わずに済むかもしれない。
「頑張れお兄ちゃん!魔理沙なんてやっつけちゃえ~!」
「レヴァンさ~ん!ファイトですよ~!」
「期待してるわよ。私を退屈させないでね?」
「レヴァン様、怪我にはお気をつけて…」
ギャラリーの皆さんが手を振ったり、微笑みながら僕に声援を送ってくる。初心者に期待し過ぎだろ。
「大人気じゃないか。こりゃ、情けない戦いはできないな?」
「黙れ」
箒に跨り、フワフワと上昇しながら僕を挑発する霧雨を黙らせる。手袋をはめて、試しに弾幕を一つ発生させる。弾幕を作る感覚はパチュリーから聞いたからか、思ったより簡単に出来たな。
戦闘準備が整ったので、脳内でジェットパックを呼ぶ。独特の飛行音と共にジェットパックが飛んできて、僕の背中に装着された。中心から外側に全身をつたう様に装甲が展開され、ジェットパックの装着は無事完了。駆動系や補助翼に異常が無い事を確認し、霧雨を追って空を飛んだ。
「……おお…こんな空の飛び方、見た事無いぜ…」
「そうだな、僕も僕以外見た事無い」
霧雨は飛んでいる僕を見て驚いているようだ。もっとも、僕から見ればお前の飛び方もお前以外に見た事無い。
「…それじゃ、二人とも準備はいいわね?」
「おう!」
「…ああ」
博麗が僕と霧雨を交互に見ながら確認を取る。それに返事をすると、博麗がゆっくりと右手を上げた。霧雨がこちらを見て好戦的な笑みを浮かべる。
「では……始めっ!!」
博麗が手を下げたと同時に、霧雨が猛スピードでこちらにつっこんできた。……というか早いなオイ!?あれ箒で出せる速度なのか!?
「いっくぜー!」
霧雨が手をかざすと、その手の平が光りだして青い弾幕が発射された。僕は弾幕を避けるように急上昇し、向かってくる霧雨に弾幕を撃ちだす。だが、僕の攻撃に霧雨は動じずにこちらに追撃を繰り出してくる。僕の弾幕を鼻歌を歌いながら軽々と避け、逆に弾幕で攻撃してくる。
「……ちっ」
あまりにも余裕で回避された事に苛立つが、止まっているわけにはいかないな。足のブースターを吹かして、後退しながら更に弾幕を放つ。向かってきた弾幕を左右に動いて回避しするが…くそ、安定しない。腕の武器はブレードだけだからな。後ろ向きで飛行しながら腕を使った射撃などやった事が無い。
案の定、僕のお粗末な弾幕を一気にすり抜けた霧雨。軌道が安定せずにスピードが落ちた僕の背後に回り、弾幕を放つ。衝撃が背中に走ったが…着弾した音が変だ。物と物がぶつかった音でも、爆発音でもない。
「今、ピチューンって音がしただろ?それが被弾した音だ。その音が鳴ってないと、例え当たってても被弾した事にはならないんだぜ」
一撃を入れた霧雨が、得意げに人差し指を立てて説明している。ふーむ…となると、かすったくらいではどうということはないのか。
「さーて、残り二機だぜ!気合い入れて避けるんだぜ!」
霧雨が謎の小瓶をばら撒く。何が起きるのか観察…しようと思ったがそうもいかない。霧雨の弾幕が飛んできて回避を余儀なくされる。こちらも弾幕で応戦しつつ、小瓶の様子をうかがう。すると、小瓶がいきなり緑色に輝きだし、こちらに向かって飛んできた。しかも、霧雨がさっきから撃ってくる弾幕よりも早く、軌道も直線的ではなく曲線的だ。
軌道の異なる二種の弾幕が混ざり合い、僕に襲い掛かる。僕は攻撃を止めて回避に専念する。弾幕をスピードで振り切り、時に体を捻ってギリギリでかわす。
……このままではまずい。霧雨の狙いが意外と正確であり、小瓶弾幕で動ける範囲を狭めた所を攻めてくる。せめて、霧雨の攻撃を途切れさせなくては…。
そう判断して霧雨に攻撃しようと腕を構える。……が、これが失敗だった。
「…ぐっ!?」
何という間抜けなミスだろう。攻撃時に若干速度をゆるめたせいで、本来当たらなかった筈の弾幕に当たってしまった。霧雨も流石に唖然としている。
「(思ったより弱いな…。でも、初めてならこんなもんか。このまま続けてもしょうがないし、勝負を決めるか)」
「初めてにしては良くやったと思うぜ。けど、これで終わりだぜ!」
「ほざけ!!」
僕の怒号と同時に霧雨がスペルカードをかかげる。発動させまいと弾幕を乱射するが、その行動は無意味だった。
「【魔符・スターダストレヴァリエ】!!」
大小様々、色鮮やかな星が霧雨から放出される。その美しさに、ほんの一瞬だが目を奪われる。だが、どれだけ美しかろうと弾幕だ。当たれば僕が負ける。乱射した弾幕も、このカラフルな流星群に飲まれ、消滅した。物量で完全に圧倒されている。駄目だ、撃ちあってどうにかなるものじゃない。
今度は攻撃せずに全神経を回避に集中させる。軌道も大きさも早さもバラバラの星形弾を必死にかわしていく。必ず逃げ道が用意されている…とは言え、大量の弾幕に襲われながらそれを探すのは至難の業だ。
「…ええいくそっ!」
ソニックブレードを片腕だけ起動し、当たりそうな弾幕を切り払う。そして空いている片腕は、迫ってくる弾幕を迎撃する為に弾幕を放つ。しかし、死に物狂いの抵抗は長く続く事はなかった。3つの弾幕をいっぺんに斬った所に、斜め後ろからピチューンという無慈悲な音が響いた。スペルカードによる攻撃が止み、博麗の手が霧雨を指し示すかのように上がっている。
……僕は、負けたのか。
呆然と空中に漂ったままの僕に、霧雨が話しかけてきた。
「負けたのがそんなにショックか?」
「……あ゛?」
負けて少しイラついていた僕は、思わず睨んでしまった。
「なんなら、もう一回やってもいいぜ?また私が勝つだろうけどな」
「……おのれがぁぁぁぁぁぁ!!!」
完全に頭に血が上った僕は、弾幕を投げつけるようなフォームで放つ。心なしか、普通に撃つよりもスピードが速くなっているようだ。
「うわっ!?ははは、やる気満々か!」
「魔理沙!?」
「霊夢!コンティニュー頼むぜ!」
「は!?」
博麗に再戦の意を伝えると、霧雨も弾幕を放つ。……随分と楽しそうにしてるじゃないか、ええ?おい?絶対に、絶対に一発食らわせてやる。
~~~~~~~~
弾幕ごっこが始まってから数時間、レヴァンは未だに魔理沙に勝てないでいた。5回もの再戦を受け付けていた魔理沙には疲労の色が見えていた。対するレヴァンは衰えを見せず、逆に弾幕ごっこの腕を上げていた。魔理沙の弾幕を何度も食らい、そして学習していた。実際に1機墜ちるまでの時間も、再戦するたびに長くなっていたのだ。
それでも、レヴァンは勝てていない。いくらレヴァンの学習能力が優れていたとしても、幻想郷で日々鍛錬を積み、修羅場をくぐり抜けてきた魔理沙の経験にはかなわなかった。
それに加え、今まで体験したことの無い弾幕の軌道に対応しきれていないのも敗因の一つだ。同じ色をした弾幕でも、ただ真っ直ぐ飛ぶと思いきやこちらを追いかけてきたり、飛ぶ速さがまるで違ったりする。ある程度のパターンは分かるようになったが、それでも完全に見切るのは不可能だった。
そして、一番の原因は攻撃手段の乏しさだ。ジェットパックの武装は弾幕ごっこ向きではない。いくら相手が当たらないと公言したとはいえ、本当に使う気にはなれなかった。
…否、レヴァンは理解していた。例え使えたとしても…今の自分では魔理沙に勝てないという事を。
今のレヴァンを突き動かしているのは、悔しさ。年下の女の子にとんでもないハンデをつけられ、それでも手も足も出ずにいいように弄ばれている。それがたまらなく悔しかった。
そしてこの弾幕ごっこを見ている者達に対しても、同じような感情を抱いていた。一部を除き、レヴァンが勝つとは思っていない。ただ、魔理沙相手にどこまでやれるのかを見ているだけだった。
……試されている。
その思惑が、レヴァンの神経を逆撫でしていた。
再戦する度に、レヴァンの表情は険しくなっていく。
纏っている雰囲気が、禍々しいものへと変わってゆく。
審判の霊夢もギャラリーのレミリア達も、再戦が重なるにつれて気分がどことなく暗くなっていく。レヴァンが被弾するのを見て、最初は弱い弱いと茶々を入れていたチルノ達も、今は静かになった。フランやルーミアに至っては、今にも泣きそうな顔で手を組んで祈っている。
熾烈な撃ちあいの末にレヴァンの残機が1つとなり、5回目のリベンジの決着が着こうとしていた…。
~レヴァンサイド~
また被弾し、僕の残機は残り1つか…。何度もコンティニューしたおかげか、弾幕を避けるのも慣れてきたな。そろそろ攻めに転ずるか。僕は弾幕を両腕で放ちながら突進する。
「はあ、はあ…全く、執念深い奴だな…。でも、今度こそ終わりにしてやるぜ!」
息を切らしながらも霧雨がスペルカードを取り出した。それを見た僕は攻撃を止め、勢いよく後退する。体にかかるGがとんでもないが、構ってられん。充分距離をとって攻撃に備える。
「良い判断だな。ひとまず離れて弾幕の動きを見るつもりか。だけど、今回は距離なんか関係ないぜ!」
得意げに笑った霧雨が帽子の中から八角形のボックスを取り出した。今まで使っていない新しいスペルカードだ。それを僕に向けると、中心辺りが輝きだした。……何が来る?どんな弾幕だ?
「【恋符・マスタースパーク】!!」
「ちょ、魔理沙!?」
博麗が制止するような声が聞こえたが、僕はそれどころではなかった。
「……は?」
僕の口から呆けた声が漏れる。ボックスから放たれたのは、巨大な光。僕の視界を一瞬で埋め尽くした光の束。これは…何だ?レーザーのようなものか?距離が関係ないというのはこの事か…。
レーザーに飲まれ意識が薄れる中、僕はぼんやりとそんな事を考えていた。
いかがでしたでしょうか?
レヴァンは極端に負けず嫌いではないです。勝てないと分かったなら素直に引きます。
ただ、相手が年端もいかない少女だったの上にかなりのハンデを付けられた屈辱、見世物にされていたと感じていた事によるイライラ、一部からの勝ってほしいというプレッシャーがごちゃ混ぜになって引くに引けませんでした。我ながらめんどくさい性格してます。描写難しいです。
文才が無いので分かりにくいかと思いますが、温かく見守って下さい。
感想お待ちしてます。