東方奇才伝   作:サンダーボルト

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強者と奇才は惹かれ合う

酔えない事はつらいと、伊吹萃香は言っていた。

 

 

 

以下同文。

 

 

 

 

「…ぼっちじゃないもん」

 

 

 

やけに度数の高い酒を飲んでしまい、一気に酔っぱらってしまったアリス。テンションが上がったアリスにつられて魔理沙とパチュリーの酒も進み、三人は早いうちから出来上がってしまっていた。

 

……が、アリスが急に大人しくなったと思うと、瞳をうるうるさせながらそんな事を言い出した。

 

 

 

「ぼっちじゃないもぉぉぉぉぉん!!」

 

 

 

テーブルに突っ伏して大声で泣き出す。上海はアリスの頭を撫でて慰めているようだ。レヴァンは何の事だか分かっていない。

 

 

「…おい霧雨、パチュリー。泣き出したぞこいつ」

 

「私に聞かれても分からないわ。ねえ魔理沙、どうなのよ?」

 

「んあ?あー…いつもの事だぜ。ほっといても勝手に治るから気にすんな」

 

 

そう言って取り合おうともしないので、レヴァンも無視しようとした。だが、少し距離を取ろうとして動こうとすると、アリスの手がレヴァンの腕をガッチリ掴んでいて離さなかった。それでも強引に離れようとしたが、今度は上海が手を引っ張ってきた。

 

 

「……付き合ってやれと?」

 

「…シャンハーイ」

 

 

申し訳なさそうに頷く上海。レヴァンは何度目になるか分からない溜息を吐き、アリスの愚痴に付き合う事にした。

 

 

「レヴァン……レヴァンは友達いないよね?幻想入りしたばっかりだもんね?ぼっちだよね?」

 

「いきなりなんて事聞きやがる…」

 

 

配慮も何もない質問をぶつけたアリスに対し、レヴァンは苦い顔をする。だがアリスの言う通り、レヴァンは幻想入りして間もない。普通ならば、友達など作っていられない状況なのだ。

 

 

…………が、お察しの通りレヴァンは普通ではない。

 

 

「友達ならいる。三人程な」

 

「……え?」

 

 

ルーミア、チルノ、大妖精。なし崩し的に友達と認めた時の事を思い出し、レヴァンは苦笑する。天然なのか馬鹿なのか…友達になった事を忘れたという発想はそうそう思いつくものではない。レヴァンもわざわざ訂正するのが面倒で友達でいいと言った。

 

 

「う…嘘……こんな不愛想でデリカシー無い男が…?」

 

「ほざけ、人形しか友達いない悲しい人形使い(マリオネットマスター)が。一生一人でままごとでもしてろ」

 

 

流石に腹に据えかねたのか、レヴァンの言葉に棘がつく。

 

その棘が本人の思っていた以上にアリスを刺し貫いた。

 

 

「そんな言い方しなくたっていいじゃない!?私だって友達欲しいもん!!だけど同じ魔法使いで私の家にしょっちゅう来る魔理沙には、霊夢っていう親友がいるし!図書館に引きこもってるパチュリーにも、レミリアっていう親友がいるみたいだし!今更私がしゃしゃり出れる訳ないじゃない!新しく交流持とうにも、人里には滅多にいかないし!たまに森で迷った人を泊めてあげても、人形だらけの家を気味悪がって早く出ていきたがるし!」

 

「お前に原因あるだろそれ」

 

「ハーイ…」

 

「…上海まで……うぅ…もうやだ…」

 

 

散々ぶちまけたものの全否定、更に上海までも否定派に付いたため、アリスはしょぼくれてしまった。その哀愁漂う姿を見て流石に不憫と思ったのか、レヴァンは彼女の肩に手を置いて慰め始めた。

 

 

「まあそう腐るな。僕と違ってお前は愛想が良いから、その気になれば友達位すぐに出来るさ」

 

「……本当?本当にそう思う?」

 

「ああ。なあ、上海?」

 

「シャ、シャンハーイ!」

 

 

上海も慰めに参加して、アリスの機嫌の回復を図る。その甲斐あって少しだけ元気を取り戻したアリスが、レヴァンの方をチラチラと見始めた。

 

 

「…そ、それなら…あの、物は相談なんだけど…」

 

「なんだ?」

 

「……私と、友達に、なって、下さい…」

 

「……僕がか?」

 

 

アリスは両手の人差し指を絡ませながら、恥ずかしそうに言った。レヴァンが自分を指差して意外そうな反応を示すと、顔を赤くして頷いた。

 

 

「またなんで僕を…」

 

「だって、上海を凄く褒めてくれたし…。レヴァンは、私が友達なのは、嫌?」

 

「嫌ではないが…」

 

 

答えを渋るレヴァンを見て、アリスの瞳がまた潤み始める。心なしか、上海も同じように悲しげな表情をしているように見えた。こうなってはもうレヴァンに逃げ場は無い。

 

 

「分かったよ、友達になろう」

 

 

その言葉を聞いて、二人は明るい笑顔を咲かせた。アリスは上機嫌になったのかコップの酒を一気飲みし……そのまま崩れ落ちた。

 

 

「シャンハーイ!?」

 

「この阿呆…」

 

 

萃香が飲んでいた度の強い酒がまた注がれていたようだ。レヴァンは座布団を数枚並べて、そこにアリスを寝かせた。上海がどこからか毛布を調達してアリスにかぶせる。

 

 

「シャンハイ…」

 

「心配はいらないさ。このまま寝かせておけ」

 

 

そう言ってレヴァンは魔理沙達の所へ向かう。上海はしばらくアリスを心配そうに見ていたが、大丈夫だと判断してレヴァンの後を追った。

 

 

 

 

~~~~~~~~

 

 

 

 

「よ~レヴァン?随分とお楽しみだったようだなぁ?」

 

「どけ霧雨。重いんだよお前」

 

 

レヴァンがパチュリーの向かいに座ると、パチュリーの隣にいた魔理沙がレヴァンの背中にのしかかって絡みだした。レヴァンが文句を言うと、魔理沙は急にふくれっ面になって更に絡む。

 

 

「お前って本当にデリカシー無いよな!女の子に対して重いとか言うなよ!もっと言い方考えろよな!」

 

「お嬢さん、とても重たいのでどいていただけませんか?」

 

「誰が言い方を変えろって言った!?しかもさっきより重さ増してるじゃんか!!ていうか重いって言うなって!」

 

「まるで肥え太った豚を背負っているような感覚です」

 

「お前わざとだよな!?そうだよな!?」

 

 

漫才のようなやり取りを見て、パチュリーは大笑いしてむせていた。上海がその背中をさすっている。本当にできた人形だと胸の内で感心しながら、レヴァンは魔理沙の相手をしていた。こうして魔理沙と漫才のようなやり取りをするのも、レヴァンは結構気に入っていた。もっとも、弄られるばかりの魔理沙は気の毒としか言いようがないが…。

 

 

「おいパチュリー、平気か?過呼吸で死ぬなよ?」

 

「げっほげほっ………ひーっ……ひー……な、何とか大丈夫よ…」

 

 

むせ続けるパチュリーをレヴァンが気遣う。どうにか呼吸を整えたパチュリーが返事をしたので一安心したが、それを見た魔理沙がジト目でレヴァンを睨む。

 

 

「何だよ」

 

「なあ…何で私は名前呼びじゃないんだ?」

 

「は?」

 

 

魔理沙が若干嫉妬を交えた視線を向けながら聞いてきた。レヴァンはただ首を傾げるだけだ。

 

 

「だっておかしいだろ!?パチュリーより私の方が付き合いは長いのに、私は名字でパチュリーは名前呼び!何でだよ!」

 

「別に…女を名前で呼ぶのはあまり良くないと前に言われたからだが…。パチュリーはまあ…許可は貰ってるからな」

 

 

これはレギナからの入れ知恵である。レヴァンは呼び方についてはどうでもいいと思っているが、女の子はそういう事は結構気にするものだと忠告されてからは基本的に名字呼びにしている。

ちなみにパチュリーはこの事を知っており、幻想郷では気にする者はあまりいないから全員名前呼びでもいいと言われたが、レヴァンは頑なに拒否した。なので、本人の許可を得られたら名前呼びにするという事にしている。魔理沙はそれがちょっと気に食わなかったようだ。

 

 

「なら、私の事も魔理沙って呼べ!」

 

「分かったよ魔理沙」

 

 

何の抵抗も無く名前呼び。あっさりと呼び方を変えたレヴァンに魔理沙は唖然としたが、徐々によく分からない気恥ずかしさが込み上げてきた。

 

 

「な、なんか……照れるな」

 

「そうか?」

 

 

困ったように頬をかいてはにかむ魔理沙だが、レヴァンに乙女心など理解できるはずもなく、魔理沙の心境に共感する事は出来なかった。

 

 

「魔理沙も初心なのね…名前呼びくらいで浮かれてまあ…」

 

「なっ、う、うるせー!私はお前みたいに何十年も生きてねーんだよ!」

 

「アイヤー!アイヤー!」

 

「あ、愛!?いや違うから!まだそこまで…!」

 

「あら?まだって言ったの今?」

 

「マリサ、アイシアイー!!」

 

「だああああ!?頼むから少し黙っててくれお前ら!!」

 

 

楽しそうに騒ぐ魔理沙達を横目に、レヴァンはパチュリーが持ってきた饅頭や団子を肴に酒を飲む。騒がしいのは嫌いだった筈だが、柄にもなく少しだけ楽しいと感じている自分に戸惑っている。しかしその戸惑いも、魔理沙達を見ているとすぐに消えた。自分の中に芽生え始めた感情は一体何なのか、レヴァンはいくら考えても答えを出すことができなかった。

 

レヴァンは考える事を止めた。いくら普通じゃない脳を持っていたとしても、理解できないものはいくらでもある事をレヴァンは知っていた。どうしても分からないものは分からなくてもいい。それがレヴァンの信条であった。ただこの理解できない安らぎに身をゆだねて、小さな幸福に浸っていた。

 

 

 

 

 

 

ーーーーーだが、それも長くは続かなかった。

 

 

 

 

 

 

異変をいち早く察知したレヴァンは目を細めて神社の外を睨む。宴会場の気温が下がったような錯覚を感じる。その影響からか喧騒が小さくなり、何人かは元凶を探しているのか周りを見回していた。それは魔理沙達も例外ではなく、騒ぐのを止めて辺りを警戒している。

 

ふと、レヴァンは立ち上がって外へと歩き出す。上海はレヴァンから何かを感じ取ったらしく、急いで飛び上がり服を引っ張って連れ戻そうとした。

 

 

「イヤ、イヤ、イヤー!」

 

「………離せ」

 

「イヤー!イヤー!!イヤイヤイヤー!!」

 

 

上海は首をブンブン振りながら、必死でレヴァンにしがみつく。レヴァンは煩わしくなり、片手で上海の体をわし掴んで引き剥がし、パチュリーの方に投げつけた。

 

 

「シャンッ!?」

 

「きゃっ!?」

 

 

何とか投げられた上海をキャッチしたパチュリーはレヴァンに非難の目を向ける。だが、レヴァンの纏った威圧感に呑まれて何も言えなくなってしまった。

 

 

「……ここにいろ。そいつを放すなよ」

 

「お、おい!?」

 

 

魔理沙の制止の声も聞き入れず、レヴァンは宴会場から出ていく。パチュリーは上海が後を追わないように強く抱き締めていた。

 

 

「イヤー!!イヤイヤイヤイヤイヤイヤー!!!」

 

「………っ…」

 

「イヤァァァァァァッ!!」

 

 

泣きながら、レヴァンの後を追いかけようと必死に手足をばたつかせている上海。その姿にパチュリーは心を痛ませながらも、決して放そうとはしなかった。

 

 

 

上海を危険に巻き込ませまいとする意思を、裏切らないために…。

 

 

 

 

 

~~~~~~~~

 

 

 

 

 

レヴァンが外に出ると、そこには一人の女性が佇んでいた。緑色の髪の毛から覗く真紅の瞳がレヴァンを見据えると、笑顔を浮かべてそちらを向いた。

 

 

「ごめんあそばせ。宴会はまだ終わってないかしら?」

 

「ああ、まだやっている。幾人かは帰ったようだが、殆どは残っているな」

 

「そう、良かった」

 

 

レヴァンも口だけ笑みを浮かばせて視線を返す。二人は無言のままその場で見つめ合う。暫しの沈黙の後、先に口を開いたのはレヴァンだった。

 

 

「質問してもよろしいか?」

 

「構わないわ。何かしら?」

 

「……今は夜だな?」

 

「ええ」

 

「それに雨も降ってない」

 

「そうね」

 

「なのに何故、傘を持っている?」

 

 

女性の口が更に吊り上がり、瞳の輝きが鋭さを増す。レヴァンは彼女が発している殺気が増しているのを肌で感じていた。

 

宴会場を丸ごと包み込むほどの殺気。レヴァンはそれが自分に向けられたものだと感づいていた。そういった類のものには敏感なのだ。だからこそ、一人で出てきた。万が一にも、他の者に危害が及ばないように。

 

 

「そういえば、自己紹介がまだね。私は風見幽香。四季のフラワーマスターと呼ばれているわ」

 

 

そう言うと幽香はゆっくり歩みだした。笑顔を絶やさずに。

 

レヴァンも同じく凶悪な笑みを浮かべながら、幽香に合わせて歩き出す。

 

 

「お前はどうも……皆で集まってどんちゃん騒ぎするタイプではないと思うんだがな」

 

「あら、そうとは限らないわよ?私も宴会は好きだもの」

 

「そうかい」

 

 

お互いに手が届く距離まで近づくと、両者の笑みが消える。レヴァンはまばたき一つせずに睨み付け、幽香は目を閉じて傘を持っていない左手を頬に寄せた。

 

 

「でも、そうね……今夜に限っては、宴会はおまけみたいなものかしら」

 

「………ならば、何しに来た?」

 

 

 

 

幽香の目が見開かれ、先程とは違う獰猛な笑いが浮かぶ。右手に持った傘が下から斬り上げるように振るわれる寸前、レヴァンが一歩踏み込んで左手でその手を押さえ込んだ。

 

 

 

 

 

 

「―――幻想郷に喧嘩を売った、身の程知らずなお馬鹿さんの顔を拝みに来たのよ」

 

 

 

 

「―――そいつは目の前にいるぞ。好きなだけ拝みやがれ」




遂に出会ってしまった二人………どうなる!?
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