東方奇才伝   作:サンダーボルト

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ネーミングセンスの無さには目をつぶって楽しんでください。


今回は、レヴァンがある偉業を成し遂げます。


操られないドール

三人は料理と酒を調達して戻ってくると、さっきのアリスの発言について話し始めた。

 

 

「で、ア~リ~スゥ~?さっきの事だけどよぉ?」

 

「な、何よ…」

 

「お前さ、レヴァンに一目惚れしたのか~?」

 

「はぁ!?なんでそうなるのよ!」

 

 

チンピラのように肩を組んで絡み始めた魔理沙が突拍子もない事を言い出し、アリスは心外だという風に否定する。

 

 

「だってさっき、『良いなぁ上海、レヴァンとあんなにお話できて……私だって…。』って言ってたじゃんか」

 

「そんなに言ってないけど!?ほぼ全部捏造じゃないの!」

 

「待って魔理沙…声真似上手すぎ…ぷぷっ…もう一回やって…」

 

「やらすな!」

 

 

どうやら魔理沙のアリスの物真似が笑いのツボに入ったらしいパチュリー。アンコールを要求したが、アリス本人に止められた。

 

三人の魔法使いが取り合えず仕切り直して乾杯し、コップの中身を飲み干した所で上海がフワフワとこちらへ飛んできた。そして、手を上げながら魔理沙の方を向いて、

 

 

「……マリサ!」

 

 

と言葉を発した。

 

 

三人は思わずコップを落として呆然とし…各々驚愕の声を上げた。

 

 

「うおおっ!?いっ、今、私の名前を呼んだぞ!」

 

「驚いたわね…でもなんで魔理沙なのかしら?」

 

「そっ、そうよ!ねえ上海、アリスって言ってみて!ア・リ・ス!」

 

 

何故か主人の自分ではなく、魔理沙の名前を呼んだ事に納得できないアリスは上海に詰め寄る。

 

 

「……イヤ!」

 

「嫌!?嫌って言ったの今!?」

 

 

可愛がっていた人形に首を横に振りながら拒否され、何が何だか分からない状態に陥ったアリスは、目に涙を溜めて半狂乱になって騒ぎ出した。

 

 

「何でよぉぉぉぉぉ!?何で私の名前を呼んでくれないの上海!?私の何が駄目なの!?魔理沙なんかのどこが良いの!?」

 

「おい、私なんかってどういう意味だこら」

 

「私に何が足りないの!?意地汚さ!?ガサツさ!?それともキノコ!?」

 

「お前バカにしてるよな?そうだよな?」

 

 

ミニ八卦炉を構えはじめた魔理沙をパチュリーがなだめている。そんな二人に目もくれず、アリスは上海の肩を掴んで揺さぶっている。

 

 

「ねえ答えてよ上海!答えてよぉぉ!!」

 

「ヤー!ヤー!イヤーーー!!!」

 

「お願いやめてぇぇぇ!!!私を嫌がらないでぇぇぇぇ!!!」

 

「イヤーーーーー!!!」

 

「いやぁぁぁぁーーーーー!!!」

 

 

上海の悲鳴がアリスのハートに深々と突き刺さる。この世の終わりが来たかのように泣きわめくアリスを見て、さっきまで怒っていた魔理沙も途端に冷静になる。どうしたものかとパチュリーと顔を見合わせていると、上海に言葉を教えた張本人がやってきた。

 

 

「…おい、なにがどうした。なんで教えた言葉を披露させただけでコイツがギャーギャー喚いてるんだ?」

 

「レヴァーーーーン!!!うわあああああん!!!」

 

「うおおっ!?」

 

 

急にこちらを向いて涙をまき散らしながらアリスがレヴァンに突進。そのまま押し倒す形で倒れこんだ。体の上でぐずりながら、アリスはレヴァンを問いただした。

 

 

「何でよ!?何で私の名前を上海に教えてくれなかったのよ!?」

 

「…はぁ?」

 

「おまけに上海は私の事を嫌いになってるし……あんまりよぉぉぉ!!」

 

「落ち着け…上海はまだ"ス"の発音はできてないから、お前の名前は言えん。というか、嫌いになった?なんだそりゃ」

 

「だって…私の名前を呼んでって上海に言ったら、イヤって言ったのよ!?」

 

「無理だって言いたかったんだろ?今アイツが喋れる言葉で否定を表すにはそれしかない」

 

「……そうなの、上海?」

 

「…ハイ」

 

 

レヴァンの説明を聞いてようやく落ち着いたアリスが上海に聞くと、上海は首を縦に振って肯定した。アリスは嫌われていなかった事に安心し、ほっ、と息を吐いた。

 

 

「あ~…、アリス?落ち着いたんなら、一度自分の状況整理したほうがいいぜ?」

 

「……え?」

 

 

アリスは一瞬、何を言われているのか分からなかった。だが、時間が経つにつれて、自分が今何をしているのかを、そして周りの視線が自分に集中している事を理解した。

 

 

アリスは今、レヴァンを押し倒したうえに、その体に跨っている状態なのだ。

 

 

騒ぎ好きの宴会の参加者達が、こんな面白そうな事を見逃すはずがない。

 

 

「おい見ろ!人形遣いが男を押し倒したぞ!」

 

「人前でおっぱじめる気か!?」

 

「妬ましい…」

 

「おおっ、ついにぼっち脱却か!」

 

「接吻!接吻!!接吻!!!」

 

「ねー大ちゃん、あれって何してるの?」

 

「…はぅぅ……」

 

「……」

 

「くっ…あの泥棒猫…!」

 

「いやぁ~春真っ盛りだねぇ~」

 

「はぁ…なにやってるのよ…」

 

「お兄ちゃん…?」

 

「ちょ、フラン!?お姉ちゃんの腕はそっちには曲がらな痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛いギャーッ!?」

 

「お嬢様ァァァァァ!?」

 

 

あちらこちらから歓声、冷やかし、嫉妬の声が上がり出す。中には全く関係のない悲鳴をあげている者もいたが、アリスにとってそんな事はどうでもよかった。みるみるうちに顔が紅潮していくアリスを見て、野次馬達は「可愛いー!」「やれー!」「いいぞー!」などと野次を飛ばしてくる。どうすればいいか考えるが、焦りと羞恥のせいで思考が全くまとまらない。さっきとは違う意味でアリスは泣きそうになっていた。

 

 

「…なあ、マーガトロイド」

 

 

アリスの下にいるレヴァンが声をかけてきた。もしかしたら、この状況をどうにか出来る案があるのかもしれない。アリスは淡い希望を込めた眼差しを送りながら答えた。

 

 

「な、なあに?」

 

「僕達はまだ知り合ったばかりだ。焦らず、友達から始めて…」

 

「アンタまで何言い出すのよぉぉぉぉ!!!」

 

「ゴフッ…!!」

 

 

アリスはレヴァンの腹部を踏み台にして思い切り飛びのいた。周りから笑いが巻き起こる。

 

 

「なんだよ…折角友達になってやろうとしたのに」

 

「大きなお世話よ!」

 

「シャイ!シャーイ!」

 

「何?アイツは照れ屋?そうか、なら仕方ないな」

 

「上海!?あなたまでそっちサイド!?」

 

「シャン、シャン♪」

 

 

終わりの合図を鳴らすように上海が手を叩くと、野次馬達はひとしきり笑ってから解散していった。レヴァンが片手を上げると、上海は両手でハイタッチして応えた。

 

 

「イー!イー!」

 

「ああ、良かったな。咄嗟にしては良い判断だった」

 

「シャンハーイ!」

 

 

嬉しそうにくるくる回る上海を見て、アリスは気づいた。

 

 

「(…もしかして、助けてくれたの?)」

 

 

上海の急激な成長ぶりに、アリスは驚きを隠せなかった。アリスの操る人形はアリスが簡単な命令を与えればその通りに動くが、自分で何かを判断してアリスの意思に関係なく動く事は無かった。

 

 

だがレヴァンと触れ合った上海は、アリスが何も命令しないままで動き、あろうことかアリスを助けたのだ。この成長ぶりは言葉を覚えた影響か、それともレヴァンに何か特別な力が宿っているのか…アリスには分からなかった。レヴァンからは魔力を感じない。専門外ではあるが、妖力や霊力といった力も持っているようには感じられなかった。

 

 

行動するのにアリスの命令を必要としない、自分の意思を持って自分の意思で動く自立人形を作るのがアリスの夢であり、目標だ。その為に何年も修行した。今でも続けているが、まだその域までは達していない。

 

 

だというのに、目の前の男はものの数十分でそれを成し遂げた。勿論意図してやった事ではないだろうが、それでも凄い。アリスの頭の中で疑問が尽きない。何故?どうやって?幻想入りして間もない人間にそんな事が可能なのか?

 

 

「アリス?アーリース!聞こえてるか?」

 

「…はっ!?」

 

 

魔理沙の呼ぶ声で我に返る。

 

 

「ご、ごめんなさい…」

 

「いやいいけどよ。それより早く飲もうぜ?」

 

「うん…」

 

 

彼は聞いたら教えてくれるだろうか?いや、そもそも意図してないんだから彼も分からないかもしれない。でも取っ掛かりくらいなら見つかるかもしれない。

 

そんな堂々巡りの思考に耽りながら、アリスは目の前に置いてあったコップを手に取り酒を一口飲んだ。

 

 

 

 

ここで思い出してほしい。

 

 

 

上海が喋り出す前、コップの中身は既に空だったという事を。

 

 

 

さて、中身を注いだのは一体誰か?

 

 

 

それは魔理沙でもパチュリーでも、レヴァンでも上海でもない。

 

 

 

酒を口に含んだ瞬間、アリスの意識は一気に持っていかれた。

 

 

 

それを見た小柄の鬼は、快活に笑い出す。

 

 

 

作戦成功!とでもいうように。




宴会も盛り上がってまいりました。主に萃香のせいで。
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